こんにちは、ピッコです。
今回は98話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
98話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 行軍③
彼らは小川に沿って青い野原を風のように移動した。
マックは涼しくて爽やかな風が顔を気持ちよく見渡して通り過ぎるのを感じながら、思わず笑みを浮かべる。
乗馬を楽しむ状況ではないことは分かっていたが、初めて一人で馬に乗って平野を走るのだ。
狭い山道や丘の上を走る時とは比べ物にならないほど胸がいっぱいになる。
彼女は輝く目であたりを見回した。
雲一つない澄んだ空は驚くほど真っ青な光を含んでおり、濃い青の野原を横切って流れる小川は銀粉を撒いたようにきらめきながら光を噴き出している。
初夏のうららかな日差しの下、野の花さえも生命力を精一杯誇示して華やかに立ち上った。
凶悪な魔物が幅を利かせているとは思えないほど平和な風景だ。
「いつでも防御魔法を使えるように準備をしておいたほうがいいですね」
彼女が解放感に浸っていた時、先に馬を走らせていたガベルがふと口を開く。
マックは当惑した表情で彼を見た。
周りには魔物どころか、野獣一匹も見えない。
ひょっとしてどこかに魔物が隠れているのか、おびえた顔で首を横に振り回すと、彼が指で空を指差した。
思わずそこに覗線を移したマックは、危うく悲嗚を上げるところだった。
奇妙な形をした5、6羽の巨大な鳥が上空をぐるぐる回ると彼らを追いかけていたのだ。
「ハーピーです。すぐに攻撃する意思はなさそうですが、襲撃に備えておいたほうがいいでしょう」
ハーピーといえば、ワシの体に人間の女の顔を持つ魔物だった。
マックは目を細めて彼らの様子を注意深く見る。
距離が遠くてはっきりとは見えなかったが、鷲の頭があるべきところに女性の青白い顔が見えるようでもあった。
マックは背筋がぞっとするのを感じながら手綱をぎゅっと握る。
ユリシオンは彼女のすぐそばに寄り添い、冷静に注意した。
「奥さん、心配しないで前を見てください。もうすぐ坂道を下ります。岩が多いので気をつけなければなりません」
彼女は素早く頭をまっすぐにした。
彼の言葉通り、ある程度さらに移動すると、切り立ったような絶壁が姿を現す。
彼らは馬を崖に沿って走り、急な坂道で立ち止まった。
傾斜が急に続いた道の下には、岩が積み重なった深い谷が位置している。
騎士団は下を注意深く見て、しばらく躊躇った。
これからあの下に降りなければならないが、ひょっとしてハーピーたちが絶壁の上で岩を転がして落とすのではないかと、下手に足を踏み出すことができないのだ。
「やっばり、あの厄介なやつらをやっつけてしまわないと」
ヘバロンが背中に巻いたクレイモアの取っ手を握りしめ、怒りに満ちた声で叫んだ。
リプタンは手を上げて彼を止める。
「あいつらのことを気にしている場合じゃない」
彼の冷たい目は崖の下に固定されていた。
リプタンの覗線を追って頭を下げた騎士たちは荒々しく舌打ちをした。
彼女は除列の後ろに立っていたので、彼らが何を発見したのか確認できなかった。
耳をびんと立てて何が起きているのかを調べるために努力していると、リプタンが大きな声で指示を下す。
「下に盤龍5頭がいる。2列目・・・いや、3列目まで討伐の準備に入る。あとは沈む上で待機しながら、下皮を警戒するように」
騎士たちが一斉に剣を抜く。
マックは20人ほどの騎士が風のように坂を駆け下りるのをぼんやりと見つめた。
彼らは岩が不規則に積もった急な道を曲芸でもするように馬に乗って降りていく。
上に残された騎士たちは二つに分かれ、半分はハーピー群れの接近を警戒し、残りの半分は矢を抜いて盤龍討伐に乗り出した騎士たちを援護した。
急に緊迫する状況にマックは半分ほど魂が飛んだ状態で右往左往する。
「あの、私は何をしたら・・・」
「状況が終わるまでおとなしくしていればいいです。念のため防御壁を張る準備をしていてください」
ガベルは素早く答え、剣を抜いた。
いつの間にか20匹に増えたハーピーの群れが一斉に高音の泣き声を出しながら彼らの頭の上をめまいがした。
マックは耳を塞ぎ、ガベルの指示通り魔法式に従って魔力を循環させた。
その瞬間、背後からさらに大きな咆晦が鳴り響く。
マックは頭を下げた。
絶壁の下で巨大な怪物と騎士団が戦っている。
その威圧的な光景に全身が凍りつくようだった。
魔物の大きさは大体20クベット(約6メートル)くらいのように見えた。
魔物の全身は荒々しく璧で削ったような鋭いうろこで覆われており、トカゲに似た頭の上には長くて鋭い角が、大きくて凶悪な口の中には尖った歯がびっしりと生えていた。
「あれが・・・盤龍・・・」
図鑑で見たものよりはるかに恐ろしい形だ。
魔物たちが黄色い目を光らせながら、重い足をドンドンと転がして騎士たちに飛びかかった。
しかし、騎士団は少しも萎縮した様子もなく、速やかに岩の間に散らばって怪物たちを撹乱させた。
騎士たちは馬と渾然一体になったように不規則な地形を自由に走り回り、自分たちの10倍の大きさの怪物たちをまるで野営したかのように獣を狩るように上手に誘引した。
「団長!」
騎士の一人が飛んでくる盤龍の重い尻尾を避け、鉄槌のついた鎖を魔物の足に絡める。
魔物の体が大きくふらつくと、リプタンがその隙を逃さず、盤龍の首に深く剣を突き刺した。
赤黒い血が四方に噴水のように噴き上がる。
その光景をぼんやりと眺めていると、ユリシオンの緊急な声が聞こえてきた。
「奥様!崖の近くに立たないでください!ハーピーが飛びかかって落とすこともあります」
マックはきしむように崖から離れる。
ハーピーたちはいつの間にか顔の形まではっきり見えるくらいの距離で羽ばたきをしていた。
数人の騎士が彼らに矢を向けると,ガベルが彼らを止める。
「まだ攻撃するな。あいつらまで加わると面倒になる」
「でももう・・・」
「あいつらが狙っているのは我々じゃない」
彼の落ち着いた声は、盤龍の雄叫びに埋もれてしまった。
マックはリプタンが万が一負傷するのではないかとそわそわしながら戦いが終わるのを待つ。
盤龍がドンドンと足を踏み鳴らす音と剣を振り回す音、叫び声が続くのをしばらく、ついに下で戦闘が終わったことを知らせてきた。
「もう安全だと思います。随行員と一緒に先に降りてください」
ガベルの指示でマックは馬の上から降りて岩の間を注意深く歩いた。
騎士のように馬に乗って急な坂道を下るオ能はなかったのだ。
彼女がやっと絶壁の下に到着すると、盤龍の死体を処理していた騎士の1人が走ってきて手綱を取る。
「カリプス夫人、どこか怪我をしたところはありませんか?」
「そ、それは私が・・・聞かないと。怪我をした方は、い、いらっしゃいませんか?」
「イーサン・クルード卿が、盤龍が吐いた胃液をかぶり、火傷を負いました。傷を治療していただけますか?」
彼女はうなずいてまっすぐ彼のところへ走って行く。
イーサン・クルードは他の騎士たちの助けを借りて、胸甲とチュニックを脱いでいた。
マックはますます明らかになるひどい傷にうめき声を上げる。
左肩から胸まで沸騰した油をかぶるように赤黒く染まっていた。
その凄惨な光景を見てもヘバロンは舌だけがびくびくと詰まっていた。
「どうしてそれを避けることができないのか。最初の戦いからうまいことだ」
「そんなことしないでください。洞窟の中にもう一匹隠れているとは、ニルタ卿も知らなかったじゃないですか」
イーサンは苦しそうにうめき声を上げ、不平を言う。
どうやら盤龍は5頭ではなく、全部で6頭だったようだ。
マックは岩の間に垂れ下がった盤龍の死体を見て回り、彼の傷を詳しく調べるために腰を下げる。
肩の皮膚がほとんど溶けて、赤い筋肉層が露出していた。
思わずその上に手を乗せようとすると、ヘバロンが引き止める。
「触らないでください。奥さんの手も火傷をするでしょう」
「でしたら、すぐに洗い流さないと」
マックは随行員たちに水を汲んでくるよう頼み、急いで彼の体から粘液質を洗い流す。
傷口に水が触れるのがひとく痛むはずなのに、騎士は歯を食いしばって耐え抜いた。
幸い、他の人たちは傷一つなく元気だ。
リプタンは水たまりの近くで鎧に跳ねた血を拭いており、他の騎士たちは盤龍の胸を裂いて磨石を採取している。
マックはその光景を見ていぶかしげな顔をした。
ドラゴンの亜種の魔物が高く取引されることは彼女も知っている。
だが、先に行った遠征隊を一刻も早く助けに行かなければならないこの状況で、魔物の死体をかき回しているのがよく理解できなかった。
ついに戦闘が発生しましたね。
マックも魔法使いとして自分の役割を果たしています。