こんにちは、ピッコです。
「ジャンル、変えさせて頂きます!」を紹介させていただきます。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
139話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 3年後
時間が砂のように流れていった。
特に変わったこともないようで、結婚してから3年が過ぎた。
振り返ってみれば、1年間にヴィンタバルトやリラニベル、ブルーエンを行き来していたことが、時間をあっという間に消し去った原因だったように思える。
まあ・・・思い返せば忙しいだけの毎日だった。
ヴィンターバルトではリディアが家門の仕事を処理しながら、私もまた家門をどう運営すべきかを学ばなければならなかった。
ヴィンターバルト侯爵夫人としてだけでなく、マイバウム家の現家主としても気を配るべきことが多かったのだ。
ブルーエンでは、聖王の庇護に応えるだけでなく、教会関係の仕事で気が休まらなかった。
参加しなければならない行事がどれだけ多かったことか!
山のように積まれた招待状を片付けることも仕事の一部だった。
そんな中、一息つける時間と言えば、リラニベルで過ごすひとときだった。
リラニベルは聖王が言った通り、葡萄の紫の光が美しい魅力的な都市だった。
ヴィンターバルトの真っ白な雪原も、都のどっしりとした荘厳さも魅力的だったが、リラニベルで漂う葡萄の香りはいつも感動を呼び起こし、この場所がまるで天国ではないかと思えるほどだった。
最初にリディアが訪れてルカが「夫人」と呼びながら懐いたとき、彼女が語った話は、牧歌的な環境と純朴な生活、そして社交の中心で過ごす生活があまりに対照的だった。
今となってはその両極端な生活をすっかり手に入れてしまった。
『やっぱり未来への青写真を描くときには欲をしっかり込めないと。願った通りになるんだから。』
そんなことを思いながら、私は自己啓発や新たな考えを繰り返し熟考していた。
そして、今年の夏は雨が少なかったためか、葡萄の実が例年より豊かに育っていることに気づいた。
ローラがこの機会にどれだけ美味しいワインを作るのか、期待に胸を膨らませながら味を想像している。
成人したローラはリラニベルで新しい趣味を見つけた。
それがワイン製造だった。
ヴィンターバルトで厨房を任されていた母の血がどこかで受け継がれたのか、ローラは細やかで洗練された感覚を持っており、味覚のセンスが抜群だ。
遅れて才能を発揮したローラは、葡萄だけでなく様々なベリー類の果実を熟成させ、多くの試作品を作り出した。
特に昨年はジャスミンの花の香りが独特で、鼻をくすぐるような風味のワインを完成させ、大変高い評価を得た。
ローラはそのワインに私の名前を付けた。
私は少し恥ずかしくなり、何度も拒否しましたが、ローラの意志は固かったのだ。
「だって、ジャスミンを思い起こさせるのは奥様のおかげですから!私にインスピレーションをくれる存在が奥様以外にいるわけないじゃないですか!」
そんな主張をするローラは、さらに芸術家を雇って私の名前をあしらったラベルをデザインした。
そして、そのラベルをワインに貼り付けたうえで、そのまま先王とリディアにプレゼントしてしまったのだ!
ローラのその行動力に私は呆れつつも感心し、もう両手を上げてしまった。
当然ながら、先王とリディアはそのワインを大変気に入った。
「これ以上にぴったりの名前なんてない!」と、彼らは繰り返し賞賛し感動するほどに。
リディアはそのワインを作ったローラを褒めたたえ、思いがけないほどの報酬を渡した。
こうしてローラは予想もしていなかった大金を手にする。
ジャスミンの香りが漂うそのワインは「ユディトラ」という名前が付けられ、王に献上されることになった。
当然ながら、それに伴うロイヤルティもローラのものだ。
私自身は行動力という点では、それほど際立っているわけでもなく、逃げ腰になったこともないのだが・・・周囲の人たちは皆「突き進む」か「行動する」かの間で悩む、選択肢のないような人々ばかりだ。
そう考えると、やはり流されがちな自分がいると感じてしまう面もある。
まあ、そもそも勝ち目のない戦いだ。
私が勝てるはずもないことだった。
だから、何も考えずに行動力があると言われる人なんて・・・!
先王そのワインを特に気に入った。
昨年作られたそのワインを独占しようと、リディアと気まずい争いをする場面もあったほどに。
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「最近は、そのワインを飲まないと眠れなくなってしまった。これだから年寄りというのは、どうしようもないな。不眠症になって苦しむ姿を見たくなければ、どうかそのワインを用意しておいてくれよ。」
「譲歩するのが賢明だよ、准将。」
「なぜ私が船長の機嫌を損ねてしまうことを恐れなければならないと思うのですか?」
先王と未来の公爵、ランガートの陸軍准将の会話だとは思えない、冷静でありながらどこか軽妙な言葉が飛び交った。
「はっ!お前のような薄っぺらな奴ならその程度のことは言うだろうな。しかし、我らが優しいユディットはどうだろう?お前のその軽率な態度のせいで私が死んだら、果たしてユディットの愛情はお前から離れるだろうか、離れないだろうか?」
「離れた愛情は私の顔で再び取り戻せば良いだけのことです。」
「ふん!今はお前の顔に夢中でも、年を取って幼くて初々しい美貌の者が現れた時、果たしてその時もユディットはお前を選ぶのだろうか?」
「・・・。」
これまで冷静さを保っていたリューディガーの顔が、その瞬間、石の壁のように硬直した
先王はリューディガーに一矢報いたと感じたのか、満足げにニヤリと笑いながら言った。
「それに比べれば、私はあの子の祖父だよ。血が繋がっているということだ。血縁による強い恨みは、一生ものだからね。」
冷静に考えれば、親しい祖父というわけではない。
たった3年前に会った遠い親戚に過ぎないのだが・・・先王が自分にしてくれたことを思うと、とてもそんな風に割り切れるものではなかった。
普段なら、そろそろリューディガーが反論してくる頃だ。
しかし、先王が幼くて生き生きとした美しい姿に執着していたのか、こちらを見つめる彼の顔には明らかに動揺の色が浮かんでいた。
『一体私を何だと思っているの?』
どんなにリューディガーの顔が好みだとしても、私は結婚している夫がいるのだから、若い男性に気を取られるわけにはいかない。
不安と戸惑いで表情が固まったリューディガーの視線を受けながら、私は深く息をついた。
ただのワインの話題なのに、どうしてこんな風に発展してしまうのか。
これ以上、二人の間を取り持たなければならない状況になりそうだった。
「どうせリューディガーさんはブランデー派でしょう?ワインはあまり得意ではないんじゃないですか。先王の前で話を合わせていれば大丈夫ですよ。」
「でも!」
「それに、おじいさん、持続的なお酒の摂取は健康によくありませんよ。最近、よく疲れるとおっしゃっていましたよね?」
「もう自分の年を考えれば、寿命までそう長くはないさ。その時までにやりたいことをやり、楽しみたいことを楽しむ、それが幸せじゃないか。いざ終わりが来た時に、『あの時、惜しまずにワインを楽しんでおけばよかった・・・』なんて後悔したくないじゃないか。」
「もっと長生きしてくださいよ。そんなこと言わないでください。」
そう言ったものの、先王が寿命が長くないと口にすることに対して、否定する理由はなかった。
実際、この時点での先王の寿命を考えると、確かに非常に長生きしているのは事実だったから。
『まあ、限りあるものを惜しむなんて意味がないさ。結局、誰にでも終わりは訪れるんだからね。よく食べるせいでそうなったかもしれないけど、確かにそれっぽいね。説得力があるよ、説得力が。』
私は思い出しながらそう考えた。
ヴィンターバルトの男たちは長寿の者も多く、それも似たような理由によるものだった。
『もちろん、これは実際には自殺、他殺、または事故などの問題だけど・・・』
私は1回目の人生で、不運にも命を落としたかつてのリューディガーを思い浮かべながら、黙祷を捧げた。
リューディガーの親友であるマクシミリアンも、若くして自ら命を絶った。
それに比べれば、今の二人は健康とはいえないものの、まだ元気だ。
特にリューディガーは健康すぎて、それがかえって問題になるほどだ。
その元気さを思い浮かべると、私は深いため息をつく。
「・・・では、1日にワイン1杯だけですよ。それ以上はダメです。それ以上飲んだという話を聞いたら、来年は1本も差し上げませんからね。」
「わかった、わかった!」
私の厳しい指摘に、先王は困惑しつつも笑顔で応じた。
そのようにして、昨年のワインは大部分が先王の手に渡ることに。
私の名前がついたワインをすべて奪われるような状況だ。
リューディガーは、先王が好き、自分が好きという安易な口実で多少の譲歩をしようとしていたが、先王との会話で彼の弱点がさらされるのを嫌がっている様子だった。
彼は譲歩する代わりに、若い者たちに負けまいと運動をすると言って、飛び出していった。
私はそっと彼の首根っこをつかんだ。
これ以上体力が増えると、苦労するのは目に見えている!
「リューディガーさん、無理に運動しなくてもいいんですよ。今でも十分やっているじゃないですか。余分な肉もないし、ちょうどいい感じです。」
「いえ、私は怠けていません。これまでの習慣的な運動だけでは足りないと思っています。」
「足りないですって? 私から見ると、リューディガーさん、今がちょうどいいですよ。これ以上でも以下でもなく、まさに今が理想的です。」
「・・・本当ですか?」
私の甘い言葉に、リューディガーの目が少し潤んだように見えた。
「当然ですよ。そんなに不安にならないでください。リューディガーさんよりもハンサムな男性は、ラムガート、いえ、この世界には存在しません。」
「今はいないけれど・・・将来的にはどうなるかわからないじゃないですか。」
リューディガーはさらに深刻になり、真剣な表情で抗議した。
(いやいや、生まれてもいない子どもたちも競争相手になるのか?!あの子たちとは歳の差がどれくらいあると思ってるんだ!)
私はその真剣さを和らげようと彼をなだめた。
そして、軽い笑みを浮かべながら、穏やかにこう言った。
「将来のことなんて気にしなくてもいいんですよ。ほら、こちらに来てください。そんな馬鹿げた話をしている暇があったら、その間にリューディガーさんの素敵な笑顔を一度でも多く見たいですから。」
「まだ太陽が出ているのに・・・大丈夫なんですか?」
リューディガーは私の柔らかな誘いの視線をすぐに察知したが、返答の代わりに目をくるくると回しながら断るだけだった。
彼は普段から昼間に外に出ることを頑なに拒否していた。
その理由は、決して恥ずかしいからではない。
『昼間でもいい、って言い出したのは、私が死んでいく姿を見たいからなんでしょ。もう最高ね、本当に最高。』
でも今日は特別な日だ。
だって私、こんなに愛されてるのよ、普段はリューディガーがこんなにも特別にしてくれるなんてあり得ない!
まったく、あの王様の妙な一言に自信を無くすリューディガーを見てたら、逆に私の自尊心が傷ついたわ。
次からはそんなこと気にしないで、今日はきっぱり抱きしめてあげるつもり。
いいわ。今日は昼間にリューディガーの素晴らしい姿を堪能して、心から満足したいものね。
そう、私は彼をぎゅっと抱きしめるの。