こんにちは、ピッコです。
「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
170話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 招待状
ダニエルの指摘に、ミルドレッドの口がぱっと開いた。
そんなことは考えたこともなかった。
ミルドレッドは何を言うべきか分からず、黙ってダニエルを呆然と見つめる。
画家の集まりとは、芸術家たちが集い芸術についての思索を共有する場だと考えていたが、経済的に余裕のない男性たちが大多数を占めるという側面には思い至らなかった。
「そこでリリーはかなりの人気を得るでしょう。もちろん彼女は魅力的な令嬢ですが、その魅力はリリーの才能や言動ではなく、彼女を紹介したケイシー卿の存在がさらに大きいのです。」
「リリーが裕福な令嬢だからといって、画家たちが彼女を誘惑しようとする、いえ、誘惑するという意味ですか?」
「実際、リリーは裕福な家の令嬢ですよね?」
その言葉にミルドレッドは目を丸くした。
彼女がこのようなアイデアを受け入れるのは、ダニエルの説明を聞いたおかげだった。
今年初めに比べてバーンス家はかなりの余裕を持つようになったのは、使用人の給料の上昇によるものではない。
バーンス家の収益は、使用人の賃金を3人分だけ増やし、家とダニエルが連れてきた侍女2人の生活を支えるほどだ。
彼女が使用人の給与を支払うことを決め、家事を管理する責任を引き受けたのは最近のことだった。
ダニエルが最初に連れてきた使用人たちの給与は彼が支払っていたが、食事代や日々の支出はミルドレッドが処理している。
実際、この広い家を管理するために3人の使用人を雇用しているという点で、バーンス家は庶民にとっては裕福な家だと思われるだろう。
しかし、基準が貴族的なミルドレッドにとっては、そのようには感じられなかった。
彼女は自身が画家たちに比べて裕福であることを、ダニエルの説明を聞くまで理解していなかった。
「リリーに注意を払う必要がありますね。」
「ケイシー卿が適切に導いてくれるでしょうが、本人も注意を怠らないようにする必要があります。」
ダニエルならこの状況を難なく処理しただろう。
しかしリリーは彼の娘ではないし、彼女が多くの人々と状況を経験するべきだというミルドレッドの考えを彼は理解し、彼女を尊重していた。
リリーを甘やかす男性のせいで、ミルドレッドが苦しむような事態になれば、彼女を国外に送り出してしまおうとダニエルは考えた。
そしてその考えに微笑みながらも、以前にミルドレッドのためにそれを実行したことがあることを思い出した。
彼女はそのことを知らないが。
「奥様。」
その時、ジムが書斎のドアをノックしてミルドレッドを呼んだ。
ダニエルと話していたミルドレッドは、すぐに体を反転させてドアを開ける。
ダニエルは彼女がそばを離れるのを惜しいと思ったが、何も言わなかった。
「ケイシー侯爵家から招待状が届きました。」
「ありがとう。」
侯爵夫人が子どもたちを少人数招待するとのことであった。
ミルドレッドが招待状を受け取ると、ダニエルは机の上から紙ナイフを取って彼女に渡した。
「ありがとう。」
ミルドレッドは彼からペーパーナイフを受け取り、招待状を開いた。
その内容は簡潔だった。
以前に食事をもてなしてくれたことへの感謝の言葉と、彼女もヴーンス家の人々を招待し、簡単な食事会を開きたいという旨が記されていた。
「ふむ?」
ミルドレッドは眉をひそめた。
食事会自体は悪くない。
しかし、問題は場所と日取りだ。
彼女はダニエルに招待状を見せながら尋ねた。
「ケイシー侯爵家の別荘がどこにあるか知っていますか?」
知らない。
しかしダニエルは答えず、ミルドレッドが手にした招待状を素早くひったくった。
招待状にはヴーンス家の全員を招待する旨が書かれており、さらには「ウィルフォード家の召使いも来てくれたら嬉しい」とさえ書かれていた。
場所はケイシー侯爵家の別荘。
「日程が問題ですね。」
ダニエルの指摘に、ミルドレッドはため息をついた。
アイリスが城に行かなければならない日程と重なっていた。
正確に言えば、アイリスが城へ向かう日よりも二日早い日程だった。
「わざとそうしたのでしょうか?」
ミルドレッドの言葉に、ダニエルは苦笑いしながら肩をすくめた。
ケイシー侯爵家の別荘は、ここから馬車で半日かけて到着する場所にある。
朝出発すれば昼過ぎには到着するだろう。
簡単な食事会といっても、それなりの時間がかかり、夕食も含めれば、戻ってくるのは二日後の午後になるだろう。
その二日後は、アイリスが城に入る日だ。
王妃候補たちは朝早くから城入りし、宮殿を案内され、王子と昼食を取る予定となっている。
そして夜には、王妃候補の家族も入城し、国王夫妻とともに夕食をとる予定だった。
時間が非常に厳しくなる。
ケイシー侯爵家の別荘で一泊したとしても、他の家族たちはその翌日の夜には入城できるが、アイリスは朝から準備を整えて入城しなければならず、非常に困難だ。
無理をすれば、彼女もケイシー侯爵家の別荘に行くことはできるが、もし疲労のため国王の前で欠伸でもすれば、それは失礼極まりなく、無礼な行為と見なされてしまう。
「リリーだけ招待したいということですね?」
「まあ、貴族らしいですね。」
ダニエルの軽い皮肉に、ミルドレッドは苦笑いを浮かべた。
侯爵夫人の招待をバーンス家が断るわけにはいかない。
したがって確実なのは、リリーだけが行くか、リリーとアシュリーの二人が行くことだ。
アイリスが行かないのであれば、ミルドレッドも娘を見守るために残らなければならないだろう。
困ったものだ。
ミルドレッドは招待状を手に取りながら、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。
侯爵夫人の招待を断ることもできず、誰が見てもリリーと話をするのが目的である招待に、リリーを送るのも気が進まなかった。
「やっぱり馬車を作るべきだったのよ。」
ミルドレッドのため息に、ダニエルは片眉を上げた。
彼女は腰に手を当てて言った。
「馬車よりも速いのですが、考えてみると車がどのように動くのか分からないので、不便なものですね。」
「行って帰ってこられるのですか?」
「そうでしょうね。侯爵夫人の招待状ですもの。リリーだけを送りたくないからこそ問題なんですよ。」
「みんなで一緒に行けばいいのですか?」
「アイリスが早朝に入宮するには、体力的に無理がないようにしなければなりません。」
ダニエルは考え込みながらミルドレッドを見つめ、自分の顎を撫でるようにして言った。
「方法はありますが。」
「あるのですか?」
「以前の温室の件で、私の力で移動させたことを覚えていますか?」
何を言っているのかはわかっている。
ダニエルの言葉にミルドレッドは驚き、慎重に尋ねた。
「子どもたちを運ぶことは可能なのですか?」
「どれくらいだったか、3時間ほど続けられたような気がします。それくらいできたので、若いアイリスならもう少し短時間で済むかもしれません。」
ミルドレッドは反射的に問いかけた。
「それができるのですか?」
「できますが、助けが必要です。」
「何ですか?」
ミルドレッドの質問に、ダニエルの顔に微笑が浮かんだ。
それはどこか子供のように茶目っ気のある表情で、ミルドレッドの目を見開かせた。
彼は彼女の腰を抱きながら言った。
「キスしてください。子どもの人数分。」
唖然としたミルドレッドは、思わずくすくすと笑い声を漏らす。
そして彼の胸に手を置きながら尋ねた。
「それは好意ですか、それとも野心ですか?」
「野心ですよ。妖精が時間を動かすために力を使うのと同じで、それに応じた対価が必要なのです。」
「その対価がたとえ小さなキスでもいいのですか?」
「ははは!」
ダニエルはミルドレッドの体を抱き寄せながら大声で笑った。
「小さなキスとは!」
そう言いながら、彼は彼女の額に自分の額をそっと重ね、誠実に囁いた。
「ミル、あなたのキスをもらうためなら、星をも摘み取ることができます。それは決して偽りではありません。」
ミルドレッドの目が大きく開かれた。
しかし、すぐに彼女の目元が優しく揺らいだ。
ミルドレッドは手を伸ばし、ダニエルの頬に触れてそっと唇を重ねた。
まずはゆっくりと、優しく。