こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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2話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ②
そして今――。
全身がかすかに冷たくなっていく感覚がまだはっきりとしている中、目の前の少年は何も知らないかのような純真な顔で手を差し出していた。
「さあ、もう一度挨拶しようか?アストルム王国の第二王子、リテル・アストルムだよ。」
ためらいながらその手を見たベアティは思った。
『以前は顔を赤くしながらあの手を握ったんだ。』
初めて友達を作るということで、どれほど心を弾ませたか覚えている。
『そんな奴だとは知らずに。』
死にゆく自分の体からシンナムを剥ぎ取ろうとするその手が、今ではどれほど薄汚れて見えるか――。
伸ばされた手とは異なり、まだ小さな少年の手。
「……」
ベアティは視線を下に向けてみた。
少年の小さな手がまだ見えた。
「えっと?」
ベアティはその小さな手を掴んで――ぎゅっ!
「きゃああ!王子様!」
純粋なふりをした偽善的な笑顔が剥がれ落ちた。
手のひらに当たる感触が驚きと共に非常に満足そうだった。
「お前、これが何なのか分かっているのか!」
息が詰まりそうな声で叫ぶ叔母の声が聞こえた。
「何を――」
リテルは茫然とした表情で口を開けた。
その口には満足げな毒が含まれていた。
「あいつが私をがっちり噛んだのね。」
再び考えると怒りが込み上げ、ベアティはタンポポのように小さな手を拳にして力を込めた。
ぽん!
「毒を吹き飛ばしてやる!」
袖口を地面に叩きつけるかのように振り払い、王子に向けて拳を力いっぱい振り下ろしたベアティの行動に、皆が呆然とした。
「うわっ!」
「きゃああ!護衛兵!あなたたち、何を見ているだけなのよ!」
「お、王子!」
気を取り直して慌てて駆け寄った護衛たちが、風を切るように少年の小さな腕を掴んだ。
「捕まえました!」
「そのまましっかり掴め!この神聖な瞬間に何をやらかすつもりか、今日は徹底的にお灸を据える――」
「ふん!」
威圧的に怒鳴る叔母の言葉に、ベアティは体に力を込めた。
ポン!
煙の中に一瞬で絵のような小さな影が現れた。
「あれ?確かに腕を掴んでいたはずなのに?」
護衛兵は手の中から突然逃げ出したベアティに驚き、周囲を慌てて見回した。
ドタバタ!
人々の視線が届かない高さから、小さなリスのような動物が飛び出した。
「!」
煙が視界を遮った瞬間、下の部隊を指揮していた叔母が、素早く動く小さな影を指差しながら叫んだ。
「あれ、あのネズミのようなものを捕まえて!」
「ふん、ネズミですって?」
ポン!
乱暴に鼻息を荒げたベアティはそのまま窓枠に飛び乗った。
窓の高さはあったものの、頑丈な爪を持つリスの姿の彼女には、その程度の障害は問題にならなかった。
「今だ!」
リスの姿をした彼女にとって、その瞬間の逃走は死活問題だった。
開いた窓の外に飛び出したベアティは、庭を駆け抜け、全速力で草原を駆け抜ける。
「そこだ!止まりなさい!」
叔母が怒声を上げて叫ぶ声が後ろから聞こえたが、彼女は振り返らなかった。
「馬鹿な奴め!外で生き残れると思っているのか?!」
冷徹で嘲るような声。
「競売場に売り飛ばされても後悔しても知らんぞ!」
まるで忠告を装った警告。
「すぐに戻ってこい!」
押し付けるような命令。
一度も振り返ることなく、ベアティは後ろを完全に断ち切って走り去った。
「――!」
耳を苦しめていた声が消え、もう聞こえなくなるまで。
・
・
・
ぽとり。口の中で何かが転がる感覚を覚えた。
「ぺっ。」
吐き出してみると、白い乳歯だった。
「はっ!」
呆然とした表情を浮かべたリテルは、嘲るように冷たい笑みを浮かべる。
『もともとぐらついていた乳歯とはいえ、』
どれだけ取り繕っても、少女の手で乳歯が抜けたのはプライドを傷つける出来事だった。
抜けた歯の空いた隙間がさらに鮮明に感じられ、リテルは苛立ちを覚える。
『あの公爵の小娘が。』
良くしてやろうと思っていたのに、初対面から越えてはならない線を越えてきた。
「ふん、ふん。」
独りよがりな表情で薄ら笑いを浮かべる爵位持ちの姿も鼻についた。
『何がそんなに偉いんだ。』
あらかじめ責任を回避するために先手を打っているつもりなのか。
「あの恩知らずな奴め……再び捕まえてきたら、徹底的に教育を――」
「爵位持ち。」
歯を食いしばりながら中断するフィリナの言葉を遮り、リテルは鋭い目つきで睨み返した。
「紹介してくれると言っていたのに。」
「で、殿下!」
「非常に……予期せぬ出会いでしたね。」
フィリナはその場で、ベアティに怒鳴るのを中断した。
その姿とは裏腹に、少年の前では犬のように吠える声が響き渡った。
「その子がなぜ突然狂ったように走り出したのか……私にも全く見当がつきません。」
「ふん。」
「次回はしっかり教育しておきます、殿下。」
「結構だ。」
爵位持ちの弁明にリテルは興味なさげにうなずき、言葉を続けた。
「あなたが先に何か言い残したのではないのか?」
「え?」
「滅多にない機会だろう。王城を出た若い王子。この機会に……功績を立て、兄上たちに手柄を見せるつもりだったとか?」
「な、なんということでしょう!私はただ陛下と王妃に忠誠を誓っているだけだということをご存じないのですか!」
フィリナは慌てふためきながら、まるで隠れた非難を浴びせられたように叫んだ。
「そんな疑いをかけられたくなければ、仕事をしっかり果たせ。」
「わ、わかりました。必ずや確保してみせますので、どうか……。」
「そうだな。」
震える声で怯えた様子の爵位持ちを見つめながら、リテルは冷たく鋭い声で告げた。
「機会は何度も与えられるものではない。」
「……はい、殿下。」
深く一礼した爵位持ちに向けられたフィリナの視線には、冷たい汗が滲んでいた。
「も、もし見つけるのに時間がかかったとしても、公爵家に悪い噂が入らないようにお話しておきます。」
「ほう?」
「彼女が無断で出奔したということにしておけば、疑いの矛先がこちらに向けられることは防げるでしょう。」
責任を逃れつつ、あくまでベアティ側へ非難が向くよう策略を巡らせるフィリナの姿に、冷たさを感じた。
リテルは微笑みながら答えた。
「わかりました。必要であれば王室修正区の使用許可を出しますよ。」
・
・
・
カタカタカタカタ、ヒヒーン!
「北部!北部アスラン!アスランの領地に行く馬車は早く出発するぞ!」
走り出したベアイティは、小さなリスのような身のこなしで、王国の構造区を移動する駅馬車に身を潜めた。
「ふう。」
人混みを避けてようやく馬車の屋根の上に登ると、風景が目に飛び込んできた。
市場の中心にある広場。さまざまな職人が集まる通り。
少し離れたところには貴族の邸宅が点在している。
ここからそう遠くない場所には、緑の地平線に佇む邸宅があった。
ベアイティが過去十数年を過ごした場所だ。
彼女が幼い頃から育った場所が見えた。
「……首が、とても痛い。」
一度死を迎えた場所。
遠ざかっていく青い地平線を見ながら、彼女は思考に沈んだ。
「そこから抜け出せば、それだけで幸せになれると思っていたのに。」
ほぼ一生を閉じ込められていた息苦しい場所から脱出することだけを願っていた。
たとえ一度は死んだとしても、今願っていた脱出に成功したのだから喜ぶべきなのに、どうしてか胸の内が空虚だった。
「どうしてなんだろう?」
先ほど力任せに握り締めた拳の肌が傷ついていることに気づいた。
嘆息。
無意識に萎れていたリスの尾が再び力強くなった。
カタカタカタカタ。
その間も、動き続ける馬車。
馬車は城門を通り抜け、ついに首都を離れた。
遠ざかっていく。
これまでの時間を過ごした場所。
「友達」と思っていた人がいた場所。
「さようなら。」
誰に向けてか分からない挨拶を心の中で呟きながら、彼女の目から少し涙が溢れた。
馬車の屋根に、小さなリスの姿が徐々に遠ざかる点のように映っていった。
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