こんにちは、ピッコです。
「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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177話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- ケイシー侯爵家⑤
「奥様、お客様が湖畔へ行きたがっていらっしゃいます。」
自室で手紙を書いていたジェネビーブのもとに、侍女が近づいて声をかけた。
「湖畔に行かれるのですか?」
ジェネビーブの視線が窓辺に向かった。
この邸宅のベランダは、湖を囲む崖の上に設けられており、湖の景色が一望できた。
「散歩をするには少し陽射しが強いでしょうね。」
これまでにも湖畔へ何度か足を運んだことはあったが、それはいつも早朝や午後の少し遅い時間帯だった。
散歩にはその時間が最適だと思っていたからだ。
ジェネビーブの心配に侍女は慎重に答えた。
「そうおっしゃっていましたが、大丈夫だと仰せでしたので。」
「なら、必要なものは何でも持ってきてちょうだい。」
「既に暑いと申し上げましたが、それでも行かれるとのことで…夫人は何事も実際に経験してみないと気が済まないご性分のようですね。」
ジェネビーブは微笑みながら再びペンを手に取った。
前回話をした時、少し感じ取った。
結婚するつもりがない娘を支援する母親なんて、彼女には考えも及ばないことだ。
ジェネビーブも若い頃は、結婚せずに両親と一生一緒に暮らしたいと思ったことがあった。
もちろん、そんな考えを両親が許すはずがないとわかっていたので、口に出すことはなかったが。
女性は結婚するべきだ。
そして子どもを産むべきだ。
結婚しない女性には頼れる家族も、支えとなる夫もいないため、苦労することになるとジェネビーブは幼い頃から聞かされてきた。
もちろん今では、それが絶対というわけではないと知っている。
父親から多額の遺産を受け継ぎ、自由に旅行をしながら暮らす女性の話も耳にしたし、苦労をかけていた夫が亡くなり、ようやく自由になった夫人の話も聞いたことがある。
女性が結婚しないと悲惨な目に遭うという話は、時には事実でないこともあるとジェネビーブは年を重ねるにつれ理解するようになり、娘の独身を支持するミルドレッドの立場にも少しは共感するようになった。
しかし、それは最悪の状況の場合だけだ。
たとえば夫がギャンブルに溺れたり、妻に暴力を振るったり、無能であったりする場合。
そのような状況では、ジェネビーブもむしろ一人で暮らしたほうがいいと認めざるを得なかった。
「ダグラスとは関係のない話ね。」
そうつぶやきながら、彼女は夫への手紙の下書きを書き留めた。
ダグラスは誠実で責任感があり、リリーに対して好感を持っている。
彼が彼女の息子だからというだけでなく、こんなに素晴らしい男性が他にいるだろうかと思うほどの人物だ。
彼は容姿も良く、家柄も申し分なく、婚約者を守る心遣いもある。
ギャンブルや飲酒が過度にひどかったわけではないことを知り、ジェネビーブは少し安堵した。
どんな女性でも彼が求婚すれば、喜びで我を忘れ、控えめな態度を取るだろうと彼女は考えた。
ジェネビーブはダグラス宛ての手紙を書きながら、小さく笑みを浮かべた。
息子がいるということは素晴らしいことだ。
たとえダグラスがそこまで優秀でなかったとしても、息子の存在だけでジェネビーブの心は支えられていただろう。
そして、そんなダグラスと結婚するリリーもまた運が良いと考えた。
「まあ、待っていなさい。散歩から戻ってくる頃にはきっと暑くなっているだろうから。」
ダグラス宛ての手紙を書いていたジェネビーブは、ふと考えを巡らせた。
昼間の太陽の下で散歩した後、帰宅すると暑くなるので、部屋の冷房をもう少し強くしておくべきだと考えた。
ケイシー侯爵の郊外の別荘には、いくつかの部屋に冷房設備が設置されており、それがジェネビーブの安心感につながっていた。
彼女が夏になると別荘に滞在する理由については、きっとバンス家の人々には考えもつかないことだろうとジェネビーブは思いながら、微笑みを浮かべた。
別荘に冷房を取り付けるというのは、なんとも大きな出費だ。
だが、ある意味ではこれがケイシー家の富を示す良い機会でもある。
バンス夫人やリリーも、ケイシー家がどれだけ裕福かを実感すれば、心境が変わるかもしれない。
ジェネビーブはそんなふうに考えながら、立ち上がって窓の外に目を向けた。
そのとき、外から微かな笑い声とともに水の音が聞こえてきた。
「リリー!」
ジェネビーブの視線は窓の外に向けられた。
白く輝く噴水のそばで、四人の女性たちが水を跳ね上げながら楽しそうに遊んでいるのが目に入った。
「まあ。」
それはバンス家の人々だった。
リリーが水を跳ね上げるのに驚いたアイリスが水の外に出たが、すぐに悲鳴を上げながらまた池に戻る様子が見えた。
ジェネビーブはバンスの娘たちが楽しそうに水遊びをしているのを見守った。
彼女自身は十歳以降、水遊びをしたことがなかった。
かつて、ダグラスが幼い頃、ケイシー侯爵と一緒にあの池で水遊びをしに行ったことがあるが、服を脱いで池の中に入ったのはダグラスとケイシー侯爵だけだった。
バンス家の令嬢たちは外で水遊びをするには少し年齢が高いように見えたが、ジェネビーブの目にはそれでも楽しそうに映った。
最近では海で泳ぐことも珍しくないらしいが、ここはただの池だ。
しかし、彼女はすぐに子どもたちの間で水遊びに加わっているミルドレッドを見つけ、口をぽかんと開けた。
「なんてことでしょう。」
大きな子どもを持つ夫人のような女性が子どものようにスカートをたくし上げて水遊びをしている。
ジェネビーブは、その女性が自分が見たのが本当にミルドレッドなのかどうか確信が持てず、目を閉じて再び開いた。
「お母さん!こっちですよ!」
それは間違いなくミルドレッドだった。
アシュリーが岩の上に登りながらお母さんを呼んでいる様子が見えた。
ジェネビーブはミルドレッドの振る舞いに恥ずかしさを感じ、慎みがないと言いたい気持ちを抑え、一瞬迷った。
しかし、彼女は最終的にミルドレッドを羨ましく思った。
彼女自身も時々、娘がいればこんなことをしてみたいと思うことがあったからだ。
ミルドレッドとその娘たちは、ジェネビーブが考え理想としていた、良い母娘の関係に見えた。
「あまりに親密だからかな?」
心を整理したジェネビーブは、再び自分の席に戻った。
ミルドレッドは、娘が結婚する考えがないならそれでもいいと言って笑みを浮かべた。
彼女は娘たちと親しい関係を築き、遠くへ嫁がせたくない気持ちを抱えていたのだろう。
しかし、長女であるアイリスは王妃候補の試験中だった。
王妃になることはもちろん第一の名誉であり、長女を送り出すだけでもケイシー侯爵夫人になることは、それに劣らないほど名誉なことだった。
ケイシー侯爵家は国が建国されたときから存在する名門であり、その由緒と裕福さは王家に匹敵する。
王妃になることも素晴らしいが、侯爵夫人としての地位も決して軽んじるべきではない。
ジェネビーブは深い溜息をつきながら、心の中で安堵の息を漏らした。
正直なところ、ケイシー侯爵夫人の水準であれば、どんな名家の子息でも良いので娘を送り出せるなら、それで喜ぶべきだと感じていた。
リリーは見た目が特に美しいわけでもなく、一目惚れされるような資産家でもなかった。
彼女の父親が生きていたなら、話はまた違っていただろうが…。
残されたのは、亡くなった父親が男爵であったことと、叔父が伯爵であることだけだ。
さらに性格についても高貴とは言えないという噂がある。
ジェネビーブの頭の中には、彼女の音楽会で起こった事件が思い浮かんだ。
本当にあの時は驚きで、一週間もの間、席から立ち上がれないほどだった。
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