こんにちは、ピッコです。
「悪党たちに育てられてます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

9話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 新しい家族
「おいで、こちらへ。」
食事を終えた彼は、私を抱きかかえて馬車に乗り込んだ。
ここに来て初めて見るような立派な馬車だった。
ふかふかのソファの上に私を座らせたエルノー・エタムは、その隣に腰掛けた。
私は彼をちらりと見た。
見れば見るほど、彼の姿はまるで天使のようで完璧だ。
その目は、いつも光るように輝いていて、私をじっと見つめていた。
(本当に演技の神様みたい……。)
もし現代なら、主演男優賞を総なめにしていたに違いない。
「うちの坊やは頭は良さそうだけど、欲がないのが心配なんだよね。」
彼は足を組みながらそう言った。
「え……?」
「おもちゃは好きかい?」
「おもちゃ?」
私は考える間もなく首を振った。
エルノー・エタムは少し驚いたような表情を浮かべた。
「おもちゃが嫌いだとは思わなかったよ。」
「おもちゃで遊んだことがほとんどないから、大丈夫です。」
私は疑いを抱いた子どもがするように小さく頷きながら答えた。
『こういうのって大人びていると見られるものよね。』
そして、おもちゃが欲しいと思わないのも事実だった。
私の年齢もそれなりだが、本当に私はおもちゃを持って遊んだことがない。
正直、知っている味や見慣れたものが安心だが、未知の味やものに対する恐怖を感じたことはない。
ただし、未知の味の食べ物を前にして、気持ちが乗らなくても「死んでも食べなければならない」とは考えたことがない。
おもちゃも同じだ。
楽しみ方を知らなければ、欲しいとは思わないものだ。
さらに言えば、おもちゃは贅沢品の一つ。
貴族だけが持てるほど高価というわけではないが、親がいない子どもや自分に関心を持ってくれる大人がいなければ、わざわざ気にかけてくれるものではない。
この世界での私は、シニアたちの手の中で育ち、生まれてからずっとおもちゃを手にするどころか、指先だけでそっと眺めるだけだったのだ。
エルノー・エタムは何を考えているのか分からない表情で、無言のまま私を見つめてから手を振った。
次の瞬間、馬車が方向を変える。
それほど時間も経たないうちに、馬車が止まった。
気がつくと、私は口が開いてしまうほど大きな玩具店の前に立っていた。
「お父さん……?」
「私の娘が玩具の一つも持たずに遊べないなんて、いけないだろう。好きなものを選びなさい。」
「それは別に……。」
「それとも、この店を買い取って君にあげるのも良さそうだ。」
彼が手をポケットから取り出して何かしようとする瞬間、私は驚いて反射的に彼のズボンのポケットを掴んだ。
ぽすん。
急いで掴みすぎたせいで顔が彼の脚にぶつかった。
足元に鼻を押しつけるような格好になり、私は困惑しながら笑みを浮かべ、口を開いた。
「お父さん、やめて、私はこれでいい。」
私は慌てて気持ちを切り替えた。
『だから玩具店なんていらない!経営する力もないのに!』
思いを込めてじっと見上げてみると、エルノー・エタムの目元がかすかに笑みを浮かべた。
彼はいつもの落ち着いた様子でゆっくりと顎をしゃくった。
『おもちゃといっても、子供が持つものなんだけど……。』
おもちゃにこだわることが大変だと思いながら、ため息をつきつつ広い店内をゆっくりと見回した。
「わあ……。」
だが、並んでいる商品はただの子供のおもちゃではなかった。
おもちゃは自ら動いていた。ある木製の小さな彫刻は、歩き回ることさえしていた。
中には魔法使いが封じ込められているスノードームもあった。
魔法使いのフィギュアが杖を振ると、何もなかったスノードームの中に白い雪が舞い落ちた。
ゴーレムを操作するフィギュアのようなものもあり、宣伝文句には「素材が実際のゴーレムの一部」と書かれていた。
『やっぱりファンタジーの世界……、おもちゃのスケールが違うな。』
時間を忘れてあれこれ眺めていると、最後には一角に並べられた人形コーナーで足が止まった。
さまざまな人形が並ぶ中で、黒銀の虎の姿をしたものが目に留まった。
真っ白な足裏を持つその虎の人形は、上品に整った白い衣装をまとっており、何だかエルノー・エタムにそっくりだった。
「この虎が好きです。」
私はしばらく悩んだ末に黒い虎の人形を抱き上げて、彼に差し出す。
「他には?」
エルノー・エタムが妙な表情で尋ねた。
「……他ですか?」
私はもう一度人形を軽く持ち上げながら言った。
「それ一つだけ?もっと選んでもいいよ。一つだけだとすぐ飽きちゃうんじゃない?」
私は首を横に振る。
他にも確かに気になるものはあるが、「これが欲しい」と聞かれて、ピンと来るものはなかった。
人形は以前から一つくらい欲しいと思っていて、私はこれがぴったりだと思った。
「虎が…お父さん、お願い!この虎が好き!」
ぱっと、娘バカを演じる父親が喜びそうな言葉を放ちながら明るく笑った彼は、しばらく黙って私を見つめた後、人形を傾けた。
「……そうか?」
「はい。」
「それなら仕方ないな。私の娘が選んだものなら、その気持ちを無視するわけにはいかない。」
エルノー・エタムは少し調子の上がったトーンで微笑みながら軽く言い、私を抱き上げたまま会計カウンターへ向かった。
「いらっしゃいませ、お客様!お会計をお手伝いいたします!」
「あなたが店主か?」
「はい? あ、そうです。この虎の人形をお買い上げですか?」
「そうだ。それに、これと同じ人形はもう売らないでほしいんだが。」
彼は笑みを含んだ軽い声で「お願い」した。
店主は理由もわからず驚いて肩をすくめた後、しばらく躊躇しながらも彼の意向を受け入れた様子で頷き、頭を少し傾けた。
「はい? それは一体……この商品はちょうど新しく入荷した商品なので……。」
店主の言葉が終わる前に、エルノー・エタムは一目見ただけでも裕福そうに見える店主を静かに見つめていた。
エルノー・エタムが冷静に人形を軽く指差すと、躊躇していた店主がそっと現金を確認しながら口を開いた。
「すぐに展示から外します。」
彼はにっこりと笑った。
「いや、それは必要ない。」
彼が軽く手を振ると同時に、正確に虎の人形が置かれていた棚に炎が一閃した。
「私はあれが存在しているのが気に入らないんだ。」
「きゃあああ!」
「か、火事だ!」
人々が混乱して叫びながら避難しようとするその瞬間、ふっと火がろうそくの火が消えるように静かに消えた。
残ったのはすっかり燃え尽きた人形の残骸だけだった。それも、正確に虎の人形が置かれていた場所のみ。
彼は静かに足を運び、燃え尽きた残骸を一瞥し、私を片腕で抱き上げて店を後にした。
「これで俺に似た人形は、俺の娘だけが唯一所有するものになったな。」
彼は満足そうにそう言った。
ああ、本当にこの人は狂ってる……。
「ありがとう……、お父さん。」
私は、このサイコパスから無事に生き延びられるのだろうか……?
そしてその日の午後、私は1千万ロストに相当する口座を手に入れることができた。
うん、やっぱり人間はコツコツと生きなければならない。









