こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

81話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 妖精の羽根布⑤
翌日、国賓館 応接室。
フィローメルは、かつてウィリアムが訪ねてきた時のように、新たな客人に会っていた。
彼女が口を開いた。
「ということは、あなたが弁護士のホワイトさんですね?」
油っぽい髪をきちんと後ろに撫でつけた中年の男が答えた。
「は、はい。そうです。レディ・フィローメルにお目にかかれて光栄の極みでございます。」
少し卑屈にも見えるほどの丁寧な態度。
「ハウンズ商団の顧問弁護士であるホワイトさんが、一体どんなご用件で私を訪ねてこられたのでしょうか?」
内心の熱を隠しつつ、フィローメルは穏やかに尋ねた。
「もしかして、私が商団の崩壊に関与したことを知って、損害賠償でも請求しに来たのかしら……?」
【ハウンズ商団、朝に崩壊!商団主ウィリアム・ハウンズは夜盗の首領?】
今日の朝刊に大々的に掲載された記事のタイトル。
妖精の羽を使った千枚の品はほとんど妖精たちに引き取られたが、商団がこっそり他の場所に売ろうとして保管していた一部が拷問台に届けられていた。
その間取引していた詳細も発見されたという。さらに、ハウンズ商団は大小さまざまな違法行為を行っていたことも明らかになった。
脱税、横領、賄賂提供など。
もちろん、ウィリアムが帳簿を改ざんして、困難な商団の実情を隠していたことまでも明らかになっていた。
ハウンズ商団が崩壊するのは時間の問題。
そのような時期に、このホワイトという弁護士がフィローメルを訪ねてきたのだった。
ホワイトは手を擦りながら言った。
「失礼ながら、レディ・フィローメルに良いご提案を差し上げたくて参りました。」
「お話しください。」
「実はこれは、ウィリアム氏と私だけが知る秘密なのですが……」
弁護士の声が突然小さくなった。
「レディ・フィローメルにも、ハウンズの財産を受け取る権利があります。」
「……え?」
「私は商団の顧問弁護士ですが、ハウンズ家の私的な事案もあわせて処理してきました。」
「それで?」
「ウィリアム氏の父であり、レディ・フィローメルの大叔父にあたる先代商団主が亡くなる際、遺言を残されました。行方不明の娘、カトリーヌに財産の半分を残すと!」
「……私の母に戻ってきた遺産はないと聞いていますが。」
「それは仕方なかったんです。ウィリアム氏――いや、そのろくでなしが先代の遺言を隠し、財産をすべて自分のものにしたんです!」
「……ああ。」
ホワイトは日の光を避けるようにしながら、目を泳がせた。
「年寄りが死ぬ間際になって妄言を吐くようになったとか、口にするのも憚られるようなことを言ってたんです!」
「…………」
「あのひどい奴は、遺言書を預けた私を裏切り、遺言そのものがなかったことに仕立て上げました。そうなれば、当然すべての財産は唯一の遺族であるあの子に渡るわけです。」
「それで、ウィリアムに協力したということですか?」
彼はハンカチを取り出して涙を拭うふりをした。
「ひっ……そんなつもりじゃなかったんです……。当時、病気の母の薬代が必要で、つい……」
結局、詐欺行為に加担していたのに被害者ぶる態度だった。
お茶を一口すすると、フィローメルは淡々と尋ねた。
「隠されていた事実を知ったんですね。でも、なぜ私を訪ねてきたんですか?」
弁護士の目つきが変わった。ここからが本題のようだった。
「私はもう良心を無視できません!カトリーヌさんの行方は不明なので、レディが母の権利を引き継ぐことも可能です。」
彼は情熱的に話し続けた。
「私の手元にその遺言状はまだ残っています。これを訴訟の証拠として提出すれば、レディの立場を証明するにふさわしい武器となるでしょう。」
「何の見返りもなく、私を助けてくださると?」
「え? そ、その…私の労苦に対して感謝の意だけ示していただければ、それ以外は何も望みません……」
一言で言えば「遺言書が欲しければ金を払え」という意味だった。
フィローメルは薄く笑った。
『最近、私に変な要求してくるのが流行りなの?』
おそらくこの弁護士は、以前ウィリアムから金を受け取っていたのだろう。
払わなければ遺言書を世間に公開すると脅しながら。
ウィリアムが応じなかったので、今度は自分のところに来たというわけだ。
ホワイトはハンカチで自分の顔ににじむ汗を拭った。
「レディ、決断を急ぐべきです。このままでは、あのウィリアムの家族たちにすべての財産を奪われてしまいますよ。」
彼はおそらく、ウィリアムの家族とフィローメル側の両方に接触していたのだろう。
どちらがより多くの金を自分にくれるかを見極めながら。
商団が再建される見込みがないと見て、フィローメルに乗り換えたのだ。
ウィリアムの家族は間もなく一文無しになる予定だから。
「ホワイトさん、今からでもお金を一銭も受け取らずに“本物”の良心に従うつもりはないんですか?」
「そ、それはちょっと……私にも生活がありまして、はは……。レディ、そんな風には見えませんでしたが、思ったより度胸がありますね……。」
その時、後ろにいたジェレミアが尋ねた。
「どうするつもりだ? 今回も”お決まりの手続き”ってやつをやるのか?」
フィローメルは静かに目を伏せた。
「お決まりの……」
昨日のことが思い出された。
『中央治安隊に行って、賄賂まみれの調査官と押し問答をしたっけ。今回もお決まりの通りにするなら、また中央治安隊へ行って……』
自然とため息が漏れる。
「もう疲れました。あなたに任せます、ジェレミア。」
その言葉が終わるや否や、剣を手にしたジェレミアが、弁護士に一歩、二歩と近づいていった。
ホワイトは椅子の背もたれにびくっと貼り付いた。
「な、なぜそんなことを!もし私の体に何か危害を加えたら、あとで補償を……ぎゃっ!」
弁護士の叫び声が響き渡ったが、彼を助けに来る者はいなかった。
南宮の宮人たちは特別な事情がない限り、指定された時間以外にフィローメルを訪ねることはなかったためである。
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――同じ日の午後。
なぜか顔にあざをつけた弁護士ホワイトが市庁の前に現れた。
「私は今から十年前、金銭に目がくらみ、決して許されない過ちを犯しました……」
続く彼の良心告白は、なかなか衝撃的なものだった。
弁護士はその日すぐさま、世間を騒がせていたハウンズ商団に関する新たな話題を提供した。
さらに、カトリン・ハウンズを代表して、自分が直接奪われた彼女の財産を取り戻すために、法的な攻勢を仕掛けると宣言した。
もちろん無償で。
訴訟は始まってもいなかったが、敗北は目に見えていた。
ホワイトの依頼人は、実質的に皇室の妃であるレディ・フィローメル。
彼女に返還されるべき莫大な財産とは、前商団主の死の時点を基準にしたハウンズ家の財産であった。
当時より急激に減少したハウンズ家の財産状況を考慮すると、ウィリアムとその家族が持っていたものすべてを差し出しても足りないほどだった。
ハウンズ商団は今や、ほぼフィローメルの所有物となる。









