こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

44話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 姉の面影
その後、時はあっという間に流れていった。
シュペリオン公爵は、側近である家臣たちと元老たちに、レリアの存在を公表した。
心が不安定な妻のために連れてきた、エリザベスによく似た子供だ、と。
そして明言した。
病気に苦しむ公爵夫人のために、かつてエリザベスを接していたように、今後はレリアを同じように扱うように、と。
おかげでレリアは夢のような生活を送るようになった。
一番嬉しかったのは、もちろん食事だ。
神殿で過ごしていた頃よりもずっと美味しく、豊富な食事をいつでも食べることができた。
『まるで夢みたい……』
侍女たちは優しく、祖父母と過ごす時間は幸せだった。
特にレリアには新しい趣味ができた。
それは、母の絵を模写すること。
『本当に大人になったら、私と似たところなんてないわね。』
母は幼い頃はおてんばな少女だったが、大人になると上品で清らかな美人になったのだった。
『ペルセウス皇帝ならまったく気づかないだろうね。』
レリアは毎日一度、母の肖像画と鏡を見比べながら、自分との似ている点を研究する時間を持った。
そうして少しずつ、心の空白を埋めていった。
とはいえ、レリアがただ穏やかで幸せな日々を送っていたわけではなかった。
レリアに不快感を抱かせる存在があったのだ。
それは叔父であるカリウスと、叔母にあたるアティアスだった。
とりわけカリウスは、召使いや使用人たちから特別扱いを受けるレリアを見るたび、苛立ちを隠せなかった。
ひどい時には、レリアに嫌味を言ったりもした。
もちろん、公爵がいないところでだけ。
『……詐欺師め。』
レリアは自分を詐欺師呼ばわりするカリウスを見るたびに、顔がこわばった。
『あの年でなんであんなに執着するんだろう…。』
だがレリアは絶対に負けずに、毅然と対応した。
「私は詐欺なんて働いたことありません。」
「ふん。」
正直なところ、執着のレベルは別に害があるわけでもなかった。
強いて言えば少し鬱陶しい程度?
そしてアティアスは、レリアを見るたびに何も言わず、じっと観察するように見つめていたが…。
『なんであんなにじっと見てくるの…。』
その視線が少し気まずかった。
自分から話しかけないといけない気がして。
「えっと……」
「……!」
結局レリアが耐えきれず声をかけると、アティアスはまるで野良猫のように、何の返事もせずパッと逃げてしまった。
『私のこと、嫌いってわけじゃなさそうだけど……』
そんな日々が続くうちに、レリアも徐々に慣れてきた。
カリウスもアティアスも、無視すれば済むだけ。
レリアは毎日、祖母や祖父と一緒に過ごす時間を持つようになり、その過程で心の安定を得ていった。
祖母にとっても、それは認知症の進行を防ぐ助けとなった。
祖母とは一緒に遊び、祖父とは本を読んだ。
その時間はレリアにとって何よりも大切だった。
そして今この瞬間も、レリアにとって大事な時間のひとつだった。
それは「錬金復権」の材料を集め、集めたものを確認する時間だ。
ここに来てから数ヶ月、集められた材料はかなりのものになった。
材料を探すためには自ら動き回らなければならなかったが、幸いこの広大な砦には探していない場所がないほどだった。
砦の中で手に入る材料は、ほぼ全て集められたようだった。
その後は、祖父と一緒に領地内を探索するようになった。
『レシピがあまりにも多いから、賢者の石を作るための石を──それは夢にも見られないだろうな…。』
レリアはしょんぼりと肩を落とした。
それでも、材料は一度探しさえすればドラゴンたちが自動で集めてくれるシステムだったのは幸いだ。
『どうせ賢者の石を作るのが目的じゃないし、必要なアイテムだけ材料を集めればいいんだ。』
レリアは画面に表示された錬金道具をクリックして、お気に入り登録しておいたレシピの材料を眺めた。
『今すぐ一番必要なのは、祖母を治療する薬の材料だな…。』
【アルツハイマー治療薬】
- 必要な材料一覧
・アールム草 99個(36/99)
・記憶の欠片 10片(0/10)
・古びた繊維の切れ端(0/1)
・思い出の結晶(0/1)
・火花の灰 9999個(0/9999)
アールム草という材料は、城砦の庭園を歩き回って見つけた。
一定時間ごとにドラゴンが拾い集めてくるので、あとは待つだけ。
しかし残りの材料がどこにあるのかは、まったく見当がつかなかった。
美しい花と火の花を除いた他の材料は、文字の色が少し違っていた。
おそらく自動探索では見つけられない特別な材料だからだろう。
『領地の外に探しに行かなきゃいけないのかな?』
レリアは唇をかみながら考え込んだ。
『幸い、おばあさまの症状は少しずつ良くなってるけど…。』
レリアはおばあさまを思い浮かべて微笑んだ。
公爵夫人は意識がはっきりしないときには、レリアを「エリザベス」と呼び、意識があるときには「レリア」と呼んだ。
祖父がそう教えてくれたおかげで、意識があるときにはレリアは自分を孫娘だと認識していた。
祖母のことを思い浮かべると心が温かくなったが、レシピ画面を見るとため息が漏れた。
『考えれば考えるほど腹が立つ。』
最初に彼女が願ったのは、このゲームの世界に行くことではなく、別の世界に行くことだった。
つまり、ゲームを手に入れることが目的ではなかった。
もちろん、こうしてゲームがあって助かってはいる。
だが――新しいレシピが追加されることを願ったわけではなかった。
「前世でもこんなにイライラしたゲームはなかったのに……」
レリアは罪のない道具たちをいじりながら、そっとため息をついた。
『賢者の石を作れってことなの?』
いくらエンドコンテンツとはいえ、やりすぎじゃないか?
そのときだった。
レリアが心の中でつぶやいた言葉に応えるかのように、錬金道具が新しい吹き出しを表示した。
【ご主人様!レシピクリアに苦戦していらっしゃいますね!(◕ˇ౪ˇ◕✿)】
「…知ってるの?」
ときどきこんなことがあった。
心の中でぼそっとつぶやいただけなのに、まるで連動するかのように「錬金ツール」が吹き出しを出してくるときが。
この世界に来てからできた癖のようなものだった。
だからか、最近ではシステムウィンドウよりも先に錬金ツールの吹き出しが飛び出してくるのだった。
【それならクリスタルを使って素材を開放してみませんか?(ง •̀_•́)ง✧】
レリアは目を細めた。
もともとこのゲームはそういう仕様だった。
時間をかければ自然に素材を集めることができたが、あるいは現実通貨であるクリスタルを使って素材を開放するか、そのどちらかだった。
実際、一度開放してしまえば、あとはお金をかけるほど集めやすくなった。
しかし、課金してもどうにもならない特殊な素材も存在しており、それを手に入れるにはひたすら作業を繰り返すしかない。
住民たちの依頼を解決して『縁好感度』を上げて報酬として受け取るか、錬金復権街の売上ノルマを達成して受け取るか。
だが現在、住民たちの好感度や売上ノルマの達成は滞ったままだった。
『それにしても、この素材の入手方法も載ってないし。』
特別な素材をどうやって手に入れるべきなのか、レリアは考え込んだ。
『それもそうだけど……』
レリアはゲーム画面の中、ゴールドの表示を眺めた。
レリアが持っているクリスタルの数は、0個だった。
『クリスタルがないんだけど……』
クリスタルが0個なのは、前世で死ぬ直前に残っていたクリスタルをすべて使い切ってしまったからだ。
課金はあまりしない方だったが、まったくしなかったわけでもない。
前世でも手に入らなかった素材をクリスタルで開放することは、かなり多かった。
「……クリスタルをチャージする方法ってあるの?」
レリアのつぶやきに、錬金ツールがまるで待っていたかのように吹き出しを表示した。
【この世界の通貨でクリスタルをチャージできます!レシピの難易度によって必要なクリスタルが異なる場合があります!( •̀ㅂ•́)و✧】
「……今、私に課金を誘導してるのかな……?」
【◉⌓◉…】
「……」
息が詰まる……。
「でも、特別な素材は課金でも手に入らないんだよね。この素材の中で、課金で何とかなるものって……?」
【『炎の花の灰』は特別な素材ではなく、一般素材です。一般素材はクリスタルで開放できますよ!( •͈ᴗ•͈)σ━☆】
「うーん……」
悪くない方法だ。
しかもあの素材はなんと9999個も必要なのだ。
あんなに大量の素材を使うレシピは珍しかった。
ならば、早めに開放して自動で集められるようにした方がいい。
「じゃあ、お金を稼がないと……」
レリアはインベントリを開いてみた。
『これらを売ればお金になるかも。』
正直に言えば、錬金術が違法でなければ五つの帝国を支配できるほどの企業を設立できるくらいの資産だった。
『だからといって神殿を敵に回すわけにもいかないし。』
方法は一つだけだった。
『神殿にバレずに錬金薬を売って稼ぐこと。』
それは難しいことではなかった。
『おじいちゃんに頼めばいいんだ。』
シュペリオンほどの貴族家の家長なら、錬金薬を流通させる方法ぐらい、十分に思いつくはずだ。
『それに、神殿だってしょせん貴族には逆らえないんだから。』
最近おじいちゃんから聞いた話だった。
アスカード帝国のある貴族が、かつて錬金薬を売ったことで摘発されたことがあったが、結局、何の被害も受けなかったという。
その事件に関わった神官は、中央神殿から追放されたのだと言われた。
『お金をもらって事件を揉み消してあげたってことか。』
とにかく安全にお金を稼ぐ方法はあった。
ただ、そのためにはまずおじいさまの助けを借りなければならなかった。
それに、売れる物もたくさん用意しなければならなかった。
前世で集めた材料はかなり多かったが、それでも不足しているものがあった。
……その前に。
『……インベントリを拡張しないと。』
レリアは眉間にしわを寄せた。
インベントリはほぼ満杯の状態で、新しい材料を集めるたびに整理しなければならない状況だった。
前世では最大まで拡張していたが、今は追加拡張が必要だった。
【インベントリを拡張しますか?( • ▽ • )φ】
『クリスタルがない。』
【クリスタルをチャージしますか?( •́ ‿ •̀ )ง】
「…………」
まずはインベントリを十数個分拡張して、火花の材料を開放するためには500クリスタルが必要だった。
レリアはクリスタルのチャージ画面を押してみた。
画面にはきらめくイラストのクリスタルが表示された。
<100クリスタル=10万シリング>
「シリング」はこの世界の通貨単位で、1シリングが1円と同じ価値だった。
つまり、すぐに50万シリング。
前世の通貨基準で、すなわち約50万円ほど必要だということだった。
「…なんでこんなに高いの?」
【ʘ‿ʘ…】
「………」
レリアはとりあえず手元にある材料で作ってあった体力回復薬を20個ほど取り出した。
『1個2万5千シリングで売ろう。』
それから、ハナたちとピクニックに行ったときに使ったバスケットを探してきて、その中に入れた。
『まずはこれから売ろう。城内の人たちに売らなきゃ。』
そして、もし足りなければ――
『仕方ない。お小遣いをもらわなきゃ。』
祖父ならお小遣いをたっぷりくれるかもしれない。
レリアはそう考えてバスケットを抱え、重たそうに部屋を出た。









