こんにちは、ピッコです。
「邪魔者に転生してしまいました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

42話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 曖昧な駆け引き④
翌日、私は迷うことなく治癒のためにジョシュアを訪ねた。
「ふうっ――!」
私の意志に従って、ジョシュアの胸の中にある橙黄色の気運を火花のように突き刺すと、治癒の光が静かに満ちていった。
そして光が完全に消えた頃、私たち二人は冷や汗を流してへとへとになっていた。
「ふぅ…… 終わった?」
「うん。大丈夫、ジョシュア?」
「うん!もう昼寝もちゃんとできるよ!」
疲れた顔にもかかわらず、ジョシュアは明るく笑った。
彼の言葉通り、治癒行為を終えた後には、あまり時間が経たないうちにぐっすり眠っていたジョシュアが、目覚めている時間がだいぶ長くなった。
体力もかなり増えたようだ。
『病の程度も最初に比べたら、かなり良くなった。』
私はジョシュアの胸に広がるオレンジ色の炎を見つめた。
初めて見たときは心臓の損傷だと断定してもおかしくないくらい、胸全体に広がっていたオレンジ色の気運が、今は明らかに減っている。
正直、ジョシュアの病は遺伝性の難治性疾患なので、完治を保証できなかった。
でもこのまま快方に向かえば、エドウィンのように豆粒くらいの範囲で抑え込んだ状態で生きていく日が来るはずだ。
『ジョシュアを救える。』
よい予感と共に、力強い希望が湧いてきた。
「日に日に心臓の鼓動が強くなってるね。」
ちょうど診察を終えたゴードン医師が満足そうな顔で言った。
「残りの薬もきちんと飲んでくださいね、坊ちゃん。」
「うわっ!この薬、ほんとに苦いんだよ!いったいいつまで飲まなきゃならないの?」
ジョシュアは不満げに顔をしかめながらも、しっかりと薬を飲み干した。
少し前、ジョシュアの後援者である外国人テブロンの後継者が、その地域でしか採れない薬草をいくつか送ってくれた。
確かにその薬草で作られた薬を飲んでからというもの、ジョシュアの体力はぐっと良くなっていた。
もちろん、ジョシュアの健康がこれほど早く回復したのは、霊感の浄化の力も大きかった。
「全部おじいちゃんの薬のおかげだよ!」
「ご謙遜を、店主様。店主様の偉大なる力に比べれば、とても及ばないものです。」
「うっ!その口のうまさ……!」
私の称賛に、誇らしげな霊感がほんのり赤らめた顔で照れ笑いした。
私はその様子を見てくすっと笑い、こう言った。
「ん?店主?それ何?」
そのとき薬を飲み干したジョシュアが、侍従が口にそっと入れてくれた砂糖を転がしながら尋ねた。
「ふふん。もっと褒めてもいいのよ?」
「サ、サ、サ、サ、サ長〜!」
一斉に湧き上がる歓声に耐えかねた私は、目をそらしながら頭をかいた。
まさかここでそんな話が出てくるなんて、まったく予想外だった。
「その……別に大したことじゃ……」
「いえいえ、大したことですとも!」
「こんなに優秀な方が私たちと一緒に暮らしてるなんて……!」
「社長がいるから、うちの施設のレベルが上がったような気がする!」
「うわあ、ベルゼ社長お姉さん!万歳!」
何のことかよく分からないまま、ジョシュアが興奮して私の手のひらにハイタッチした。
「ちょっ、お願い、やめて……!」
私は恥ずかしさに耐えきれず、両手で赤くなった顔を隠した。
ゴードンがあんなに慌てていたのには理由があった。
昨晩、公爵邸に戻った彼は、ちょうどジョシュアの午後の治療を終えて出てきたゴードンと鉢合わせたのだ。
「ん?ご老人だ!」
興奮した私は、金貨の入った重そうな箱を運んでいた執事に声をかけた。
「執事!これ、ご老人のお部屋に運んでください!」
「えっ?それ何です?」
「うわっ、これってまさか……まさかまさか、老人の給与じゃないか!」
そのとき、気の利く管理人がすばやく箱のふたを開けて見せた。
箱の中にぎっしり詰まった金貨の山を見た古参の使用人は、当然ながら大いに動揺した。
「うわぁ!こ、これが報酬?本当に?この大量の金貨が全部……!」
「500ゴールドですよ!」
「な、なに?ご、ごひゃく……500ゴールドだって?!」
「はい!ベルチェのおじいさまやおばあさまを助けてくださった、いえ、ちがいます! チョスおじさんを助けてくださったんですから!」
「う、うぅ……」
「今後とも、よろしくお願いします!」
公爵邸に戻る頃には、皇太子が与えるという建物をもらうことで心が傾きつつあった。
そんな様子を見て、私はさっさと彼に賞金としてもらった500ゴールドを渡した。
それでも私の手元には952ゴールドが残ったし、彼の優れた能力のおかげで成果が出たのも事実だから。
『大きな会社を経営するには、ボーナス程度は惜しむものじゃない。』
これからも奴隷1号……いや、同業者としてよろしくって意味だった。だけど。
「ベルゼ社長様、万歳!万歳!万々歳!」
その瞬間からゴードンが私をずっと見つめ始めた。
ほんとに、恥ずかしいくらいにじっと。
『でも、公爵様がいくら年俸を多くくれても、5000万ウォンを一度に渡してくれるわけじゃないから、そりゃ嬉しいか……?』
資本主義にどっぷり浸かったゴードンの様子に、ついにこらえきれず笑い出しそうになったとき。
「……うらやましい。皇宮にも行ってみたい。」
ふと、寂しそうな執事の声が聞こえてきた。
視線を下ろすと、静かな表情でぬいぐるみをしっかり抱きしめたジョシュアが見えた。
「……ジョシュア、君、まだ皇宮に行ったことなかったっけ?」
「ううん。赤ちゃんのときに行ったらしいけど、元気なとき……でも、何も覚えてないの。」
病気になってからずっと家にこもっていたからだろう。
最近になってようやく私と一緒に外に出るようになったジョシュアは、ときどき寂しげな視線や落ち込んだ様子を見せることがあった。
ようやく明るさを取り戻したこの子を、私のせいでしょんぼりさせたくはなかった。
「宮殿なんて、ちっとも楽しくなかった!」
「また何かねだろうとしてるでしょ?」
私の言葉に、勘の鋭いジョシュアがむっとした表情を浮かべた。
私はすぐさま否定した。
「ちがうって、本当だよ!エドウィンに聞いてみて。変な子たちが、ずっと嫌味ばかり言ってきてさ……とにかく、もう行きたくないの!」
これは本当に事実だった。
私の真剣な態度が伝わったのか、ジョシュアはようやく黙ってスプーンを手にした。
「変な子たち?お姉ちゃんに何かしたの?」
「“偽物の聖女”って言われたの。それに“平民”だって。」
「ちっ、なんだよ。皇宮なんてたいしたことないのに!」
「でしょ?」
ジョシュアの機嫌が少しは直ったようで、私は苦笑いしながら言葉を続けた。
「早く出て、皇宮じゃなくて、代わりにメインストリートに遊びに行こう!」
「メインストリート?」
「うん!もうすぐあそこにうちの店がオープンするんだよ!」
「うわー!お姉ちゃん、本当に社長なの?」
「もちろん!だからそれまで、一生懸命治療を受けて、元気にならないとね。」
「やった!僕、完全に治って、今日から剣術修練に入るぞ!やっほー!」
ジョシュアは急にベッドから飛び起きて、布団を跳ね飛ばした。
『それはちょっと……』
私はやる気満々なその子をなだめて、毛布でぐるぐる巻きにしたあと、部屋の外に出た。
「行きましょう、お嬢様。」
それから執事に従ってすぐに公爵の執務室へと向かった。
昨日の夜遅くに戻ってきた公爵が、今朝会おうと呼んだからだ。
まもなく執務室の前に着いた。コンコン。
「公爵様、執事のアンダースです。お嬢様をお連れしました。」
「入れ。」
控えめな許可の声と共にドアが開いた。
すっかり慣れた執務室の中へ入った私は、丁寧に挨拶した。
「おはようございます、公爵様!良い朝ですね!」
「そうだな。君も、良い朝だということか。」
朝から仕事をしていたのか、机についていた公爵はすぐに立ち上がってこちらに来た。
「アンダース、彼女が食べられるクッキーと飲み物を持ってきてくれ。」
「かしこまりました。」
「そこに座りなさい。」
公爵の勧めで、私はソファに座った。
私の付き添いで上座に座った彼がすぐに席を立った。
「昨日は一緒にいられなくて本当にすまなかった、ベルゼ。これじゃあ、どこに行っても保護者だなんて言えないな。」
「いえ!大丈夫です、公爵様!代わりにエドウィンが迎えに来てくれたんですか?」
「忌まわしいマスが突然民家を襲ったという報告が上がってきて……」
彼はとても疲れた顔でため息をついた。
どうやらその件で遅くまで皇宮に残って会議をしていたらしい。
私はふとした騎士団の話に笑みを漏らした。
『アドルフ・ガラゴスもマスのせいで入宮が遅れたって言ってたよね?』
マスは女神ではなく、悪魔と悪霊を混ぜた異教徒たちが作り出した怪生命体だ。
ゲームで言うならモンスターのような存在。
数百年前に起きた聖戦でほとんどが滅んだが、しぶとく生き残った種族が数種類いる。
この日まで気がかりの種として残っていた。
「……エドウィンから聞いたが、受賞は無事に終わったそうだな。だが、賞金を全部ゴードンにあげたというのは本当か?」
「はい!給料です!」
「給料?」
「おじいさまがボランティアの日にたくさん助けてくださったので!えへへ。」
「まあ、そうか。苦労した年長者にはそれ相応の報いを与えねばな。よくやった。」
私の言葉を聞いた公爵は満足そうにうなずきながら、顎を軽くなでた。
彼は私がゴードンおじいさんを雇ったとは思っていないようだ。
私はわざわざその誤解を正さなかった。
「それで、メインストリートの建物の賃料はどうするつもりなんだ?」
「あ、それは!その……。」
「もちろん予算が足りないだろう。」
公爵の問いに、私は皇宮でのことを説明しようとした。
だが、公爵が一歩早く—
「そうだと思って事前に準備しておいた。」
「え?何を……」
「はい。」
彼が胸元から何かを取り出し、私の目の前に差し出した。
カリオスの印章が押された白い紙の束が、高級な金の糸で綴じられていた。
私はその正体がわからないそれを見つめて戸惑った。
「こ、これは何ですか?」
「推薦書だ。」
「す、推薦書……?」
「そうだ。」
公爵がいかにも誇らしげな表情で顎をくいっと上げた。
「保護者として、このくらいの投資は当然だろう?」
「……」
「当然さ。」
『と、当然……?』
公爵の言葉に私はぽかんと口を開けた。当然ながら本気だった。
『ケチってるわけじゃないのは分かってる。私を安心させようとして言ってくれてるんだろうけど、それにしてもこれはちょっと……。』
「まあ、それでも今後の予算を立てようとしていたところだった。」
揺れる視線で予算表を見つめていると、公爵が口を開いた。
「だから、遠慮せず必要なだけ使うといい。」
「でも私がお願いした投資金は500ゴールドだけなんですが……?」
「ふん、その金を鼻の穴にでも突っ込むつもりか。大きなことを成し遂げるには、まず資金が一番大事だ。」
公爵は鼻で笑いながら肩をすくめた。
「それに私は、お金も実力もある保護者だ。他の誰かが500ゴールドもらうのとは、訳が違うんだよ。」
そう言って、得意げに顎を上げて笑う。
だがその堂々とした表情とは裏腹に、頬はほんのり赤らんでいた。
「……たはっ、あの、私、あの子の保護者はしません〜!」
同時にどこからかゴードン侯爵のすすり泣くような歓声が聞こえてきた。
『ごめんなさい、おじい様。茶馬の繰り返しには応じられません……』
心の中で侯爵に謝罪の言葉をかけながらも、推薦書を素直に受け取らない私に対し、公爵は気を悪くしたのか笑みを消して問いかけた。
「もしかして……建物を差し出さなかったのが不満だったのか?」
「え?あ、いえ!」
「まさか公爵家所有のメインストリートの建物に関心がないなんてこと、あり得ないだろう、ベルチェ。」
私は慌てて否定したが、公爵はすでにそう勘違いしている様子だった。
そして再び私の前に推薦書をそっと押しやってきた。
「それなら、このお金で適当な建物を買い取るのはどうだ?」
「か、買い取りですって?!」
スケールの大きさに、私は新たな秘密を飲み込むように胸の内にしまった。
「そう。ああ、買い取りとは購入するって意味だよ。」
私が「買い取り」という言葉を知らないと思ったのか、親切に説明まで添えてくれた。
『ダメだ。このままだとまたカリオスを食い物にしてるって言われそう!』
混乱する気持ちを抑えて、私は急いで公爵に話しかけた。
「そ、それがですね、公爵様!」
「うん?」
「皇太子様が私に建物を一つ、無償で貸してくださったんです!」
「……なんだって?」
私の言葉に、公爵は目を細めた。
「皇太子が……お前に建物を無償で貸しただと?」
「ええ。でも何か……入学金?お金を貸してほしいって言われて。けど、何のことかよくわからなくて……」
私は少し笑いながらも、どこか困惑した表情を浮かべていた。
現実的に、5歳児には理解が難しい話だったからだ。
最初から公爵に皇太子とのやり取りを隠すつもりはなかった。
おそらく皇太子もそのことをすでに公爵に伝えていただろう。
「ふむ。なかなか賢いやつだな。」
少し考え込んでいた公爵は、私の頭を軽く撫でた。
「君と関わるなら、当然カリオスに援助を求めると踏んだようだな。」
やはり、公爵はすぐに皇太子の意図を見抜いたようだ。
セジャールは実際には私ではなく公爵に援助を求めたのだ。
私に助けを求めるふりをして、入学金の調達に協力させたが、それはあくまで公爵に頼んだことにしておきたかったという意味だ。
政治に関わることなので、詳しい事情を知られたくなかったのだろう。
理由はわからないが、とにかく公爵に直接助けを求められない事情があるようだった。
『支援するって、必ずしも同じ側につくって意味じゃないからね。』
なぜか、親戚同士でも角突き合わせてきっちりと関係を清算する話はよくある。
ましてや公爵と皇太子は血縁ではない赤の他人だ。
支援すると言って、あまりにも信頼しすぎると、かえって立場関係が逆転することもありうる。
そんな意味で、昨日見た皇太子は公爵をうまく対処していたようだった。
「……断った方がいいですか?」
私は唇を噛みながら悩んでいる公爵に、慎重に尋ねた。
「いや。」
彼は首を振った。
「くれるって言ってるのに、わざわざ断る必要はない。素直に受け取れ。」
「はい!分かりました!」
「本格的に店舗を開くなら、経営だけでも大変だろうから、信頼できる資産管理士を一人紹介してあげなさい。」
「資産管理士……?」
「そうだ。お金に関しては専門家を雇った方がいい。ゴードンはそういうのはまったく使えないからな。」
公爵はいたずらっぽい微笑みとともに、助けてあげるという言葉をいかにも愉快そうに口にした。
年齢的にも普通ならそんなことを言えるわけがないのに……私の事業計画を認めてくれているようで、なんだかうれしかった。
「ありがとうございます!えへへ、公爵さま最高!」
こうしてアドルフ・ガラコスが皇太子の腹心になるのを阻止することができた。
なんとなくそうなりそうな予感はしていたが、内心とても不安だった。
「完全なろくでなしだと思っていたけど、意外とまともなんだな。」
公爵がひとりごとのようにぽつりとつぶやいた。
「どこへ行くんですか?」
「ボランティア活動の日、あの短い隙を使って、我が家の権力構造をすべて把握したんじゃないか。ふっ。」
彼が短くため息をついた。
私は口元を引き締めた。
権力構造って……はっきりとはわからないけど、どうやら皇太子が公爵家での私の立場を大体把握していたという意味らしい。
『把握してなかったら、そのほうが不思議でしょう、公爵様……』
私は口元にあどけない微笑みを浮かべながら思った。
拳一つでテーブルを割り、私を睨んでいた公爵様とエドウィンを振り返ってみると……あの時は状況がわからず戸惑っていたけど、今になって思えば、あの二人には本当に感謝しかない出来事だ。
日の光が白く降り注ぐ中、壁際にいたバレルテの従者が思い出されて、少しだけ胸が詰まった。
くすくすと微笑んだ私は、しおらしく公爵に手元の手帳を返した。
「では建物の件も解決しましたし、これはありがたく頂きます!」
今までたくさんの助けをもらっておいて、お金まで受け取って使いたくはなかった。
むしろ、たくさん稼いで公爵家に持っていくのが私の夢だ!
「それでも受け取っておけ。」
しかし公爵はきっぱりと顎をしゃくり、また私の前に手形帳を押し戻した。
「今すぐに使うことがなくても、事業をしていれば予想外の大きな出費が必要になることがある。そんな時に惜しそうに声を出した瞬間、相手に足元を見られるのがオチだ。」
「はぁ……。」
「俺の目にはカリオスが弱音を吐く姿なんて見たくない。」
ここまで言われては、もう断ることもできなかった。
私は仕方なく手形帳を受け取り、そっと胸元に大事にしまった。
「では……大切に保管します。」
「遠慮せず、どんどん使っていいからね」
トントン。
ちょうどその時だった。
静かな執務室の中に、控えめなノックの音が響き渡った。
「公爵様、失礼いたします。ローガンです。」
「入ってこい。」
公爵が軽く答えた。
重要な話はひと通り終わっていたため、私も特に気にすることなく受け入れた。
すぐに扉が開き、公爵の補佐官が書類を持って入ってきた。
「おはようございます、公爵様。良い朝ですね。ああ、お話中でしたか。」
彼はソファに座っている私を見て、一瞬驚いたように立ち止まり、ぎこちなく笑った。
「お邪魔じゃありませんでしたか?」
「気にするな。何の用だ?」
「はい。大したことではなく、昨日お預けになった決算報告の件で……」
公爵に手渡そうとした書類を見ながら、ローガンはふと、言葉を止めた。
「な、な、なんでそれが……!」
彼の視線は私の手にある手形帳に注がれていた。
「そ、それって手形帳じゃないですか?!」
驚いた目で私を見つめていた彼は、すぐに公爵に視線を向けた。
「公爵様!昨日手形帳を用意してくれと頼みましたよね、それをあの子に渡すなんて……!」
「うむ。」
公爵は何が問題なのかという顔であっさりと顎をしゃくった。
それを見たローガンの表情がみるみるうちにこわばっていった。
「い、いえ!第二公子様の治療費を名目にして、維持費も別に設定してくださいましたよね!前回もそれで使ったお金だけでも数千ゴールドですよ……!」










