こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

123話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- エピローグ
ルーン様が精霊界から再び戻ってきたという知らせをシジョンが伝えてくれた。
その話を聞いたとき、私はラキアスの遺体の前に座っていた。
他の人たちは遺体を応接室に移そうとしていたが、私は陽の光の下でラキアスを見つめ続けていた。
それでも皇帝として最後の礼儀を尽くして血を拭き取ったおかげか、血に濡れていた青い髪は元の色を取り戻し、傷も白い衣で覆われていたため、目立たなかった。
彼の顔は蒼白で、動きはなかった。
それ以外はまるで眠っているようにしか見えなかった。
私もなぜ彼を見つめていたのかわからない。ただそうしたかっただけだった。
どれほど彼を見つめていたのだろう。
背後で扉が開く音が聞こえた。
振り返らなくても誰なのかすぐに分かった。
あの足音はとても聞き慣れていたからだ。
私は彼の名をそっと呼んだ。
「……ルーン様。」
「アイシャ。」
私はまだ彼を召喚できるほどの魔力は備えていなかった。
逆召喚された場合、精霊士はもちろん、召喚されていた精霊も後遺症を負うのが普通だ。
それでも彼は、私を見たいという意思だけで無理に精霊界から降りてきたようだった。
彼の召喚者であるにもかかわらず、彼が私のことを気にかけてくれるのが申し訳なくて、ありがたかった。
私は祭壇を回ってルーン様を見つめた。
日差しにまばゆく輝く白金の髪、そして私を見つめる金色の瞳。
彼は心配のためか、わずかに眉間にしわを寄せていたが、その表情さえも私は嬉しかった。
そう、私は彼が嬉しかった。
心の奥の空虚さが大きく揺れ動くのを感じた。
そのときようやく私は、自分が彼の到着だけを待ち続けていたことに気づいた。
「ルーン様!」
私は大きな声で呼んだ。
彼はゆっくりと私の前にひざまずいて座り、私と視線を合わせた。
「待っていました。」
自分でも驚くほど、私ははっきりと話した。
「お体は大丈夫ですか?」
ルーン様は何も言わず、ただ火鉢の灰をいじっていた。
だが、何かがおかしかった。
彼もまた悲しげな表情を浮かべていたのだ。
いぶかしんでいると、彼が私の頬に手を添えた。
「……ルーン様?」
私は目をぐるりと動かした。
彼のこの行動の意味が分からなかった。
そのときだった。
「アイシャ。」
彼が私を呼んだ。
「はい、ルーン様。」
私はまるで素直な生徒のように静かに答えた。
部屋には陽の光が差し込んでいた。
私は金色に輝くルーン様の瞳がとても美しいと思った。
しばらく呆然としていた彼が口を開いた。
「……たとえどんな国でも、死んだ人を生き返らせることはできない。」
最初は、その言葉を理解することができなかった。
私は立ち止まり、思わず口にしてしまった。
「……死んだ人ですか?」
ルーン様は依然として悲しげな表情だった。
『どういうこと?』
私は何度もまばたきした。
そして少し時間が経ってから、やっと彼の言葉の意味がわかった。
この部屋にはラキアスがいた。
すでに死んでしまった、彼。
同時に、私は気づいた。
ルーン様を見てなぜあれほど嬉しかったのか。
ルーン様は、私が気づくことのなかった部分まで感知していたのだ。
「……あ。」
私は茫然とした声を漏らすしかなかった。
「すまなかった。」
ルーン様は短く謝罪した。
彼が謝るべきことではないのに。
私は祭壇にひざまずこうとした。
だが、それより先に、私の目はすでにラキアスをつついていた。
日差しの下で揺れる青い髪がまぶしくて目にしみた。
まるで眠っているかのように動かない彼の姿に、私はふと胸が痛んだ。
「……大丈夫です。」
私はぶつぶつとつぶやいた。
いくらルーン様でも、人を生き返らせることはできない。
それは当然のこの世界の理(ことわり)であり、法則だった。
『期待はしてなかった。』
ラキアスを見下ろしていたとき、ルーン様が私を呼んだ。
「アイシャ。」
「大丈夫です。」
私は自分が利己的だと思っていた。
気づかないうちにそんな考えを抱いていたなんて。
ラキアスが何か悪いことをしたわけではなかった。
たとえ操られていたとしても、私を処刑すべきだと主張していた、幼い頃の私やイシスお兄様を毒殺しようと陰謀を企てたり、無理な戦争を起こして人々を死なせたりもした。
最初の失策がマリアンヌによって誤って始まったとしても、彼は誰かにとっては死んで当然な存在だった。
「……アイシャ。」
彼に「大丈夫ですよ」と答えたかったが、それ以上言葉が出てこなかった。
何かが喉に詰まったかのように、言葉が喉元でせき止められたようだった。
『私は本当に大丈夫なんだろうか?』
ふと、そんな疑問がよぎった。ラキアスの顔は穏やかだった。
最後に見た時とは違って、15年も過ぎてしまった顔だったが、それでも昔の記憶を思い起こさせるには十分だった。
しかもマリアンヌと彼の一族が死んだあとは、私は昔の記憶をもっとはっきり思い出せるようになった。
ラキアスはごく幼い頃からずっと私と一緒だった。
ひとつの記憶がよみがえる。
幼い私は、ラキアスの授業が早く終わるよう祈りながら、彼が教授と一緒に勉強している部屋をこっそり覗き見ていた。
長く感じられた授業が終わると、ラキアスは私と一緒に皇宮の庭園に遊びに行ってくれた。
私の手を握った彼の手はとても暖かく、その日の空は驚くほど青くて美しかったことを思い出す。
彼は少しぶっきらぼうではあったけれど、それでも私は、彼が私をとても大切に思っていることがわかっていた。
そんなのは言葉にしなくても分かるものだ。
「……私は………」
私は何を期待していたのだろうか。
顔を歪めながら、そうつぶやいた。
心臓がガラスの破片に刺さったように、ひどく痛んだ。
アリサの最後の記憶の中で、彼は私の頬を叩き、私の死を望んでいた。
とても憎かった。
どうしてあんなふうに変わってしまえるのかと腹が立って責めたくなった。
あんなに憎かったのに、どうして涙が出るのだろう。
いつの間にか私の目からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
私は泣きながら言った。
「憎かったけど、それでも大切だったんです。」
もうラキアスには二度と会えないだろう。
彼がこの世のどこか、いや敵国イデンベレで生きていたとしても、あの時とは違う。
ルーン様は、死んだ人間は生き返らせることができないと言った。
私も、ラキアスを生き返らせて何かをしたいとは思わなかった。
でも……。
たった1分、1秒でもいい。
ラキアスは最後に私に「ごめん」と言った。
私も彼に伝えたい言葉があった。
むしろ彼が「ごめん」と言わなかったら、永遠に許せなかっただろう。
けれど、世の中の摂理はいつもそうだ。
死んだ人は生き返らない。
マリアンヌは広場の真ん中で人々に石を投げられ、火あぶりの刑に処されたという。
彼女の名前は醜悪な悪女として歴史に長く残るだろう。
イデンベレ帝国はもはや帝国の名を保つことができなかった。
戦争で敗れ、皇帝が死に、莫大な被害と賠償金、後処理まで残ったのだから当然の結果だ。
イデンベレは今やエルミールの属国となった。
セレナ神の神殿もまた同様だった。
マリアンヌの所業がすべて明るみに出ると、彼女の神殿を訪れる者はいなくなった。
神殿は破壊され、信者たちも皆散っていった。
皇族たちの処分についてはまだ検討中だと言われた。
もしかすると全員処刑されるかもしれないとも言った。
かつてのイデンベレの血統を残さないためにも、そうするべきだということだ。
その言葉には一理あると思った。
これらすべてを伝えてくれるイシス兄さんの言葉を、私はただ聞いているだけだった。
イシス兄さんはしばらくの間、私を見つめていた。
おそらくそのときの私の表情は無表情か、あるいは乾ききっていたに違いない。
彼は最後の言葉をようやく口にした。
ラキアス――彼の葬儀が執り行われるということだった。
「形式的なものにすぎないけど」と。
彼は付け加えた。
イシス兄さんは幼いころの毒殺事件のせいで、ラキアスをとても憎んでいた。
その上、ラキアスはこの戦争を引き起こした元凶なのだ。
そんな彼が、形式的とはいえ葬儀を行うとは彼が最後に私の代わりにマリアンヌの剣に身を投じたことは、彼を見送ったイシスお兄様にとって最初で最後の礼儀だったのではないか、と思った。
そして今日はまさに葬儀の日だった。
お兄様は「参列したいならいつでも来ていい」と言ったけれど、私はそんな気持ちにはなれなかった。
そこへ行けばラキアスの妻や息子はもちろん、イデンベレの皇族たちにまた会うことになる。
彼らに会うには私の心はあまりにも疲れ果てていた。
代わりに私は久しぶりに部屋を出て外出した。
向かったのは、かつて私が住んでいた四皇女の宮だった。
春が近づいた空は一面の青だった。
焦らずゆっくりと歩いて四皇女の宮に到着した私は、自分でも気づかぬうちに目に涙が浮かんでいるのを感じていた。
主人を失い、十数年の間すっかり荒れ果てたのだと思っていたが、思ったよりもよく整備されていたのだった。
『……あ。』
すべてがそのままだった。
ここには私のすべてがあった。「アリサ」だった頃の、私の幼い日のすべてが。
風が吹くと庭園の大きな木が枝の淡い緑の葉を揺らした。
その木は私が生まれたときに庭園に植えた木だという。
『切り倒されていなかったんだ。』
私は近づいてその木の幹に手をそっと添えた。
冬が終わってからあまり時間が経っていなかったので、枝先には若葉しかなかった。
でも私は知っていた。
夏になればこの木は大きな木陰を作って、子どもたちの遊び場になってくれることを。
私はぼんやりとその木を見つめていたが、ふと振り返った。
足音が聞こえたからだ。
その瞬間、私は驚いてしまった。
目の前に青い髪が見えた。
見慣れていて懐かしい青い瞳も見えた。
胸が詰まるような思いがこみ上げた。
あまりにも見慣れた光だった。
その後ろには彼に付き従う侍女が一人いた。
彼女と目が合うと、彼女は慌てて頭を下げた。
視線を下ろして、一人の子供を見た。
青い髪と青い瞳を持った子供だった。
私は腰をかがめて、その子に話しかけた。
「こんにちは?」
「こんにちは!」
その子は明るく笑った。
私のことを皇宮の客人やその類の人間だと思っているようだった。
最近は新しい人々が皇宮によく出入りしていたため、そう考えても無理はない。
私は微笑みながら、その子に尋ねた。
「名前は何ていうの?」
「私はルキアディンです。」
「
どうしてここにいるの?」
「みんなが深刻な雰囲気だったので……こっそり抜け出してきました。」
その子は唇をぎゅっと結びながら答えた。
「お母さんも泣いていたし……」
「そうだったのね。」
私はその子の正体を知ることができた。
ラキアスの息子、ルキアディン・デル・イデンベル。
彼についての話はすでに聞いて知っていた。
実際に会うのは初めてだったが。
子どもはすぐにまた笑顔を見せた。
「ここにはよく来るんですよ。来るたびに気分が良くなるんです!」
私は視線を上げて侍女を見た。
幼い侍女は怯えた表情をしていた。
「……どうしてこの宮殿を廃止しなかったの?」
侍女は私の様子を伺いながら、おずおずと答えた。
「……すべて廃止しようとしましたが、なぜかラキアス前皇帝陛下が止められたと聞きました……。」
私は柵を握りしめた。
ルキアディンが横で立っていた。
「お父様も時々ここに来られていました。」
子どもは何も知らずににこにこと笑っていた。
私はその子をじっと見つめた。
私の腰にも届かないほどの小さな子ども。
しばらく見つめてから、私はその子の頬に手を添えた。
「……目が、お父さんにとても似てるわね。」
「みんなそう言います。」
ラキアス特有の青い髪もそうだが、青い目は特に、彼とそっくりだった。
「……そう。そうだったんだ。」
私も思わず優しいまなざしで彼を見つめながら言った。
昔のことが思い出された。
まだ何の誤解もなく、近づく悲しい未来も知らなかった頃。
あのとき私たち兄妹はこの木の下で一緒に集まってティータイムを楽しんでいた。
ラキアスも、エルシスも、アドリンドも、ルルスも、みんな私に誕生日プレゼントに何が欲しいか聞いてきた。私はこう答えた。
「こうしてみんなと一緒にいられるだけで幸せ」と。
私は本当に、愛する家族と一緒にいられることだけで、世界のすべてを手に入れたような気持ちで幸せだった。
もしその幸せが続けられるなら、私は自分のすべてを差し出してでも守っていただろう。
ルキアディンがふと不思議そうに私を見つめていた。
…気づかないうちに、頬に涙が流れていた。
「……どうして泣いているの?」
私は口を開いたが、答えることはできなかった。
「……泣かないで。」
小さな子どもが私の顔を撫でた。
その手も本当に小さかった。
私が泣くのを見ていたからか、その子も泣きそうな顔をしていた。
私はついに堪えきれず、その子を抱きしめた。
「……私は。」
その子は私をトントンと叩きながら慰めてくれた。
「泣かないで……。」
その優しい声が胸に深く染み込んだ。
涙でにじんだ視界の向こうに庭園が見えた。
冬の終わりを迎えた庭園には、いつの間にか枝先に若葉と花のつぼみが芽吹いていた。
いつの間にか春が来て、私は15歳になった。
前世では14歳で死んだから、二度目の人生で初めて迎える年齢だった。
もう私は「アリサ」ではない。
初めて迎える15歳のように、私は過去とは違う人間になってしまった。
アイシャ・ド・エルミール。
エルミール帝国のただ一人の皇女。
私はアリサだった過去にけじめをつければ、すべてが終わると信じていた。
復讐して、皇族たちを殺せば、それで全てをさっぱり忘れられると。
すべてが過去の出来事になるだろうと。
だけど……。
私は胸の中に抱いた子どもに視線を合わせながら、問いかけた。
「……私を……」
その子は大きな瞳をぱちぱちと瞬いていた。
「……リスって呼んでくれる?」
もはや私の名前ではないと思っていたその名前。
私はアイシャなのだから。
前世の復讐を終えた今、忘れなければならない名前だと思っていた。
その考えは間違いだった。
過去のアリサも、今のアイシャも私だった。
子どもはまん丸な目をくりくり動かしながら、私に向かってぱっと笑った。
「リス!」
その笑顔はまるで澄みきった水のようだった。
すべてを取り戻すことはできなくても、それでも新たに芽生えるものがあった。
厳しい冬のあとに訪れる春のように、恐ろしい過去としてだけ存在していた記憶からも、新しい関係が生まれる可能性は確かにあるのだ。
「リスも私のことをアディンって呼んでいいよ。私のあだ名だから。」
子どもはそう続けた。
私は椅子の背もたれにもたれかかりながら、彼にこう言った。
「アディン、もしよければ一緒に来てくれない?」
アディンはしばらく悩んでいるようだった。
「うーん……本当は、初めて会った人と話すのも、一緒に行くのもダメって言われてたけど、リスはなぜか信じられるんです。」
アディンのはにかんだ言葉に、私は泣きそうになりながらも、思わず微笑んでしまった。
彼の父がかつて幼い私にしてくれたように、私はアディンの手を取って庭園をゆっくり歩いた。
皇宮の森に向かおう。遠くに人々が集まっているのが見えた。
皆、黒い服を着ていた。
アドリンヌの声が聞こえてきた。
「……でもどうして……」
彼女は泣いていた。
「……どうして私たちがあの子に許してほしいなんて言えるのかしら。私たちにはそんな権利、何もないはずです。」
私はその場に立って、彼らを見つめた。
私が連れてきた場所が葬儀場だと知ったルキアディンは、少し口をとがらせた。
嫌だと言って逃げた場所に再び連れて来られたのだから、無理もない。
そこにはイシスお兄様、アルセン、そしてルーン様までいた。
予想外にも皆、式に参列していたようだった。
彼らはすぐに私を見て驚いた。
特に驚いたのは、アドリヌ、ルルス、そしてエルシスだった。
「……あ。」
彼らは私をどう呼べばいいか分からず、戸惑っていた。
「私は……」
私は口を開いた。
唇の内側が乾いていたが、それでも言いたいことがあった。
「私は本当に、辛かったです。」
そう言うと、彼らの顔が揺れたのが見えた。
「とてもつらくて、死んでしまいたかった。」
イシスオ兄さんが私に近づこうとした。私はその言葉に続けた。
「……でも、今はわかります。」
空は果てしなく晴れていた。
今はアリサだった頃、私が処刑された時と似た季節だった。
その時も私は、今のように青々と茂る新緑に手を差し伸べていた。
もう二度と会えないと思っていたこの季節が、切なくて、まぶしくて、美しかった。
でも私はアイシャになって、何度も春を迎えることができた。
そして、まだ私にはいくつかの春が残っている。
吹き寄せる風を受けながら私は思った。
もしかすると、ラキアスが死ぬ姿を見たときから、私はすでに心を決めていたのかもしれない。
彼の犯した罪をすべて許すことはできない。
しかし、彼は私に「ごめん」と言った。
マリアンヌに操られて私を憎んでいたこと。
死に導こうとしたこと。
それだけでも、受け入れてもいいかもしれない。
私は昔の家族たちを見渡した。
彼らは皆、口を開いていた。
「……一生許さなくてもいい。」
エルシスは震えるように言った。
「ただ……せめて、罪を償わせてください。」
ルルスが言った。
アドリヌは口を開こうとして何度も唇を噛みしめた。
彼女の気持ちはすでに分かっていた。
過去の傷はあまりにも痛かった。
決して癒えることのないかのように、私の心の中に根を張っていた。
だから私は切実に復讐したかった。
同じ傷を与えて見せろ、と言いたかった。
それが私の権利だということはわかっている。
望むなら、彼らに死よりも辛い苦痛を与えることもできるということも、よくわかっている。
でも、それをわかっていても、私はあのとき、その一歩を踏み出すことができなかった。
かつての家族たちは、私の返事を待つかのように、切なげに私を見つめていた。
私は彼らに向かって、ゆっくりと頭を下げた。
彼らの目が大きく見開かれるのが見えた。
もし……ほんのわずかでも、生きながらにして再びこんなに悲しい出来事に直面したとしても。
絶望して倒れてしまったとしても。
怖いだろう。
とても辛いだろう。
でも大丈夫。
私はそれを乗り越えられるほど強くなったのだから。
もう一度、立ち上がることができるから。
『だから。』
私は明るく笑った。
私の目の前には、数え切れないほど大切な人たちが立っていた。
この春のように、新しい何かが始まるのだ。
アディンのように、新たな縁もきっとできるだろう。
それらを素直に受け入れることにした。
そして私は進んでいくつもりだ。
暗い過去の最後の一枚の絵の中から、もう一度、光の中へ。
<完結>








