メイドになったお姫様

メイドになったお姫様【111話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【メイドになったお姫様】まとめ こんにちは、ピッコです。 「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

111話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 尊いお言葉

皇太子ラシードに関して何かを探り出すのは、極めて難しいことだった。

ラシードはごく少数の側近しか傍に置かず、彼らは皆、固く口を閉ざしていたからだ。

ちょっとした賄賂や脅迫では通用しない。

しかし、皇后付き侍女イヴリンには、彼らの口を開かせる特別な手段があった。

彼女が仕える皇后イガは、ラシードの母であり、宮中で最も愛されている皇后だったのだ。

皇太子宮で働く侍女の何人かは、皇后に対してラシードに関する情報を伝えることに抵抗がなかった。

こうしてイブリンは、ラシードに関する話を持ち出した。

イブリンからの報告を聞いた皇后は目を伏せた。

「ラシードに新しい侍女がついたと?」

「はい。アリス王女様が東部へ行かれている間、彼女に仕えるよう命じられた侍女だそうです。王女様を敬って丁重に仕えるよう、ラシード殿下に直々に命じられたとか。」

「アリスを大切に思う気持ちが強ければ、そのようなことも言うかもしれないわね。」

「そうかもしれません。しかし、それだけではありません。その侍女は殿下のお茶の世話まで任されているのです……。」

この言葉に、皇后の繊細な眉がわずかに動いた。

なぜなら、ラシードは侍女や従者を身近に置くことをひどく嫌っていたからだ。

必要なことでなければ、大抵のことは自分一人で済ませるほど。

そんなラシードが、自分専属の茶侍女をつけるなど驚くべきことだった。

イヴリンが続けて言った。

「殿下のお茶の時間が、以前よりずっと長くなっているそうです。」

「……お茶を飲む間、侍女と一緒にいるというのか?」

「はい。」

「……」

皇后の顔が歪んだ。

実のところ、これは宮中では特に珍しい話ではなかった。

皇子たちの中には若く美しい侍女に惹かれることも多かったからだ。

皇子は気に入った侍女に近づき、さらに関係が深まれば、愛人のように親密な仲になることもあった。

そして最後には、侍女が十分な金を受け取って宮殿を去り、その関係は終わるのだった。

だが、ラシードは決してそういう類の人物ではなかった。

「人に無関心なラシードが、そこまで……?美しい侍女だなんて……。二人の間に深い関係があるのかもしれないわね。」

イブリンは皇后の言葉を否定しなかった。

その瞬間、皇后の顔色は険しくなった。

ラシードがアリス王女に優しくすること以上に、これは衝撃的な出来事だった。

皇后は低くつぶやいた。

「……その侍女に会ってみたい。」

 



 

ラシードが宮殿を離れ、しばしの穏やかな時を過ごしていたシアナのもとへ、一人の訪問者がやって来た。

その人物の正体を知ったシアナは、大きな衝撃を受けざるを得なかった。

「皇后陛下が、あなたに会いたいとおっしゃっています。」

そう告げたのは、皇后の側近である侍女イブリンだった。

思いがけない言葉に、シアナの心臓はドキリと跳ねた。

『まさか皇后陛下が、私と殿下との関係を知ってしまわれたのでは……?』

もちろん、ラシードとシアナの間に特別な関係など存在しなかった。

それでも少し調べれば、二人の間に微妙な気配が流れていることを感じ取るのは、難しいことではない。

皇后もそう思ったに違いない。

『それにしても……これはあまりにも早すぎる……。』

宮殿に戻ってきて間もないというのに、もう皇后が察してしまうとは予想外だった。

シアナのこわばった表情を見て、イヴリンが言った。

「皇后陛下がお待ちです。ついてきなさい。」

イヴリンの瞳は鋭く光っていた。

しかも彼女は侍女を二人連れてきていた。

シアナが拒んだり嫌がったとしても、無理やりにでも連れて行くつもりでいるのが明らかだ。

『それに、中級侍女が皇后陛下の命を拒むなんて、絶対にあり得ない。下手をすれば、宮廷を侮辱した罪で処刑されることだってある。』

だからシアナは、逃げ出したい気持ちを必死に抑え込み、イブリンの後について行った。

皇太子宮に匹敵するほど壮麗な皇后宮は、確かに美しかった。

宮殿の至る所に飾られた珍しい花々は甘い香りを放ち、金で作られた装飾品は一つひとつ繊細な細工が施されていた。

しかし、シアナはそれらに目を奪われるどころか、感嘆の念すら抱けなかった。

皇后に対する恐怖のせいだった。

『一介の侍女が何も知らずに皇太子に近づいたと咎められ、鞭打ちにでもされたらどうしよう。あるいは、茶に毒を盛ったと疑われて、ラシード様の傍から追放されるよう命じられるかもしれない。権力者の冷酷な母后たちは、きっとそうするだろう。』

そう考えながら謁見室に到着したシアナは、震える声を抑えきれなかった。

シアナは礼を取って挨拶した。

「尊き皇后陛下にご挨拶申し上げます。私は皇太子殿下にお仕えする侍女、シアナと申します。」

「顔を上げなさい。」

「……」

ゆっくりと顔を上げたシアナは、思わず息を呑んだ。

金色の髪と端正な顔立ちをした皇后が、やわらかな眼差しでシアナを見つめていたからだ。

少なくとも今の皇后は、シアナを叱りつけたり、茶を浴びせたりするような雰囲気ではなかった。

皇后は口を開いた。

「急に呼び出されて、ずいぶん驚いたようね。」

「いいえ。」

「ラシードが最近、お前を大事にしていると聞いたわ。どうやらお茶を淹れる姿を気に入り、味も素晴らしいとか。」

「もったいないお言葉に身が縮まる思いです。未熟な腕前ゆえ、過分なお褒めをいただくには値しません。」

「そなた、私にもお茶を一杯淹れてくれないか?ラシードが褒めたその味とやらを、私も確かめてみたい。」

「……。」

どうして断れるだろうか。安全策などない。

シアナは深く頭を垂れて承諾した。

やがて、テーブルの脇には茶器と茶杯が整えられた。

茶葉は淡い黄色を帯びたカモミールだった。

シアナは唾をひとつ飲み込み、茶器を手に取った。

『こんなにも緊張しながらお茶を淹れるのは久しぶり……。』

ラシードにお茶を淹れた最近の日々でさえ、これほどの重苦しい雰囲気や距離感はなかった。

ラシードは、シアナがお茶を注ぐ姿を見守りながら、ただ幸せそうに微笑んでいたから。

だからこそ今のシアナは、「上手に淹れなければ」という思いよりも、どうすればこの高鳴る鼓動を抑えて、相手に悟られずに済むのかを気にしていた。

『皇后陛下の御前だ。失敗せず、きちんとやらなければ。』

シアナは心の中で深呼吸をしてから、茶を注ぎ始めた。

幸いだったのは、皇后の視線がシアナが茶を注ぐたびにじっと手元を見張ろうとした新王妃とは違って、落ち着いて穏やかだったことだ。

やがて皇后の前に置かれた茶碗に、黄金色のお茶が満ちていった。

皇后は無言で茶碗を口元へと運んだ。

一幅の絵のように優雅な所作でお茶をひと口含んだ皇后は、唇の端を上げた。

「まことに見事な腕前だわ。ラシードが夢中になるのも無理はない。」

その惜しみない称賛に、シアナは息を呑んだ。

高鳴る鼓動を抑えつつ、深く礼をした。

「恐れ入ります。」

「……」

皇后はシアナをじっと見つめてから口を開いた。

「だが……ラシードが惹かれているのは、茶の味だけではないのだろう?」

「……!」

鋭く突きつけられた言葉に、シアナの目が大きく見開かれた。

皇后が「ラシードの感情を知っている」とはっきり示したのだから。

予想していた状況であったはずなのに、シアナは簡単に答えることができなかった。

『皇太子殿下は私に特別な感情など抱いておられません。』――それは事実ではなかった。

だからといって「私たちは何の関係もありません」と答えても、皇后は信じないだろう。

『殿下とは何の関わりもございません』――これは事実だったが、言葉にしても意味はない。

皇后が知りたいのは二人の関係の真相ではなく、自分の息子が心を寄せる「その侍女」という存在がどんな人物なのか――それこそが皇后の関心の的だった。

今さら跪いて「分を越えたことをして申し訳ありません」と許しを乞うたところで、事態が変わるとは思えなかった。

むしろ「私が殿下を誘惑しました」と認めるようなものだからだ。

「……」

何も言えず唇を噛みしめるシアナを見つめ、皇后は視線を和らげた。

「怖がる必要はない。おまえを責めるために呼んだわけではない。ラシードが特別に気にかけている娘がいると聞き、確かめたくて呼んだだけだ。」

「……」

「こうして見ると、聡明で柔順そうな子だな。」

それが本心かどうかは分からないが、言葉の上では褒め言葉だったので、シアナは引き締まった表情で深く礼をし、答えた。

「恐れ入ります。」

皇后はふっと笑った

「ラシードは皇太子なのだから、それだけ多くのものを背負うことになるだろう。そなたは誠心誠意、彼を支えてやりなさい。」

「……。」

柔らかな言葉、穏やかな声、慈愛に満ちた表情。

そのどれもが、権力を武器にした冷酷な母后のものではなかった。

シアナはようやく理解した。

人々がなぜ、この皇后をあれほどまでに尊敬しているのか。

「皇后陛下の尊いお言葉、肝に銘じて励ませていただきます。」

シアナは混乱を抱えながらも、深々と頭を下げた。

 



 

シアナが退出したあと、皇后はひとり静かに椅子に腰を下ろした。

その背後に控えていたイブリンが口を開いた。

「お茶をお淹れしましょうか?」

皇后は軽くうなずいた。

イヴリンが熱い湯を持ってきて、新しく茶を淹れた。

一口すすった皇后は、思わず笑みを浮かべた。

「同じ茶葉なのに、こんなにも味が違うのね。」

イヴリンは、先ほど王妃が飲んだシアナの茶と、自分が淹れた茶を比べているのだと気づき、恐る恐る尋ねた。

「どちらの味がより優れているのでしょうか?」

「……あの子の方だ。」

思いがけない返答に、イヴリンの瞳がかすかに大きく開かれた。

「さきほどその侍女を褒めておられたのは、本当だったのですね。」

「そうだ。聡明に見えるというのも事実だ。だが……」

皇后は視線を伏せた。

丸い顔に影が差したその横で、シアナは身をこわばらせていた。

彼女は一見、おっとりとして見えた。

手に持ったパンすら、誰かに奪われてしまいそうなほどに。

けれども第一印象とは裏腹に、シアナは一度たりとも隙を見せたことがなかった。

「ただの下級侍女にしては礼儀をきちんと守っている。緊張の色は隠せていないが、それでも私の視線から逃げなかったな。」

皇后はシアナを見つめた。

正確に言えば、彼女の鮮やかなエメラルド色の瞳を。

「結局のところ、誰かの言葉に簡単に従うほど従順には見えない。」

「……その“誰か”とは、皇后陛下のことを仰せですか?」

イブリンの問いに、皇后は目を細めて答えた。

「そうだ。だからこそ厄介なのだ。」

「……。」

「そんな娘を、ラシードのそばに置くわけにはいかない。」

皇后の顔には依然として慈愛が浮かんでいた。

だがその奥には、決して揺るがない断固たる意志が潜んでいた。

彼女の口から出た言葉は、ただの思いつきではなかった。

イヴリンがかすれた声で言った。

「私の手で処理いたしましょうか?」

皇后は首を振った。

「馬鹿なことは言わないで、イヴリン。あの子には何の罪もないわ。皇太子が気に入って追いかけ回しているのだから、受け入れるしかなかったのでしょう。」

黙って聞いていたイヴリンが口を開いた。

「マリア、あなたも昔はそうだったのでは?」

突然のイヴリンの無礼な言葉にも、皇后は少しも怒りを見せなかった。

ただ表情から威厳を消し、静かに言葉を続けただけだった。

「いずれにせよ、あの子に手を出すつもりはないわ。無理に排除しようとすれば、かえって逆効果になるでしょう。」

「では、どうなさいますか?」

皇后は目を伏せて言った。

「これまで先延ばしにしてきたことを実行するのよ。」

イヴリンはうなずき、皇后の背後に控えた。

イブリンがハスキーな声で皇后に囁いた。

「マリア、すべてはあなたの望むままに。」

その言葉に、皇后は微笑んだ。

しかしそれは、人々の前で見せていた柔らかな笑みとは違い、どこか歪んだ笑みだった。

 



 

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