もう泣いてもいいですか?

もう泣いてもいいですか?【31話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「もう泣いてもいいですか?」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【もう泣いてもいいですか?】まとめ こんにちは、ピッコです。 「もう泣いてもいいですか?」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介とな...

 




 

31話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 身の程を知らぬ糾弾

「一体、どうしてこんなことになったの……?」

アイリーンはカフェテリアで勉強していた。すると突然、一団の学生たちが駆け込んできて叫んだ。

「イズリエラが泥棒を捕まえに行ったぞ!」

「泥棒?」

「この前、セレナがブレスレットをなくしたって言ってたでしょ? 一日中探して大騒ぎになってたんだけど、イズリエラが犯人を知ってるって言い出したんだ。」

「犯人って誰なの?」

「イビィ。あの小さい子。だから今、あっちが大騒ぎになってる。」

その言葉を聞いた瞬間、アイリーンは勢いよく立ち上がった。

前に大きく衝突して以来、おとなしくしていたイズリエラが――。

……イズリエラだった。

正確には、おとなしくしていたというより、アイリーンとの対立に敗れて大人しくせざるを得なかったのだ。しかもアイリーンはアルセルとルスカーのおかげで評判がむしろ上がり、この件にはまったく動じていなかった。

時間がたつにつれ、以前アイリーンを見下していた学生たちも、今では頭を下げて先にあいさつするようになった。

その光景を見るたび、イズリエラは無言でアイリーンをにらみつけていた。しかし、それ以上何かできるわけでもなかった。

だからこのまま大きな問題もなく過ぎていくと思っていたのに、突然イビィを泥棒扱いするなんて。

「本当に頭がおかしくなったの!? 放っておけない。」

アイリーンは知らせてくれた学生に「みんなどこにいるの?」と聞くと、すぐその場所へ走った。

建物に着いた時には、すでに騒ぎを聞きつけた学生たちが外まで集まっていた。

「どいて! 道を開けてください!」

人混みをかき分けて前へ出たアイリーンが目にしたのは、箱を胸に抱えてうずくまるイビィと、そのイビィを蹴りつける学生たちの姿だった。

その瞬間、頭が真っ白になった。

アイリーンは迷わず駆け寄り、イビィを蹴っていた学生に体当たりを食らわせた。そして別の学生の髪をつかみ、そのまま足で蹴り飛ばした。

自分の評判などどうでもよかった。

何なの、この子たちは?

集団で寄ってたかって人を殴る? それもイビィを?

イビィに手を出したとはいえ、相手は基本的に貴族の令嬢たちだ。

そんな温室育ちの少女たちが、アイリーンの全力の体当たりや蹴りに耐えられるはずもなく、あっという間に倒れてしまった。

「イビィ……」

叫びたい気持ちを必死にこらえ、アイリーンは震える声で静かにイビィの名を呼んだ。

「その箱、みんなに見せてくれない?」

それはとても簡単なことだった。

ただ紙箱のふたを開けて、中に彼女たちが探している物が入っていないことを見せれば済む。

だがイビィは、頑として箱を見せようとしなかった。

その態度を見た周囲の学生たちの視線は、さらに冷たくなる。

「盗んでないなら、見せられない理由なんてないでしょ?」

「そうよ。ただ堂々と見せればいいじゃない。」

何かを隠そうとするその態度が、人々に「盗品を隠しているのでは」と思わせてしまった。

周囲の後押しを受けたイズリエラは、再びイビィから箱を奪おうとした。

しかし今回も、アイリーンが立ちはだかった。

決して退くつもりのないアイリーンの姿勢を見て、イズリエラは唇を強く噛んだ。

「……やっぱり、まずはアイリーンを何とかしないと。」

「そうしないと、埒が明かないもの。」

イズリエラは髪と服を整えた。

周囲を見回すと、騒ぎを聞きつけた学生たちが辺りをぐるりと取り囲んでいた。

(これだけ集まれば十分ね。)

必要なのは、できるだけ多くの目撃者だった。

見て、聞いて、そして噂を広める人間が。

その時、ざわついていた学生たちが左右に道を開けた。

誰が来たのかと思えば、アルセルとルスカーだった。

「……何この騒ぎ。イビィ、一体どうしたの?」

先に中へ入ってきたルスカーは、イビィの姿を見るなり表情を曇らせた。

「誰がこんなことをしたの?」

低く静かなルスカーの声に、近くにいた学生たちは思わず身をすくめ、一歩後ずさった。

いつもは明るく無邪気なルスカー。

これまで他の学生を怒鳴ったり威圧したりしたことなど一度もない。

そんな彼女が、笑みひとつない顔で静かに問いかけたため、かえって底知れない恐ろしさを感じさせた。

「イビィ? アイリーン?」

後から来たアルセルも同じだった。

彼は何も聞かずにすぐイビィのもとへ駆け寄り、その体を支えると、自分のハンカチでイビィの顔についた血を優しく拭った。

二人が駆けつけるや否やイビィをかばう姿を見て、イズリエラは皆に聞こえるよう声を張り上げた。

「騙されないでください! この子は盗みを働いただけじゃなく、後見人のことでも嘘をついていたんです!」

「後見人?」

「ええ! シアン・ロシェン教授が後見人だと言っていました!」

「それの何が問題なんですか、イズリエラ嬢?」

アルセルは冷ややかに問い返した。

アルセルもルスカーも、自分に敵意を向けてくるのを見て、イズリエラは少したじろぎながら続けた。

「イビィの後見人だというなら、今アカデミーにいるというその教授は、偽物なんです!」

その言葉に、その場にいた全員が「何を言っているんだ?」という表情になった。

教授が偽物?

「ここ数日、私が後をつけて確かめたんです。今、この奥の研究室を使っている若い男性教授こそが、本物のシアン・ロシェン教授だそうです。」

そこまで言うと、イズリエラはイビィをじっと見つめた。

アイリーン、アルセル、ルスカーの後ろで震えているイビィの姿が、彼女にはいかにも白々しく映った。

(あれだけ大きな嘘をついておいて……。)

何も知らない被害者のような顔をするなんて。

本当の被害者は自分だ。

疑われる覚悟までして、この孤児の嘘を暴くためにここまで苦労してきたのだから。

(このままでは、アルセルとルスカーに嫌われる一方だ。)

だからこそ、一刻も早く「偽教授」の正体を皆の前で暴かなければならなかった。

イズリエラは再びイビィに向かって声を張り上げた。

「否定しようなんて思わないことね。私は何日も後をつけて、その偽教授を見てきたんだから!」

その時、ルスカーが口を開いた。

「ちょっと話が見えないんだけど……つまり、この研究室を使っている先生が偽物だって言いたいの?」

「はい。ちゃんと調べました。シアン・ロシェン教授は今、王都にはいません。体調を崩して、ずっと前に故郷へ戻られたそうです。それに、もう七十歳を超えている方なんですよ。兄が身分証だけじゃなく、ご家族にまで確認しました。家名に懸けて断言します!」

あまりにも断定的な口調に、一番動揺したのはイビィだった。

「ち、違います……。セラフィナ学長が、直々にお手紙も届けてくださって……」

「また嘘ね! 学長がそんな使い走りみたいなことをするわけ――」

「学長がそんな暇な方だと思ってるの?」

「違います!」

今度はイビィも耐えきれず、大きな声で叫んだ。

その時だった。

学生たちの後方から、重々しい足音が響いてきた。

職員が来たのかと思い振り返った学生たちの前に現れたのは、背が高く、厳しい表情をした青年だった。

彼は何も言せず、ただゆっくりと歩いてくるだけ。

それだけなのに、その圧倒的な威圧感に学生たちは自然と道を開けた。

学院では見かけたことのないほど整った容姿に、学生たちはざわめく。

「あの人、誰?」

その瞬間、イビィが彼の姿を見つけて叫んだ。

「シアン先生!」

その一言で、その場にいた全員の視線が一斉に彼へ向けられた。

「えっ……この人が?」

アイリーンは目を丸くした。

以前、イビィが「アルセルよりシアン先生のほうが格好いい」と言っていた時は、そんなはずがないと半信半疑だった。

アイリーンは名門テリンス家の令嬢として、幼い頃から美しいものや価値あるものに囲まれて育ってきた。

そのため審美眼はかなり高く、自分自身も人目を引く美貌の持ち主だったこともあり、人の容姿に強く心を動かされることはほとんどなかった。

それでも初めてアルセルを見た時だけは、素直に「美しい」と思った。

客観的に見ても主観的に見ても、アルセルの容姿は非の打ちどころがないほど整っていたからだ。

ところがイビィはきっぱりと、

「シアン先生のほうがずっと格好いいです」

と言い切った。

アルセルのことも「素敵」とは言っていたが、シアン先生と比べるなら迷えずシアン先生を選ぶだろう、と。

(きっとイビィは、先生のことが大好きだからそう言ってるだけなんだ。)

まだ子どもだから、好きな人が一番格好よく見えるのだろう。

あるいは、美醜の感覚が人とは少し違うのかもしれない。

だが今、シアン先生本人を目の当たりにしたアイリーンは――

――アイリーンは、なぜイビィが最後まで「シアン先生のほうがアルセルより格好いい」と言い張っていたのか、その理由をようやく理解した。

一目見た瞬間から、視線を逸らせなかった。

それはアイリーンだけではなく、その場にいた他の学生たちも同じだったようだ。

「誰なんだ、あの人は」と囁き合うどころか、口を開くことすら忘れて見入っている。

長身で鍛えられた体つき。

そして、正体の分からないほどの圧倒的な威圧感。

なぜか自然と頭を下げたくなるような人物だった。

(……本当に教授なの?)

アイリーンは学院で見かけた教授たちの姿を思い返した。

年齢や経歴はそれぞれ違っても、「教授」と呼ばれる人たちには共通する独特の雰囲気があった。

だが、今目の前にいるシアン教授には、そのような空気がまるで感じられない。

雰囲気だけで言えば、教授というよりも、以前皇宮見学で目にした騎士たちのほうがよほど近かった。

体格のせいかとも思ったが、シアン教授より大柄な教授を見ても、このような印象を受けたことはない。

しかも、皇宮の騎士たちよりも、さらに鋭く、さらに恐ろしい雰囲気をまとっていた。

(教授じゃ……ない。)

アイリーンはその事実に気づき、一歩後ずさると、警戒の眼差しで彼を見つめた。

まずは皆の助けを借りなければならない。

(アルセルでもルスカーでも。)

普段はイビィに近づくなと言い聞かせていても、あの二人がどれほど頼りになる存在かはよく分かっていた。

アイリーンは振り返り、二人を探した。

「え……?」

だが、二人の様子がおかしかった。

アルセルもルスカーも、信じられないものを見るような目でシアン教授を見つめていた。

問題なのは、アイリーンとはまったく違う種類の戸惑いを浮かべていることだった。

まるで、この場にいてはいけない人物が現れたかのように、衝撃を受けて固まっている。

その様子を見たアイリーンは気づいた。

(知っている人なの?)

(でも、どうしてあんなに驚いているの? あんな見た目をしていて、王都でも指折りの実力者だから? でも、どう見てもそんな理由じゃない……。)

アイリーンが戸惑っている一方で、ルスカーとアルセルも彼女以上に動揺していた。

当然だった。

二人はクライスが姿を現した瞬間、その正体に気づいていたのだ。

だからこそ、自分たちの目を疑った。

イビィがあれほど口をそろえて褒めていたシアン教授が、まさか皇帝陛下だったとは。

しばらく呆然としていた二人は、ようやく皇帝の前で取るべき礼儀を思い出した。

頭を下げようとしたその時、クライスは二人に向かって軽く手を上げた。

「するな」という合図だった。

まだ正体を明かすつもりはない――その意図を理解した二人は、ぎこちなく口を閉ざしたまま立ち尽くした。

クライスは人垣をかき分けながら歩み寄り、イビィの前まで進み出た。

クライスはイビィの前まで歩み寄った。

「イビィ。」

彼が名前を呼ぶと、震えていたイビィがゆっくりと顔を上げた。

ぐしゃぐしゃになった紙箱を抱きしめ、血で汚れた幼い姿は、あまりにも痛々しかった。

クライスは片膝をついてしゃがみ込んだ。

すると、乱れたイビィの顔がよりはっきりと目に入る。

彼は手を伸ばし、自分の袖で、まだ少し血が流れているイビィの鼻血をそっと拭った。

「先生、お洋服が……」

真っ白なシャツには赤い血の跡が付いてしまったが、クライスはまったく気にする様子もなく、黙ってイビィの顔を拭き続けた。

しかし、袖だけではきれいに拭ききれないと分かると、顔を上げて命じた。

「拭くものを持ってこい。」

「はい。」

アルセルは恭しく返事をすると、すぐに身を翻した。

ルスカーも同じだった。突然現れた見知らぬ男が命令を下すと、それを見ていた学生たちはようやく違和感に気づいた。

シアン教授と呼ばれていたその男は、ごく自然に命令を出しており、この場で最も身分が高いはずの二人の学生が、まるでそれが当然であるかのように恭しくその命令に従っていたのだ。

やがてアルセルが周囲を探し回って清潔な布を見つけると、ルスカーはそれを受け取って駆け出し、洗面所で布を水に濡らして戻ってきた。

そして、その布を恭しくクライスへ差し出した。

クライスは険しい表情のまま、イビィの顔を丁寧に拭いていく。

血を拭き取ると、頬には赤い手形がくっきりと浮かび上がった。

イズリエラが叩いた跡であることは明らかだった。

クライスは隅々までイビィの様子を確認した。

幸い、鼻血が出て血が流れた以外に、唇や口の中、その他の部位に出血するような傷は見当たらなかった。

それでも、その姿はあまりにも痛々しかった。

まだ小さな子どもが一人で、はるかに体の大きな学生五人から一方的に暴力を振るわれたのだ。こんな姿になるのも当然だった。

クライスがイビィの口元に残っていた血をすべて拭き終えると、それを見ていたイズリエラはようやく我に返った。

「で、でもあいつは泥棒なの! あの箱の中には盗んだ物が入ってるはずよ! だから見せるのを拒んでいるの! 見つかるから返そうとしているだけなんだから!」

イズリエラの叫びに、ルスカーとアルセルの顔色は真っ青になった。

世間では、クライスは長く続いた身分争いを終結させ、その後、帝国を再び繁栄へ導いた名君として知られている。

それほどまでに、彼は私情を一切挟まず、公正に行動する人物だった。

その功績ばかりが語られるため多くの人は知らないが、クライスが即位した直後、帝国が安定するまでの数年間、どれほど多くの者が処刑されたことか。

彼は帝国の秩序を取り戻すため、情けをかけることなく、法に従って厳正に処罰し、粛清を断行した人物でもあった。

その苛烈さが正しい方向へ向けられたからこそ名君と称えられたのであって、ほんの少しでも道を誤っていれば、歴史に名を残す暴君になっていてもおかしくない人物だった。

そんな相手に向かって、イズリエラは尊大な態度で怒鳴り散らし、中傷までしている。

しかも、自分から先に暴力を振るっておきながら。

クライスの冷え切った表情を見て、アルセルとルスカーは悟った。

――この件は、決して穏便には終わらない。

イズリエラが叫び続ける姿をしばらく見ていたクライスは、再びイビィへと視線を向けた。

すると先ほどまでの冷たい空気は一瞬で消え去り、優しい声で尋ねた。

「イビィ、あの学生の言っていることは本当か?」

その問いに、イビィは力いっぱい首を横に振った。

「い、いいえ。私はそんなことしていません。」

「嘘よ!」

イズリエラが叫ぶと、クライスはゆっくりと彼女へ視線を向けた。

クライスがイズリエラへ視線を向けた瞬間、彼女は息をのみ、一歩後ずさった。

戦場で何百、何千という命を奪ってきた男の鋭い眼光を、一介の学生が受け止められるはずもなかった。

クライスは短くため息をつくと、イビィに向かって言った。

「イビィ、お前がその箱の中身を見せたくない理由があることは分かっている。」

「…………」

怪我をしている最中ですら決して手放さなかったのだから、よほど隠したいものが入っているのだろう。

「だが、今この場でお前の潔白を証明するには、その方法しかないようだ。」

彼は、イビィが彼らの物を盗んだなどとは少しも思っていなかった。

ただ、何らかの理由があってイビィが中身を見せるのを拒んでいるだけだと感じていた。

本心では、このままイビィを連れてその場を離れ、彼女の望むように箱を隠させてやりたかった。

しかし、そうすればイビィは学院にいる限り、一生「泥棒ではないか」という疑いの目を向けられ続けることになる。

そうなれば、学院にいる限り、一生疑いの目を向けられることになる。

「みんなに、その箱の中を見せてもらえないか?」

穏やかに頼むクライスの言葉にも、イビィは身を震わせるだけで、どうしても箱を手放せなかった。

その様子を見て、予想どおりだと言わんばかりにイズリエラが嘲笑した。

「ふん。同じ泥棒で詐欺師のくせに、孤児に罪をなすりつけようとして、知らないふりをするなんて……」

「違う!」

イズリエラがクライスを侮辱すると、イビィはもう我慢できないというように叫んだ。

「教授……」

そう言うと、唇を強くかみしめながら胸に抱えていた箱を前へ差し出した。

底を突くように、へこんだ箱のふたを開けると、そのまま箱を逆さにした。

中に入っていた物が、ばらばらと床へこぼれ落ちた。

「ついに盗品が出てくるのか」と、周囲の人々は固唾をのんで見守った。

盗品が出てくると期待していた人々の顔に、困惑の色が浮かんだ。

「これは……」

床に散らばった物は、文字どおりのガラクタだった。

芯が折れた鉛筆、穴の開いたペンケース、半分ほどしか書かれていないノート――。

「ガラクタ」と呼ぶのもためらわれるほど、ほとんどゴミ同然の物ばかりだった。

予想とはまったく違う物が出てきたため、その場を取り囲んでいた学生たちは皆あ然とした。

その中でも最も動揺していたのは、イズリエラかった。

「こ、これは違う……!」

イビィが箱を開けた瞬間、イズリエラは心の中で勝利を確信していた。

とうとう諦めて、盗んだ品を見せるのだと思ったからだ。

しかし、箱の中に入っていたのは、盗むどころか、道端に落ちていても誰も拾わないような物ばかりだった。

「そんなはずない!」

イズリエラは床に散らばった物を慌てて拾い上げた。

だが、どれを見ても、自分が探していた友人たちの持ち物は一つもなかった。

友人のブレスレットや、その他の高価な品はどこにも見当たらなかった。

そのとき、散らばった物の中に、口を丁寧に折りたたんだ紙袋が目に入った。

他の物とは違い、少し気を遣って大事にしまわれていたものだった。

「これだ!」

イズリエラは袋をつかみ、乱暴に口を開いた。

すると、中身が床へとこぼれ落ちた。

「これは……」

再び、その場に驚きの声が広がる。

「クッキー?」

「ほかのお菓子も入ってる……」

砕けたクッキーの欠片が床に散らばり、香ばしく甘い香りが漂った。

イズリエラは信じられないという表情で袋の中をのぞき込んだ。

しかし、中に残っていたのは、砕けたクッキーの欠片だけだった。

「そ、そんなはずない……」

イズリエラはイビィの手にまだ残っていた箱を無理やり奪い取り、中に何か隠されているのではないかと必死に振ってみた。

しかし、それ以上何も出てくることはなかった。

さっきまでの自信満々な態度は、一瞬で消え失せた。

イズリエラが振り返ると、一緒にイビィを殴っていた学生たちは、いつの間にか距離を取って離れていた。

その怯えた表情を見て、イズリエラは口の中がからからに乾いていくのを感じた。

ついさっきまで面白がって彼女を応援していた学生たちも、今では誰が見ても「どう見てもお前の勘違いじゃないか」という顔をしていた。



 

  • 無実のイビィに対する集団暴行と、アイリーンたちの加勢

    泥棒の濡れ衣を着せられたイビィが複数の貴族令嬢から暴行を受けている現場に、アイリーンが激怒して乱入し、体当たりや蹴りで制圧します。さらに騒ぎを聞きつけたアルセルとルスカーも駆けつけ、怪我をしたイビィを懸命に保護します。

  • 「シアン先生」の登場と、周囲の異常な動揺

    イズリエラが「イビィの後見人であるシアン教授は偽物だ」と主張する中、圧倒的な威圧感を放つ美青年「シアン先生」本人が現れます。アイリーンはその姿に圧倒され、彼の正体が「皇帝クライス」であると気づいたアルセルとルスカーは、驚愕しつつも密かに臣下の礼をとります。

  • 箱の開帳による潔白の証明と、イズリエラの自滅

    クライスに促され、イビィが頑なに拒んでいた箱を開けると、中から出てきたのは盗品ではなく、鉛筆やお菓子などのゴミ同然の「ガラクタ(思い出の品)」でした。濡れ衣が完全に晴れたことで、それまで自信満々にイビィを糾弾していたイズリエラは一転して窮地に陥り、周囲の学生たちからも冷ややかな目を向けられることになります。

 

 

 

【もう泣いてもいいですか?】まとめ こんにちは、ピッコです。 「もう泣いてもいいですか?」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介とな...