メイドになったお姫様

メイドになったお姫様【99話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【メイドになったお姫様】まとめ こんにちは、ピッコです。 「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

99話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 本音

皇太子宮の応接室にはたくさんの窓があり、吹き込む風を全身で感じることができた。

さらり。

シアナは髪をなびかせながら目を開けた。

シアナの前にはラシードが立っていた。

【今来ないのなら、もう二度と私が殿下を訪ねることはありませんよ。】

シアナがソルに言い放ったその言葉は、脅迫とも思えないほど静かだった。

しかし、今のラシードにはそれが通じた。

『そんな人が私を送り出すと言ったの?』

シアナは疑うような目でラシードを見た。

しかし、シアナは普段のようにラシードと目を合わせることができなかった。

シアナを見るたびに微笑みを浮かべていたラシードは、今は無表情な顔で視線を下に落としていたからだ。

まるでシアナに全く関心がないかのように。

だが、それは単に困惑した様子を隠しているだけだった。

現在のラシードは、非常に不安を感じていた。

『シアナがいきなり皇宮を出たいと言い出したらどうしよう?』

そんなことを言われるのが怖くて、シアナを探しに行くことすらできなかった。

しかし、最終的にこのように自分を訪ねてきたシアナと向き合うと、心臓がどきどきと高鳴った。

その気持ちを知るはずもないシアナは、無言でラシードを見つめていた。

「尊敬する皇太子殿下にご挨拶申し上げます。不意に連絡もなしに訪れた侍女に貴重なお時間を割いていただき、感謝申し上げます。」

「……!」

ラシードの目が大きく見開かれた。

シアナがこのように正式な礼儀を持って挨拶したのは、実に久しぶりだったからだ。

シアナの行動はそこで終わらなかった。

シアナは頭を下げたまま続けた。

「殿下、ソル様からお話を伺いました。ミスティック商団のキールアンが殿下を訪ねて、私を解放してほしいと要請したとのことですが?」

「……!」

ラシードの瞳が揺れ動いた。

しばらくしてから、ラシードは低い声で答えた。

「そうだ。」

「……」

「……君はどうしたいんだ?」

ラシードはかすかな期待を胸に抱いていた。

シアナはアリスを誠実に仕え、急速に中級侍女へと昇進するほどの能力を認められている。

『もしかしてシアナは、この宮殿に留まりたいと口にするのではないか?』

しかし、シアナの言葉はラシードの予想を大きく外れた。

「殿下が望まれる通りにいたします。」

「……何?」

「私は殿下に命を救っていただいた代わりに、この宮殿の侍女となりました。ですから、私の進退に関する権限は殿下にあります。」

「……」

「どういたしましょう、殿下。私が宮殿を去るべきでしょうか、それともここに留まるべきでしょうか?」

シアナの声はどこまでも平静だった。

何の感情も感じさせないほど。

しかし、ラシードは彼女とは異なり、非常に大きな混乱を感じていた。

もちろん、答えは決まっていた。

『自分の王国を滅ぼし、家族を殺した男のそばにいたいはずがない。』

シアナはこれまで、過去のことを話す際に王宮時代を忌まわしい記憶としか語らなかった。

そんな彼女がこの場所に特別な感情を抱いているはずがない。

それに、公女でもなく一介の侍女として過ごしている状況がさらにそれを強調している。

ラシードは口を開いた。

「行け……」

「……」

その瞬間まで凍りついたようだったラシードの顔に、微かな揺らぎが現れた。

「行くな。」

ラシードは震える手でシアナの肩を掴み、自分を見つめさせた。

そしてもう一度口を開いた。

「君が望むことは何でもしてやる。侍女でいることがつらいなら、ふさわしい身分を与えよう。物質的な報酬が必要ならば、ダイヤモンド鉱山でも大邸宅でも何でも与える。だから……。」

「……。」

「この宮殿にとどまってくれ。……お願いだ。」

ラシードは、それがシアナにとってあまりに卑劣で冷酷な言葉であることを分かっていた。

それでも止められなかった。

人生で初めて感じた切実な願いだったからだ。

ラシードは動揺した顔でシアナを見つめた。

しかし、シアナはいつものような穏やかな表情でラシードを見つめ返すだけだった。

ラシードは胸がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。

指先が冷たくなり、口内がカラカラに乾いた。

どれくらいの時間が過ぎただろうか。

シアナがゆっくりと両目を閉じて、穏やかに言った。

「分かりました。」

ラシードはその言葉が信じられず、じっと見つめた。

「本当?」

「はい。私は二言は申しません。殿下のお望みのまま、この宮殿に留まらせていただきます。」

「……。」

ラシードは信じられない表情でシアナを見つめ、そのまま彼女をぎゅっと抱きしめた。

ラシードのしっかりとした腕には、シアナが去らないことへの安堵が溢れていた。

それを感じたシアナは、しばらくラシードの顔を呆然と見つめていたが、やがて冷静さを取り戻し、彼を押し戻した。

「これでは困ります、殿下。宮殿に留まると言ったのは、こんな無作法なことを許すためではありません!」

シアナの鋭い声に、ラシードはいたたまれない表情を浮かべ、彼女を抱きしめていた手を解いた。

「ごめん。嬉しすぎて、つい……。」

その言葉が本心であることを示しているようだった。

ラシードの顔には歓喜にも似た喜びが浮かんでいた。

シアナは胸がドキドキする感覚に、ふっと息をついた。

声を整えたシアナが尋ねた。

「私が殿下のお願いを聞き入れたら、望むものは何でも叶えてくださるとおっしゃいましたよね?」

「もちろんだ。」

ラシードは真剣な表情で頷いた。

シアナを繋ぎ止めるための空約束ではなかった。

ラシードは本当に彼女の望むことなら何でも叶えるつもりでいたのだ。

シアナはラシードと目を合わせて言った。

「今後は私の意志について一方的に決めつけないでください。」

「……。」

「確かに私が最初に宮殿に来たのは完全に自分の意思ではありませんでした。生き延びるためにやむを得ず選んだ道でした。でも、今は違います。私はここの生活にとても満足しています。」

もちろん、いずれ宮殿での生活に飽きることもあるだろう。

侍女の仕事が忙しくなることもある。

その時はここを離れたくなるだろう。

だが、今ではない。

シアナははっきりとした声で言葉を続けた。

「これからは、自分の意思で自分がいる場所を選びます。それを尊重してください。」

その言葉は、シアナがいつか望むときにここを去る可能性があることを意味していた。

それでも安心できるのは、今この瞬間、シアナがここにいるという事実だ。

それも自分の意思で。

ラシードの顔に笑みが浮かんだ。

「いいとも。君の望むとおりにしなさい。」

天使のように柔らかな笑みを浮かべるラシードを見つめながら、シアナは考えた。

「私が宮殿にいたい理由の一つは、きっとこの顔のせいかもしれない。世界中を回ってもこれほど美しい顔は見つからないだろうから。私がこんなに美しいものに弱いなんて。」

シアナは自分に関する新たな事実に気づき、口を開いた。

「ともあれ複雑な話が終わったので、次の本題に移ってもいいですか?」

「……?」

「実は以前お約束していたプレゼントを持ってきたんです。」

その言葉にラシードの目が大きく見開かれた。

 



 

少し前、シアナはソルにブローチをプレゼントしていた。

「私の分はないの?」と口を尖らせたラシードに、シアナは「皇帝には別のプレゼントをあげますよ」と言ったのだった。

その言葉にラシードは、シアナが自分にどんなプレゼントをくれるのかをあれこれと考えていた。

バラ祭りの時に見たシアナの姿や、何度も彼女を訪ねてきては説得しようとしていたキアンの顔が浮かんだ。

キルアンのせいでしっかり忘れていたけれど、ラシードが目を輝かせた。

「何?何だって?」

世界で一番素敵な贈り物を期待する子どものように目を輝かせるラシードの前で、シアナが差し出したのは乾燥したバラの花びらが入ったガラス瓶だった。

シアナは優しい声で言った。

「キャシントンガーデンのバラで作ったお茶ですよ。それで少し時間がかかってしまいました。」

キャシントンガーデンのバラは香りと味が強い品種で、お茶を作るのに適しているけれど、他のバラよりも咲く時期が少し遅いのです。

数日前にやっと満開になったバラを摘んで、お茶の葉を作ることができました。

「ブローチよりもお茶のほうが好きだと思ったので作ってみたのですが、どうでしょう?」

「最高だ!」

ラシードは目を輝かせながら力強く叫んだ。

その様子を見て、シアナは目を細めて微笑みながら言った。

「実際のところ、純粋に価格だけで考えれば、ブローチのほうがこのお茶より何百倍も高価なものなのに。」

そんなことは気にせず、心から喜んでいるラシードの姿を見て、シアナの心は温かくなった。

シアナはにこやかに言った。

「では、サービスとして最初の一杯は私が注ぎましょうか?」

シアナがそう言い終わる前に、ラシードは急いで椅子に腰を下ろした。

シアナは執事を呼び、準備を頼んだ。

しばらくして、円形のテーブルには熱いお湯とティーポット、ティーカップが置かれた。

シアナはゆっくりと体を動かし始めた。

ティーポットの茶こしの中に軽く乾燥させたバラの花びらを入れ、その上から香りが立ち上るお湯を注いだ。

一度茶液を捨てた後、もう一度熱いお湯を注ぎ込んだ。

茫然とその様子を見つめていたラシードが尋ねた。

「シアナ。」

「はい。」

「……僕を嫌いじゃない?」

それがどういう意味かと、シアナは目を丸くして彼を見つめた。

ラシードは目を伏せた。

実際、ラシードがシアナを避けていたのは、彼女が去るかもしれないと恐れていただけではなかった。

シアナが自分を嫌っているのではないかと思ったからだ。

それが怖かったのだ。

しかし、その恐れを押し隠し、シアナは淡々と答えた。

「何度も申し上げましたが、私は自分の故郷や家族に何の愛情もありません。全く未練も憎しみも、何もありません。」

「……」

「だから似合わない浮かない顔をしないで、いつも通りの幸せそうな顔でお茶を楽しんでください。」

そう言いながら、シアナはラシードの前に置かれたティーカップにお茶を注いだ。

とろり……

円を描きながら注がれるお茶がカップを満たしていった。

ラシードはそれをじっと見つめたあと、カップを手に取った。

「うん。」

シアナははっきりと言った。

私を嫌いではない、と。

それを信じてくれれば、それで十分だった。

ラシードはもうこのことで動揺しないと決めた。

ラシードは穏やかで安心した顔つきでカップを口元に運んだ。

「美味しい。」

ほっとした表情を浮かべたラシードの顔を見て、シアナは少し照れくさそうな笑みを浮かべた。

自分の前に置かれたカップにもお茶を注ぎながら、シアナは鼻をくすぐる香りを楽しんだ。

『キャシントンガーデンのバラはやはり香りが濃い。』

小さなティーカップの中でバラが咲いているかのようだった。

シアナはお茶を一口飲みながら言った。

「ご存知ですか?バラのお茶には面白い伝説があるんです。愛とバラの女神ロズリンタの祝福を受けたバラで作ったお茶を一緒に飲むと、愛に落ちると言われています。」

もちろん、それは誰かが作った単なる迷信であることは明らかだった。

『耳にすればロマンチックな話だけど、愛に落ちても構わない異性と二人きりでお茶を飲むことなんて、そう多くないよね。』

むしろ、お茶は同性の友人と楽しむことのほうが多かった。

ティーパーティーの際に、ロズリンタの力を受けたバラのお茶を飲むとなれば……。

『テーブルについているご婦人たちはみんな愛に落ちてしまうに違いない。混乱は避けられないだろうね。』

シアナは突拍子もない想像にクスクス笑った。

そんなシアナをラシードは穏やかに見つめていた。

バラの祭典のとき、シアナがいつもと違って見えたのは、普段とは異なる華やかな化粧をしていたからだと思っていた。

濃いアイラインと赤い唇のせいだと。

しかし、化粧のない素朴な顔立ちに、飾り気のない淡い深緑の服を着た今の姿も……。

『あのときと同じように心臓が高鳴る。』

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。

この音が漏れ出したらどうしようもないほど大きく。

目の前で笑っている小さな女性に向けて。

そしてラシードは今、その理由が分からなくなっていた。

『小さな動物みたいで可愛らしかったからじゃない。』

いつからだろう、私は君を愛していた。

一人の女性として。

自分のそばから離れるという考えだけで恐ろしくなるほど。

 



 

 

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