こんにちは、ピッコです。
「死んでくれと言われて」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

45話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 復讐の相手
同じ時刻、武学館。
ヤナとヤコスバート教授は目的地に到着した。
彼らが到着した場所、試験演武場は高級な青銅柱で装飾された小型コロセウム式の構造だった。
「幸い、この時間帯は予約が空いていますね。」
コロセウムの入口には羊皮紙が設置されていて、そこに名前を書くと冷たい風が吹き抜けて扉が開いた。
そしてすぐに骨までしみるような力の波動が体を包み込んだ。
羊皮紙には「<予約されていない試験です。すべての保安が解除されます。>」という文が浮かび上がり、それを見た瞬間、演武場の扉の錠が作動する秘密の仕組みのようだった。
「中に入ってください。」
その言葉と共にリンは後ろをついてきたユリクを見て声をかけた。
「教授が私の質問に対する答えを実際に目で見せてくださるそうです。ユリク卿は外で少しだけお待ちください。10分ほどで十分です。」
突然驚いたユリクが声を上げた。
「いけません。お一人では入れません、お嬢様。私もご一緒に……」
いけないも何も。
リンはユリクの言葉を無視して扉を閉めてしまった。
試験場は広くて整然としており、座席の近くの壁には様々な謎めいた武器、試験器具、装置がずらりと並んでいた。
ヤコスバート教授はその中で最も軽いレイピアを手に取り、リンに差し出した。
「武器を使用する場合はいくつかの安全規則が伴います。まず、刃のある武器の場合は……」
規則?透明なオーラさえ証明できればいいのに、規則なんて必要なのか。
リンは彼の説明を無視して剣にオーラを注ぎ込んだ。
「ヤナさん?ちょっと……!」
なぜか少しドキドキしながら。
ウウウウン――
周囲の空気がかすかに震えるのを感じる。
かつてに比べれば微弱な波動ではあったが、世界は明らかにリンの力に反応していた。
完全に制御可能なオーラ、ソードマスターのオーラに。
「……神よ、なんと。」
ヤコスバート教授が驚きの声を上げると、彼女はいたずらっぽい目で剣を見つめた。
『やっぱり透明ね。その体をちょっと固い葉っぱでこすれば元の色が戻るかもと思ったけど。』
戻る気配は全くなし。
それでも、これだけ安定した状態でオーラを持ち上げたとき、身体の状態が明らかに変化したのを感じた。
まず、オーラを維持するだけでも非常に消耗する。
形態変化は可能だが、以前のように常時発動するには代償が必要だった。
そして最大の問題。
剣を持つだけでも力を吸い取られるようで辛い。
『体力も体力だけど……もうこれは本格的に剣術の修練が必要になりそう。』
このくらいで済めばいいのだがと願いながら、レイピアを納めていたオーラを消した。
なんだか余計に疲れるな。
「おい、おい、トゥスレナ嬢。」
ぴくりとした声にリンは顔を上げた。
ヤコスバート教授が驚き、疑念、驚愕など複雑な感情を込めた視線で彼女を見つめていた。
「あなたは16歳……いや、あなたはヤナ・トゥスレナ本人で間違いないですか?」
普通なら、こんな質問は愚かだと一蹴するところだが――
『ヤコスバート教授が本気で透明オーラについて研究してきたなら……嘘は透明オーラの正体を見抜くヒントになりかねない。』
リンはまず否定することにした。
「証明したのですから、今度はあなたが答えてください。私と同じ透明オーラを持つ者は誰ですか?」
煙のように消えかけるオーラをじっと見ていたヤコスバート教授が、肩をすくめて答えた。
「……ああ、そうでしたね。そういう約束でした……しかし、この中からヤナ・トゥスレナが二人目の使い手として現れるとは。さすがの私も驚きました。これでまた新たな仮説を立てることができますね。」
「教授。」
再び呼ぶと、あれほど取り乱していた声も徐々に落ち着いていった。
ヤコスバート教授はしばらく思索にふけっていたが、やがて信じがたい名前を口にした。
「レテ侯爵家です。」
レテ侯爵。
つまり、ジハード・トゥスレナ。
「……誰ですって?」
「ヤナ嬢の叔父にあたる方です。その方もまた透明なオーラの持ち主です。」
え?
『レテだって? 今ジハードが私と同じ透明オーラを持っているって?』
そんなバカな。
予想外の人物の名に、リンの頭の中が混乱した。
ジハードとヤナは血縁でつながっている。
では、透明オーラとは結局、遺伝的突然変異にすぎないのだろうか?
ヤナの肉体に彼女の魂が入り込み、特性が混ざり合った結果なのか……。
そのとき、ふと浮かぶ声があった。
『人は一瞬で変わることもあります。4年前のジハード副官もそうでしたから。』
まさか。
「教授、ではそのジハード副官が教授を訪ねてきたのはいつごろか覚えていますか?」
「そうですね……だいたい4年ほど前でした。」
リンは拳をぎゅっと握りしめた。
ある日突然、まるで別人のように変わってしまったジハードはその後、透明なオーラの正体を把握するためにヤコスバート教授を訪ねた。
まるで……
『これって自分の話じゃない?』
間違いなかった。
ジハードもまた、リンと同じようにタイインの身体に宿っていたのだ!
『はあ……なんてこと……』
ヤナになって以来、最も衝撃的な気づきだったが、驚きのあまり、リンの思考は長く続かなかった。
チャキン!
空白を突いて飛んできた剣を防ぐため、地面に置いていたレイピアを再び手に取らなければならなかった。
突然彼女を襲ったのは、ほかならぬヤコスバート教授だった。
「頭おかしいんですか?」
狂った老人の狂気じみた目つきがぎらりと光った。
「ふむ。これほど軽く防ぐとはな。特に体格が良いわけでもないが、剣の腕が相当なものか。しかし、かなり疲れているようだが……さて、これも防げますか?」
「そこです!」
言い終わる前に二度目の攻撃が飛んできた。
異族の存在はあっけにとられるほど速く、見事な動きだった。
リンは凍りついた腕を必死に動かしてそれを防いだ。
チャキン。
錠が外れる音が静かな演武場に響いた。
そして、遠くから涼しい風が吹き込んでくるのが感じられた。
外部の者が侵入してきたのだ。
好奇心で目を輝かせていたヤコスバート教授の目が一瞬で鋭く変わった。
「どなたですか!明らかに試験実施室の前には『試験中』と表示されていたはずですが、試験に対する敬意と基本的な礼儀もなく、堂々と入ってくるとはどういうことですか!」
試験を妨害したリンよりも、ヤコスバート教授は数倍も激怒していた。
だがその怒りのような火は、無断で侵入してきた男の顔を見た瞬間、あっさりと消え去った。
「……あなたは。」
揺らいだのはヤコスバート教授だけではなかった。
いや、ヤコスバート教授は揺らいでいなかった。
その後ろに立つリンと比べれば、彼はむしろ人間らしく自然に振る舞っているようにさえ見えた。
そう、リンと比べれば……。
壁、壁。
重々しい足取りが試験場を横切るように徐々に近づいてくる。
そして男との距離が縮まっていく。
息苦しく、リンの呼吸もどんどん速く浅くなっていった。
男の顔を見たとき。
脳裏にはっきりと刻まれたその瞳と目が合ったとき――全身の血が一気に冷えていくようで、空っぽの心臓にはただ早鐘のような心拍だけが響き渡っていた。
冷や汗でびっしょり濡れた手のひらが、最後の命綱を掴むように剣を握りしめた。
誰かが言った。
運命とは、神のちょっとした悪ふざけにすぎないと。
今この瞬間、リンはその言葉に完全に同意するしかなかった。
『ごめん、リン。』
忘れられない、その声の主。
テオン・ベルク。
30年ぶりに再会した裏切り者は、昔と変わらぬ目をしていた。
「大公、敬礼します。」
張り詰めていた空気に、テオンの足取りが止まった。
そのときようやく、カチカチに緊張していたリンの肩がほぐれた。
驚くべきことに、ひととき激しい衝撃の後に彼女が感じた感情は、冷たい怒りや復讐心ではなかった。
「申し訳ありませんが、現在この試験場は使用できません。」
テオンに対するヤコスバート教授の態度は穏やかだった。
相手が現代の英雄として称えられる存在であれば、そのように振る舞うのも無理はない。
『それでも“大公”と呼ぶとは。』
皇族に与えられる敬称ではないか?
裏切り者が持つには余りあるほどの名誉だった。
「突然の侵入で驚かせてしまったようだ。申し訳ない。」
落ち着いた声が水滴のように、耳元に響いた。
『大陸の平和のために、お前が代わりに死ね。』
確かに以前よりも少し痩せて、かすれた声だった。
リンの鋭い視線がテオンをじっと見つめて、また観察した。
当然だが、テオンは歳を取っていた。
かつては豊かだった茶色の髪はなくなり、今は背中まで伸びた白髪が重く垂れ下がっている。
顔には刀傷のような深いシワが刻まれ、若い頃に比べて瞳には老人の鋭さがはっきりと見て取れた。
しかし、武人としての風格や気迫だけが残っていた。
『でも、それだけだ。』
テオンは老いていた。
だからだろうか?
今この瞬間、リンがテオンに対して感じた最も強い感情は――「衰えに対する哀れみ」だった。
リンはこんなにも冷静に相手を見定めている自分に驚いていた。
『怒りが極まると、かえって冷静になるものなのね。』
今のリンは、これまでになく理性的だった。
裏切り者――自分を殺したその男の前で。
「いいえ、大丈夫です、大公。」
テオンはほんの一瞬リンを見下ろしたが、そこに彼女への関心は一切感じられなかった。
おかげで再び思い出した。
今の彼女は「通りすがりのリン」ではなく「ヤナ・トゥスレナ」だという事実を。
「言い訳みたいに聞こえるかもしれないが、15分前まではこの演武場を私たちが使っていたんだ。ちょっと急用ができて席を空けたんだけど、その間に別の試験で埋まるとは思わなかった。」
「そうだったんですね。」
「無理なお願いではないと思うが、演武場を私に譲ってもらえないか?急ぎの用件なんだ。代わりは後で用意する。」
テオンの身分を考えれば、実質的に命令と変わらない要求だった。
リンは興味深そうな視線でヤコスバート教授を見上げた。
『どう対応するつもりだ?』
権力に従うならすぐに席を譲るだろうし、そうでなければ多少もめることになるだろう。
ヤコスバート教授はしばし悩むような低い声で沈黙を守った。
しかし、それは言葉を発する前のほんの一瞬の沈黙にすぎなかった。
「申し訳ありません、大公閣下。今回の試験は……」
そしてリンは、そのヤコスバート教授の態度を確認したことで十分だった。
権力にすり寄らないのだ。このくらいなら十分信頼してもいいのでは?
「テオン・ベルガーおじさんですよね?」
その名前を口にしながら、リンはかすかな震えを感じた。
その震えの原因は不安ではなかった。
ただ、リンは今、最高に集中した状態だった。
〈裏切り者テオン 料理法99選〉が春の雨に花のつぼみが一斉に咲くように、ふいに頭に浮かんだかのようだった。
リンはヤコスバート教授の戸惑いの視線を無視し、堂々とした態度で自らの素性を明かした。
「私はヤナ・トゥスレナです。レオンハルト・トゥスレナの孫娘であり、ジハード宰相の姪です。」
テオンの目に光が宿った。
無理もない。
ヤコスバート教授と会話する間も、テオンはさりげなくずっとソードエキスパートの気配を放っていた。
無言の圧迫が彼らよりもずっと幼いヤナには通じなかったので、興味を持ったようだ。
「そうか?」
ひざを曲げて座っていたテオンは、リンと目を合わせて挨拶した。
「はじめまして、トゥスレナのヤナ。私はベルガのテオンだ。演武場の入り口で見慣れた騎士服が見えたので気になっていたが、君の護衛騎士だったのか。」
リンは少し驚いた。
『以前は子供と接するのもぎこちなかったのに。今はずいぶん慣れてきたな、テレ。』
「正直言ってすごく困惑してますよ、おじさん。この演武場は私とヤコスバート教授が使っていたところで、まさか堂々と無断で侵入されるとは思いませんでした。“英雄”……って人たちは元々こういう感じなんですか?」
「おい、ヤナ=ヤン。」
二重に驚いたヤコスバートがリンを制しながら出て行った。
「ここは私に任せて、お引き取りください。」
「なんで私が?教授は私のせいでここにいるんでしょう?話すのは私がするべきです。」
だから教授は口を閉じて、私の後ろに隠れた。
「おっしゃる通りです、トゥスレナのヤナ。試験を妨害した点については改めて謝罪します。しかし、こちらにもやむを得ない理由があったので、私の行動でご迷惑をおかけした分、補償をさせていただきます。」
「補償ですか?」
「そうだ。もし望むなら演武場を譲るのも良いだろう。」
それに対してリンは少し考えるふりをしてから、ゆっくりと口元を持ち上げた。
「……わかりました、お受けします。でも代わりに条件をもう一つ追加してください。」
テオンは、彼女のように堂々とした少女を見るのは初めてのような顔で、驚きつつもその要求を受け止めた。
「言ってみなさい。」
「私と勝負してください。」
「ヤナ様!」
『興味深いな。お前の年齢でこれほどとはな。興味深いが、弟子にするには未熟すぎる。』
弟子?
『このクズが今、ソードマスターの前で“弟子にしてくれ”なんて言ってるのか?』
ずっと自分の下だったくせに?
「大丈夫です、私天才なんで。」
「なにぃ……」
これ以上無駄にする時間はない。
リンは手にしていたレイピアにオーラを込めた。
(ウウン)
『……ふう。』
今回は血まで抜け出していく感じだった。
しかしそんな部分までいちいち気にしている余裕はなかった。
リンは余裕の笑みを浮かべ、剣の先でテオンを指した。
「十四歳でオーラを引き上げられるなら天才ってことですよね?」
「……。」
テレのかすかなしわがすべて衝撃で震えているのが見えた。
ああ、テオン・ベルガー。
半端な天才。
ラ帝国最高の武人の家系に生まれ、最高の教育を受け、最年少でソード・エキスパートに到達した天才。
だが〈悪の呪縛〉を抱えたその日から、ソード・マスターの道に到達できずにいる半端な天才。
『しまいには私を殺してから30年も経った今でも…… あれほど望んでいたソードマスターの超入措置がまだきちんとできていない状態だ。』
そんな主題に“剣王”テオンだって? 笑わせるな。
衝撃から戻ったテオンが疑わしそうな目でアコスバート教授を見つめた。
「教授、まさか人体実験をしていたのですか?」
「いいえ、大公。人体実験は行われておりません。」
「これは信じられない現象だ。」
「信じられないのも分かります、おじさん。でも、だからといって疑うのはやめてください。世の中には本当に時々、理解しがたい天才がいるものですから。」
「……興味深い。よし、剣を取れ、アナトゥスレナ。」
テオンが剣を構えた。
かつて彼女の復讐を貫いてきたその剣ではなかった。
その一瞬のすきを突いて、リンは先手を取る機会を得た。
レイピアはあまり使ったことがなかったが、無理をせず簡潔な突き主体で攻めた。
何度か剣が交わっただろうか。
『はっ、はっ、久しぶりにやるとこれ……結構楽しい……。』
気力が切れて倒れそうだ!
それでも幸いだったのは、テオンがリンを倒そうという考えはなさそうに見えたことだった。
彼は攻撃を防ぐか受け流すだけで動き、より正確に言えばリンを観察することに集中しているようだった。
リンの腕を見下ろしたテオンは、ひとりごとのように呟いた。
「そんな腕であのオーラは絶対使えないはずだ。」
どうしてだろうか。
何も感じないと思っていたテオンの声が少し近くで聞こえるという、それだけの理由で、心臓がぐっと締めつけられたような気がした。
まるであの日のように、リンの五感が水の中に沈んでいくように鈍くなった。
おかしい、30年前に戻ったみたい。
嫌な感覚だ、目をしっかり閉じた後、開いたリンは師父(しふ)の助言を思い出した。
『覚えておきなさい、リン。怒りは幻想だ。』
そのとき、リンは無言で剣を握っていた。
剣先は次第に地面を向いていたが、彼女は決して剣を下ろさなかった。
その姿を黙って見守っていたテオンが、驚いたように短く声を漏らした。
「……怒りは統制力を失わせる。しかし、目だけは本物だな。」
その瞬間。
剣を握るリンの手が白樺の木のようにぶるぶると震えた。
だが彼女は動じず、ただひたすら精神を集中した。
変化を見抜いたテオンの視線が一層鋭さを増し、リンは思わずその青い瞳を突き刺してやりたい衝動に駆られた。
私はこの衝動をよく知っている。
私は今、テオンを殺したいと思っている。
「怒りはお前のものじゃない。」
だがリンは、とうとう手を動かすことができなかった。
今の彼女はリンではなかったからだ。
『“道を外れたリン”ではなく、“ヤナ・トゥスレナ”だったのか。』
『間違ってた。』
『え?』
『君たちの言ったことは間違ってた。4人の英雄じゃない。5人の英雄だ。“道を外れたリン”は裏切ってなどいない。』
そんな言葉を口にする子どもの手に、どうして汚らしいごみの血を浴びせることができるだろうか?
「ヤナ様? やめるべきです。私の声が聞こえるなら、やめてください。これ以上は危険です。」
アコスバート教授の声が響いた。
リンは気を緩めることなく剣を振り下ろしたが、ただ腕が少し軽くなっただけで、何も変わらなかった。
「はぁ、はぁ……」
まるで剣を隠し持っていたかのように、テオンがが近づいてきたとき、リンはそのとき初めて意図的に抑えていた体の変化を自覚した。
必要以上に浅く呼吸していることに気づいたのだ。
「とんでもない才能だな。誰が教えた?ジハード・トゥスレナか?」
口を開いた瞬間、まるで待っていたかのように頭がぐるぐると回り出した。
バランスを崩した両足がよろめいて後退った。
「……ヤナ・トゥスレナか?」
違う、テオン。
私はヤナじゃない。私はリンだ。
私は……お前に殺されたリンだ。
「ヤナ・トゥスレナ!しっかりしろ!」
世界が大きく回転し、誰かが彼女の体を支えた。
「ヤナ嬢!大丈夫ですか?大公閣下、医者を呼んでください!」
「わかった、親衛騎士にも伝えておく!」
そんなふうに呼ばないで。
私はヤナじゃない。私は!リンよ!
ヤナの体を借りているリンだってば。
『でも私は今、リンでもヤナでもない……』
ヤナでもリンでもないのなら、じゃあ私は一体誰なの?
『思い出して、リン。怒りは幻よ。』
……師父(しふ)、師父は知っている?
私は誰なの?
「怒りはあなたのものじゃない。」
私は。










