こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

85話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 帰郷③
結局、二人は今夜ここで夜を過ごすことにした。
雨を避けられる屋根があっただけでも幸いだった。
レリアは古びたベッドにきれいなシーツを敷いて横になった。
野営の時よりずっと快適な寝床だった。
おかげで体は楽だったが、オスカーの存在のせいで心は落ち着かなかった。
オスカーはベッドの横のソファに同じくきれいなシーツを敷いて長く横たわっていた。
レリアはそっと顔を向けて彼を見つめた。
こちら側からは彼の脚しか見えなかった。
彼はソファからはみ出た脚を折り曲げて寝ていたのだった。
レリアは不快な気持ちを抑えながら無理やり眠りについた。
そして夜が更けた。
カラン!
空が裂けるような雷鳴に、レリアは目をぱっと見開いた。
レリアは急いで体を起こし、オスカーが横になっているソファを確認した。
幸い、彼は目覚めていないのか、微動だにせず眠っていた。
『よかった……』
自分でも驚くほど大きな雷鳴だったので、オスカーが起きていたら彼も驚いていただろう。
『まだ雷の音が怖いのかな。』
レリアはとても静かにベッドに戻っていった。
そしてソファの方へ歩いて行った。
窓から差し込む月明かりに照らされたオスカーの顔は穏やかに見えた。
静かに目を閉じたその姿を見ると、幼い頃の顔がよく思い出された。
レリアの口元に小さな微笑みが浮かんだ。
そうして再びベッドへ戻ろうとしたそのときだった。
「……っ!!」
レリアはその場で固まってしまった。
心臓が足元からどきどきと高鳴るような気分だった。
オスカーが彼女の手首をつかんでいた。
そのまま力を込めて腕を引いた。
驚いたレリアは、そのまま引き寄せられてオスカーの体の上に倒れ込んでしまった。
なんとか体を起こそうとしたが、手首から離れたその手はいつの間にか彼女の腰に回っていた。
まるで獲物を捕まえた蛇のように、彼の腕がレリアの心がかき乱す。
レリアは頭が真っ白になった。
彼から離れようと身じろぎしていたとき、耳元にかすかな声が聞こえた。
「こわい。」
「……」
「雨が降ってる、レオ。」
「オ、オスカー様…!」
「雷が…僕を食べに来るよ。」
レリアは毛布をめくって彼の顔を見た。
心臓の鼓動がドクドクと響いている音が外にまで伝わるかのようだった。
頬は赤く染まっていたが、呼吸を見た限りでは発作が起きているようには見えなかった。
レリアは潤んだ彼の目をじっと見つめていたが、彼が震えていることに気づいた。
オスカーは怯えていた。
一瞬、レリアの鼻先がつんとした。
そのとき、腰を抱いていたオスカーの腕から力が抜けていった。
レリアはゆっくりと体を起こし、彼の前に立ち上がった。
どうすればいいのか分からず、ただ彼を見つめるしかなかった。
オスカーは体を起こし、毛布を抱きしめたまま、両手で顔を覆った。
「………」
レリアは苦しんでいる彼の肩にそっと手を置いた。
幼いころのように抱きしめてあげたかったが、それはできなかった。
そのとき、再び窓の外で光がちらりとした。
雷鳴が再び鳴り響く前に、彼はまたレリアに手を伸ばした。
オスカーは自分の肩を掴んでいたレリアの手を引っ張って、自分の腕の中に抱き寄せた。
「…レオって呼ばないで。」
「………」
ゴロゴロゴロ、ドーン。
再び雷の音が大地を揺さぶるように響いた。
オスカーは微動だにせず、彼女に尋ねた。
「代わりに僕を抱きしめてくれる?」
「………」
「さっき言ったでしょ。僕、雨も雷の音も嫌いなんだ。いや、正確にはゾッとして怖いんだ。」
「オスカー様……」
「息が詰まりそうで怖い……死んでしまいそうなんだ。」
かすかな声には哀しみがにじんでいた。
レリアは震える彼の手の感触と声を拒むことができなかった。
だから彼女はそっと手を取って、彼の頭を引き寄せて抱きしめた。
オスカーはおとなしく近づいてくる彼女の体を引き寄せ、彼女の腰に顔をうずめた。
そして苦しそうに大きく息を吸って、吐いてを繰り返した。
レリアは彼を愛おしく思う気持ちで、彼の背中に手を回した。
一瞬、手が背中へ下りかけたが、肌には触れられず、再び頭をなでた。
柔らかな銀色の髪が手先に感じられた。
レリアは目を閉じて、オスカーを落ち着かせようとしながら、幼い頃を思い出した。
目を閉じると、レリアの前には幼い頃の「レオ」がいた。
側でしくしく泣いている幼いオスカーを抱きしめて、落ち着かせ、慰めながら、レリア自身もまた慰めを受けた。
彼を抱きしめて癒すたびに、レリアも心の慰めと癒しを得ていた。
だが、幼い頃の記憶を思い出しているレリアとは違い、オスカーは鋭いまなざしを浮かべながら、レリアの腰をさらに強く引き寄せた。
暗い幕の中で、彼の赤い目は微妙な光で輝いていた。
彼の唇はわずかに上がっていた。
それでも彼は、か細い嗚咽をもらす弱々しい息づかいのなかで、子羊のように彼女の腰に腕を回していた手をそっと離した。
獰猛な獣が尾を巻いて獲物を飲み込むような内なる野獣の気配など知る由もなく、レリアはただ哀れな子猫のような嗚咽を慰めるように、彼を惜しみなく撫でていた。
幸いにも朝になると、雨はすっかり止み、日が差し込んだ。
レリアとオスカーは朝早くに幕をたたみ、出発した。
馬に乗ったレリアは、自分の腰に腕を回すオスカーの自然な手つきに、心の中で静かに息をついた。
昨夜、オスカーはほとんど夜明けまで彼女の腰に顔を預けたまま抱きしめていた。
レリアは稲光が近づく頃になってようやくオスカーを押しのけ、彼が眠りにつくまでそばで見守っていた。
それがきっかけだったのか?
今やレリアの腰に腕を回すオスカーの態度は、まるで当然のようだった。
「行かないの?」
出発しないのかとでも言うようなオスカーの言葉が耳元に聞こえてきた。
レリアは唇を引き結びながら、手綱を握りしめた。
数日が過ぎ、シュペリオン領地の近くまで疲れが出てきていた。
気持ちとしては、もう少しの距離だから休まず走り抜けたいところだったが、森を抜けるにはもう夜が遅すぎた。
疲れて道に迷えば、むしろもっと時間がかかるかもしれなかった。
そのため今夜は、森に入る前にある小さな村の旅館で一泊することにした。
「ここで待ってて。部屋があるか聞いてくる。」
「……はい。」
レリアはオスカーの言葉に返事しながらも心の中で思った。
――まさか、部屋がないなんてこと、ないよね?
ここは観光都市でもなく、本当に小さな村なのに。
自分たち以外にも客がいるかもしれない、という意味だった。
レリアは何の心配もせずに、別館の隣にある馬小屋に馬を入れた。
その後、馬小屋から出ると待ち構えていたオスカーがぽつりと言った。
「入って。」
レリアは手綱を引きながら彼の案内に従って部屋へ向かった。
今日ここで十分に休み、明け方から出発すれば、午後には領地の城に到着できるだろう。
そう思うと、胸が高鳴り、わくわくと喜びがこみ上げた。
部屋は狭かったが、思ったよりも清潔で暖かかった。
だが部屋の中に入っても、オスカーが出て行く気配は見られなかった。
「……?」
レリアは怪訝な目でオスカーを見つめた。
「部屋は一つしかなかった。」
「……なぜですか?」
「さあ、知らないよ。」
オスカーは何が問題かというように答え、レリアは気まずそうに喉を鳴らした。
もっとも、オスカーは彼女のことを男だと思っていた。
それに、いつも感心したように彼女を守るようについて回っていたし、今さら変な誤解を生むのはおかしいことだった。
レリアは心の中で大きくため息をついた。
誤解が積もり積もった友人たちとの関係を、どうやって解けばいいのだろうか。
どうすればいいか途方に暮れた。
前回の小屋のときのように、レリアはベッドで、オスカーはソファで眠ることにした。
狭い客室の中、小さなテーブルの上には宿屋の主人が用意してくれた温かい食事が置かれていた。
スープをすすりながら、レリアはオスカーをちらちらと見た。
食事をしながら、ふと疑問が湧いてきた。
『でもこの人、なんで好感度が上がらないの?』
ここまで一緒に過ごしてきて、かなりの時間が経ったというのに、まだクエストも発生していない。
カーリクスやロミオのときと比べると、何かがおかしかった。
「思い出したついでに確認してみよう。」
レリアは視野の右側にある構成を見ながら、好感度のウィンドウも開いた。
オスカーの好感度を確認してみるつもりだった。
【特別好感度対象者〈オスカー〉様の好感度を確認しますか?(。・‿・。)✧】
「うん、確認してみよう。」
そう心の中で答えて、水をひとくち飲んだときだった。
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突然、緊急メッセージのように赤い光が点滅した。
「え?」
レリアは初めて見る画面に驚いて立ち止まった。
同時に魚を持ったオスカーと目が合った。
「……」
オスカーの視線は微妙にレリアの目の前、虚空を見つめていた。
レリアは誰かに心臓をつかまれたような気分だった。
何も考えられなかった。
背筋を走る震えが全身に広がっていった。
緊張したまま彼を見つめると、オスカーはゆっくりと視線を下ろしたかと思うと、またチラリとレリアを見た。
まるで彼女をじっくり観察するかのような目つきに、レリアは思わず視線を逸らしてしまった。
「君、妙な力を使ってるね。」
「……っ!!」
レリアはドクンと心臓が落ちるような気持ちになり、もう一度彼を見た。
昨日から、いや逃亡中にオスカーに会ってから、彼女の心臓は休まることがなかった。
だがこれはまた別の問題だ。
オスカーは低い声で警告した。
「何かは分からないが、危険なはずだ。グリフィスに再び会うことになったら、彼の前では気をつけたほうがいい。」
「…な、なんのことですか。」
レリアが知らないふりをすると、オスカーは口元を少し上げて冷たい水を飲んだ。
そして席を立ち、片腕をテーブルの上に置き、腰をかがめてレリアの耳元に顔を近づけた。
まるで秘密の話でもするかのように、彼は耳元でささやいた。
「先にシャワーしてくるから、待ってろ。」
なぜか意味深に感じられる落ち着いた口調だった。
しかしレリアはまったくそんなつもりで受け取れず、少し前にオスカーが言った言葉にあまりに驚いていた。
オスカーはそんな彼女を見て、ふっと笑って部屋の奥の浴室へと入っていった。
「はあ……」
彼の姿が消えるや否や、レリアは胸に手のひらを当てて息を整えた。
手のひらの下で心臓が狂ったように跳ねていた。
『何を見たの……?』
不安になって、レリアは心の中で錬金に呼びかけた。
『ねえ、錬金……まさか、あなたのメッセージウィンドウが他の人に見られたりしたわけじゃないよね?』
【情報閲覧不可対象者のためクエストシステムが調整されます。≡(°◇°≡) 更新にはしばらく時間がかかります。】
『今それが重要じゃないでしょ!オスカーの目にゲーム画面が見えたりしてないよね?』
【システム画面はご主人様以外には誰にも見えません!(  ̄‿ ̄ )】
『じゃあさっきオスカーが見たのは何?』
【確認できません。】
『じゃあ、確認してみて。』
【確認できません。】
これは本当に……。
レリアは唇を強く噛みしめた。
だが、オスカーも正確には言っていないところを見ると、確実に見たわけではなさそうだ。
頭がぼんやりして何度かまばたきしていると、突然今まで見えなかったものが目に入ってきた。
メニューの中で一番小さな「お知らせ事項」部分。
もともと存在するメニューだったが、この世界に来てからは気にする必要がなかったものだった。
だが今見てみると、その部分に小さく赤い印がついていた。
以前はなかったものが表示されていたのだ。
『なんだ?』
通知事項?
不安な気持ちで通知事項をクリックしてみると、ポップアップが表示された。
【ドドン!3日後!異世界《錬金復権》大規模アップデート予定!本編ゲームの一部パッチが適用可能です。アップデートに同意しますか?( •͈ᴗ•͈)σ–ღ】
•パッチ内容を詳しく確認する•
[同意します][同意しません]
レリアは信じられずにまばたきをした。
つまり、前世の世界のようにゲームがアップデートされる予定だという話だった。
妙な気分だった。
『錬金復権』というゲームは、可愛らしいイラストで人気を集めたが、退屈で繰り返しの多いクエストや現金誘導がひどく、ユーザーの離脱が多いゲームでもあった。
さらに、死ぬ直前にはゲーム会社が新しいゲームを作っているとされ、アップデートには非常に慎重だったという。
名節(旧正月や秋夕)などのときにイベントが出たり、課金を促すパッケージが出ることはあったけど、それくらいだった。
それなのに、大規模アップデートだなんて?
このゲームを愛していた元ユーザーとして、胸が高鳴った。
さらに、その大規模アップデートの内容が一部ここにも適用されるなんて、同意しない理由はなかった。
『それでも、念のため。』
レリアはパッチ内容をまず確認してみることにした。
※該当ユーザーが利用中の《煉金復権》システムは、元のゲームとは異なり、特定の「条件」により自動で変形されます。
•異世界の原本パッチが一部適用され、調整・最適化されます。
•週間パッケージ、月間パッケージが生成されます。
•特別イベントが生成されます。
•新しいドラゴンが追加されます。
•新しいレシピ、材料、クエストが追加されます。
•新しい業績が追加されます。
•セキュリティが強化されます。
パッチを適用しますか?
[同意します][同意しません](※この世界の環境に合わせて一部調整し、最適化されます。)
レリアはその内容を見て目を細めた。
『“詳しく”という単語の意味を知らないのか?』
簡単な説明に少し苛立ちはしたが、それでも嬉しい気持ちになった。
しかもセキュリティ強化とは。不安でも、これはやらなければいけない。
レリアは迷わず同意ボタンを押した。
『レシピが追加されれば、賢者の石はもっと遠のくな……』
それでも得になるパッケージが出れば、損ではない。
1億クリスタルを叩いて現金で集めようとすれば1000億シリングが必要だが、割引パッケージのようなものを利用すれば、それより安くクリスタルを購入できるからだ。
【パッチに同意されました。٩(•ㅂ•)و 大規模アップデートは3日後に実施されます!】
最後のアラートウィンドウが消えるやいなや、オスカーが浴室から出る音が聞こえた。
「服を着ろよ。」
レリアは上着を脱いだ彼を見て、目をそらしながら見ていなかったふりをして彼の横を通り過ぎた。
こっくりと眠ったあと、静かに身支度を整え、音も立てずにベッドに戻った。
領地に向かう前、最後の夜はこうして静かに過ぎていった。










