政略結婚なのにどうして執着するのですか?

政略結婚なのにどうして執着するのですか?【112話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【政略結婚なのにどうして執着するのですか?】まとめ こんにちは、ピッコです。 「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。 ネタバ...

 




 

112話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 死にたい理由

大会場から聞こえる音楽の音が風に乗ってここまで流れてきていた。

ナディアはかすかに聞こえる笑い声と音楽を背にしながら歩みを進めていた。

随行者は一人もおらず、ただ右手に持ったランタンだけが唯一の同行者。

ナディアはゆっくりと足音を運びながら、龍が言っていた言葉を思い返していた。

「つまり、魔法っていうのは……代価が必要だってこと。魔法の副作用として願いをかけた者に代償が残るってわけ。だから時間を巻き戻した瞬間から、彼が覚えていたかどうかにかかわらず、タクミには呪い(呪詛)がかかっていたってわけ。」

「呪詛……?」

「私に願いを託し、叶えたいことが叶わなかったとき、記憶の封印が解けて過去を思い出すようになるんだ。もしその記憶が戻ったなら……さらに苦しくなるかもしれないからね。」

「叶えたかったことが叶わなかったって?それって具体的に何?」

「それは私もわからない。むしろ、私が聞きたいくらいだよ。その人間の個人的な問題なら……君のほうが詳しいんじゃない?」

つまり、結論としては正確な状況は分からなかったということだ。

そんな曖昧なことを言われたら、眠れるはずがない。

ナディアは一人ベッドに座り、手がかりになりそうなことを思い返していた。

タクミが記憶を取り戻したのはいつ頃だったのか?

彼の言動から推測するに、おそらく数日前だっただろう。

『龍に願いをかけたのに、結局叶わなかった時……それが数日前だったってこと?』

そもそも彼が龍に願いをかけた理由は何だったのか?

間違った選択を取り戻すために、いや、ナディアの命を救うためだった。

『それはもう叶ったんじゃない?』

彼はすでに生きて呼吸している。

ということは、彼が本当に叶えたかった願いは自分の命を救うことではなかったということだ。

ナディアはまた思案に沈み、彼の告白を思い出す。

利己的で騒がしい愛だったが、彼が自分を求めていた気持ちだけは真実だと信じていた。

ナディアが問い詰めようとしていたこととは関係なく、彼の告白は真実だった。

時間を巻き戻そうとするほど切実な思いだったのだから。

つまり、タクミが最も叶えたかった願いはおそらく……

「私が自分の気持ちを受け入れてくれる可能性が高まること。」

だとしたら、なぜ彼は突然、過去の記憶を取り戻したのだろう?

『まさか。』

足音を刻んでいたナディアの動きが一瞬止まった。

タクミにフォロが取り憑く前、彼女はグレンへの自分の想いを自覚していた。

それが影響を与えたのだろうか?

『でも、あの時点で私はその男と会話どころか、遠くから存在を確認したことすらなかったじゃない。私がグレンを愛してるって、どうやって知ったの?読心術でも持ってるわけじゃないのに……。ああ、魔法がそんな現実的な条件を考慮するなんて、それこそおかしな話よね。』

こじつけではあるが、意外と納得できる理由だった。

タクミは時間を巻き戻して、成就しなかった愛を叶えようとした。

しかし、ナディアが別の男性への想いを抱いたことで、彼の願いは永遠に叶わないものとなってしまった。

その瞬間、**「呪い」**が発動し、記憶が蘇った。

さらに苦しみを増すように……

「………」

なぜか、気持ちがモヤモヤした。

タクミが私の前で自分の過ちを悔いて、過去に戻りたいと告白していたその時点で……彼はすでに気づいていたということだ。

自分の願いが決して叶わないということ。

自分の過去の記憶が戻ってきたというのは、そういう意味だということを。

『それを分かっていながらも………』

それでも、なお必死に抗っていたのだろうか?

人をフォロに取り憑かせてまで無理に引き戻そうと?

すでに望みがないとわかっていながらも?

ナディアの予測が正しければ、その男の本心はとても切ないものだった……胸が締め付けられた。

「侯爵夫人……?」

ぼんやりと歩いていたら、いつの間にか目的地にたどり着いていた。

ナディアは自分を呼ぶ声に反応して顔を上げた。

皆が勝利の喜びに浸っている間にも、黙々と働かなければならない哀れな者たちがいた。

その目の前にいたのは兵士たちだった。

それは、まさに監獄の入り口を守っていた兵士たち。

まさかここまで高貴なお方が来られるとは思わなかったようだった。

兵士たちが驚いた目でナディアを見つめた。

「い、一体どうなさったのですか?」

「少し話をしたい人がいて。少しだけ時間をもらえれば。」

「そ……その件、領主様はご存知なのですか?」

「いいえ、衝動的に来ただけです。ほんの少しだけです。」

「………」

「…………」

見張りをしていた兵士たちは互いに困惑した視線を交わした。

すると、そのうちの一人が勇気を出して言った。

「ですが、奥様。危険かもしれません。」

「5分。5分だけでいいの。たった5分間よ。忙しい侯爵様をお呼び立てしたくはないでしょう?それに、大広間まで行くには遠すぎるわ。」

「………」

「私の身分は確かでしょう?まさか、私が脱獄させようとしているとでも疑っているの?」

「そ、そんなはずがございません!」

「では失礼するわ。監獄の鍵を開けてちょうだい。」

「こ、侯爵夫人!」

ナディアは困惑した顔の兵士たちを通り過ぎ、牢屋の中へと入っていった。

幼いころに住んでいた公爵城なので、構造が目に馴染んでいた。

階段を下りて何度か方向を曲がると、独房がある空間が現れた。

そしてその空間の中でも最も奥まった場所。

その場所にタクミが閉じ込められていた。

壁にもたれかかり、何かを考えているのか表情の読み取れない顔で。

彼はナディアが近づいて提灯を差し出すまで、顔を上げなかった。

まぶしさのせいでまぶたをわずかにぴくりと動かしただけだった。

ついにナディアは口を開いて言った。

「タクミ卿。」

「……?!」

すると、それまで無関心だった態度が嘘のように、彼は驚いたように顎を持ち上げた。

見上げたその瞳は大きく見開かれていた。

ナディアはようやく彼の顔立ちをはっきり見ることができた。

顔がやつれているのはもちろん、体中にもあちこちに包帯が巻かれていた。

彼は目の前に見えるものが信じられないかのように何度かまばたきしながら、慎重に口を開いた。

「まさか、侯爵夫人ですか?」

「はい、そうです。」

「幻じゃなかったんですね。本当に。」

彼はそう言いながらも、しばらくの間、目の前の現実を受け入れられない様子だった。

ようやく正気を取り戻した彼が口を開いて尋ねた。

「ここには……どんなご用件で?」

「チャンスを与えに来ました。」

「チャンス……?」

「こうなってしまったとしても、時間を戻そうとした努力したことは認めます。私にだけ記憶を残してくれたおかげで、良い機会をたくさん得られました。だからこそ、私は選ぶのです。」

そう言ってナディアがローブの袖から取り出したのは、青く輝く短剣だった。

彼女はそれを窓の向こうに放り投げた。

チャキン。

剣が石の床に落ちる音が冷たく響いた。

「あなた、すぐに処刑されますよ。それをご存じですか?」

「はい。私が侯爵家の立場であっても、後悔はしません。ところでこの短剣は何ですか?サーカスの猿のように輪くぐりしろっていうんですか?それとも切腹しろと?」

彼がナディアが投げてよこした物を拾い上げてふっと笑った。

どこか楽しげに見える笑いだった。

「これで右腕を使えなくしてください。生涯、剣を握れないように。」

「………」

「命は助けてあげられます。死刑は免除してあげます。ただ、終身刑になるでしょうけど……死ぬよりはましでしょ?そうじゃないですか?」

「………」

「それと、ひとつだけ確かにしておきたいことがあります。私があなたを助けるのは、あのうるさい懇願のせいではありません。…だから、勝手に勘違いしないでください。」

その言葉を口にしたとき、ナディアはとても重要なことを強調するように、ことさら一語一語区切って話した。

「それなら、なぜ私に機会をくださるのですか?」

「聞いてください。あなたが私を裏切ったのは事実ですが、私を生かしてくれたのもまた事実です。そのおかげで私は前世よりもずっと豊かな人生を送ることができました。だから、あなたの裏切りはそれで償われたと考えます。」

「……」

「今私があなたに機会を与えたのは……あなたから学んだことが多いからです。もしあなたが私に何も教えてくれなかったなら、私は今ここにいなかったでしょう。その代わりに、ここから生きて出られたとしても、あなたと私の間には何の恩義も残っていません。」

「………」

「正直な答えが聞きたくて。看守に5分だけ時間をくれって言ったから、すぐに出ないといけないんです。」

タクミは口元だけをわずかに上げて笑った。

なぜか、すぐに彼の口から出る答えが分かるような気がした。

「私の答えは、拒絶です。」

「………」

「私は死を選びます。」

「生きるチャンスをあげると言っても?」

「はい、私からも一つだけ確かにお伝えしておきたいことがあります。私がナディア嬢の提案を断ったのは、あなたに対して何らかの罪悪感のようなものを残すつもりはないからです。私が死にたい理由は……」

「……」

「いつからかそんなふうに思っていたんです。私が故郷に戻れる唯一の方法は、もしかしたら“死”しかないのかもしれないって。」

「でも、それで本当に死んでしまったら?それで終わりだったら?」

「それならどうしようもないですよ。ただ死ぬしかありません。」

「……」

説得は意味のないことだ。

彼の心を変えようとする代わりに、彼女は諦めたように体の向きを変えた。

看守と約束した5分が終わろうとしていた。

「それは置いていきます。夜通しよく考えてみてください。」

そう言って数歩歩いたその時だった。

背後から彼の声が聞こえてきた。

「お元気で。」

ナディアがタクミの知らせを聞いたのは、その翌日だった。

短剣で首を切って自決したという知らせだった。

その話を聞いた彼女は窓の外を見つめた。

そして顧客の方を振り向くことなく答えた。

「遺体は化粧して飾ってください。」

 



 

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