こんにちは、ピッコです。
「悪役令嬢の推しに選ばれました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
39話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 本当の友達
しばらくして。
一人の男性がゆっくりと礼拝堂の中へ入ってきた。
額に柔らかくかかる淡い茶色の髪。色素の薄い空色の瞳と整った顔立ち。そして、きちんと着こなした司祭服――それはまるで、神の教えを広めるために天から舞い降りた聖人のような姿だった。俗世の穢れをまったく知らないかのような、穏やかで優しい微笑みをたたえている。
その姿を見た司祭は、驚愕の表情を浮かべて声を漏らした。
「エバンス首席司祭様?」
アイザック・エバンス。
史上最年少で首席司祭となり、高位の司祭たちからも厚い信頼を寄せられる神殿の至宝だった。
驚いた司祭が、おそるおそる尋ねる。
「でも、首席司祭様がこちらへ来るなんて、一体どういうことなんでしょう……?」
もちろん先ほど、クラウディウス公女が面会を申し込んではいた。けれど、それは首席司祭側から断られたはずではなかったか。
そのとき、アイザックは人差し指を唇に当てた。
「シーッ。」
空色の瞳が、少し離れた場所に立つセラフィナへ向けられる。セラフィナはまだ衝撃から立ち直れず、呆然と立ち尽くしていた。
アイザックはそんな彼女をしばらく見つめ、「ふむ」と口元に意味ありげな笑みを浮かべる。
「面白い。」
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私は、一体どういう気持ちで公爵家のタウンハウスへ来たのか、自分でも分からなかった。
部屋へ向かう途中も、公女様は心配そうな表情で私に尋ね続けた。
「大丈夫ですか?」
「ちなみに、この質問、馬車の中でももう五回くらい聞かれた気がする……」
私は力なく答えた。
「はい。大丈夫で――」
「どこが大丈夫なんですか?」
私の返事に、公女様は目を丸くしてぴしゃりと言い返した。
(いや、「大丈夫?」って聞いたのは公女様ですよね……?)
私はうつろな目で公女様を見つめた。
「こんなにびしょ濡れなのに、大丈夫なわけないじゃないですか」
けれど、公女様はどうしたらいいのかわからない様子でおろおろしていたので、私は大人しく口を閉じることにした。
「少し待っていてください。すぐにお医者様を呼びますから。いいですね?」
まさか、この程度で診察まで受けることになるの?
慌てた私は口ごもった。
「いえ、本当に大丈夫ですから……」
「それでも、念のためです! 驚きすぎると体に負担がかかりますから! あとで具合が悪くなるかもしれません!」
公女様は畳みかけるように言った。正直、私は少し気恥ずかしかった。大きな事故に遭ったわけでもなく、ただ少し水をかぶっただけなのだから。そこまで心配されるようなことでもない。
そんなときだった。
「エヴァ?」
聞き覚えのある優しい声が、公女様を呼んだ。耳に心地よく響く声。振り返ると、公爵様が不思議そうな表情でこちらを見ていた。
「今日は大神殿へ行くと言っていたのに、どうしてこんなにびしょ濡れ……いや、待って。」
その瞬間、公爵様の目が鋭く細められた。
「レディ・アンシは、どうしてそんなに濡れているのですか?」
「それがね、レディ・ロペスのせいなの!」
公女様が勢いよく答えた。
「レディ・ロペス?」
公爵様は眉をひそめる。
「レディ・ロペスが私に水をかけようとしたの。でも、レディ・アンシが間に入ってくれて……!」
公女様は息つく間もなく事情を説明し続けたが、やがて我に返ると首を横に振った。
「いいえ、詳しい話は後です。今はお医者様のところへ行かないと」
「どうして医者なんだ?」
その瞬間、公爵様の表情が険しくなった。
「まさか、レディ・アンシ様が怪我でもしたのか?」
「いいえ、怪我はしていません!」
誤解がどんどん大きくなっていきそうな気がして、私は慌てて口を挟んだ。
「ただ少し濡れただけで……」
「そうか。風邪でも引いたら大変だからな」
「えっ?」
しかし、公爵様はすでに公女様へ向かってうなずいていた。
「すぐにレディ・アンシを医者のところへ連れて行きなさい」
「ほら、お兄様も私が正しいって言ってるじゃないですか!」
そう言いながら、公女様は私の手をしっかり引いてタウンハウスの中へ入っていった。
私の瞳は揺れた。
(いえ、本当に大丈夫なんですけど!?)
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一人残されたディートリヒは、複雑な表情を浮かべていた。
(レディ・ロペスがエヴァに水をかけようとした、だって?)
おそらく故意ではないだろう。レディ・ロペスは教会内でも評判の良い人物で、自らその評判を損なうような真似をする理由はない。しかも、エヴァンジェリンはクラウディウス公爵家のただ一人の令嬢だ。二人の仲が良くないことは知っているが、大勢の前でエヴァンジェリンに危害を加えるなど……。
(あまりにも危険すぎる。)
調べた限りでは、レディ・ロペスは聖杯そのものをとても大切に扱っていた。おそらく何らかの手違いがあり、そのときレディ・アンシがエヴァンジェリンをかばったのだろう。
「……」
青い瞳が静かに沈んだ。
レディ・アンシが妹を気にかけ、守ってくれていること自体は、もちろん嬉しい。しかし――。
(少しはご自身のことも大切になさってください。)
そう言いたかったが、うまく言葉にはできなかった。とにかく、エヴァンジェリンが無事でよかった。
それでも――。
レディ・アンシがあんなにもずぶ濡れの姿で戻ってきたことが、なぜだか気にかかった。全身びしょ濡れの姿はあまりにもか弱く、放っておけないほど痛々しく見えた。……思わず手を差し伸べそうになった。
(いったい、レディ・ロペスとの間で何があったんだ?)
セラフィナ・ロペス。
靴の中に入り込んだ小さな小石のように、いつもどこか引っかかる存在。以前、アンシ作家のパーティーでもそうだったし、今回もまた……。
(なんとなく気に障る)
理由のわからない苛立ちに、ディートリヒはぎゅっと顎に力を込めた。
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・
公女様の命令で呼ばれた医師は最善を尽くして私を診察してくれた。まるで重症患者を診るかのような勢いだった。医師の立場なら、それも当然だ。公女様があれほど今にも泣きそうな目で見つめているのだから、考えられることは何でも確認するしかない。
そして――
「レディ・アンシはとても健康です。」
もちろん、私の体は至って健康だった。
「本当に大丈夫なの?」
公女様は目を丸くして医師に詰め寄る。
「風邪の兆候は? 驚きすぎて動悸がするとか、めまいがするとかは!?」
「現在のご様子を見る限り、そのような症状は見受けられませんが……」
「それでも万が一ってことがあるでしょう? もしレディ・アンシがあとから倒れたりしたらどうするの?」
「ご安心ください、公女様。」
医師は冷や汗を流しながら、公女様をなだめた。
「本当に問題ありません。」
「本当? 本当に?」
「はい。私が公女様に嘘を申し上げるはずがございません。」
「本当に異常はないんですか?」
何度も医師から「問題ありません」と聞かされて、ようやく公女様は少し落ち着きを取り戻した。
その後――。
「では、私はこれで失礼いたします」
医師が部屋を出ていくと、室内には気まずい沈黙が流れた。
さっきまでは公女様があまりにも慌てていたせいで、私もその勢いに飲まれていたけれど。私はそっと公女様を横目で見た。
(もう少し落ち着かれたのかな?)
最近、何かと思い詰めているように見えていたから。
すると、公女様が遠慮がちに私を呼んだ。
「レディ・アンシ」
「はい、何でしょうか」
「その……さっきの……」
私の様子をうかがっていた公女様は、ぎゅっと目を閉じて意を決したように言った。
「ほかのレディたちと話していたことを盗み聞きしてしまって、ごめんなさい」
ああ、そのことですか。私は肩をすくめて答えた。
「大丈夫ですよ。もう気づいていましたから。」
「ほ、本当ですか?」
「はい。柱の後ろからドレスの裾が見えていましたから。」
私は目を細めて微笑んだ。
「次から隠れるなら、ドレスの裾まできちんと隠したほうがいいですよ。」
「あぅ……」
公女様の顔は、熟したリンゴのように真っ赤になった。
「ど、どうして教えてくれなかったの!?」
「教えるタイミングをくださいましたか?」
痛いところを突かれた公女様は、むっとして口を閉じた。
しばらくして――。
「とにかく、今日は本当にありがとう。」
公女様はため息交じりに言った。
「でも、もう二度とこんなことはしないでください。」
「公女様?」
「私の代わりにレディ・アンシが水をかぶるなんて……なんて言えばいいのかな。」
公女様は唇をきゅっと噛んだ。
「私までレディ・ロペスと同じような人間Vになってしまった気がするの。」
「そうですよね」
その瞬間、私は言葉を失った。
「私たちは友達ですよね。だから私は……」
公女様は大きく息を吸い込み、私の言葉を遮った。
「友達が私の代わりにひどい目に遭うなんて、絶対に嫌なんです」
何か返そうとした私は、ただ唇をきゅっと結ぶことしかできなかった。胸の奥がざわつく。いつもなら公女様は決まってこう言っていた。
「私たちは友達契約を結んだ仲ですから。だから気にしているだけですよ!」
……今日は、その言葉を口にしない。
その時、公女様はごくりと唾を飲み込んだ。まるで人生で一番大切な告白をするかのように、真剣な眼差しで私を見つめる。
「レディ・アンシ」
「はい」
そのあまりにも真剣な声に、私は思わず背筋を伸ばした。
「私、自分が今までこんなにも理性的じゃなかったんだって気づいたんです。」
公女様は膝の上で両手をぎゅっと握りしめた。
「私たちはもう大人なのに、私がレディ・アンシを独り占めできるわけじゃないのに。」
「公女様?」
「レディ・アンシがほかのレディたちと一緒にいると、とても楽しそうに見えたんです。それで私は……」
公女様はうつむいた。
「嫉妬していたんです。」
嫉妬?
私は思わず目を見開いた。公女様は私と目を合わせないまま、小さな声で続けた。
「正直に言うと、最初は私の評判のせいで、レディ・アンシが私と一緒にいてくれているんだと思っていました。」
「……それは。」
「でも、今は違います。」
公女様はふっと顔を上げた。湖のように澄んだ青い瞳が、まっすぐ私を見つめていた。
「私、レディ・アンシのことを本当に大切な人だと思うようになりました。だから――」
震えていた声は、もう揺らがなかった。公女様はまっすぐに宣言した。
「もう『友達契約』でつながった関係じゃなくて、**本当の友達になりたいんです**」
……え?
私は自分の耳を疑った。
公女様は一言一言、確かな気持ちを込めて続ける。
「レディ・アンシは本当に素敵な人です。これから先、私以外にもたくさん友達ができると思います。それでも……」
そこで一度言葉を切った公女様は、おそるおそる私に尋ねた。
「これからも、私がレディ・アンシの一番の親友になってもいいですか?」
ああ。
その瞬間、胸の奥から熱いものが込み上げてきた。誰かが、こんなにも真剣に私を大切に思ってくれたのは、生まれて初めてだった。……それが公女様だなんて、夢にも思わなかった。
(どうしよう。)
胸がいっぱいになった。今にも涙があふれそうで、私はそっと唇を噛んだ。
(嬉しすぎる……)
一方、公女様は私が黙ってしまったのを見て、不安そうな表情で私の顔をのぞき込んだ。
「レ、レディ・アンシ?」
「……はい。」
喉が詰まってしまったのだろうか。うまく声が出ない。公女様は小首をかしげた。
「え? 何て言いました?」
その姿が、飼い主を見上げる猫のようで。私は涙ぐみながらも、思わず笑ってしまった。
「嬉しいです。」
「えっ、本当に?」
公女様は驚いたように目を丸くして私を見つめた。
私は大きくうなずいた。
「はい。私もずっと……」
込み上げる涙を必死にこらえながら、私は晴れやかに微笑んだ。
「私も、公女様の一番の親友になりたいです」
その返事を聞いた瞬間、公女様は大きく息を吐き、力が抜けたようにその場へへたり込んだ。
「はぁぁぁぁ……」
「こ、公女様!?」
驚いて私が見つめると、公女様は今にも泣きそうな顔で私にしがみついた。
「私、本当に緊張していたんです」
「え? どうしてですか?」
「レディ・アンシに断られたらどうしようって……」
「そんなこと、あるわけありません」
私は首を横に振り、心を込めて続けた。
「むしろ、公女様がそう言ってくださって、本当に嬉しいです」
その言葉に、公女様は言葉を失ったような表情で私を見つめた。嬉しさ、安堵、幸せ、感激――さまざまな感情が入り混じった表情だった。
「それじゃあ、もう『友達契約』はやめにしましょう」
「はい?」
公女様の問いに、私は穏やかにうなずいた。
「はい。それと、友達契約書も見直すことになりましたので……」
私は、ずっと心に引っかかっていたことを口にした。
「品位維持費を支払うという条項も、なくなりますよね?」
「え?」
公女様は一瞬きょとんとして私を見つめた。
「その条項、わざわざなくす必要がありますか? そのくらいは受け取ってもいいんじゃないですか?」
「公女様がお気遣いくださっていることは、よく分かります。」
そう前置きしてから、私は少し言葉を選んだ。お金の話はどうしてもデリケートだ。特に相手が公女様だからこそ、誤解されたくなかった。大切な人に誤解されるのは、なおさら嫌だった。
「でも、本当の友達というのは、お金でつながる関係ではなく、心でつながる関係だと私は思うんです。」
「はい……」
「もちろん、公女様が私のためを思って、あの条項を入れてくださったことは分かっています。これまでずっと、私をその分だけ気遣ってくださっていたことも」
そこまで言って、私はにっこりと微笑んだ。
「でも、一方的に受け取るだけの関係は……やっぱり居心地が悪いんです」
実は私は、友達契約を結んでからというもの、公女様からいただいた品位維持費には一切手をつけていなかった。もともと私の家は、そこまで生活に困っていたわけでもない。セラフィナへ流れていたお金を止めたことで、家計にもかなり余裕ができていた。
何より――
(友達同士でお金を受け取るなんて、おかしいでしょう?)
契約を結んだ当時は、友達契約を結べた嬉しさで頭がいっぱいで、そのことに気づけなかったけれど。いつかは、あの条項をきちんと整理しようと決めていた。
(むしろ、こうなってよかった)
私は満足そうに頷いた。
1. 聖堂での動き
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首席司祭の登場: 礼拝堂に史上最年少の首席司祭アイザック・エバンスが現れ、呆然とするセラフィナを見て「面白い」と意味深な笑みを浮かべる。
2. タウンハウスへの帰還と騒動
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びしょ濡れの帰宅: レディ・ロペスが公女(エヴァンジェリン)に水をかけようとした際、アンシが間に割って入ったため、アンシがずぶ濡れになってしまう。
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過剰な心配: 公女やディートリヒ公爵はアンシの体を本気で心配し、すぐさま医師の診察を受けさせる。医師の診察の結果、アンシの体は「至って健康」だった。
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ディートリヒの内心: ディートリヒは、ロペスが意図的に危害を加えたとは思えないものの、アンシが無事でホッとした反面、ずぶ濡れでか弱げだった姿が妙に気にかかり、セラフィナに対して理由のわからない苛立ちを覚える。
3. 本音の告白と「友達契約」の解消
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公女の嫉妬と本心: 公女は、アンシが他のレディたちと楽しそうにしている姿を見て嫉妬していたと打ち明ける。そして、これまでの「友達契約」という形ではなく、「本当の友達(一番の親友)になりたい」と涙ながらにまっすぐ想いを伝える。
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アンシの返答: アンシもその想いに涙ぐみながら喜びを受け入れ、お互いの絆がより深く確かなものになる。
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品位維持費の条項の見直し: 本当の友達になるにあたり、アンシはこれまで受け取っていなかった「品位維持費」の条項をなくそうと提案。「お金ではなく心でつながる関係でありたい」と語り、二人は晴れやかな気持ちで新たな関係へと踏み出す。