メイドになったお姫様

メイドになったお姫様【107話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【メイドになったお姫様】まとめ こんにちは、ピッコです。 「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

107話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 奇跡のようなチャンス

アリスが皇太子宮を出てくると、宮の前にシアナが立っていた。

普段とは違う、複雑な表情を浮かべていたアリスはシアナに向かって言った。

「皇帝陛下との話は終えたわ。私が東部へ行くことになれば、あなたは皇太子宮へ移るように。」

その言葉に、シアナの瞳が揺れた。

アリスがそんなことを言い出したのは、昨日シアナがラシードの宮殿に行ってきた後のことだった。

皇太子宮へ勤務先を移せというアリスの言葉に、シアナは驚きを隠せなかった。

なぜ突然そんなことを、と問いかけるシアナにアリスが答える。

『あなたが言ったじゃない。東部に行けば皇宮と離れてしまうから、私に皇宮の消息を細かく知らせてくれる人を作っていくのがいいって。』

確かに、それはシアナ自身が提案したことだった。

『……皇宮の状況を綿密に把握して、素早く動いてくれる侍女を探して、殿下の情報網に加えるつもりだったのに……』

まさか自分にその役目が回ってくるとは、シアナは想像すらしていなかった。

アリスはまるで大したことではないかのように言った。

「私にとって、あなたほど賢明で信頼できる侍女はいないの。」

そうして、その役目を任せるのに相応しいのはシアナだと言わんばかりのアリスに、シアナは問い返した。

「本当に、その理由だけで私を残して行かれるのですか?」

「……」

シアナの言葉に、アリスは唇を噛んだ。

実際、アリスがこの決断を下したのは、ラシードが魔物に傷を負って戻ってきたときのシアナの姿を見てからだった。

蒼白に染まった顔、揺らぐ瞳。

アリスは認めざるを得なかった。

――シアナがラシードに抱いている想いは、想像以上に深く、そして切実であることを。

それでも、皇太子宮から戻ってきた後のシアナは、アリスにその胸の内を一言も明かすことはなかった。

シアナは「宮殿に残りたい」と一言も言わず、静かに東部へ向かう支度を整えていた。

そんなシアナの姿を見ながら、アリスは心の中で決意した。

『シアナ、私はあなたに幸せになってほしい。あなたのおかげで、私が幸せになれたのだから。』

だがその言葉を口にはせず、アリスはかすかに苦笑を浮かべながら告げた。

「実は、あなたを残していく理由がもう一つあるの。」

意味が掴めず視線を向けるシアナに、アリスは肩をすくめた。

「正直に言うと、私は少し離れていても大したことではないと思っているの。手紙で連絡を取り合えばいいし、会いたくなったら会いに来ればいいでしょう?」

「……」

「でも、優しくないお兄様は違うのよ。シアナ、あなたが遠くへ行くと聞いただけで、今にも死にそうな顔をしていたわ。」

冷淡さを帯びた顔で唇を歪めたアリスが続けた。

「だから人助けのつもりで、お前を残して行くことにしたんだ。もちろんお前には申し訳なく思っている。可愛くて気の利く私に仕えていたのに、そんなに小さくなって“ただの生き物”みたいな存在を仕えるなんて嫌だろう?」

「……」

アリスは足を組み替え、手を外した。

シアナはアリスの意図を察してひざまずいた。

その小さな手がシアナの丸い頬に触れる。

アリスはシアナと目を合わせて言った。

「でも結局のところ、お前が一番安全にいられる場所は兄上の宮殿だから、少しだけ我慢してくれ。私が東部から戻ってきて、お前を完全に守れるようになるまで。」

「……」

シアナは瞬きすらできず、アリスを見つめていた。

まだ十歳のアリスは、シアナの腰ほどの背丈しかなかった。

だが、この瞬間ばかりはシアナよりもはるかに大きく感じられた。

『いつの間にこんなに大きくなったのか。』

もうこんなに成長して、これから先はどれほど大きくなるのだろうか……。

シアナは目頭が熱くなるのを感じた。

それを隠すように、シアナは丁寧に腰をかがめた。

「姫様のご命令、承ります。」

幼い姫に向けられた声には、感謝と敬意が込められていた。

 



 

アリスはニニとナナにも、シアナが皇宮に残ることになったと伝えた。

その話を聞いたニニとナナが最初に見せた反応は――。

「では、私たちはどうなるのですか?」

「まさか、私たちも置いて行かれるわけではないですよね?」

不安そうな顔で自分を見つめる二人の侍女に向かって、アリスが言った。

「あなたたちは当然、連れて行くわ。あなたたちは私がいなければ生きていけないでしょう?」

アリスの言葉に、ニニとナナは胸をなでおろし、泣き笑いを浮かべた。

そしてシアナに何度もこう言った。

「シアナ様、アリス姫様のことは心配しないでください。」

「私たちが、ハエ一匹たりとも近寄らせずに姫様をお守りしますから。」

「東部に着いたら、すぐに護身術を学ぶつもりです。たとえ卑劣な連中が襲ってきても、姫様を必ずお守りします。」

「私は医術を学ぶつもりです。もし姫様に急を要することがあっても備えられるように。」

ニニとナナのきらきらと輝く瞳には、強い決意が込められていた。

『もしかすると数年後には、アリス姫様のそばには帝国最高の侍女たちがいるかもしれない。』

シアナはそんなことを思いながら、二人に書類の束を渡した。

「東部の文化とメディチアン侯爵家に関することをまとめた資料です。よく読めば姫様をお支えするのにきっと役に立つでしょう。」

ニニとナナは頭を使うことにはまったく自信がなかったが、それでも何とかやり遂げようという決意に満ちた表情で書類を受け取った。

その後、シアナが向かった先は皇太子宮だった。

「いらっしゃい、シアナ。」

いつものようにラシードがシアナを迎えた。

シアナは驚いた。

ほんの少し前に見たラシードの姿とはまるで違っていたからだ。

銀色の髪は光を帯び、紫の瞳には生気がみなぎっていた。

さらに、魔物に傷つけられた以前の傷跡がきれいに消えた肌は、まるで赤ん坊のようにすべすべだった。

『まるで結婚を控えた花嫁みたいに輝いているじゃない!』

目がくらむほどの光沢だった。

護衛騎士ソルは、まるでシアナの心を読んでいるかのように囁いた。

「シアナ様が皇太子宮にいらっしゃると聞いてから、あのように輝きを放つのです。あまりにも眩しくて直視できないほどです。」

「……」

「どんなに苦しい決断をしてくださったか、感謝します、シアナ様。おかげで生き延びられました。」

もしシアナが東部へ行ってしまっていたら、ラシードは病にかかった鶏のように塞ぎ込み、そのまま倒れていたかもしれない。

ソルは心からそう思っていた。

「ソル、余計に長々と喋るな。」

向こうから聞こえてきたラシードの声に、ソルは肩をすくめてすぐさま応接室を後にした。

緑が生い茂る応接室には、ラシードとシアナだけが残った。

二人の間にしばし静けさが満ちる。

数日前、ラシードと自分の間に漂っていた雰囲気を思い出したせいか、シアナは妙な気まずさを覚えた。

『それでも、言うべきことは言わないと。』

シアナが用意していた言葉を口にしようと唇を開く前に、ラシードが先に口を開いた。

「アリスがはっきりと俺に言ったんだ。東部に行っている間、一人残される侍女を任せるだけだって。」

「……」

「だから俺は、お前を大切に思う妹が託した侍女として扱うつもりだ。」

シアナは思わず唇を噛んだ。

それは、ラシードがこれから自分に礼を尽くすという意味に他ならなかったからだ。

しかし、ラシードの言葉はそこで終わらなかった。

「他の者たちがいる時だけはな。」

「え?」

「お前が言ったじゃないか。俺のお前への気持ちを皆に知られるのが怖いって。」

「……」

「けれど、俺の心が嫌だと言ったわけじゃない。」

「……!」

ラシードがシアナに一歩近づいた。

少し身をかがめ、シアナのエメラルド色の瞳を見つめたラシードは、その両目を優しく細めながら言った。

「だから、人目があるときは全力でお前を誘惑しようと思う。」

「……?!」

「お前が先に一線を越えて、俺に近づいてくるその時まで。」

それがラシードが長い間かけて出した結論だった。

予想もしなかった言葉に、シアナの顔が一気に赤く染まる。

『一体どれほど前から宮殿を離れようと考えていたのかしら……。しがみついて必死に縋っていた、あの人と同じなの?』

けれどシアナは、以前のように「だめ」ときっぱり拒絶する気持ちはもうなかった。

絶対に開けまいとした心の壁が、少しずつ緩んでいたからだ。

だからシアナは、耳まで赤く染まった顔で、むきになって言った。

「ど、どうぞおやりください。でも簡単なことではありませんよ。」

挑発的なシアナの言葉に、ラシードは一瞬息を呑んだ。

ピリッとした何かが体の中心を駆け抜ける。

心臓が痛いほどにドクンドクンと高鳴った。

ほんの少し彼女の承諾を得ただけなのに、これから彼女を誘惑するのは容易ではないと悟った。

それでもラシードは微笑んだ。

奇跡のような機会を掴んだから。

 



 

数日後、皇太后とアリスが旅立つ日がやってきた。

ラシードは旅立つ妹のために、多くのものを用意した。

大きく美しい馬車、帝国で最も優れた馬と腕の立つ御者、そして遠い東部での安全を守るための親衛騎士たちまで。

「お兄様にこんなものをいただくのは身に余りますが……シアナをただ手放すにはあまりに心苦しく、仕方なく受け取るのです。」

アリスのあっさりとした言葉に、苦笑したラシードが答えた。

「そういう理由なら文句はない。東部に他の物も送っておくから、うまく使え。」

その後、東部に到着したアリスは、壮大な邸宅と最高の使用人たち、そして部屋を埋め尽くすほどのドレスや宝石に迎えられることになる。

今はまだ知る由もなかったが。

ラシードの隣に立っていたシアナが、アリスに向かって言った。

「それでも、このくらいで殿下のご厚意を示してくださいませ。行けば東部の誰も姫様をまったく劣っているとは見ないでしょう。むしろ近い将来、後継者の座をめぐって争う四人の候補者たちが、皇太后様ではなく姫様に従うべきだと考えるかもしれません。

「ふん、そうだな。」

アリスの幼い顔を見ながら、シアナは心から、この若き姫が未来において偉大な権力者になるだろうと考えた。

「アリス、もうすぐ出発するのだから、早く挨拶を済ませなさい。」

馬車の中に先に座っていた皇太后の声だった。

幸いなことに、皇太后はシアナがラシードの宮殿へ向かうと聞いても、特に何も言わなかった。

アリスの直属の侍女ではない以上、シアナが何をしようと関心がないようだった。

『考えようによっては、本当に扱いやすい方だわ。』

シアナはそう思いながら、アリスを見つめた。

「それでは、行ってらっしゃいませ、公主様。」

シアナの挨拶は淡々としていた。

その瞬間、アリスはまるで自分が遠方へ旅立つのではなく、ただ皇宮の外に少し風にあたりに行くような感覚を覚えた。

『でも、一時的に皇宮を離れるだけなんだ。』

アリスは必ず戻ってくるだろう。

より強くなった姿で。

その時を思い浮かべながら、アリスははっきりとした声で言った。

「シアナ、戻ってきたら誰よりも君を幸せにしてあげる。だから、他のやつなんて見ないで、私を待ってて。」

執着のにじむ言葉に、シアナはくすっと笑った。

「はい。ですから、どうか公主様が望まれるすべてを成し遂げてお帰りください。」

「うん!」

アリスは元気よく答えると、シアナをぎゅっと抱きしめた。

アリスはシアナを抱いたまま、首をめぐらせて隣にいるラシードをじっと見た。

「何度も言うけど、ほんの少しの間、皇太后宮に任せるだけなんだ。苦労させたら駄目だからね。」

言葉だけでは足りなかったのか、アリスはぎゅっと握った拳を突き出した。

無鉄砲な妹の脅しに、ラシードはにこやかに笑った。

「気をつけて行っておいで。」

アリスは自分の髪を撫でるラシードの手を、むっとした顔で睨みつけた。

「アリス。」

再びかけられた皇太后の声に、アリスは眉をひそめた。

これ以上ぐずぐずしていたら、皇太后が小言を言い出すに違いない。

「じゃあ、本当に行くから。」

アリスは力いっぱい手を振り、馬車の中へと飛び込んだ。

やがてアリスを乗せた馬車の扉が閉じられ、遠ざかり始めた。

シアナはその姿をじっと見守っていた。

馬車が視野から消えた後でようやく、シアナは首を巡らせた。

予想通り(?)、ラシードがじっとこちらを見つめていた。

『どうりで、あの視線が強すぎて顔に穴が空きそうだと思ったわけね。』

シアナは「ふぅ」と息を吐き、熱を帯びた頬を落ち着けようとした。

『ともあれ、今日から皇太子殿下の宮殿で働くのだから、きちんとご挨拶をしないと。』

シアナは衣の端をつまみ、腰を折って丁重にお辞儀した。

「尊き皇太子殿下に、侍女シアナ、謹んでご挨拶申し上げます。今後は誠心誠意お仕えいたします。」

主人に向ける侍女としての、端正な挨拶だった。

ラシードはその時じっとシアナを見つめ、ゆっくりと腰を深く折った。

そして左手を胸の上に置き、再び頭を垂れた。

「私こそ、我が侍女に全力を尽くそう。約束するよ。」

しかし言葉とは裏腹に、ラシードの姿はまるで淑女に向ける紳士の挨拶のようだった。

ラシードはそっと目を細めて言葉を続けた。

「心も体も尽くす、という意味だよ。」

「な、なんですって、それ!」と、シアナは思わずむせそうになった。

 



 

 

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