邪魔者に転生してしまいました

邪魔者に転生してしまいました【50話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「邪魔者に転生してしまいました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【邪魔者に転生してしまいました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「邪魔者に転生してしまいました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

50話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 裏切り者③

ドン、ドン。

誰のものか分からない重い足音が廊下に響き渡った。

今できるのは、エドウィンの言葉通り、ロゴンが戻って扉を開けた隙にすぐ外に飛び出して助けを呼ぶことだけだった。

『その隙にそっと抜け出せばいいんだ。』

座った状態で足音がはっきりと聞こえてきた。

緊張のせいか、さっきエドウィンが近づいてきたときよりもずっと大きく響いた。

とんとん、とんとん、とんとん。

走っているのか、足音がどんどん近づいてきた。

お願いだからこっちに来ないでと祈る気持ちもむなしく、その音はロゴンの部屋の前でぴたりと止まった。

しばらくして――カチャ、ギィィ――

まさかと思っていた扉が、特に鍵をかけていないにもかかわらず、簡単に開いてしまった。そして……

「……はあ。他人の部屋を勝手に通路にしちゃったのか。」

ため息とともに、部屋の主の呆れた声が響き渡った。

私はロゴンが当然怒ると思っていた。

さもなければ、驚いて部屋の外へ飛び出していくと思っていた。

しかし、そのどちらでもなかった。

ぴしゃりと扉が閉まる音とともに、彼は部屋の中に完全に入ってきた。

「部屋の外に出ていったはずがないし……」

「……」

「さて、小ネズミちゃんがどこに隠れたのか、探してみようか。」

そして、面白がっているかのように子どもの歌を口ずさみながら、歩き回り始めた。

「しっかり隠れて、髪の毛見せちゃだめ〜」

とんとん、とんとん。

クローゼットの外をゆっくりとした足音が回っていた。

「ここかな〜?」

部屋に侵入者がいることを確認しているのに、ロゴンはまったく動揺していなかった。

むしろ本当にかくれんぼでもしているかのように、歌いながら歩き回っている。

『狂ってる。』

誰かが隠れていても、まったく気にしていないような態度に、冷や汗がにじんだ。

「違うな、ここ?机の下でもないね。」

「……」

「じゃあ、カーテンの裏?」

男は自分が確認した場所を必ずしらみつぶしにするようだった。

そのせいで私は息を殺し、エドウィンも凍りついたように動けなくなった。

ふざけているように見えるが、男が私たちの隠れているクローゼットに着実に近づいていることを知らないはずがなかった。

『どうすればいいの?』

近づいてくる足音に体が震えながらも、私は必死に頭を回転させた。

『今すぐ飛び出して、かくれんぼのふりをして先に出て行ったってことにしたほうがいい?』

いくら何でも、どんな手段を使ってもエドウィンを傷つけたりはできないだろう。

しかし、思い出されたスヴェルの件に関する後悔に、私は思考が止まった。

それにしても、公子様。エマおばさんと……スヴェル、いや、スベンの話って何ですか?

実は、その二人を推薦したのがロゴンだったんだ。

ロゴンが理由もなくエマとジュリアクルを使うはずがない。

明らかに父に深く嫌われないよう、エドウィンの過度な傾向を十分に把握していたはずだ。

それを利用してエドウィンに危害を加えるかもしれないことだった。

私は唇をぎゅっと噛みしめて、前もって立てていた計画をすぐに放棄した。

『それじゃ……聞かれた瞬間に飛びかかって鼻を殴ろう。その隙にエドウィンを逃がすんだ。』

心の中で決意した。

私は殴っても何度も殴っても無傷ではいられないように。

しかし続いていたプランBは、あまり持たずまた別の壁にぶつかった。

『……でももしドアが開かなかったらどうしよう?』

部屋に入ったロゴンがドアを閉める音がはっきりと聞こえた。

再び封印魔法か何かが作動してドアが開かなければ、無駄にあいつの怒りを買うだけだ。

「わっ!」

「………」

「ふむ、ベッドの下でもなかったか。じゃあどこにいるのかな?ちゃんと隠れて、髪の毛が見えないように〜」

その間にロゴンはぐっと近づいていた。

狂ったような男の独り言を聞きながら、私はエドウィンを助け出す方法を必死に考えていた。

『考えて、ベルゼ。あなたは大人でしょう。』

しかし残念ながら、その狭い部屋の中にはもう隠れるスペースはなかった。

足音がピタリと止まるのと同時に、かすかな光が差し込んできた扉の隙間に新しい黒い影が描かれた。

「さて、残ってる場所はあとひとつだけだな。」

ロゴンがまるで楽しんでいるかのように呟いた。

『お願い、わからないで。』

もう考えている暇もなかった。

あの男のコート、ズボン、とにかく先に飛び出して先手を打とうと体を動かしたその瞬間、すぐ隣で私よりも先に一歩でも早く動こうとする気配が感じられた。

そして——

バッ——

クローゼットの扉が開くと同時に、真っ暗だった視界がぱっと明るくなった。

「服。」

目が焼けるような明るい光に反射的に目を閉じ、私は身をすくめた。それも束の間。

「……少尉様?」

おずおずとしたロゴンの声に、私は思わず目を見開いた。

驚いたことに、クローゼットの扉を先に開けたのは他でもないエドウィンだった。

「来たの?」

まるで何事もなかったかのように、エドウィンは平然とクローゼットから降りてきた。

そして私に手を差し伸べた。

「見つかっちゃったね、ベルゼ。もう出てきて。」

『な、なんでこんなことに?』

私はエドウィンの突拍子もない行動に呆然とした。

しかし「早く出てこい」という目配せに促され、しぶしぶ体を起こさざるを得なかった。

彼はクローゼットの中でに私を入れたときと同じように、彼は私の体をひょいと抱えて床に降ろしてくれた。

「……はあ。」

クローゼットの中にエドウィンがいるとは思いもしなかったのか。

ぽかんとした顔でその一連の行動を見守っていたロゴンは、やがて目つきを鋭くしかめた。

「……ここでいったい何をしてらっしゃるんですか?」

「見ての通り。」

攻撃的な問いに、エドウィンは肩をすくめて答えた。

「かくれんぼの最中。」

「私の部屋のクローゼットの中でですって?」

「見たら分かるよ。窓、開いてたけど?」

「そんなはず……ないはずです。」

ロゴンは意味深に顔をしかめると、窓とエドウィンを交互に睨みつけた。

冷たい視線に、私は少し身をすくめた。

しかし、エドウィンは何事もなかったかのように堂々としていた。

その視線に押されて、ロゴンは呆れたような表情で一歩退いた。

「……かくれんぼ中だったのなら、どうして私の絵をあんなふうに破って置いていったのですか?」

「ごめん。わざとじゃなかったんだ。」

エドウィンは今回も全く悪びれる様子なく答えた。

「遊んでいてカフスに引っかかって紙が破けちゃった。でも中に何かまだありそうで、気になって。」

「礼儀の教育は一通り終わっていると思っていたのですが。」

ロゴンは険しい顔つきで喉を鳴らし、ため息をついた。

「他人の部屋に黙って侵入するだけでなく、所持品を破損するとは。」

「………」

「まずは主人に謝罪するべきだと、教わらなかったのですか?」

「それはそうだけど………」

攻撃的に詰め寄るロゴンの姿に、エドウィンが言葉を濁した。

ロゴンは彼の言葉に少しうなずいたように見えたが、それは勘違いだった。

「俺が来ちゃいけない場所に来たわけじゃないだろ、ロゴン。」

「……え?」

「壊れた絵なら弁償すればいいだけ。何が問題なんだ?」

「………」

図々しさを通り越して、もはやあっけにとられるほどのエドウィンの態度にロゴンは言葉を失った。

唖然としたロゴンはしばらく口を閉ざしたが、エドウィンの無茶苦茶な神経とは別に、彼の言っていることもあながち間違いではなかった。

『そうだ。どうせこの屋敷の主人はエドウィンで、何をしようと公爵様以外は誰も責任を問えないんだ。』

むしろ公爵邸の中に妙な魔法を仕掛けたあいつのほうが、問題になるかもしれない。

ようやく、なぜエドウィンが先にクローゼットのドアを閉めて出ていったのか、その理由がわかった。

クローゼットに隠れていたのは、ただの遊びだったという秘密を守るためだったのだ。

最初から堂々と出て行くつもりだったようだ。

「真剣すぎると、つまらないんだよね。」

言葉を失っているロゴンを軽くあしらうように押しのけたエドウィンは、もう興味を失ったかのように軽く肩をすくめた。

「もう行こう、ベルゼ。」

彼は何事もなかったように私の手を取って引っ張った。

けれど、その手は汗でしっとり濡れていた。

平然を装っていたが、彼もまたかなり緊張していたのだ。

「うん!かくれんぼは終わり!じゃあ次は何して遊ぼうか~?」

私は何も知らないふりをしてロゴンに合わせて笑った。

でもロゴンの横を通り過ぎた瞬間、私の心臓は爆発しそうなほどドキドキしていた。

『そうだった。私、心臓なかったよね。』

それなのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるのか分からなかった。

ロゴンは部屋を出ようとする私たちを、ぴたりと止めた。

ちょうど扉の前にたどり着いた時だった。

「お待ちください、小公爵様。」

背後から聞こえてきた鋭い呼びかけに、扉の取っ手を握っていたエドウィンが止まった。

「その文字、何の意味かご存じですか?」

「いいえ。」

エドウィンは最後まで冷静に答えた。

「分かりません。」

後ろを振り返ることもなく、大雑把に答えた彼が勢いよくドアノブを回した。

ガチャリ。

だが、扉は開かなかった。

「……そんなはずはないのに。」

そのとき、背後から冷ややかに響く声が静かに届いた。

「古語の授業を受けて、もう2年になりますよね?」

「……。」

「難しい単語が使われているわけでもないのに、意味が分からないとは……小公爵様の古語の教師を直接教えた者としては少し残念ですね。」

慌てふためいていたのがいつの間にか、ロゴンは滑らかに話した。

いつものように悪戯っぽい笑みを浮かべていたが、少しだけ近づいてきた。

エドウィンの古語の実力を試すかのような彼の言葉に、頭の中がざわついた。

私の手を握っていたエドウィンの手に、ギュッと力が入った。

ドアノブを握ったまま一瞬固まっていた彼が、ついに振り返った。

「……それで?」

この緊迫した状況の中でも、エドウィンは静かに私を背後にかばった。

「このまま私たちを閉じ込めるつもりですか?」

「そんなわけがないでしょう。」

ロゴンがくすっと笑った。

「ただ、このまま送り出すと私が困るので。僕も生きないといけませんから、小公爵様。」

「正体を明かさないという条件は?」

「大公国の公子カリオスの後継者が異教徒を見ても知らぬふりをするなんて……」

ロゴンがあざ笑うようにエドウィンの言葉を繰り返した。

彼が自らの口で異教徒であると認めたこと、そしてエドウィンがそれを知っていたことに驚く余地はなかった。

「交渉条件があまりにも誠意がないのではありませんか?」

緊張が二人の間にぴんと張り詰めていたからだ。

「それでももう少し魅力的な条件を提示してくれると思ったのですが。」

「どうせその日が来れば死ぬかもしれないのに。異教徒でもない、貴族を殺した異教徒として処刑されたくはないでしょう?」

「はは、死ですか。それでもその間お世話になった情がありますので、少しは惜しいですね。」

全く惜しそうではない顔で、彼はにっこりと笑った。

「きれいさっぱり記憶を消すということでどうでしょう。」

『フッ。』

その言葉に、私は思わず大きく息をのんだ。

記憶の改ざんなど、人権を侵害する術式は国法で禁じられていた。

そしてそのような禁止された術式は、通常の魔法の範疇に含まれないものだった。

『記憶術、あるいは黒魔法か。』

遠すぎる想像だとばかり思っていた推測のひとつが、まさに的中したのだ。

ロゴンが言っていた、黒魔法を使う異教徒——

『最悪だ。』

そのときだった。

「ここでそんな高等魔法を使えるわけがないでしょう。」

ロゴンの正体に慄き震えていた私とは対照的に、エドウィンはまるでそれを知っていたかのように静かに受け入れた。

「その通りです。聖なる地ですし、ああ……」

ロゴンは苦い顔をしながら、深くため息をついた。

「ちくしょう、エレアはもう死んで久しいのに、なんでその残滓がいまだに残ってるんだよ、ったく。」

正体を隠す気などさらさらないのか、何のためらいもなく女神を否定する発言をしていたその男は、ついに「パチン」と指を鳴らした。

「だが、これくらいなら可能ですよ。」

「………」

“উড়ে যাওয়া(飛べ)”

男が古語で短く呪文を唱えた。

その瞬間、エドウィンの背後にいた私の身体が突然宙へと舞い上がった。

「え、ええっ……?」

突然の空中浮遊に驚いている間もなく、

ひゅうっ――!

重力を失った体が物のように前方へ吹き飛ばされた。

「う、うわあっ!エドウィン!」

ドンッ――!

鈍い衝撃とともに、飛ばされていた体が止まった。

「うっ!」

意識を取り戻すと、私はいつの間にかロゴンの手に喉元を掴まれたまま、宙にずるずると吊り下げられていた。

「ベルゼ!」

エドウィンが腰の鞘から剣を抜き放った。

先が鋭くとがった真剣にもかかわらず、ロゴンはおかしそうにクスリと笑った。

「この下賤な子を殺したくないなら、大人しくついてきなさい、小公爵様。」

「き、聞くな! 逃げて、エドウィン!」

「黙れ。」

隙を逃さず素早く声を張り上げたロゴンが、喉を掴んだままの手にさらに力を込めた。

「うぐっ!げほっ、げほっ!」

その衝撃で身体は宙で激しく揺さぶられた。

バランスを崩して何度もぶつかり、首を絞められて息が詰まった。

「やめて!」

何度もむせ返る私の姿に、エドウィンが思わず叫んだ。

「わかった。君の言うとおりにするから。」

「……」

「すぐにベルゼを離して。」

カンッ!

逃げるチャンスが生まれたにもかかわらず、エドウィンはためらいなく剣を床に投げ落とした。

『このバカ! どうしようって……!』

息が詰まり激しく咳き込む中でも、私は彼の行動に驚かされた。

今は私のことなんて気にしている場合じゃない。

早く脱出してくれないと、その後に私を助けることもできなくなるのに。

『早く剣を拾って!今突き刺せばいいだけでしょ!』

私は必死にエドウィンに目で訴えた。

しかし、私の内心をきっと悟っていたはずなのに、エドウィンは微動だにしなかった。

「簡単すぎるな。」

ロゴンが皮肉っぽくつぶやいた。

「それでも小公爵様には感謝します。いつこの後継者を処理できるか分からなかったのに、こんなに良い機会を与えてくださって。」

「お前……!」

最初から自分を解放するつもりなどなかったことを察した彼が、顔をしかめた。

「正気か?彼女は何も知らない!たった5歳の子どもなんだぞ!」

「何も知らないにしては、ずいぶん思い切ったことをしましたけど。」

「な……」

「イスマイル。」

男は耳慣れた名前を絞り出すように呼んだ。

「どう考えても、あのマヌケな男を利用して私を神殿に引きずり出した黒幕は、この後継者だと思ったので。」

鋭い推測に、私は思わず息を呑んだ。

まさか……イスマイルが話したの?

もしそうでなければ、あいつがその事実を知っているはずがないからだ。

『どういうことだ。予想していた最短時間よりももっと早く着くとは……』

状況はますます最悪に向かっていた。

もしイスマイルがマグヌス代神官を操っていたことを話したのなら、彼の身辺ももはや安全とは言えない。

目の前が暗くなった。

押し寄せる無力感に力が抜けたその瞬間——

「……妄想が過ぎるんじゃないか?」

エドウィンがきっぱりとあいつの推測を否定した。

「ベルチェがそんなに賢かったら、神殿と無関係に真っ先にお前を排除しようとしただろう。」

「………」

「私事ではディアナとの比較に頭を悩ませながらも、エンマとジョリアークを推薦したのがお前だったとはな。今まで黙っていたのは大したことじゃないと思ったからか。おかしくないか?」

まるで私を無視するような発言だったが、特に腹は立たなかった。

彼がそうする理由が私に向けられた疑念をそらすためだと分かっていたし、何より言っていることがすべて正しかったからだ。

私はロゴンが神殿の関係者だと気づくまでは、彼を警戒しようとはまったく思わなかった。

私を簡単には害せない人物だし、どうせ私に直接的な危害を加えるようなこともなかったのだから。

振り返ってみると、彼は本当に控えめで、間抜けなところがなかった。

「それ、小公爵様の話ですか?」

ぼそっと繰り返すエドウィンの言葉にも、ロゴンはただ笑っただけだった。

「先日の二重帳簿の件は、かなり驚きました。5年以上前の資料をすべて照合するなんて、簡単ではなかったはずですが……」

「………」

「おかげで下手したら牢に入っていたかもしれません。」

会話についていくのが難しかった。

よくは分からなかったが、文脈から推測するに、エドウィンがロゴンを排除するために何らかの陰謀を企てていたようだった。

「すでに死んだ人にまで罪をかぶせるとはね。」

ロゴンの言葉に、エドウィンは驚いたような目つきで彼を見た。

「アカデミー在学時代にも、ジェスターは君を随分助けてくれたと聞いているが、君には少しの良心もないのか?」

「さあ。良心なんてよく分かりませんが、この軽率な継子があの間抜けと密かに接点があったのは確かです。」

神殿の関係者であることが明白になったからか、昨日の私の行動を詳細に話す彼に、私はさほど驚かなかった。

しかしその後に続くエドウィンの言葉は、私をより真剣にさせた。

「……実は、それも私だ。イスマイルを操ったのは。結局お前を神殿に連れてきたのは俺だ。」

ロゴンの言葉を聞いた彼は、すぐに態度を切り替え、平然と嘘をついた。

『やめてくれ。頼むから。』

私はエドウィンを見つめながら苦しげに吐露した。

私が何者だというのか。

私をかばうためにそこまで命懸けになる必要があるのか。

意外にも、ロゴンはまったく信じていない様子だった。

「……小公爵様なのか?」

「そうだ。」

「イスマイルがどんな能力を持っているか、ご存じですか?」

「……」

ついにエドウィンは口をつぐんだ。

彼がイスマイルの能力を知っているはずがない。

ロゴンは呆れたような表情で後ずさった。

「……前から気になっていました。小公爵様はなぜこのような下賤な継子をかばうのか理解できませんでした。」

「……」

「公爵様もそうですし、アンダーソンも、その威厳ある高貴な騎士まで……みんな何かに魅了でもされたのか。ふん。」

「うっ!」

男は突然私の腕をつかんで顔を引き寄せ、頬をそっと撫でた。

しかし特別な特徴を見つけられなかったのか、私の顔をしかめながら、突然私の体から身を引いた。

その反動で私の体は大きく揺れた。

「私の目にはいまだに汚らしくて嫌な臭いしかしない、ただの平民の娘であり、それ以上でも以下でもないのです。」

「うわあ!」

襲ってきた嫌悪とめまいに、私は思わず叫んだ。

「私だってお前の口臭が嫌いなんだからな!ちょっと離れろ、この口臭怪物!」

「こ、これは……」

私の足元に倒れた男が、怒りに満ちた顔で私の首元を掴み、ぐらぐらと揺さぶった。

私にとっては不快な出来事だったが、無意味な苦痛というわけでもなかった。

シュッ――風を切る鋭い音とともに、ロゴンが鋭くうめき声をあげた。

「うわっ!やめて!」

男が身を引いた。

しかし、その直後、何かが切られるような音が私の耳にもはっきり聞こえた。

「うっ!一体何をするつもりですか!」

男は私を掴んでいない方の手で脇腹を押さえて叫んだ。

指の隙間からは、かなりの量の血が滲み出ていた。

「やめろと言っただろう。」

一歩前に出たエドウィンが、金色の瞳を光らせながら言った。

一体どこに剣を隠していたのか。

彼の剣先からは、ロゴンのものと思われる血がぽたぽたと滴り落ちていた。

「この使用人が死んでも構わないとでもお思いですか?!」

予想外の奇襲攻撃に、ロゴンが私を盾のように抱きかかえ、前に突き出した。

しかしエドウィンはそれ以上動じなかった。

「どうせベルジェを殺すつもりなら、その前にお前の腕を二本くらい切り落としてやる。」

「……!」

子どもとは思えない冷酷な言葉に、ロゴンがたじろいだ。

しかし、年下の子どもに圧されることが屈辱だったのか、彼の表情には怒りがはっきりと表れた。

「ধিক্কার কালিওস কুকুরছানা…… (地獄に落ちろ、カリオスの犬ども……)」

「……」

「আমি অবশ্যই তোমার অঙ্গ-প্রত্যঙ্গ কেটে ফেলব এবং কুকুরের খাদ্য হিসাবে ফেল দেব।
(必ずやお前の手足を切り落とし、犬のエサにしてやる。)」

聞き取れない古語を低く呟いた後、男は口元に冷笑を浮かべた。

「無意味な会話はもうやめましょう。」

「……」

「どうせ目を覚ませば、今起こったことなどすべて忘れて、部屋でぐっすり眠っていることでしょう。ついでにこの下民に関する記憶も消して差し上げます。」

「な、何だって……!」

その言葉にエドウィンがすばやく剣を構えた瞬間だった。

「চলো এগোহৗ উরিস-নিম যে স্থানে……(移動しろ。ウリス様がいらっしゃる場所へ……)」

男がまたもや古語を唱えた。

依然として意味はわからなかったが、今回はその意図を察することができた。

ヒュオォォォ—!

男の呪文と同時に、エドウィンの足元に紫色の光が円形に広がり始めた。

どうやら魔法の呪文を唱えたようだった。

「エドウィン!」

「ベルジェ!」

紫の光に包まれたまま驚いた目で私を見つめるエドウィンが見えた。

『ダメだ!』

エドウィンが私のことを忘れてしまうなんて。

その瞬間、作戦のためにはその方が良いかもしれないという、普段なら必ず浮かぶ打算的な考えさえ浮かばなかった。

『私はどんな覚悟で、またこの公爵邸に足を踏み入れたと思ってるのか。』

嫌だった。

このまままた虚しく失うわけにはいかなかった。

私は慌てて黒魔法を唱えているロゴンを振り返った。

首筋をつかんでいた男の手を握り、思いきり噛みちぎってでも逃れようとしたが……。

ちょうど向き合った男の身体の一部に、紫色の光がうっすらと重なっているのが見えた。

それは、まさに接触面だった。

私は直感的に全身にあふれる魔力をかき集めて両手のひらに集中させた。

前にトッケスキにやった時のように、うまく加減しなければという考えすら浮かばなかった。

『女神様!お願いです、このクソ野郎を止められる力をください!』

頭の中はその一つの願いでいっぱいだった。

私はオレンジ色の光を手に集め、正気ではないまま叫んだ。

「タルモ・ビム――!」

 



 

 

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