こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
119話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 真逆の立場
ペルセウス皇帝の様子はおかしかった。
マリアンヌ皇后は、事態が尋常ではないことを察していた。
しばらく前からずっと不安が募ってはいたが……まるで廃人のようになった皇帝を目にした瞬間、心臓がドンと沈み込んだ。
鎮静剤を打った後も「レリア……」と呟きながらうわ言のように呟いていたが、充血した目を見て正気を取り戻した。
ペルセウス皇帝は完全に正気を失っていた。
マリアンヌ皇后は、セドリックでもデミアンでもなく、末っ子として生まれた幼い皇子に皇位を譲るつもりだった。
しかし今の状況を見るに、セドリックとデミアンを敵に回す羽目になりそうだ。
皇帝はレリアにすべてを捧げるつもりのようだった。
『このままじゃ皇位まで譲ることになるかも……』
絶対にそんなことにはさせない。
どうにか方法を見つけなければならないようだった。
悩んでいたマリアンヌ皇后は、皇帝を探しに行くことを提案した。
とりあえず療養という名目でしばらく離れて、戻ってくる方がいいのではと。
わざとらしくも同情を装って。
「……あの子にも時間が必要でしょう。しばらく距離を置いて、その子の心が開くのを待ちましょう、陛下。」
「………」
誰が見ても正論だったため、皇帝は徐々に気力を失っていった。
ここまで心が弱った皇帝は、初めてだった。
そのせいか、気持ちを込めて説得するとよく話が通じるようになった。
こうして皇帝は一時的に皇城を離れ、療養に行くことが決定される。
その期間中の政務は、セドリックが代わりに担当することになった。
マリアンヌ皇后はこの機会を積極的に活用するつもりだった。
どうせレリア皇女は、皇位を与えられても放棄して逃げ出すに違いない。
だからこそこの時期をうまく利用して……
『セドリック皇子の評価を引き下げなければ。』
側近の貴族たちはこの機会にセドリックを排除する方がよいのではと提案したが、マリアンヌはそれには同意しなかった。
それでも情があり、殺すことまではできなかった。
だが、皇位だけは……。
次の皇帝はやはり皇帝と自分の血を分けた子どもを受け入れさせなければならなかった。
そうしてこそ、この権力を長く守ることができるからだ。
レリアは一刻も早く皇都を離れ、領地へ戻りたかった。
「レリア、でもせめて… もう少しだけここにいてはどうだ?」
だがカリウスおじはやや困惑した表情でそう言った。
ほとんど懇願に近い態度だったので、レリアは疑いを抱いた。
「私も気持ちは同じだよ。すぐにあなたを連れて帰りたいさ。だけど・・・」
カリウスは口を引き結んだ。
今朝、皇帝は療養に出る前に彼を呼び、切実に頼んだ。
自分が戻るまで、レリアが都に留まれるようにしてほしいと。
気持ちを整理して戻ってきたら、そのときにレリアに再び許しを請うつもりだから、少しだけ待ってほしいと。
「……」
ペルセウスの状態は深刻だった。
医師の話によれば、病はかなり進行しており、安静が必要だということだ。
実際に見ると、痩せ細って骨ばかりになり、整った顔立ちは青ざめていた。
目の下はくぼみ、視線は空虚だった。
すべてを持っていた皇帝がすべてを失ったような目をしていた。
エリザベスが亡くなったときとよく似た表情を見て、レリアは簡単に拒絶できなかった。
最後の願いだと言った。
本当に、最後の。
「レリア。皇都が不便なら、都に屋敷を借りて過ごすようにしよう。」
「………」
レリアは叔父の真意を見抜いた。
皇帝が頼んだのだろう。
しかし誰よりも頑なだった叔父がここまで出るとは…。
『領地をちらつかせて脅したのかしら?』
レリアの眉間にしわが寄った、自分で気づかぬうちに。
シュペリオンに迷惑がかかるのは嫌だった。
でも、もうこれ以上ここに留まりたくはなかった。
「どうせペルセウス皇帝はしばらく宮殿を空けるだろうから、君を苦しめる人はいないよ」
「……」
レリアは何も言えなかった。
あの人だけが自分を苦しめているわけじゃないのに。
レリアは仕方なく荷物をまとめた。
そう、皇帝と顔を合わせることがないなら、もう少しだけここに耐えてみようと思えた。
しかし叔父が帰ったあと、すぐにユリアナが訪ねてきて、レリアの心はまたかき乱された。
会わないつもりだったが、ユリアナはまたしても許可もなくドアを開けて入ってきた。
「………」
あきれたような不快な表情を浮かべたが、ユリアナはすぐに近づいてきた。
目には大粒の涙が浮かんでいた。
「…私が、私が悪かったの。」
「………」
また何かの言葉で自分を混乱させようとしているのか?
前回とはまったく逆の態度だった。
こんなふうに出られると、むしろ不安になる。
「私が悪かったから…もうこれ以上、パパを苦しめないで。傷つけないで。」
「はぁ……」
「それに、あなただけが…あなただけが辛かったわけじゃないの。うちのパパもすごく辛かったの…そばで見ていて痛ましいくらいに。」
ユリアナは、時折亡き妻を思い出しながら苦しんでいた父の姿を覚えていた。
あの子が死んだと思っていたとき、どれほど申し訳なく感じていたかも思い出していた。
「パパは、あなたのせいでどれほど苦しみ、罪悪感に苛まれていたか…あなたには分からないわ。だから…もし誰かを憎むなら、私だけに怒って。」
ユリアナはぶつぶつとつぶやきながら、ずっと泣いていた。
レリアはどう言おうか悩んでいたが… もう直接事実を伝えることにした。
何かを確信して勘違いしているようだったから。
「ごめんなさい、ユリアナ皇女。私はあなたに全く関心がありません。」
「…な、なに?」
「私はあなたを憎んでいません。全く関心がないの。正直に言って、今みたいに顔を合わせて話すのもしたくない。」
「…そ、それってどういう…」
「ただ面倒なだけ。そもそも私に何の関係があるのか分からないけど…」
「じ、じゃあ、じゃあなぜお父様をいじめるの?私のせいじゃないっていうなら、なぜ? そんなはずがない!」
「……」
話は通じなかった。
レリアは深いため息をついた。
さっきまで涙を流していたユリアナは、今や怒りに満ちた目つきで彼女を見返していた。
「じゃあ…本当にただパパに怒ってたから、そんなことをしたっていうの?」
「……」
「どうしてそんなことができるの?あなただけが被害者じゃないでしょ!むしろ被害者はうちのパパよ!」
頭が混乱していた。
いったいどんな理屈で、どんな資格でこんなことを言っているのか理解できなかった。
「どうしてそんなことができるの!お父様にどうしてそんなに冷たくするの?」
「……」
ユリアナはこの世に二つとない悪党でも見るような嫌悪の目でレリアを睨んだ。
そしてまるで警告するかのように言った。
「お父様とお兄様たちに二度と傷を与えないで。また私たち家族を泣かせたら……私は絶対に許さないから。」
「…偽物の主宰が。」
「な、何ですって?」
「…知らなかったの?みんなが裏であなたをなんて呼んでるか。」
ユリアナは大きな衝撃と傷を受けたようだ。
パクパクと唇を震わせていたが、ついには怯えたように後ずさりした。
そして、しゃくり上げるような声をあげて飛び出して行った。
「……」
レリアは全身の力が抜け、ベッドに崩れ落ちた。
最後まで無視しておけばよかった。
最後にあまりにも腹が立って、ユリアナに絶対に言ってはいけない言葉を投げてしまった。
激しい罪悪感に唇をぎゅっと噛みしめた。
逃げ出したかった。
レリアは倒れるようにベッドに横たわった。
「……バカみたい。」
こみ上げる涙が溢れた。
後悔が押し寄せてきた。
まるで千尋の崖の端に立っているような気分だった。
皇城に戻らない方がよかったのではと、ずっとしきりに悩んでいた。
「…シュペリオン領地に被害が及ばないように、ただ一人で遠くへ逃げればよかったのに。」
遅れてきた後悔が押し寄せてきた。
レリアはぽつんとした声で独り言を呟いた。
「…いっそ今からでも逃げてしまおうか。」
止めどなく流れる涙を拭う余裕もなく、そのまま泣きながら眠りに落ちたようだった。
とても長い間、深い眠りに落ちたようだった。
再び目を開けたとき、レリアはかなり長い時間が過ぎたことに気づいた。
だが、何かがおかしかった。
「…ここはどこ…。」
確かにベッドで眠りについたはずなのに、寝ている床が揺れていた。
ベッドが揺れることがあるだろうか?
レリアはぱちくりと目を開け、ゆっくりと体を起こした。
気づけば、彼女が横になっていた場所はまるで座席のようだった。
ふかふかで柔らかかったせいか、不快に感じなかったのかもしれない。
そのときだった。
「おはよう。よく眠れた?」
横から聞こえてくる声に、レリアはびっくりして顔を向けた。
「もっと遅く目覚めてくれたらよかったのに。つまらないね。」
「……」
目の前にはオスカーが軽く微笑んだまま彼女を見ていた。
頭の先からぞくっと鳥肌が立った。
しかしすぐにこれは夢だと気づいた。
オスカーがいなくなってから、いつも彼のことを思い出していた。
目の前で消えていく姿を見ると、会いたい気持ちが湧き上がってきた。
しかしその気持ちが薬の後遺症なのか、本当の気持ちなのかは判断がつかなかった。
そうだけど……。
『私、オスカーに本当に会いたかったの?だからこんな夢を見ているの?』
夢を見るほど恋しかったのだろうか。
レリアは呆然とオスカーを見ながら目を瞬いた。
逃げ出したい気持ちと、オスカーに会いたい気持ちが混ざって、こんな夢を見たのかもしれないと思った。
「………」
夢だと思った瞬間、かえって心が楽になった。
レリアは自分が会いたかったオスカーの顔を細かく観察した。
でも以前とは少し違って見えた。
少し長めだった髪がきれいに切り揃えられていた。
しかし、雪のように白い肌と赤い目つき、唇はそのまま。
「また人を勘違いさせるような目をしてるね。」
「………」
「二度は騙されないよ、レオ。ほどほどにして。」
何?
レリアはだんだん何かがおかしいと気づいた。
わなわなと震える頬の感覚も、目の前のオスカーも。
すべてがあまりにも鮮明だった。
「夢…夢じゃないの?」
「悪夢だと思いたいほどぞっとするけど、残念ながら現実だよ。」
オスカーは無表情のまま、淡々と答えた。
レリアはその時になってようやく、これが夢ではないと気づいた。
『でも、どうやって?』
オスカーがどうしてここにいるの?
数日前、レリアはオスカーに関する知らせを耳にしていた。
オスカーの祖国、フレスベルグ帝国の皇帝が崩御したという知らせだった。
フレスベルグの皇帝はまさにオスカーの父だった。
『だから帰国したのね……。』
オスカーは皇位を継がなければならなかった。
だから出て行ったのだと、自分のせいかもしれないと思っていたけれど……実際は皇位継承の式典を開くはずのオスカーがなぜこんなところに?
『ちょっと待って、ここはどこ?どこへ行ってるの?』
遅れて思い至り、レリアはすぐさま腕を伸ばし、馬車の窓のカーテンを開けた。
「え……?」
目の前には広々とした草原が広がっていた。
いくら目を凝らして見渡しても見えるものはなかった。
アウラリア皇城を出てからかなりの時間が経ったということだ。
まるで頭を一撃くらったかのような衝撃だった。
「ねえ、ここはどこなの?今どこへ向かっているの?」
「地獄に行く前の、最後の旅?」
理解できない言葉に、レリアの表情が固まった。
彼女は困惑しながらもオスカーをじっと見つめた。
ドクンドクン。
だが目が合った瞬間、心臓が異様に高鳴り始めた。
『薬の効果がまだ残っているの?』
そんなはずはないのに……夢ではないと気づいた瞬間、どうしようもない感情が胸に込み上げてきた。
もうとても長い時間が経たないと会えないと思っていた。
もしかしたら一生会えないかもしれないとも考えていた。
それなのに、こんなにも早くまた会えるなんて……。
自分のもとに戻ってきてくれるなんてオスカーに感謝の気持ちもあり、申し訳なさも感じた。
短くなった髪を見て、すでに戴冠式を終えたのではないかという考えも浮かんだ。
「……」
幼いころ、彼がどんな経験をしたのかを思い返し、誇らしく、誇りに思えた。
レリアの目にうっすらと涙が浮かぶのを見て、オスカーのまぶたがわずかに震えた。
彼はすっと視線をそらし、冷たく言った。
「泣いても無駄だ。」
冷淡な声と語気に、レリアは徐々に理性を取り戻した。
そしてようやく最も重要な疑問が浮かんだ。
「どうして私がここに……?」
「なんでだと思う、レリア。」
「……私をなぜ?」
本当にオスカーが自分をさらったというの?
文法的には正しく構成されているはずのその言葉たちが、まるで意味をなさなかった。
まったく想像したこともなかった事だった。
頭が真っ白になって、何も考えられなかった。
そんなレリアを見て、オスカーは優しく説明を続けた。
「言っただろ、これからは俺の思い通りにすると。」
「……」
「君はこれから、フレスベルク帝国の皇后になるんだ。」
「…え?」
「一生、皇城に閉じ込められて暮らさなきゃならないところだったのに、最後くらいは世界の風景を見せてあげなきゃ。そう思わない?」
「………」
「フレスベルグ帝国では、新婚のカップルが一緒に短い旅行に出かける習慣もあるんだ。」
「ちょ、ちょっと待って。何言ってるの?」
「旅行先は、僕たちにとって思い出の場所にしたい。神聖中立区域に行こうと思ってるんだけど。どう?気に入った?」
「オスカー、いったい何を……」
「旅先が気に入らなかった?」
「そんな問題じゃないでしょ。私はちゃんと、はっきり言ったわ。ついていけないって……。」
「だから俺も言ったよね。これからは俺の思い通りにすると。」
「……っ!!」
当然のように返されたその答えに、レリアは壁に向かって話しているような気分だった。
言葉が通じない。
常識的に考えて、この人と会話は成り立たないのだと悟った。
レリアは呆然とした表情でオスカーを見つめながらも、思わず手のひらを握りしめた。
『じゃあ、アウラリアの王都は?』
おじさんは?残りの友だちは?
明け方に自分がいなくなったと知ったら、心配するのは目に見えていた。
それにこの事実を祖父が知ったら……。
「シュ、シュペリオン領地へ行かせて。」
「………」
「オスカー、お願い。シュペリオン領地へ……。」
オスカーは冷たい声で遮った。
「まったく状況がわかってないようだな、レリア。」
「………」
「君には自由はない。」
「それってどういう……」
「でも、静かに従って僕の言うことをよく聞いてくれるなら……」
「……」
「一生に一度か二度くらいは見せてあげるよ。君がそんなにも愛している家族を。」
まるで、前回とは真逆の立場になったような気分だった。
冗談であってほしかった。
けれどオスカーは冗談なんて微塵も知らないような顔をしていた。
すべてが本気なのだ。
本当にオスカーは……
『本当に私を誘拐したんだ。』







