こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
124話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 母親③
レリアは疲れた目をこすった。
夜が明けるまで、レリアはオスカーと話をしていた。
たいした内容ではなく、幼い頃の思い出話だ。
レリアはその会話の後、オスカーが少しだけ気を許したように感じた。
そして、朝日が昇るとすぐに、レリアは「また夜に出よう」と言った。
外に出るために一通り身支度を終えて部屋を出たときだった。
「……オスカー、今、何してるの?」
浴室から出てきたレリアは、薬瓶を手に持っているオスカーを見て、ギョッとした。
疑われてもおかしくない状況だった。
ポケットにあらかじめ入れておいて、こっそり取り出そうとしていた『記憶回復剤2』だ。
レリアはすぐにでも薬瓶を取り出そうとした。
だが、腕を高く上げたオスカーによって阻まれる。
「これは何だ?」
オスカーが冷たく尋ねた。
「たいしたことないわ。返して。」
昨夜の会話で和らいだ二人の雰囲気が、再び冷え込んだ。
オスカーの唇が歪み、彼は冷たい声で言った。
「また騙したな。」
「どういうこと?」
「どんな薬か言って。」
「……」
オスカーが冷たい口調で答えを促すと、レリアは眉間にしわを寄せる。
どう答えればいいか分からなかった。
正直に話そうとすれば説明すべきことが多すぎた。
ひとまず「お母さんを助けるための薬」と言えばいいのか?
レリアが言葉を選んでいる姿を見て、オスカーの顎に力がこもった。
自分に黙って一人で逃げ出そうとしているのが明らかだ。
これはその方法に役立つ薬に違いない。
オスカーはためらうことなく薬瓶を開けて、そのまま口の中に薬を放り込んだ。
「なにしてるのよ!」
レリアは驚いて叫び声をあげた。
オスカーは空の薬瓶を床にぽんと投げ捨てた。
「……」
レリアは慌てて薬瓶を確認しに駆け寄った。
しかし、すでに薬瓶は空っぽだった。
『たったひとつ作れるだけの材料しかなかったのに……』
レリアは大きくため息をついた。
幸いにも自動探索機能で材料を集められるけれど……
『今日は薬を飲めないわね。』
レリアは小さく唇を噛んだ。
『明日また取りに行かなきゃいけないの?もし会えなかったらどうしよう?…今日はとりあえず会話を試みてみよう。』
レリアはオスカーに怒りをぶつけかけたが、そのまま黙って背を向けた。
オスカーの冷たい視線が彼女の後ろ姿を追った。
こうして二人は夜明けとともに出発した。
また突然誰かに出くわしたら警戒されるかもしれないので、近くまでは歩いて移動することに。
その前に市場に立ち寄って何か買っていこうと考えていた。
あれこれ差し入れを持っていけば、警戒心を解いてくれるかもしれないからだ。
市場は早朝から活気に満ちていた。
レリアはパン屋に立ち寄ってあれこれ買い込んだ。
お金を持っていなかったのでオスカーが支払ったが、オスカーは紙袋を持ってレリアの後をついていった。
レリアはそんなオスカーを見つめながら、思わず笑みを浮かべた。
ふと、まるで普通の庶民夫婦になったような気がして、心が穏やかになる。
とぼとぼと歩きながら、レリアは昨夜の会話を思い出していた。
『それで、その女官の人とは何を話していたの?なぜ笑っていたのかって…?』
その質問に、オスカーは怒ったような声で答えた。
『妻が美しいって言われたから笑ったんだ。』
『……。』
『“妻”って言葉、聞くと気分がいいんだよ。返事はどうした? もう意味のない演技はやめたらどうだ?』
オスカーにとっては、やはり明らかに嘘をついているように思えた。
だが、自分自身も薬の効果に関してはまだ混乱していて、これ以上はっきりとしたことは言えなかった。
そうして大きくため息をつきながら、彼らは市場をあとにしようとしていた。
「アウラリアの皇帝が?」
「そう、伯爵の邸宅に滞在しているらしいよ。聞くところによると、休養に来たとか。」
「神殿で何かを確認しに来たって話もあったけど。」
「そうなの?この町に他国の皇族が訪ねてくるなんて初めてだわ。」
「そうね、ずっと前に幼い皇族たちを招いた後、公式な訪問は初めてなんじゃない?たぶん?」
通りすがりの人々の会話に、レリアの足取りが止まった。
誰が来たって?
「…オスカー、聞こえた?」
「聞いたよ。」
「ペルセウス皇帝が母さんと鉢合わせしたらどうする?」
「……とにかく行ってみよう。」
オスカーの言葉に、レリアは喉を鳴らした。
どうして今このタイミングで皇帝が……
『私が幼い頃、中立地域で暮らしていたって話を聞いて確認しに来たの?』
遅れて後悔の念が押し寄せてきた。
レリアは唇を噛んだ。
母かどうかもわからないあの人と、皇帝を鉢合わせさせてはいけない気がした。
幸いにも修道院の周囲は静かだった。
レリアは慎重にトントンとノックする。
しばらくして、警戒するように小さく扉が開いた。
「………」
昨日のあの女性修道士だ。
すでに窓から二人を確認していたのか、驚いた様子もなく扉を開けてくれた。
入ってきてというような態度に、レリアはおずおずと中へ入った。
そして修道院の内部を見た瞬間、神聖な気配に包まれた。
アウラリア皇城で幼い頃に訪ねた母の修道院。
この場所にはあの時とよく似た雰囲気が漂っていた。
「お座りください。」
神官は広い木の椅子を勧めながら言った。
レリアとオスカーが並んで座ると、少しして神官はお茶を持って現れた。
「昨日助けてくださってありがとうございました。」
「………」
神官は感謝を述べながら頭を下げて挨拶した。
素直に扉を開けてくれたのは昨日のことだったようだ。
レリアは少し戸惑いながらも慎重に口を開いた。
「…いくつかお尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「…お聞きください。」
「まずは、私の顔を……私をまっすぐ見てください。」
「………」
修道女は簡単にはフードを上げなかった。
彼女がどうしてよいか分からず戸惑うと、レリアは焦った。
そこで一人で修道女をじっと見つめながら細かく観察した。
昨日たくさん泣いたのか、目が真っ赤に充血していた。
顔色が青白くて、レリアは胸が痛んだ。
それだけでなく、明るく近くで見るとさらによく似ていた。
服装こそ違ったが、顔立ちは肖像画に出てくるそのままだ。
目の錯覚でなければ、確かに母だった。
肖像画の中の母と同じ淡い緑の瞳に赤い髪色は、彼女への確信をさらに強くしてくれた。
突然、心臓がドキドキと高鳴り始める。
確信を持ってさらに何かを尋ねようとしたときだった。
神官が慎重に口を開いた。
「軽々しく皇族の顔をまっすぐ見ることはできません。幼い頃は仕方なかったですが。」
「……え?」
「ご立派になられて、最初は気づきませんでした。こうして私の命を助けてくださって、本当にありがとうございます。」
思いがけない言葉にレリアは戸惑う。
その顔を見ようとオスカーを振り返ると、彼は何かを察したようにわずかに眉をひそめた。
「……何をおっしゃっているのか、よく分かりません。」
「私のことを覚えていて、助けてくださったのではないのですか?」
レリアはまるで自分だけが間抜けになったような気分で口をつぐんだ。
相手が記憶を失ったのだと思ったが、なぜ覚えていないのかという質問を受けると、修道女はわずかに微笑んで言った。
「幼い頃、神殿でお過ごしの時、一度お見かけしたことがあります。その時、皇太子殿下の服をお召しになっていたので、お手伝いしたことがございます。」
ああ――
レリアの口はさらに開いたままだった。
目もぱちくりさせたまま修道女を見つめた。
心の奥深くにあった記憶のかけらが、ふと浮かび上がってきた。
山の中で腕を切り落とされたカリクスを助けたときのことだった。
グリピスとカーリクス、二人と共に山を下りた直後、気を失っていた。
目を覚ました時、一人の修道女が彼女の服を着せてくれた後だった。
女性であることがバレて皇帝に捕まり殺されるかと思っていたのに……思いがけず、その女性神官は秘密を守ってくれたのだった。
『殿下のお召し物は私が着せました。そして私しか見ておりません。他の者は誰も見ておりませんので、ご安心ください。』
それ以来、顔を合わせることはほとんどなかったが、何かあったことははっきりと思い出された。
一瞬にして視界がぼやけた。
あの落ち着いた声のあの人が……。あのときはあまりに動揺して、神官の顔を見ても何も考えられなかった。
ただ、もう死ぬのだと思って怖かっただけだった。
けれど、あの人が……お母さんだったなんて。
お母さんとまったく同じ顔をしていたなんて。
当時は母の肖像画を見たこともなかったから気づかなかったけれど……。
「………」
気づかなかったという罪悪感からなのか、あるいは懐かしさからなのか。
様々な感情が入り混じって、涙がぽろぽろと流れ始める。
そんなレリアを見て、女性の修道女はそっとハンカチを差し出した。
そのとき、不意にオスカーの手がレリアの肩に伸びてきた。
冷たくて無言のその手が慰めるようにそっと下りてくると、泣いていた感情も次第に落ち着きを取り戻していった。
女性の修道女はそんな二人の様子を見守りながら、ゆっくりと口を開き、自分の話をし始めた。
まず最初に、自分の名前は「セナ」だと名乗った。
「私はかつて、錬金術師でした。でも、ある瞬間にすべての能力を失って、浮浪者のような生活をしていました。そんなとき、偶然のきっかけで亡くなった神官の身代わりを務めることになったのです。」
レリアは涙を止め、彼女の話に引き込まれていった。
「ある女性神官が逃げ出したのですが……見逃せる状況ではなかったので、その役割を私が引き継ぐことになりました。名ばかりの神官で、実際は雑用係のようなものでした。」
「……」
「密かにひどい仕打ちを受けていた私を、いつも助けてくれた神官がいました。私はその方を尊敬し、ついて行くようになりました。でも……」
セナは一時感情が込み上げて言葉を失ったが、再び話を始めた。
彼女が言った神官とは、このオアシスの主である、昨日のあの男性だった。
顔の片側がひどく変形してしまった、あの人物。
セナが敬意をもって慕っていたその神官は、病にかかって以降、神殿を去り、ここに身を寄せたのだという。
「すでに病気は長く進行しており、神聖な力でも治すことはできませんでした。だから私はもう一度、錬金術の研究を始めたんです……」
「………」
「でも、どれだけ探しても方法が……」
レリアは自分にできることがあるかもしれないと思った。
まずは彼女の仕事を手伝って信頼を得てから、記憶回復薬を飲ませようと考えた。
……すべてうまくいくと思っていた。
けれど――
「今日の夜明けに、その方は亡くなりました。」
「……あ……」
突然の知らせに、レリアは何も言葉を発せなかった。
「すでにすべての手配が済んでいたようです。夜明けと同時に人々が来て、その方の遺体を運んでいきました。」
「……」
「罪人という身分だったため、葬儀をあげることもできず、倉庫の隅にひっそりと安置されていました。結局、最後のお別れもできなかったのです。」
セナの目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
レリアはその様子を見て、息が詰まるような思いを感じた。
「それでも、私を救ってくださったおかげで、こうして最後に顔を拝見することができました。」
「……それで、これからどうするつもりですか?」
レリアがそっと尋ねると、セナは涙を拭いながら答えた。
「しばらくこのオアシスを整理して、他の場所へ移るつもりです。その前に、こうしてお礼を申し上げる機会を得られて、幸いです。」
去っていくという言葉に、レリアは咄嗟に手を伸ばして、カップを持っていたセナの手を握った。
「では、神官になる前は?漂流生活をする前は?どこで、どんなふうに暮らしていたんですか?」
「……錬金術の能力を失ったとき、記憶もすべて失われてしまいました。」
セナは震える心で答えた。
なぜこのように切実な眼差しで自分を見てくるのか、理解できないといった様子だ。
顔立ちが似ているからだろうか?
セナもまた、レリアが自分と似ていると感じた。
ただ口には出さなかっただけで。
アウラリアの皇太子が亡くなったという知らせを聞いたとき、セナは皇太子の身代わりとして生きていたあの少女がどうか無事であるようにと祈った。
しかし彼女はただ無事だっただけでなく、自分を探し出し、救ってくれたのだ。
その事実に感動したセナの前で、レリアは静かに涙を流し始めた。
セナは戸惑いながら、レリアの隣にいる男性をじっと見つめた。
「……」
男は無表情な顔で、レリアの肩を静かになでていた。
まるで何を言えばよいのか分からないような表情だったが、その瞳の奥には彼女の苦しみに共感する光が宿っていた。
セナは、その男性がレリアの幼い頃にそばにいた小さな少年だったことを思い出した。
特徴的な瞳の色と髪の色がなければ気づかなかっただろう。
それほどまでに彼は、昔とはまるで違う雰囲気をまとっていた。
しばらく涙を流していたレリアは、涙をぬぐい、再びセナの手を握った。
「このオアシスの整理が終わったら、また会いに来ます。領地ごとに国境の警備が厳しくて、簡単には出られないと思います。私が手伝いますから……ですから、一人で行かないでください。」
「……」
レリアの願いに、セナは理解できないというように目を瞬かせた。
それに対して、レリアは「幼い頃に借りた恩を返したい」と言って彼女を説得した。
あまりにも真剣で切実なその態度に、セナは震える手でフードを引き寄せた。
そうしてレリアは、何度も念を押して約束を取り付けた末に、ようやくテントの外へ出ることができた。
テントを出る足取りは重かった。
レリアは何度も後ろを振り返った。
宿舎に戻ったあと、レリアはもうしばらく泣いた。
我に返ると、彼女はオスカーの胸に抱かれて泣いていた。
がっしりとした腰にしがみついて泣いていたことに気づき、頭が真っ白になった。
レリアは涙を拭って、オスカーを押しのけた。
「…ごめん。」
オスカーは何も言わなかった。
ただじっと彼女を見つめるだけ。
むしろ何も聞かれなかったことに、レリアは安堵した。
レリアは感情を落ち着かせて口を開いた。
「オスカー、お願い。あの人は、私のお母さんに間違いない。」
「…うん。」
「シュペリオンの家族たちは、お母さんが亡くなったあと、ずっと恋しがってたの……。生きているってわかれば、みんな喜ぶよ。領地に連れていかなくちゃ、絶対に。」
「………」
「私を領地に送って、オスカー。」
「………」
「お願い……」
レリアはオスカーの腕をつかんで懇願する。
どうか家族たちが母に会えるようにしてほしいと、何度も何度も頼み込んだ。
オスカーはこうなることを予測していたかのように、冷静な表情だった。
レリアはそのまま、故郷フレスベルグ帝国へと無理やり連れて行けば……彼女は不幸になってしまうだろう。
アウラリアの皇城に彼女を連れて行った日のことが思い出された。
逃げたいと独り言をつぶやきながら泣いていたレリア。
もしかしたらそれは未来のことなのかもしれない。
このまま無理やり連れて行かれたら、きっとレリアは一生、逃げたいと願いながら泣くことになるのだろう。
瞬間、頭がズキッと痛んだ。
うずく痛みに眉間にしわが寄った。
「オスカー…大丈夫?」
レリアの声に、オスカーは視線を向けた。
今までレリアは彼に優しい態度を時々見せてくれていたが…時間が経てばそんな姿も徐々に消えてしまうのは明らかだった。
やがて――彼女の目の前で自分が血を流していても、まるで何事もなかったかのような表情で見つめ返してくるのだろう――。
想像しただけで、胸が裂けるように苦しかった。
「オスカー…?」
「じゃあ、僕は?」
「……なに?」
「君を送り出したあと……僕は?」
僕は、どうすればいいんだ?
オスカーは、行き場を失った人のように、永遠に居場所をなくした人のように、虚ろな目で問いかけた。







