メイドになったお姫様

メイドになったお姫様【146話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【メイドになったお姫様】まとめ こんにちは、ピッコです。 「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

146話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 密約の果ての脱出劇

数日前、シアナは誰の目も届かない深い森の奥で、一人の男と密会していた。

相手は、第二皇妃アンジェリナの親族であり、第六皇子レイシスの祖父でもあるビルヘルム侯爵だった。彼はシアナが皇太子ラシードの婚約者と決まって以来、トラブルを避けるためアンジェリナやシアナの前から一切姿を消していた男だ。

そんな彼が、アンジェリナを経由して「どうしても会いたい」と手紙を寄越してきた。手配中の身であるシアナにとって、外部の人間と会うのは極めて危険な賭けだったが、手紙に書かれた一文が彼女の足を突き動かしたのだ。

二人は静かに向かい合い、シアナから切り出した。

「……皇帝陛下について、お話ししたいことがあるとお聞きしました」

「その通りです」

ビルヘルム侯爵は重い口を開いた。

「姫様も、陛下のご様子についてはすでにお聞き及びでしょう」

シアナは静かに首を振った。皇宮を脱出して以来、彼女はアンジェリナ皇妃を通じて宮中の動向を追っていた。暗殺未遂事件の夜を境に、皇帝の精神状態は異常なまでに不安定になっているという。

治療にあたる御医の頬を殴りつけ、食事を運んできた侍従に熱い茶を浴びせかける。と思えば、次の瞬間には虚ろな目で空を見上げ、意味をなさない言葉をぶつぶつと呟き続ける――。

宮中では「実の息子に命を狙われたショックで取り乱しておられるのだろう」と、周囲も理解を示そうとしていた。だが、侯爵が語った真実は、そんな生易しいものではなかった。

「……先日、四人の皇妃が陛下の寝室を訪問した際のことです」

寝台に横たわる皇帝へ、四人の皇妃が順番に挨拶を述べていたとき、それまで虚ろだった皇帝の目が突如として爛々と見開かれたという。そして、いきなり第三皇妃ライラの髪を掴み上げ、怒号を響かせたのだ。

『名家の生まれで子を一人なした程度で、よくもこの私を侮辱してくれたな!』

まさに青天の霹靂であった。ライラ皇妃は悲鳴を上げ、残る皇妃たちもパニックに陥り立ち尽くした。

その絶望的な惨状の中に、現れたのが皇后だった。

『おやめください、陛下』

皇后が静かに声をかけた瞬間、信じがたい出来事が起きた。

先ほどまで狂暴な獣のように荒れ狂っていた皇帝が、嘘のように大人しくなったのだ。

その場にいた皇妃たちは息をのんだ。皇帝は本来、他人の言葉に耳を貸すような甘い性格ではない。ましてや皇后は、自分を刺したとされるラシードの実母だ。被害者である皇帝からすれば、最も憎しみを向けられて然るべき相手である。

それなのに、なぜこれほどあっさりと皇后に従うのか。

導き出される答えは一つしかなかった。皇帝は、以前とは比べものにならないほど盲目的に皇后を寵愛している――。その事実を突きつけられた皇妃たちは、ただ皇后の前で平伏するしかなかったのだ。

「宮中では、我が子(ラシード)の罪に心を痛める皇后を不憫に思い、皇帝陛下が気を配られているのだという見方が大半です。死の淵を彷徨ったことで情が深まったのだと。……ですが、私にはどうしても別の可能性が頭から離れないのです」

ビルヘルム侯爵の眼光が冷たく光った。

「……もしかすると皇帝陛下は、皇后陛下に『操られて』いるのではないでしょうか」

「……ッ!」

あまりにも突拍子のない仮説に、シアナの背筋に冷たいものが走った。

「操られている……? それはどういう意味ですか」

侯爵は慎重に言葉を選びながら、過去の秘密を明かした。

「昔……孫のレイシスの体調を回復させようと、怪しげな魔法使いを探し出したことがあります。魔法使いは極めて希少で隠れて暮らしておりますが、莫大な報奨金に釣られて向こうから接触してきた男がおりました」

侯爵の表情が影を帯びる。

「その魔法使いはこう言ったのです。『レイシス様を、あなたの言葉に絶対服従する状態にして差し上げましょう。どんな無理難題であろうと従うように』と」

シアナの顔色が変わる。侯爵は淡々と続けた。

「ただし、強力な副作用があると告げられました。強制的に精神へ干渉するため、神経が過剰に過敏となり、情緒不安定になって異常な行動を起こすようになる、と」

シアナのエメラルドの瞳が、侮蔑と嫌悪で冷たく細められた。幼い孫にそんな恐ろしい術をかけようとした目の前の男に対する、隠しきれない不快感だった。

侯爵もその視線に気づいたが、ここで弁明するほど愚かではなかった。本来は副作用が出ないようごく短時間だけ試すつもりだったのだが、それを説明したところで意味はない。不快感を呑み込み、本題へ戻った。

「その魔法使いが語った禁術の副作用と、現在の皇帝陛下のご様子が、恐ろしいほどに合致するのです。ただの破天荒な推測かもしれませんが……何かの手がかりになればと思い、お伝えしました」

帝国において、精神を汚染し他者を操る魔法は最も重い忌避対象であり、禁忌中の禁忌だ。もし皇后がそれを皇帝に行使したとすれば、国家転覆に等しい大罪であり、即刻処刑に値する。

シアナは複雑な眼差しで侯爵を見つめ、問いかけた。

「……なぜ、私にそのような重大な話を? 危険を冒してまで」

「答えは明白です」

侯爵は悪びれもせず答えた。

「ご存じの通り、レイシスは皇位継承権を放棄しました。我がビルヘルム家の権威は失墜したも同然です。皇太子殿下がレイシスの後ろ盾になってくださるという約束もありましたが、今の状況では皇帝陛下に近づくことすら叶いません」

「つまり……お家のために、皇太子殿下の陣営へ乗り換えようとおっしゃるのですね」

「その通りです」

頑なな顔でうなずくビルヘルム侯爵だったが、彼が胸の内に秘めた本当の理由は別にあった。

――先日、国政会議のために皇宮を訪れた際のことだ。

廊下を渡っていた侯爵は、満開の花が咲き誇る庭園で、楽しそうに絵を描くレイシスの姿を目撃した。その隣には、見たこともないほど晴れやかな笑みを浮かべる娘・アンジェリナの姿があった。

その時、侯爵は生まれて初めて悟ったのだ。

自分が「家族のため」と信じて行ってきた権力闘争のすべてが、ただ二人を追い詰めるだけの誤りだったのではないか、と。

だが、長年権力の泥に塗れてきた彼には、それを今さら素直に認める素直さなどなかった。だからこそ、代わりに娘と孫にあの穏やかな笑顔をもたらした者たちの存在を思い浮かべたのだ。

――皇太子ラシードと、シアナ。

(ビルヘルム家の流儀は『与えられたものは必ず返す』ことだ。娘と孫に平穏を与えてくれたその代価……ここで支払わせてもらう)

もちろん、侯爵の話はどこまでいっても「推測」に過ぎなかった。

この不確かな情報をどう使い、囚われのラシードを救うかは、完全にシアナの腕にかかっていた。

『私の話は以上です。皇太子殿下のご無事をお祈りしております』

去り際にそう言い残した侯爵の言葉を思い返しながら、シアナは深く思考を巡らせていた。

皇后が皇帝を操っている――その可能性は極めて高い。しかし、証拠も証人も何一つない状態では、ただの妄言として処理されてしまう。

――だが、今。

法廷の真ん中に立ち、皇后の顔を見つめるシアナの胸中に、迷いはなかった。

あの推測は、間違いなく『真実』だ。

「皇太子殿下の無実を証明してくださる唯一のお方――それは、皇帝陛下ご本人です!」

シアナの声が法廷に轟いた瞬間、玉座の隣に座る皇后の顔からすーっと血の気が引いた。その見開かれた瞳は、決して人目に触れてはならない絶対の秘密を暴かれた者の反応そのものだった。

沈黙を破り、正面に座るアンゲルス公爵がうろたえながら尋ねる。

「そ、それはいったいどういうことにございますか!? 皇帝陛下が、殿下の無実を証明なさるとは……!」

シアナは胸を張り、堂々とした声で法廷中に語りかけた。

「皆様もご存知の通り、皇太子殿下は常に皇帝陛下を敬い、忠誠を尽くしてこられました。これまで一度たりとも陛下に背いたことのないお方が、突如として牙を剥くなど、あまりにも不自然ではありませんか!」

その言葉は、傍聴席にいた貴族たちの疑問と合致した。

「血の皇太子」という恐ろしい異名を持つラシードだったが、戦場を離れれば誰よりも理性的で冷徹な人物だ。自らに何の得もない状況で、衝動的に皇帝を刺すような愚か者ではない。

シアナは力強く拳を握りしめ、言い放った。

「この悲劇の裏には、恐ろしい企みが隠されていたのです! 私は独自に調査を行い、ついに真相へ辿り着きました!」

視線を集めながら、彼女は堂々と嘘を吐く。

「皇帝陛下は邪悪な魔術によって精神を汚染され、自らの意思を奪われた状態にあります! 皇太子殿下はその歪められたお言葉によって、罪人に仕立て上げられたのです!」

――もちろん、ハッタリだ。

シアナにそこまでの調査ができるはずもなかった。皇宮の警備は鉄壁であり、物理的な証拠など何一つ掴めていない。

だが、ビルヘルム侯爵の推測と、先ほど見せた皇后の決定的な動揺。それだけでシアナには十分だった。あたかも絶対的な証拠を握っているかのように見せかけ、場を支配する。

あまりの衝撃的な告発に、法廷全体が息をのんだ。

アンゲルス公爵が震える声で確認する。

「つまり、姫様がおっしゃりたいのは……皇帝陛下が何者かに『操られている』と……?」

「はい、その通りです!」

「――なんという不敬!!」

ついに耐えかねた皇后が、金切り声を上げて立ち上がった。

「皇帝陛下に対し、そのような禍々しい妄言を吐くなど万死に値します! これ以上、その口を開かせるな!」

叫ぶ皇后の胸は激しく上下していた。

(そんな証拠など、この世にあるはずがない……!)

魔法使いは皇后宮の最奥深くに厳重に秘匿されている。その男を押さえない限り、皇帝にかけられた術を証明することなど不可能なのだ。

皇后が心中で「証明できるはずがない」と高をくくった、その瞬間。

シアナは待ってましたと言わんばかりに、ドレスの懐から眩いばかりの『真っ白な石』を取り出してみせた。

「これはミスティック商団を通じて手に入れた特殊な『魔力石』です! この石に触れれば、人や物に掛けられたあらゆる不浄な魔法が強制解除されると言われています! もし皇帝陛下が真に魔法で操られているのなら、この石を近づければ必ず反応があるはずです!」

「な……!?」

皇后の許可を仰ぐ間もなく、シアナは勢いよく手中の白い石を皇帝に向けて投げつけた!

「皇帝陛下をお守りしなさい!!」

皇后の悲鳴のような叫びを受け、周囲の近衛騎士たちが一斉に皇帝の盾となるべく動き出した。重厚な甲冑の群れが玉座へとなだれ込む。

――だが、それこそがシアナの仕掛けた罠だった。

彼女の狙いは、最初から皇帝などではなかったのだ。

法廷中の視線と警備が皇帝へ集中した、わずかコンマ数秒の隙。

シアナは地面を強く蹴り、真っ直ぐに疾走した。

彼女が目指した先は――鎖で繋がれ、首元に剣を突きつけられているラシードのもと!

「皇帝に投げたのは、ただの石よ!」

シアナは走りながら、もう片方のポケットから『本物の青い魔力石』を取り出していた。

警備の騎士たちが皇帝に気を取られ、手薄になった一瞬の隙を突き、シアナはラシードの元へ飛び込むと、血の滲む彼の手を力いっぱい握りしめた。

「シアナ……!?」

驚愕に目を剥くラシード。

その瞬間――

バリバリバリッ!!

法廷内に雷鳴のような衝撃音が響き渡り、二人の身体が視界を奪うほどの眩い青光に包み込まれた。

光が収まり、煙が晴れた時には――

そこには繋がれていた鎖だけが虚しく崩れ落ちており、シアナとラシードの姿は、影も形もなく消え去っていた。

まるで最初から、そこに誰もいなかったかのように。

 



重要なポイントは以下の3点です。

  • ビルヘルム侯爵が明かした「皇帝操作」の禁術

    侯爵は過去の経験から、現在の皇帝の異常行動と絶対服従の様子が「精神干渉の禁忌魔法」の副作用と一致することを見抜き、家族に平和をもたらしたラシードとシアナへの報恩としてその推測をシアナに託した。

  • ハッタリとブラフで皇后を追い詰めた裁判での大芝居

    シアナは証拠もないまま「皇帝は魔術で操られている」と堂々と告発し、偽の魔力石を皇帝へ投げつけることで、法廷中の視線と警備を皇帝護衛へ一気に集めさせた。

  • 隙を突いたラシードの奪還と転移脱出

    騎士たちの意識が逸れた一瞬の隙を突き、シアナは囚われていたラシードのもとへ駆け寄って本物の魔力石を発動させ、鮮やかに二人で法廷から脱出した。

 

 

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