影の皇妃【１３０話】ネタバレ

「来月、貴族の集まりがあると聞きました。地方の貴族たちも訪れる大きな会合なんですよね？」

「それが？」

リアブリックの態度は、いつにも増して冷たい。

「お前がどうしてそんなことを聞く？」というニュアンスだった。

「かりそめでも公女ですので、私がすべきこともあるかと思いまして」

「・・・」

「ドレスや装身具を合わせるためには、まず知るべきではないかと思ったのです」

エレナは巧妙な話法で、リアブリックの腹の中を探った。

公女の身分を適切に提示し、雰囲気に合わせてドレスと装身具を合わせるという理由をつけたのだ。

「貴族会議が主な目的ですから、宴会のようにあまり派手にはしないでください」

「分かりました。派手なものは、なるべく避けます」

曖昧な回答だったが、エレナはそれに基づいて推論した。

貴族会議で、華やかさは自制。

たった二つの手がかりだったが、これだけでもエレナにとって大きな収穫だ。

（貴族会議のテーマが、かなり重いということでしょうね）

推測した通り、貴族会議はピネチア栽培地の消失による被害を復旧するための対策会議のようだった。

地方の中小貴族まで呼び入れたことから、貴族会議を通じて了解と協力を求めるテーマが行き交うのではないだろうか。

（鋭いリブが、私を貴族会議に入れてくれないと思うけど）

最も確実な方法は、貴族会議に出席することだが、リアブリックは許可しないはず。

過去の人生でもそうだったが、「公女」としてエレナを立てるだけで、大公家と直接的に関係することには徹底的に排除してきたのだから。

「私もあなたに言いたいことがあります」

「言いたいことですか？」

「これまで公女が行ってきた芸術作品の売買を禁止させました」

「どうして？お父様の許しも得たはずですが？」

「・・・」

エレナは恨めしそうにリアブリックを見ながら、悔しがるような仕草をする。

（予想はしてたけれど）

事前にカリフを通じて大公家が契約破棄を通達した事実を聞いていたため、驚くこともなかった。

「私の予想をはるかに上回る損失を与えましたので」

「本当にそうなのですか？」

「何を・・・」

リアブリックの視線が刺々しくなる。

そうでなくても栽培地の消失で財政に余裕がないため、エレナが美術品の売買をして無駄にした大金がもっと惜しく感じたのだろう。

「はあ・・・。今、美術市場がどうなっていると思っていますか？芸術品の価値が暴落して売買になりません」

「リブ、それは一時的な現象です」

「一時的？どういう根拠ですか？」

リアブリックの質問を受けて、エレナはどぎまぎする。

「それは・・・。芸術品は長期的な目でアプローチしないと・・・」

「誰が本に書かれた話を聞きたいと言ったのですか？」

「・・・」

棘のように尖ったリアブリックの態度から見て、彼女がどれだけ歯軋りをしていたのか分かる。

芸術品の価値が上がる時は関係ないが、大公家の財政が悪化して価値まで落ちる今、エレナは不満に思うしかなかった。

「リブ、ごめんなさい。私があまりにも軽率に売買してしまったようです」

エレナは頭を下げて謝る。

しかし、カーペットを見下ろす視線の下に吸い込まれる口元は、リアブリックを嘲笑っていた。

実におかしなことだ。

怒っているのはリアブリックで、謝っているのはエレナ。

それにもかかわらず、どうしてこんなに気分がいいのだろうか。

「もう話すことがなければ、出て行ってください」

「あの・・・。リブ、もう一つ聞いてもいいですか？」

エレナは表情を管理して、そっと顔を上げる。

「マダムが言ったのです。礼法はどこに行っても非の打ち所がないと。ですから、皇太子妃になるためには社交界の評判に気を使いなさいと言いました。リブの考えはどうですか？」

元の歴史と違って、自分を皇太子妃にするために、リアブリックがなぜ焦らないのかが疑問だった。

なぜ空席になった皇太子妃を放置するのか、理解できなかったのだ。

エレナは理由を知りたかった。

「マダムの話にも一理ありますね。ですが、まだ皇太子妃の選出式と関連した公式の日程は予定されておりません。急ぐ必要はありませんよ」

「予定にない？」

エレナの目つきが沈む。

特殊な場合を除いて皇室行事は遅ければ３ヶ月、早ければ１年前に公表される。

リアブリックの言葉は、最初から計画にないということだった。

（何があったの？私を皇太子妃にするつもり自体がないということ？）

一瞬、そんな疑問が浮かぶが、エレナは頭の中から吹き飛ばした。

フランツェ大公やリアブリックは、絶対に皇太子妃の座を放棄する者ではない。

彼らが究極的に帝国を飲み込むための野望を実現するにあたって、皇太子妃の選任と次期王位を継ぐ２世が絶対的に必要なのだから。

（私には分からない理由があるはず。知って備えないと）

エレナは気を引き締めた。

皇太子妃の選任は決して見逃せないものであり、今後、大公家を没落させるための計画の一部でもあるのだから。