こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
今回は26話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
26話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 外伝
闇が垂れ下がった宮、イベットの顔は険悪だった。
小さな手もぶるぶる震えている。
今日、また耐え難い屈辱を受けたからだ。
宮を歩いている途中、出会ったお姫様の一人がイベットを見て、あら、と足を止める。
そして眉をひそめてつぶやいた。
「どうすればいいの、イベット」
皇太后に押されて立場が狭くなった姉妹に向けた同情ではなかった。
徹底した嘲笑だ。
イベットは何の音も立てずに宮殿に戻り、大声を張り上げる。
「くそっ!」
もっと惨めなのは、この瞬間までも部屋にある物一つ勝手に投げられないという事実だった。
皇太后に押された後、城で配っていた物品の普及が途絶えてしまった。
実母に時々入ってきた賄賂も。
イベットは完全にどん底に落ちてしまった。
イベットは唇を噛み締めながらつぶやく。
「これは全部アリスのせいだよ」
あの女の子が汚い言い方をしたせいで、皇太后に嫌われるようになった。
何とかして復讐をしなければならなかった。
しかし、状況は良くない。
日増しに皇太后がアリスを大事にしているという話が聞こえてきたのだ。
ひどい目にあうほど孫娘を大事にしているという。
この状態でアリスに触れたら負けるのは確実。
今度こそ皇太后に粉になるまで踏みにじられるだろう。.
しばらくして、イベットの目が光った。
「アリスじゃなくて、その横にくっついてる侍女に触れたらいいじゃないか」
イベットはまだ記憶が鮮明だった。
あの生意気な侍女を殴った時、アリスがわんわん泣いていた姿が。
アリスにとって、その侍女は特別な存在に違いない。
そこまで考えが届くと、イベットの口角が上がる。
イベットの頭の中に悪辣な方法が波のように押し寄せ始めた。
実に久しぶりに感じる楽しみ。
数時間後、イベットの考えが整理された。
「ルビー宮を訪ねてあの侍女を誘い出そう」
いくらアリスにかわいがられたとしても、下級侍女だから姫の命に逆らうことはできないはず。
侍女に会った後、自分の頬を叩いて叫べばいい。
『下級侍女が姫の私を殴りました!主が最近、皇太后様の愛をたっぷり受けるとしても、これはひどいじゃないですか!』
いくらイベットを無視していた彼らも、あえて一介の侍女が皇族に触れたという事実にはうごめくだろう。
それも皇太后の勢いを背負って気になり始めたアリスの侍女ならなおさら。
侍女は大きな罰を受けるだろう。
城の外に追い出されるかもしれないし。
「上手くやれば、首を切られることもあるよ」
もちろん、アリスが『そんなことするな』と泣き叫ぶだろうが、仕方がない。
皇族が立ち上がると、皇太后は衰弱した老人に過ぎないのに・・・。
たかがその程度の力だ。
イベットはくすくす笑う。
この計画を完璧に成功させる自信があった。
「ふふ—ん」
イベットは鼻歌を歌いながら宮殿の外に出る。
ルビ一宮に行き、シアナに会うためだ。
シアナを誘う言葉も用意しておいた。
「前に殴ったことを謝りたいと言おう」
すると、その間抜けな侍女は、お姫様のお詫びを受けるかもしれないと思い、飛び出してくるだろう。
それが自分の命綱を切るとも知らずに。
しかし、イベットはルビ一宮に到着できなかった。
自分の前に立った大きな人影のためだ。
イベットはぼんやりと彼を見た。
陽射しに輝く銀色の髪と長いまつげの間から見える鮮やかな紫色の瞳。
うっとりするほど美しい顔は明らかにラシードだった。
(なんてことだ)
イベットとラシードは、同じ皇帝の血筋を持つ兄妹だったが、位置は全く違っていた。
ラシードは一番高いところに、イベットは一番下に。
それでイベットはラシードと顔をまともに合わせたことが一度もない。
遠くからちらっと見ただけだ。
そんなラシードの顔を正面から見ると、何も思いつかなかった。
その時、優しい声が聞こえてくる。
「あの子に手を出したんだね」
夜明けの風のように澄んでいて、どこか冷ややかな声。
イベットはゆっくりと瞬きをした。
(あの子だって?)
イベットは一体誰の話をしているのか分からなかった。
ラシードは混乱している妹に向かって話し続ける。
「あの子の傷を見た日、すぐに追いかけてこなかったのは、あなたを許したからではない。待ったをかけたんだよ。あの子がやりたいことを全部やるまで」
「・・・」
「あの子の復讐は終わった」
ラシードは眉をひそめ、つぶやいた。
「たかが皇太后の鞭打ち一本で」
「・・・」
イベットは目を見開いた。
ラシードの言葉がパズルのように合わさって「その子」が誰なのかを悟ったためだ。
(まさか今アリスの侍女について言ってるの・・・?)
ラシードは続けた。
「あの子はとても優しくて、このように仕事が仕上がることで満足していたよ。でも私は違う、イベット」
「・・・」
「私は全然優しくない」
「・・・」
「私の心は少しも解けてない」
美しい顔は穏やかに見えた。
声も優しい。
にもかかわらず、イベットはこれまで一度も感じたことのない恐怖を感じた。
全身の毛が逆立ち、指先が冷たく冷め始める。
それは本能だった。
死にたくないという。
イベットは青ざめた顔でうつぶせになった。.
「ご、ごめんなさい!」
「・・・」
「私が全部悪かったです。お許しください。侍、侍女に祈るように言ったらお願いします。お願いです、お兄様・・・」
幼い少女の目から涙がぽつりぽつりと流れ出る。
美しい顔で妹を見下ろしていたラシードが口を開いた。
「嫌だ」
「・・・」
イベットは目を見開いた。
ラシードが腰から剣を取り出したからだ。
「あの子の足を殴ったから、あなたも足を出しなさい」
きらめく剣刃を眺めながら、イベットが大声を上げる。
「キャー!」
ソルが近づいてきた。
ソルは床に倒れた少女を見る。
気を失ったイベットは、どこも怪我をしていない。
「しかし、その瞬間だけは本当に両足が切れる恐怖を感じただろう」
ソルは涙でいっぱいになったイベットの顔を見ながら言った。
「それでも殿下らしくない目で見てくださいましたね」
ラシードは言葉だけで脅迫する人ではない。
敵に分類する者は無条件に殺した。
それがまだ幼い子供であれ、美しい女性であれ、生きる日があまり残っていない老人であれ。
(そんな方が血を見ないで終わらせるなんて。いくら接点がなくても血がつながった妹だから心が弱くなったようだ)
しかし、ソルの考えは間違っていた。
ラシードは真剣な顔で言った。
「シアナは勘がいいじゃないか。どんなに一生懸命隠しても、あの子は私がイベットを殺したことに気づくかもしれない」
「・・・」
「そしたら私を怖がるんじゃないの。それは嫌だ」
そう言うラシードは、先ほどイベットを脅した人とはまったく別人のようだった。
本気で心配しているようだ。
敗戦国出身の下級侍女の反応などにだ。
(とにかくあの方に平凡な感情を期待した私が過ちだ。自分が仕える方だが、本当に狂った方だ)
ソルは舌打ちをしてイベットを抱きしめた。
「それでは宮へお迎えいたします」
「・・・」
少し残念だったが、これくらいで十分だ。
イベットはもうシアナの近くには近づけないだろうから。
それでラシードは目を見開いて優しく笑った。
「うん」
悪辣な悪魔から自分の大切な人形を守った子供のように無邪気な表情で。
数日後、皇居に噂が広がった。
イベット姫が狂ったって。
「両足が元気なのに、しきりに足を切られたと泣き叫ぶんだって」
「皇太后様にムチを打たれたのがそんなに衝撃だったのか」
「そうみたいだね。面白いことだよ。いつでも女中たちを殴っておきながら、いざ本人は鞭の何本かに気をとられるなんて」
誰も小さなお姫様に同情しなかった。
イベットの実母は結局、娘とともに皇居を離れる。
気を失った娘の療養のためだ。
馬車に乗ったイベットは、死体のように青白い顔でつぶやいた。
「ああ、すみません。だから切らないでください」
それが6番目の王女イベットの最後の姿。
シアナには優しいラシードですね。
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