こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

75話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 生まれ変わるために②
シアナは久しぶりにグレイス皇女の宮殿を訪ねた。
『皇女陛下が運動を始めて以来、初めて来たかもしれない。』
シアナは、ただの侍女にすぎない自分の身分を思い返しつつ、そう感じた。
食材管理室という勤務先が別にあったため、シアナはしばらくグレイスの宮殿を訪れることはなかった。
つい余計な話が出るのではないかと心配だったから。
その代わり、チュチュが時折シアナを訪れ、グレイスの近況を伝えてくれた。
『チュチュの話では、グレイス皇女様の状態がかなり良くなっているって言ってたけど……。どれくらい良くなったのかしら?』
シアナは期待を胸にドアを開ける。
「おいで、シアナ。」
涼やかで風のように清々しい声。
シアナは視線を声の主へ向けた。
明るい日差しの中、グレイス皇女が椅子に腰掛けている。
「……。」
シアナが彼女を見つめるその目には驚きがあった。
この短い間に、グレイスは明らかに変わった姿を見せていた。
日差しに輝くカラスのように艶やかな黒髪、まるで白玉のような透明感のある肌、そしてバラのように美しい顔立ち。
外見の美しさはそのままだったが、漂う雰囲気は以前とは異なり、青々とした樹木のような生命力を感じさせた。
まるでガラスのように壊れやすそうだった以前とは違い、今は少し触れたくらいでは揺るがない強さが加わった印象だった。
グレイスが視線を伏せて言った。
「そんなに見つめてどうしたの?」
「皇女様が以前よりさらにお美しくなられていたので、つい。」
澄んだ表情で告げたシアナの言葉に、グレイスは眉をひそめた。
「お前もお世辞を言うのか?」
シアナは少し困惑した顔で答えた。
「お世辞ではありません。お顔の血色も良くなり、髪にも艶が出て、さらに目元の輝きが一段と増したように見えるんです。」
「……。」
グレイスは元々侍女たちの言葉を信じていなかった。
侍女たちは、自分が仕える存在であれば、太っていようが、痩せこけていようが、さらにはしわだらけの老人であろうと、美しいと絶賛するのだから。
しかし、なぜだろう。
シアナの言葉は、そんな甘ったるい嘘とは違うように感じられた。
そのため、グレイスはほんのりと頬を赤らめた。
「そうならば良かったわ。」
グレイスの言葉に、シアナはにっこりと笑った。
「何よりお元気そうで何よりです。」
「……実はそうね。最近は食べたものを吐くことが減ったから。」
どれほど野菜中心の食事であっても、グレイスにとって食べ物を飲み込む行為は依然として恐怖だった。
しかし、以前のように毒を飲み込むかのような息苦しさではなくなっていた。
『食べ物を食べたら体を動かせばいい。それなら絶対に太らない。』という信念のためだ。
グレイスは食べた後、すぐに体を動かしていた。
運動をしないといけないという恐れがあったが、体を動かしているうちにその恐れは薄れていった。
グレイスが言った。
「思ったより運動するのは楽しいものね。」
グレイスの隣で静かに立っていたチュチュが会話に加わった。
「さすが姫様、運動の天才です!」
チュチュは興奮した顔で話を続けた。
「このチュチュ、生きてきた中で姫様みたいに体を使いこなす方は初めて見ましたゆ。どんな重い荷物も持ち上げたらさっと持ち上げて、ジャンプをしたらそのまま上までぴょんと上がっちゃって、柔軟性も抜群で体のどこを押してもぴったりしてますし!」
グレイスは眉をひそめ、手を下ろした。
「やめて。恥ずかしいわ。」
「えー、恥ずかしがるなんて!こんなに素晴らしい才能を広く広めなきゃダメですよ!」
チュチュは興奮した顔で、石で作った運動器具を持ってきた。
「姫様がどれだけすごい力を持っているか、一度お見せくださいませ。きっと皆驚きますよ。」
グレイスは呆れた顔でチュチュを見つめた。
『皇女の前で力を誇示しろだなんて、正気なのかしら?』
しかしグレイスが何か言う前に、シアナが落ち着いた表情で言った。
「チュチュから話を聞いて驚きました。本当にそんなに力が強いんですか?」
「強いなんてもんじゃないわ。まるで天からの授かり物みたい!」
二人は目をぱちくりさせながら、お互いに目を向けるしかなかった。
グレイスは小さくため息をつき、チュチュが持ってきた運動器具に手を伸ばした。
「いいわよ。」
大したことをしているように見せても、仕方がない。
事実なのだから。
グレイスの返答に、シアナは興奮した顔で本当に素晴らしいと褒め称え、賞賛の言葉を次々と並べた。
チュチュも肩をすくめながら「そうでしょ?ね?」と少し誇らしげな表情を浮かべた。
『ふん。力がちょっと強いくらいで、何がそんなに大したことなのよ。レディにとってはむしろ趣味みたいなもんよ。』
グレイスは心の中でそう考えた。
しかしグレイスは、自分でも気づかぬうちに口角が少し上がっていた。
「これよりもっと重いものも持ち上げられるけど、それも見せてあげようか?」
「はい!」
グレイスの言葉に、シアナは目を輝かせて答えた。
グレイスはさっきよりもさらに巨大な運動器具を持ち上げた。
「うわー!」
シアナは目を輝かせながら拍手をした。
「うわー!」
チュチュも口を開けて拍手をした。
二人が手を叩き続ける中、グレイスは巨大な石を持ち上げていた。
シアナは信じられない表情でグレイスを見つめ、彼女が置いた石を持ち上げようとした。
両手でしっかりと掴み力を込めたが、少しも持ち上がらなかった。
「本当に重いですね。こんなものをどうしてあんなに簡単に持ち上げられるんですか?」
両目で見ても信じられなかった。
そして、グレイスの腕の筋肉はシアナやチュチュとはまったく違っていた。
・
・
・
そのとき外から執事の声が聞こえた。
「グレイス姫様、お客様がいらっしゃいました。」
今日訪ねてくるはずのお客様がいないとばかり思っていたグレイスは眉をひそめた。
執事の声が続いた。
「アイザック様です。」
「……!」
グレイスの目が見開かれた。
運動器具の近くでふざけていたシアナとチュチュも同様だった。
アイザック・フォン・ヘイスティングス。
予想外の訪問者に、グレイスは騒然となった。
「早く片付けなさい!」
グレイスの叱責に、チュチュが慌てて床に散らばった運動器具を持ち上げ、ベッドの下に隠し始めた。
グレイスが部屋で運動をしていたことが知られるわけにはいかなかったからだ。
それは、あのようなとてつもなく重いものを持ち上げていたことが秘密であることを意味していた。
絶対に目立ってはいけなかった。
シアナも素早く動き出した。
「姫様、お座りください。準備させていただきます。」
激しい運動のせいで、今のグレイスの姿は乱れ切っていた。
本来であれば、執事を呼んでグレイスを整えるべきだったが、その余裕はまったくなかった。
グレイスは髪をかき上げながら、シアナに体を任せる。
シアナは手際よくグレイスを整え始めた。
乱れた髪を整え、白いタオルで額に滲んだ汗を拭き取った。
その後、真珠の粉で作られたパウダーを軽く叩いた。
唇にはバラの花びらで作られたリップを一塗り。
もともと美しい顔立ちのため、それだけで十分だった。
これだけでも十分にグレイスは美しい姫の姿になった。
シアナが尋ねた。
「服はどうなさいますか?」
普段ならグレイスはコルセットにペチコートまでしっかりと身につけ、豪華なドレスを着るはずだったが、今は快適な室内着を着ていた。
グレイスが言った。
「ショールだけかけてちょうだい。」
こうして既に婚約して3年目だ。
その程度のことはアイザックも理解しているはずだった。







