こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

77話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 生まれ変わるために④
アイザックが帰った後、グレイスは一人で部屋の中に座っていた。
どれほどの時間が過ぎたのだろう。
コンコン、部屋の扉を叩く音が聞こえた。
「姫様、夕食をご用意しました。」
グレイスが運動を始めてから食事を担当しているチュチュの声だ。
「……。」
返事がないことに気づくと、チュチュはさらに言葉を続けた。
「今日のメニューは、トマトを添えた柔らかいリーフレタスのサラダに、レモンとガーリックを使ったさっぱりしたドレッシングです。それと、ほんのりとしたリコッタチーズと焼きたてのパンがセットになっています。」
チュチュが考え抜いて作った特別なメニュー。
名付けて「見た目は軽いけど、一皿食べればお腹いっぱいセット」。
毎回、グレイスは食べないかと思わせて、結局は皿をきれいに空にしていた。
しかし今回は、チュチュの期待とは裏腹に、グレイスは低い声で言った。
「もういい、食べない。」
外にいたチュチュは目を大きく見開いた。
一度でも口にすればすぐに元気が戻るだろうに。
意を決して、チュチュは部屋に入ってきた。
両手にたっぷり盛られたサラダの皿を持ちながら。
チュチュは椅子に座っているグレイスのそばに来て言った。
「姫様、そんなことおっしゃらずに、一皿だけでもお召し上がりください。さっきアイザック様がお越しになった後、運動をなさったのに、間食もされていませんでしたよね。きっとお腹が空いているはずですから……。」
しかし、グレイスが返事をしないと、チュチュは困惑した表情を浮かべた。
チュチュは心配そうな顔で再び口を開いた。
「少しでも召し上がってください。」
「いらないって言ったでしょう!」
グレイスが怒りに満ちた顔で、チュチュが持っていた皿を引きはがした。
ガシャン!
床に落ちた皿が割れ、中に盛られていた料理が散らばった。
「まあ。」
目を大きく見開いたチュチュに向かって、グレイスが叫んだ。
「食べたくないって言ったでしょ。それなのにどうしてしつこく勧めるの!」
「だ、だって、このまま食べないでまたドカ食いをなさったらどうするんですか。そしたらまた吐かれるかもしれないのに……。」
「もうそれでいいの!」
「……。」
「そんな風に生きても、今のところは大丈夫だったんだから。」
それは今の体型を維持するための最も効果的な方法だった。
そんな良い方法をどうして捨てようとするのだろうか。
「……。」
グレイスの目がかっと見開かれた。
まるで誰かに魅了されたように。
チュチュはその姿をぼんやりと見つめ、呆然としていた。
「でも姫様。シアナが言っていましたよ。そんなことを続けていたら命に関わるかもしれないって。」
チュチュにとっては想像するだけでも恐ろしい話だった。
しかし、グレイスは冷たい微笑を浮かべて言った。
「じゃあ死ねばいい。」
「……。」
「アイザック様に嫌われるくらいなら、そのほうがましよ。」
・
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チュチュは部屋の前で声をかけた。
「姫様、夕食をご用意しました。」
部屋の中から冷たい声が返ってきた。
「持っていって!」
それがグレイスの返事の全て。
チュチュは暗い顔をして、しっかり閉ざされた部屋の扉を見つめた。
グレイス皇女が扉を閉じてから既に数日が経っていた。
食事を拒むようになったのもその頃からだった。
姫様が食事を取らないことに戸惑うチュチュに、他の侍女たちが言った。
「姫様は元々、一年のうち数回は断食をされるわよ。最近急に体重が増えたから、それを減らそうとしているだけで、あまり心配することはないわ。」
さらに言葉を続けた。
「今の姫様はとても敏感なの。だから、余計な心配をして妙に気を遣うような態度は取らない方がいいわよ。」
侍女たちの目は光っていた。
宣言された敵意。
それもそのはず、現在グレイス皇女を仕える侍女たちの間で、チュチュの地位は最悪だった。
数日前、食事を盗んだ疑いが晴れないまま、チュチュはグレイス皇女の食事を担当する侍女として配置された。
それだけではない。
グレイス皇女は一日に何度もチュチュを呼びつけてはからかうような態度を取った。
何をするにも扉を叩き、眠っているところを起こしてはこう言う。
『持ち合わせがないくせに、大した存在でもないあの子を気にする必要がどこにあるの!』
グレイス皇女を仕える侍女たちにとって、チュチュは敵に他ならなかった。
チュチュもそれをよく理解しており、自分の立場を十分にわきまえていた。
『見習い侍女だった頃、私を教えてくれた侍女長様がおっしゃっていた。宮廷では優秀であることよりも、敵を作らないことが重要だと。』
グレイスはチュチュの関心を望んでおらず、宮廷の侍女たちもチュチュが目立つことを許さない雰囲気だった。
こういう時は状況が良くなるまで、静かに身を潜めるべきだ。
それが宮廷で長く生き残るための方法。
しかし、チュチュにはどうしてもそれができなかった。
『どうして!姫様が部屋の中で一人で苦しんでいるのを見過ごせというの?』
チュチュはグレイスを助けたいと思った。
そして、チュチュはシアナを探しに行った。
「シアナ、大変よ。姫様がおかしくなってしまったの。」
「それはどういうこと?」
目を大きく見開いたシアナに向かって、チュチュは言った。
「数日前に姫様の婚約者が来たじゃない。あの優男みたいな彼が何を言ったのかは分からないけど、それ以来、姫様は食事を全然とらないの。」
その短い説明で、シアナは事態の深刻さを察した。
シアナはチュチュと一緒にグレイス皇女の宮殿へ向かった。
「皇女様、侍女のシアナでございます。」
コンコン。
扉を叩いてみたが、何の返答も聞こえなかった。
「皇女様。」
コンコン。
今回も同じだった。
チュチュが不安げな顔で言った。
「それでもノックをすれば返事をしてくださったのに、どうして何もおっしゃらないの? 食事を取らなさすぎて倒れたんじゃない?」
シアナはチュチュの言葉に目を細めた。
するとシアナは決意したように扉の取っ手を握った。
「皇女様、失礼します。中に入らせていただきます。」
許可なく侍女が皇女の部屋に入ることは重大な処罰を受ける可能性がある行為だった。
しかし、どうすることもできなかった。
チュチュの言葉通り、もし何か不吉なことが起きていたとしたら。
その場合、できるだけ早く発見することが重要だ。
急いで部屋の中に入ったチュチュとシアナは、目を大きく見開いた。
暗い部屋の中で、明かりもつけずにうずくまっているグレイスを見つけたからだ。
ゆっくりと、グレイスが顔を上げた。
「……!」
チュチュとシアナは言葉を失った。
数日前まで生気に満ち溢れていたグレイスの顔が、すっかりやつれていた。
生気のない目、こけた頬。
口元には乾いた唾液の跡が残っていた。
それは飢えの痕跡。
グレイスは茫然とした表情で二人を見つめていた。
「あぁ、食べないつもりだったのに……」
「……」
「今回は本当に食べないつもりだったんだけど……お腹が空きすぎて……」
それを聞いて、チュチュとシアナはテーブルの上に置かれた小さな食器を見つけた。
どこから持ってきたのか分からないが、壊れたパンのかけらと小さな肉の断片が入っていた。
グレイスは顔を歪めて言った。
「ぜ、全部吐き出してしまったらどうしよう?お腹の中に何か残っていたらどうしよう?ねぇ?」
「……」
「……」
シアナとチュチュは驚いた表情でグレイスを見つめた。
2人は悟った。
かつて華やかで美しかった公主様が、すっかり変わり果ててしまったという現実を。
「あぁ、私たちの公主様、なんて可哀想なこと……」
チュチュは今にも泣き出しそうな顔で口を覆う。
その隣に立っていたシアナは、黙ったままグレイスを見つめ、一歩前に進んだ。
シアナは膝を折り、グレイスと目を合わせた。
彼女は懐から取り出したハンカチで、グレイスの口元についた汚れを優しく拭き取りながら言った。
「もうおやめください、殿下。」
「……」
グレイスの大きな目が見開かれた。
その目には次第に怒りの色が浮かび上がった。
「やめろって、何をやめろって言うの!」
「……」
「……」
「やめたらどうなるって言うの?きっとまた体重が増えて、ぶくぶく太ってしまうだけだわ。」
かつて誇り高かった姿を取り戻すことができず、そのまま失われてしまう――それが怖いの。
「アイザック様も、狡猾な貴族の女性たちも、本心を隠した侍女たちも、みんな私を無視して見下すつもりでしょう!」
皇宮で一番美しい姫君。
それでなければ、私は何の価値もない。
グレイスの目尻から、冷たい涙がぽろりとこぼれ落ちた。
シアナはそっとハンカチでその涙を拭いながら言った。
「それがどうしたのですか?」
「……!」
「結局大事なのは、自分自身だけなのに。」
シアナは視線を少し伏せながら語り続けた。
「殿下を愛していない人々のために、ご自分を傷つけないでください。」
グレイスは潤んだ目でシアナをじっと見つめた。
しばらくして、グレイスはシアナを抱きしめると、大声で泣きじゃくり始めた。
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「これで少し落ち着きましたか?」
シアナの言葉に、グレイスは鼻をすすりながら答えた。
「……うん。恥ずかしい姿を見せちゃったわね。」
「気にしないでください。私、今日宮廷であったことは何一つ覚えていないでしょうから。」
シアナの機転の効いた言葉に、グレイスは目を丸くした。
「あなたを見ていると毎回思うのだけれど、話し方が新米侍女とは思えないわ。まるで長年皇族に仕えてきた上級侍女のよう。」
「それは光栄なお言葉です。」
シアナは微笑んだ。
グレイスは「ふう」とため息をつきながら姿勢を正し、しっかりと自分を律するようにした。
部屋の中には、シアナとグレイスだけが残っていた。
グレイスが泣き出した時に一緒に涙を流していたチュチュは、今は部屋を出ていった。
何か持ってくるものがあると言いながら。
静かな涙声が消えた部屋には、静寂が戻った。
シアナはそっと湿らせた布でグレイスの目元を優しく拭きながら様子を伺った。
グレイスは静かにシアナに寄りかかった。
泣き疲れたからだろうか。
それとも、腫れた目の上に置かれた温かい感触のせいだろうか。
「落ち着くわ。」
グレイスは穏やかに力を抜いた表情で口を開いた。
「シアナ。」
「はい。」
「一つ聞きたいことがある。」
「おっしゃってください。」
「前に言ったわよね。あなたも私と同じような経験をしたことがあると。だから私の状況を誰よりも理解できるって。」
グレイスはシアナの答えを待ちながら、じっと目を見つめた。
「話を聞かせて。どうしてあなたは私のように地獄に落ちることになったのか……そして、どうやってその地獄から抜け出すことができたのか。」
「……」
シアナはしばらく黙っていた。
そして少しして口を開いた。
「私も、皇女様と似たような理由でした。」
「……」
「人々の関心と愛を求めていたんです。」
生き延びたかったのだ。
正確に言えば、幼いシアナには自分を守る術が何もなかったのだ。








