こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

80話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 生まれ変わるために⑦
食事が終わった後にチュチュと一緒にする運動は、グレイスにとって一日の中で最も楽しい時間だった。
額に溜まった汗を拭っていると、グレイスの近くから鋭い声が聞こえた。
「グレイス公主様!今何をしていらっしゃるんですか?」
グレイスは声の主の方を振り返った。
そこには、青ざめた顔をしたアイザックが立っていた。
いつも優しく微笑んでいたアイザックの顔からは、その笑みが消えていた。
アイザックはグレイスについての噂を聞いて駆けつけたのだ。
『グレイス皇女がまるで別人のように変わった。』
よく食べて、よく動いて、声まで大きくなった。
驚くべき噂は事実だった。
アイザックは冷静な顔でグレイスに近づいた。
「公主様、その頑丈な手で一体何を持っていらっしゃるのですか?」
世がひっくり返ったかのような顔をしたアイザックとは対照的に、グレイスは泰然としていた。
「私の侍女が作った運動器具です。こうやって持ち上げて下げるだけで腕に力がつくんですよ。」
その手に持たれている重そうな石球を動かしているグレイスを見て、アイザックは思わず叫び声を上げた。
「や、やめてください!そんなことをしたら腕に筋肉でもついたらどうするんですか!いや、もうついてるじゃないですか!?」
彫刻のように滑らかだったグレイスの腕には、明らかに隆起した筋が浮かび上がっていた。
アイザックは驚愕していた。
それだけではない。
「お化粧されていないんですね。」
アイザックがグレイスの素顔を見たのはこれが初めてだった。
アイザックはグレイスに恥じらいを与えようと軽く言ったつもりだったが、グレイスは動じない表情で答えた。
「ええ。最近は日常生活の時にはお化粧をしないんです。」
「ああ・・・。」
アイザックは驚いたような幼い表情を浮かべた。
しかし幸いなことに、まだグレイスの姿には以前の美しさが残っていた。
アイザックはそれに少しの希望を見出し、グレイスの手を握った。
「公主様、どのような誘惑に負けてこんな風になられたのかわかりませんが、どうか目を覚ましてください。これは、これはおかしいです。」
「何がおかしいの?」
グレイスはアイザックをじっと見つめた。
アイザックは、自分の言葉が公主に届いていないように感じた。
アイザックは大げさに熱心な口調で話を続けた。
「世間の人々が求める公主様の姿は、気品があって美しいものです。このような無作法で乱れた様子を見たら、人々は間違いなく公主様を嘲笑するでしょう。以前と同じように、です。」
アイザックは理解していた。
グレイスがどのような言葉に繊細に反応するのかを。
特に外見に関する言葉が心に深く刺さることを。
『だが今回も私の言葉を聞くだろう。この姿がいかに恥ずかしく恐ろしいかを知れば、きっと震え上がるはずだ。』
そう考えたが、彼女がどれだけ愚かで優れた理解を持つ人なのか、まだ気づいていなかった。
グレイスは鋭い目でアイザックを見つめ、冷静な口調で言った。
「帝国で最も尊敬されている先代皇帝陛下と第三皇妃の敵である私を評価するなんて、誰だろうと恐れ知らずですね。さすがに容赦できませんよ。すぐにきちんと始末をつけなければ。」
「……え?」
「さあ、話してください、アイザック様。誰があなたにそのような大それた考えを吹き込んだのですか。私を見て嘲笑していましたか?」
グレイスは何も知らない顔をしていたが、彼女の怒りが向かう先は明らかだった。
アイザックだった。
『一介の貴族が私を評価するだなんて、どんなに身分が低くとも私を侮辱することは許されない。』
グレイスの怒りを察知したアイザックは、気付かぬふりをして後ずさった。
いつも自分より小さく、弱々しく見えたグレイスが、初めて自分より大きく見えた。
アイザックは焦った表情を浮かべながらも言った。
「私が軽率でした、公主様。私はただ、公主様があまりにも厳しいことを言われるのではないかと心配で、つい言葉が過ぎてしまいました。」
グレイスは片方の唇を少し歪めて上げた。
『はあ、侍女たちもアイザック様も言うことは同じね。いつも私をそんなふうに見ていたのね。』
彼らが本当にグレイスを思いやるのであれば、グレイスがやつれた顔で苦しむ姿を見て、これほど楽しそうに拍手することはなかっただろう。
『彼らが私に望むのは、美しい花を賞賛したいという感情。それ以上でも以下でもない。』
彼らは花が美しく咲くために、私の体から枝を切り落とす痛みなど気にも留めない。
それは愛ではなかった。
今、グレイスはそれを理解した。
だからだろうか。
普段のグレイスの目には、アイザックが輝く王子様のように見えていた。
しかし今日は……。
『何よ、このみすぼらしい見た目の男は。』
驚くほど不細工に見えた。
それだけではなかった。
グレイスをいつもときめかせていた、柔らかく輝く瞳が、不気味なほどに気味悪く見えたのだ。
自分でも知らずに拳を握りたくなるほど。
「ぱちん!」
アイザックの目が大きく見開かれた。
グレイスが指で彼の額を軽く叩いたのだ。
一体何事かと困惑した表情のアイザックを見つめながら、グレイスは微笑んだ。
「ごめんなさいね。今日、食事をたくさん取ったら力が余ってしまって。」
アイザックが何か言おうとする前に、グレイスは目を細めながら言葉を続けた。
「でもアイザック様、今見たら腕が少し細すぎませんか?」
「え?それがどうしたって……。」
「どんなに楽しく遊んで食べているのが特権だとしても、筋肉がこれほどないのでは、素敵な大人の男性と言えるでしょうか?」
「な、何を言っているんですか?」
驚いたアイザックが声を上げるのを見て、グレイスは真剣な表情で続けた。
「運動をしてください、アイザック様。アイザック様がもっと魅力的な男性になるために。」
「公主様!」
アイザックはついに我慢できず声を張り上げた。
・
・
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グレイスは運動を再開した。
グレイスの顔に流れる汗を拭いながら、チュチュが言った。
「戻っていくアイザック様のお顔が冗談ではないみたいです。」
アイザックはさらにグレイスの言葉に耐えられない様子で去って行った。
いつも笑顔だった顔が険しくなっていくのを横目で見ながら。
グレイスは冷たい氷が入ったレモンティーを一口飲み、軽く言った。
「まあ、そういうこともあるでしょう。」
燃え上がる前なら、アイザックの小さな感情だったかもしれない。
すべてに細やかに気を配っていた時もあった。
だが、今は違う。
思いのままに食事と運動をし、体を鍛える中で、アイザックへの情愛は薄れていった。
グレイスは目を伏せながら言った。
「何も得られない公主として生まれたのに、どうして私が愚か者の三男坊を気にしなきゃならないの?」
「……」
「私はそちらから注目されたいなんて思わないわ。私は惜しいものなんて何もない。」
堂々とした言葉に、チュチュがひょうきんに言葉を添えた。
「全くその通りでございます!」
侍女の冗談めいた言葉にグレイスがくすくすと笑った。
風が吹いた。
顔に浮かんだ汗を風が拭い去ると、その瞬間、気分の良いさわやかさが広がった。







