こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

87話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 戻ってきた日常⑥
皇太子宮内にある宴会場。
広いホールにはラシードとシアナだけが立っていた。
彼らはバラの祭典で踊るための練習をしていた。
シアナの手を握ったラシードは、子供のように明るい表情で話した。
「シアナ、ダンスもセンスもすごいね。やっぱり素晴らしい。」
「一応、昔はお姫様でしたからね。」
新しい王妃はシアナに多くの訓練を施し、その中には踊りも含まれていた。
実際、宮廷での舞踏は基本を覚えれば、それほど難しいものではなかった。
いくつかの振り付けを組み合わせ、音楽に合わせて動けば踊りが完成するからだ。
そんな理由から、当然ラシードも器用に踊れるものと思っていたのだが……。
シアナは眉をひそめながら言った。
「信じられませんが、殿下はどうやら踊りを初めて習う方のようですね。」
シアナの言葉に、ラシードは柔らかく笑みを浮かべた。
「その通りだよ。俺は踊りをきちんと習ったことがない。正確に言うと、習う暇がなかったんだ。13歳の頃から戦場にいたからね。」
ラシードは平然とした表情で話したが、シアナは眉をひそめたままだ。
ラシードは生まれた時から皇太子としての地位が揺るぎないものであった。
彼の母は皇宮で最も高貴な女性である王妃だった。
さらに、皇后は皇帝との関係も良好だった。
「そんな人物が、まともに舞踏を学ぶ暇もなく、戦場を駆け回っただと?」
以前は単に皇太子として自ら険しい道を選んだだけだと思っていた。
しかし今は、「なぜそこまでしなければならなかったのだろう?」という疑念が湧いてきた。
さらにもう一つ不可解な点があった。
皇族、しかも皇位に最も近い皇太子が、18歳になるまで婚約者一人いないというのは異例なことだ。
シアナは眉を寄せて尋ねた。
「その年齢で婚約者がいないなんて。もしかして女性に興味がないのですか?」
通常なら無礼な質問にあたるこの問いも、ラシードは笑みを浮かべて答えた。
「うん。」
「……!」
驚きで目を大きくしたシアナに向かって、ラシードが続けて話した。
「でも、どうしようもないんだ。女性だろうが男性だろうが、全員が流行り物のイカみたいに見えるからさ。」
「……。」
「でも、シアナ、君は違うよ。君の顔は新しいパンに大きな豆が3つ埋まっているみたいに見える。すごく可愛いね。」
それが褒め言葉なのか侮辱なのかわからず、シアナは目を細めた。
「ええ、そうですね。それは光栄です。」
臣下でもない自分が皇太子に対してあまりに大胆な質問をしたことを思い出し、少し後悔した。
『はあ、ダンスの練習でもしよう。』
幸いにも、ラシードは基礎的な身体の動きが良く、リズム感も優れていた。
これなら、舞踏会の日には人々の前で素晴らしい踊りを披露できるだろうと思えた。
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「練習、必ずしてください。」
シアナはラシードに簡単に挨拶をした後、皇太子宮を出た。
ルビー宮に到着したシアナは、まずアリスに挨拶をした。
「戻りました、公主様。」
シアナはアリスに、バラの花の宴の際にラシドのパートナーとして出席することを伝えた。
主人の許可が必要な事柄だったためだ。
幸いなことに、アリスはシアナがなぜそんなことをするのか怒ることはなかった。
代わりに、少し困った顔で一言漏らしただけだった。
「ふん、お兄様のパートナーだなんて。シアナ、あなたには1億倍もったいないわ。」
それでも、安心してラシードと会いに行けたシアナ。
しかし、これは一体どんな状況なのか。
腕を組みながら、アリスは冷ややかな目で言葉を続けた。
「ふん。私以外の他の皇族のそばにいるのが好き?でも、ただ放っておくわけにはいかないわ。あなたを私の香りに染めてみせるんだから!」
ロマンス小説の中に出てきそうな典型的なセリフを放ったアリスは、ニニとナナに手で合図を送った。
二人の侍女は毅然とした表情でシアナを見て、うなずいた。
その後、ニニとナナはシアナをひょいと抱き上げ浴室に連れて行き、あっという間に服を脱がせて浴槽に入れてしまった。
「きゃっ!」
突然の事態に目を丸くしたシアナに向かって、ニニが言った。
「バラの花びらとハーブを入れたお湯です。体を浸すと疲れがすっきり取れるんですよ。」
ナナも続けて言った。
「浴槽から出られたら、バラの香油を体に塗りますね。肌や髪がしっとり柔らかくなって、とってもいい香りがするんですよ。」
突然、私を公主様のように扱う二人の様子に、シアナは慌てた表情で目を見開いた。
浴室に一緒に入ってきたアリスは、シアナの腰を抱きながら肩に手を置き、言った。
「私の侍女が宴会場で不格好な姿を見せるなんて許せない。バラの花の宴では、誰よりも美しい姿で登場させてあげるわ。」
「……。」
そこでようやくシアナは、アリスの意図を理解した。
つまり、自分を着飾らせるつもりなのだ。
『なんてこと……。こんな状況、想像もしていなかった。』
もちろんシアナも、みすぼらしい格好で皇太子の隣に立つつもりはなかった。
だからこそ、ソルにお金を多めにもらっておいたのだ。
『そのお金でドレスや化粧品を買う予定だったけど、こんなに豪勢に準備してもらえるなんて思わなかったわ……。』
シアナは少し困惑したような表情で目を伏せた。
戸惑いはあったものの、気の利いた公主様がわざわざ世話をしてくれるというのに、頑なに断る理由もなかった。
シアナは言った。
「ありがとうございます、公主様。公主様のご厚意を受けて、一生懸命自分を磨いてみせます。」
魅惑的な表情でシアナを見つめるアリス、そしてニニやナナに向かって、シアナが続けた。
「その意味では、次からはラベンダーの入浴剤とマッサージオイルを準備してください。私の肌にはラベンダーの香りがよく合うんです。特にレクラサンのラベンダーが好きですね。」
「……?!」
「そして、髪にはババスオイルの香りがいいです。私は髪の量が多いので、重いオイルを使うとボリュームが出すぎてしまうんです。」
その姿は決して、ただの庶民的な侍女ではなく、気品ある人物のものであった。
まるで、これまでそうやって生きてきた公主のように自然で。
ニニとナナは驚いて口をぽかんと開けた。
その間に、顔がほんのり赤く染まったアリスが真ん中で微笑んでいた。
「はぁ、やっぱり私の侍女は風変わりね。でも、それがいいの。」
とにかく、そうしてルビー宮では本格的なシアナを飾るプロジェクトが始まった。







