シンデレラを大切に育てました【１３７話】ネタバレ

「お金を持って来いと言ったのに！」

フレッドはアンナが人を呼んだことに激怒する。

そして、アシュリーをぎゅっと握ったまま温室のドアを開けた。

逃げなければならない。

この女の子を盾にすれば、誰も自分を攻撃できないだろう。

しばらくの間、ルーインの覗線がフレッドの後ろを向いた。

しかし、フレッドが気づく前に、ルーインの視線は再びアシュリーに戻る。

「あなたのお母さんに言って！娘を取り戻したいならお金を持って来なさいと！」

その瞬間、ルインが横にあった植木鉢を足で蹴って割ってしまった。

バン！という音とともに、すべての人の視線がルーインに向かう。

「な、何やってんだ！」

フレッドは叫んだ。

ルーインは再び隣のおしろいに向かって足を上げる。

この子どうしたの？

リリーとアシュリーも驚いて目を大きく開けた。

「何を企んでいるんだ！」

フレッドが叫んだ瞬間、ルインは2番目の植木鉢を蹴って割ってしまった。

パッ！と、また植木鉢が割れ、土と植物が床に落ちてきた。

「アシュリー！」

皆ルーインの奇妙な行動に気を取られている瞬間、ミルドレッドが現れる。

彼女はフレッドの後ろに近づき、アシュリーに合図すると同時にフレッドの足の間を力いっぱい蹴った。

「・・・！」

フレッドは悲鳴もあげずにそのまま倒れる。

彼の腕の力が抜けている間、アシュリーがよろよろと抜け出すと、ミルドレッドは素早くアシュリーを引き寄せて、自分の体で彼女の体をフレッドから隠した。

「お母さん！」

「アシュリー！」

リリーがミルドレッドとアシュリーに走ってくると同時に、温室の外で使用人たちを追い払ったアイリスが走ってきた。

アシュリーはミルドレッドを抱きしめてわんわん泣いた。

ルーインは倒れたフレッドを抑える。

それからフレッドの包帯をはがした。

「はっ！」

フレッドが包帯を外した顔を見たとき、みんながうめき声を上げる。

彼の顔は本当にめちゃくちゃだった。

深く開いた傷が顔にいっぱいで、鼻はつぶれたように見える。

「ミルドレッド、大丈夫ですか？」

ダニエルは子供たちとミルドレッドがフレッドの顔を見ないようにフレッドの前に立ちはだかりながらミルドレッドに尋ねた。

アシュリーをぎゅっと抱きしめて彼女の背中を撫でていたミルドレッドはダニエルを見た。

彼女もあまり調子がよくないだろう。

ダニエルはミルドレッドの顔が真っ青になっていることを確認する。

他の人たちは今の状況を見て驚いてミルドレッドの顔色が変わったと思ったが、ダニエルは彼女が乗り物酔い中だということを知っていた。

「あの、あいつを縛っておいて」

ミルドレッドはめまいに目をつぶりながら言った。

ダニエルはルーインが抑えているフレッドをちらっと見る。

そしてうなずきながら言った。

「心配しないでください。しっかり拘束しましたので」

ミルドレッドの子供たちに危害を加えることはもうない。

それを確認してもらうと、ミルドレッドはフレッドの方を向いた。

「よくも私の娘に・・・」

そこまで言ったミルドレッドはカッと目を閉じた。

目まいがして目の前がくるくる回る。

ダニエルは素早く彼女を支え、使用人たちに話しかけた。

「地下に閉じ込めておけ。それと、アシュリーに医者を呼んであげて」

「お母さんは？」

アイリスは、真っ青になったミルドレッドの顔を見て尋ねる。

ダニエルはミルドレッドをさっと抱き上げながら言った。

「大丈夫だよ。君のお母さんは乗り物酔いだから」

「うっ」

揺れでミルドレッドの乗り物酔いが悪化する。

ダニエルは彼女を抱いて温室を出た。

新鮮な空気が必要だった。

しかし、しばらく深呼吸をしたミルドレッドは、すぐダニエルに言った。

「もう大丈夫です。降ろしてください」

「もう少し後で」

「アシュリーが大丈夫かどうか、行ってみます」

ルインが抱きかかえて運ぶところまでは見た。

今、あの子に一番必要なのは母親だろう。

しかし、ダニエルはミルドレッドの言葉に眉をひそめながら話した。

「ミルドレッド、当時の乗り物酔いは魔法のようなものなので、もう少し時間が必要です。薬や私のカでは消えません」

「どうせ時間が必要なら、アシュリーのそばで時間を過ごします」

それなら仕方がない。

ダニエルはミルドレッドを抱き上げて、２階に注意深く登った。

彼がそのまま歩き出すと、ミルドレッドは動揺する。

「一人で歩けます」

「歩けません」

ダニエルはきっばりと2階に上がった。

ミルドレッドは彼女を抱いて階段を上りながら息さえ乱れないダニエルの顔を見て彼の肩に顔を寄りかかった。

そして小さく言った。

「ごめんなさい」

「何がですか？」

ダニエルはミルドレッドの顔を見ようとしたが、彼女が自分の肩に顔を当てていて容易ではなかった。

ミルドレッドは罪悪感のある表情を隠すために頭を下げて言った。

「子供たちが優先だからです」

ダニエルの歩みはしばらく止まった。

しかし、彼はすぐに足を運びながら何気なく話した。

「それがどうして申し訳ないことなんですか？」

「私があまり立派な恋人ではないじゃないですか」

2番目にダニエルの歩みが止まった。

彼の口元に笑みが浮かんだが、彼はさりげなく尋ねる。

「私たちは恋人ですか？」

ミルドレッドの眉間が縮まった。

彼女はダニエルをまっすぐ見て尋ねた。

「違いますか？」

「その通りです」

ダニエルはミルドレッドの額にキスをする。

そして、彼女を見下ろして言った。

「あなたの言う通り、私たちは恋人です。あなたには世話をしなければならない子供たちがいます。それを私に申し訳なく思う必要はありません」

「しかし、子供たちが優先なので、時々あなたを軽視しているようで申し訳ないです」

ミルドレッドの言葉にダニエルは片方の眉を上げる。

そして、不思議そうに言った。

「ミルドレッド、私はあなたの子供ではありません。あなたが等閑視すると等閑視される人もあなたが責任を負ったり、面倒を見なければならない子供でもありません」

それはそうだ。

ミルドレッドは口を開け、何も言えないまま黙った。

ダニエルは再び足を踏み入れながら言った。

「あなたの言う通り、私たちは恋人であり、同等の関係です。私はあなたが好きで、私の意志であなたと一緒にいるのです。しかも」

ダニエルの歩みは止まった。

ミルドレッドはアシュリーの部屋の前であることに気づく。

彼はミルドレッドを下ろして話し続けた。

「このような状況で、母親が自分の子供の世話をするのを見て、自分を等閑視すると嫌がる狂った奴は世の中にいません」

ミルドレッドはダニエルの言葉に何も言わなかった。

彼女はダニエルのあごにキスをして、２階に上がってくれたことに感謝の意を表した。

そしてアシュリーの訪問を押した。

アシュリーの部屋のドアは閉まっていなかったので、彼女がそっと押すだけで十分に開いた。

そこにはアイリスとリリーもいた。

二人はミルドレッドが入ってくるのを見て席を作ってくれた。

「アシュリー、大丈夫？」

ベッドに横たわっていたアシュリーは、ミルドレッドの質問に再び涙を流し始める。

やっと止んだ涙がまた始まると、アイリスは舌打ちをしながらハンカチでアシュリーの目を拭いてくれた。

「すみません、すみません」

すすり泣いていたアシュリーが口を開いた。

なにが？

ミルドレッドは理解できなかったので眉をひそめる。

そしてアシュリーの頬を撫でながら尋ねた。

「あの男を家に入れたのがあなたなの？大変なことになるところだったから、次からは気をつけましょうね」

「そ、そうじゃなくて・・・」

アシュリーはすすりながら枕に顔をつけた。

自分の愚かさのせいで家族は危険になった。

それが悔しくてたまらなかった。

同時に、自分がまだ父親が生きていてほしいという事実に気づき悲しくなったのだ。

亡くなられたと思っていた。

二度と会えないと、自分はもう天涯孤独だから、もっと固い心で生きなければならないと思った。

そんな中、家族が自分に親切になって幸せだった。

ところが、父親が帰ってきたという話に突然ドアを開けて正体も知らない男を入れたというのが家族を裏切ったように感じられたのだ。

「アシュリー」

ミルドレッドはアシュリーがこれ以上話を続けられず号泣すると慌てて彼女の頭を掃いた。

アイリスとリリーも彼女がなぜそうするのか分からず、困惑した表情を浮かべている。

「戻って仕事をしなさい」

アイリスは素早く使用人を送り出し、ドアを閉めた。

彼女はドアを閉める前に，不満そうな表情で立っているダニエルを見つけ、中に入るかどうか尋ねたが、彼はそうしなかった。

ダニエルは向きを変えて地下に向かう。

フレッドの顔にかかった魔法は高価な魔法だ。

そして、フレッドはそのような魔法を使うお金も、遅延もないので、彼の後ろに誰かがいることは明らかだった。

彼の仕事はフレッドの後ろにいる人が誰なのか突き止めること。

「すみません」

アイリスがドアを閉めて戻ってくると、アシュリーはミルドレッドの膝に顔を当ててすすり泣きながら謝罪していた。

その姿を見ると、物怖じせず正体も知らない男を家に入れた行為に沸き上がったアイリスの怒りも静まらざるを得なかった。

「大丈夫だよ、アシュリー。私は怒っているのではなく、あなたのことが心配なの」

ミルドレッドはアシュリーの頭を撫でながら言った。

正体も知らない男を家の中に入れた行為自体は腹が立つが、それよりアシュリーが怪我をしたのではないかと心配になった。

目に見える肉体的な傷はないだろうが、心情的には大きく怪我をしたことは明らかだ。

アシュリーは罪悪感に満ちた表情でミルドレッドを見た。

そして唇をかんだ。

自分が家族を裏切ったという考えに耐えられなかった。