夫を味方にする方法【１０２話】ネタバレ

しばらく沈黙が流れた。

この気になる不安感の正体は何だろうかと思い込んでルードべキア側を凝視していたエレニアは、すぐに何か妙な感じにビックリする。

そして、アイバンが自分の顔をじっと見つめていることに気づいた。

目が合うと彼は思わずニコッと笑う。

「どうして急に笑うのですか？」

「いいえ、ただやっぱり公女は優しい方だと思って」

「・・・そういう訳ではありません」

ちょうどその時、ルードべキアが飲み物を飲み込み、何か了解を得ながら席を立つ姿が見えた。

吐きに行くのかな？

エレニアはふと胸ががらんとするのを感じた。

やっぱり気が楽なんじゃなくて、その逆だったのかな。

一瞬追いかけなければならないのかと思ったが、すぐ馬鹿な考えであることに気づく。

追いかけて何をどうすると？

「公女？大丈夫ですか？」

「・・・はい、もちろん」

どうか、この祭りが早く終わってしまったらと思う。

自分でさえ理由が分からない風を心の中で飲み込み、エレニアはアイバンと一緒に友達のテーブルに戻った。

フレイヤを先頭にした令嬢たち５、６人と令息たち数人が集まったテーブルではゲームの真っ最中だった。

「エレン、いらっしゃい。なんでこんなに長くかかったの？」

エレニアが座るやいなや、フレイヤは突然腕を組んで目を輝かせる。

どうやら酔いが結構回っているようだ。

「途中でドリアス卿の大使の方と話していたから。それより、あなた飲み過ぎじゃない？」

「私はあまり飲んでないわよ？ローレンの方が飲んでいるわ」

幼稚極まりないが、それなりに楽しい雰囲気。

しかし、重要な人たちが抜けたようなこの気持ちは何だろうか。

エレニアは徐々に自分の状態を疑い始めた。

そうするうちに、ついにこの全てがイースケのせいだという気がしてしまった。

つまり、そもそもなぜこのような頼みをして人の気持ちを忌まわしくさせるのだろうか？

実際、そのような本人こそ、バレンティーノ枢機卿と息がピッタリなのでは？

勝手なくせに何一つまともにすることがないのに。

そんな考えを噛み締めながらエレニアはさっきから注視していた、自分の父親が座っているテーブルの方を最後に振り返った。

そして、いつのまにか滑稽な組み合わせが二つに減ったという事実に気づく。

私のお腹に賛辞を送ってほしい。

これまで私のせいで何年も苦しめられていたのに、イチゴプリンを食べる頃にやっとトラブルを起こしたものの、これくらいなら大した善戦だった。

あんなに沢山の食べ物をあっという間に食べてしまうなんて、私も本当におかしくなった。

はぁ、死にそうだ。

それでも明日まで耐えればこれも全部終わる。

「大丈夫？」

口の中を綺麗に洗い流し、化粧を直した後、ハンカチで手を洗うふりをしながら出てくる瞬間。

どうやら待っていたようで、入り口から少し離れた廊下の壁に腕を組んで寄りかかった兄の姿に危うく飛び上がるところだった。

大丈夫、怖がることはない、こいつは私の拒食症に関しては全然知らないから・・・。

「うん、ありがとう。甘いものを食べ過ぎて口の中をスッキリさせただけよ」

「それもあり得るね。ところで、すごく久しぶりに見たよ」

「何を？」

「お前があんなによく食べる姿」

一瞬、何かに気づいて皮肉を言っているのかと思ってドキッとしたが、チェシアレは特にケチをつけようとしているようでもなかった。

「幼い頃以来初めて見るよ」

馴染みの薄い雰囲気。

どうして妙に苦々しく聞こえるのは、ただ私の勘違いに過ぎないのだろうか？

まさか、この野郎本当に酔ったの？

そんな奴ではないと思うが、猿も木から落ちる時があるし。

このサイコ変態が時々私の、つまりルードべキアの幼い頃を言及する時には、ほとんど不慣れなほど妙な表情になるという事実は、とっくに気づいていた。

あの頃が懐かしいのかもしれない。

しかし、その時のルードべキアは私ではない。

何も知らずにお前に従っていた少女は私ではない。

「私はいつもそれなりによく食べていたのに・・・。ただ知らせを楽しもうと努力しただけなの。流行に合わせてね」

「・・・」

「お兄様、どうしたの？私がまた何かミスをした？」

平然と慎重さの境界を越えて尋ねると、チェシアレが頭を横に振りながら腕を組んだ。

すると、手を伸ばして左手を掴んで、私の指にはめられた指輪をじっと覗き込んだ。

ロマーニャで代理結婚をした時からつけてきた指輪は、これといった特色もなく平凡だった。

短い沈黙が通り過ぎ、チェシアレはため息のような音を出して体を正す。

ついに私の目を覗き込んだ彼の顔は、再び例の陰鬱に微笑んだ顔だった。

「あの家を見物させてくれる？特に見たい場所があって」

「特別に見たい場所って・・・」

「ガラスの庭」

「・・・」

「結構有名みたいだけど？」

緊張が再び跳ね上がり、心臓がヒリヒリし始めた。

「あまり有名じゃないし・・・、見たらガッカリすると思うわよ？ただロマーニャの家の庭を真似しただけだから」

「それは直接見れば分かることだ。もしかして私に見せたくないの？」

自然な様子だったが、その下に警告の気配が漂っている。

率直に言って、私はチェシアレにあの庭に足を踏み入れることを望んでいない。

ただ温室の庭園であるだけのはずなのに、理由は私もよく分からない。

けれど、そのような表情をすることはできず、慌てて首を横に振った。

「いいえ、当然違うわよ。行きましょう」