こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
132話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 白い鳥⑤
結局、買ってしまった。
誰なのかもわからない怪しい旅の商人から、生まれて初めて聞いた『大人になる薬』を、なんと金貨三枚で——。
金貨三枚と引き換えというのは、ちょっと考えさせられる。
もちろん、金貨三枚は私にとっては決して小さな額ではない。
だが、いくら金があったとしても、もしこの薬が偽物だったら無駄になるのは間違いない。
『……もしこの魔法の薬が本物なら……』
私は手に持った魔法薬の瓶をじっと見つめた。
体に良いという材料が惜しみなく使われていると言っていたし、金貨三枚ならそこまで高いわけでもない。
『本物の魔法薬なら、むしろ破格だよね。』
私はそれをテーブルの上にそっと置き、ゆっくりと観察した。
置かれた瓶の中では、半透明の淡い紅色の液体がきらめいていた。
私が黙ってそれを見つめていると、隣にいたレナが慎重に口を開いた。
「ねえ、アイシャ様……」
「ん?なに?」
「本当にその薬を飲むつもりなのですか?」
彼女の顔には深いためらいが刻まれていた。
「いくらなんでも初めて見る薬なのに、万が一でも体に害があったらと思うと心配です。」
彼女の言葉に、私はただ肩をすくめるだけだった。
彼女の心配は理解できたが、それは私をあまりにも純粋に見すぎている証拠だ。
私があんな怪しげな薬を無分別に飲むわけがない。
私は彼女に向かって言った。
「心配しないで。もう方法は考えてあるから。」
「方法って、どんな……?」
彼女の問いに私は言葉ではなく行動で示した。
侍女長を呼び、彼女に命じたのだ。
「今すぐ宮廷魔法師に、私が至急会いたがっていると伝えてくれる?魔法薬を試してほしいの。観察に使えそうな道具も一緒に持ってくるよう伝えてください。」
「はい、かしこまりました、殿下。」
侍女長は私の言葉を聞いて、すぐさま宮殿の外へと向かった。
それを見たレナは、私の意図を察したようで、少し顔が明るくなっていた。
続いて、侍女長と一緒に現れた宮廷魔法師長は、半ば困惑した表情と、半ば感激したような表情を浮かべていた。
彼は私に向かって深々と腰を折って挨拶した。
「尊く気高きエルミールの星、皇女殿下。お健やかでいらっしゃいましたか?」
「……ええ。」
私はその言葉に一瞬だけ目を細めて応じた。
先ほどの饒舌な商人が脳裏をよぎったのだ。
魔法師長も、私にいくつかの挨拶を重ねようとしたため、私はすぐにその口を塞ぐように話を切り出した。
今日の挨拶、いや、一週間ぶりの挨拶と賛辞はもう十分に聞いた。
私が今すぐ聞きたいのは、この魔法薬の詳細な効能だった。
「私が言った通りに魔法薬を試すための道具は持ってきたでしょう?」
「はい、もちろんです、殿下。」
彼は慌てて自分の持ち物を鞄から取り出して見せた。
私は彼が来る前にこの薬を銀の杯に注いで毒がないことを確認していた。
だが、銀では検出できない呪いや魔法がかかっている可能性もあるため、今は彼にこの魔法薬を分析してもらう段階だった。
私は魔法師に言った。
「これがあなたが確認すべき魔法薬です。万が一毒が混ざっていないか、そしてこの薬の効果が何なのかを詳しく明らかにしてください。」
「はい、皇女殿下!私を信じてください!」
魔法師長は力強く叫んだ。
すると彼は試薬紙や研究用紙などを取り出し、一つひとつ確認し始めた。
私は興味津々の目でその様子を見守っていた。
アレセンの研究を見ていたときのことも思い出された。
魔法使いたちが魔法を扱う姿は、いつ見ても不思議なときめきがあった。
『でも……』
もし彼がこの魔法薬を調べて、人に被害がないと証明したら……。
『そのときはどうしよう?本当に飲んでみるべき?』
私は心の中で少し悩んだ。
そんな中でも時間は着実に過ぎていった。
薬を容器に垂らしていた彼が、何かに反応して軽く震えたような音が聞こえてきた。
たぶん、その中に含まれている魔法の成分を分析しているのだろう。
そして、魔法師が驚愕した。
「こ、これは!」
いつも落ち着いていた彼が初めて見せた驚きの反応だった。
私が戸惑っていると、興奮した魔法師が私に尋ねてきた。
「こ、こんな物をどこで手に入れたのですか?いや、もしかしてこれを作った人がここにいるのですか?」
彼の瞳は落ち着きなくこの部屋の人々を一人一人見回していた。
私は彼に答えた。
「残念ですが、その人は今ここにはいません。この品は行商人を通じて手に入れたものです。」
「なんと、この魔法薬は本当に驚くべき物です!」
彼は感嘆の口調でそう言った。
私はひとまず彼から距離を取った。
「驚くべき成分だって?」
「はい!こちらをご覧ください、殿下!!」
彼は自らが実験した容器を見せた。
魔法薬から計三滴を取り、それぞれ容器に垂らして見せたところ、その滴が落ちた場所ごとに違う色が広がっていた。
私はそれをじっと見つめた。すると彼の声が続いた。
「この薬に現れた最初の魔法は、この薬を飲んだ人の“未来の姿”を見せる魔法です。」
「……未来の姿を見せる薬だって?」
私は彼の言葉に思わず驚いてしまった。
「“大人になる薬”」と聞いていた私は、あの商人の話のように、ただ成長を早める薬だとばかり思っていた。
しかし実際には未来を読むなんて、それはどうして可能なのだろう?
魔法師が続けて説明してくれた。
「もちろん、完全に決まった未来を見るわけではありません。神でさえない限り、未来のすべての姿を見ることはできませんから。しかしこの薬は、使用者の過去の姿と現在の姿を読み取り、未来の姿を予測しています。この理論は、緻密な数学的計算と魔法式の結果なのです。私が生まれて以来、これほど美しく正確な公式は初めて見ました。」
「そう……?」
魔法についてよく知らない私だったが、宮廷魔法師がこれほどまでに話すのなら、予言の道具ではないにしてもただのものではないとわかった。
私は2つ目の容器を取り出した。
「それでは、2つ目の魔法は?」
「はあ……2つ目も本当に驚きです。この2つ目の魔法は、そうして作り出された未来の姿を使用者に適用する効果を――そして使用者は、最初の魔法で計算された未来の姿へと変身するのです!」
魔法使いは熱心に説明を続けていた。
彼は止まることなく、3番目の効果についても説明を続けた。
「そして最後の魔法は、変化した姿を元に戻すための呪文です。この薬が第3の魔法に達すると、使用者は元の年齢に戻ることになります。その効果の持続時間はおそらく3〜4日ほどでしょう。」
私は彼に問いかけた。
「毒性や有害な成分は含まれていませんか?」
「私の魔法使いとしての地位をかけて断言します。これほど清らかで美しい調合は初めてですし、何度調べても毒性らしきものは一切見つかりませんでした。」
私は魔法使いに感謝の意を伝えたあと、彼を外に出した。
『……そういうことか。』
外に出したのは魔法師だけではなかった。
侍女たちも一緒に下がらせたのだ。
そして部屋の中に一人残った私は、静かにその薬を見つめ、手に取った。
『本当に魔法薬だったんだな。』
あの商人があまりにも怪しかったので、少しは「もしかして…」という気持ちもあった。
しかし、魔法師が保証してくれたし、毒物検査もすべて完了していたので、これ以上疑う理由もなかった。私は安心を感じた。
そしてその空いた席を埋めたのは、抑えきれない期待だった。
『大人になる薬……!』
胸がどきどきした。
すぐにでも飲んで確認したいほどだった。
私は興奮を抑えるために、懸命に深呼吸した。
私がいま薬を買った理由は単純だった。
誰でも一度は、自分の未来の姿を想像してみたことがあるだろう?
「何歳になってるかな?」
はっきりとはわからないが、少なくとも今よりは大人になっているだろう。
私はその楽しい想像に思わず笑みを浮かべた。
「……そして……」
それは、もしかするとやってこない未来かもしれない。
なぜなら私は、7年後に死ぬ運命にあるからだ。
苦い笑みを浮かべながら、私は魔法薬の封を切った。
「ぷしゅっ」
軽い音とともに、魔法薬の香りが空間に広がった。
甘いリンゴキャンディのような匂いだった。
「……いい香り。」
そして、もっと正直に言うと——
「ルーン様に、新しい私の姿を見せたい。」
イワンなら、あのように大人になった姿ということだ。
もちろん私がこの薬を飲んで大人になったとしても、彼と同じ年齢になるわけではない。
彼は想像もできないほど長い時間を生きてきたのだから。
それでも、少なくとも見た目の年齢くらいは近づくのではないだろうか。
迷う理由はなかった。
私は魔法薬を手に取った。







