こんにちは、ピッコです。
「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。
今回は64話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
64話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 狂った鳥
カシャッ——一度だけ槍を振っただけなのに。
あの巨大で凶暴な魔物はその場で命を失った。
大切な末娘の公女様が、この魔物の森のどこかにいるというのに、感嘆している場合ではないのに。
「やはりテクラ様だ・・・。」
「戦場の光柱様・・・!私の目でこの槍術を見ることになるとは。」
黒い髪をなびかせるその姿を見て、公爵家の騎士たちは声を失っていた。
末娘公女の捜索および救出、この任務の指揮を執ったのは、他でもない公爵夫人テクラ・エンデブランだった。
平素とは違い、毅然として無駄のない甲冑に身を包むその姿は、堂々たるものだった。
いつも通り、厳かな雰囲気に包まれていた。
それだけではなく、自分の体ほどの大きさがある巨大な槍を軽々と振るう姿は、まさに伝説のような光景だった。
「ああ、あれ。」
「今、君たちが見るべきは公爵夫人ではなく、あれだよ、あれ。」
騎士団長の言葉に気を取られ、公爵夫人テクラを見つめていた若い騎士たちが、慌てて視線をそらした。
「でも団長、本当にすごくないですか?!噂でしか聞いたことがなかったものを実際に見られるなんて・・・。」
「その通りです!魔物の森に入ると聞いて少し怖かったけれど、あれを見ると・・・。全てが納得できます。」
「殿下の拳の届く距離ではありませんか!」
騎士団長はその言葉にただ苦笑するだけだった。
拳の届く距離?
あれがただの手の届く範囲だとでも言うのか?
それに、もし単純に感嘆するだけで済む状況なら、どれほど良かっただろう。
(この無神経な連中、公爵夫人が今どれほど怒り心頭であるか気づいていない。)
テクラに従う騎士たちは、末娘公女の救出任務だけでなく、テクラの護衛も務めなければならなかった。
しかし、彼女の周囲に騎士を立たせる余裕すらない状況だった。
(生半可な奴らは公爵夫人の怒りに呑み込まれるだろう。)
騎士団長は溜息をつき、約12時間前にテクラがロガートから連絡を受けた時のことを思い返す。
震え上がった。
(また私の娘に手を出すつもりか?)
その瞬間、騎士団長は自分の体が氷の壁に押し付けられたような感覚を覚えた。
ここ数年間で最も鋭く冷たい視線だった。
(本当にテクラ様がこの槍を持つことになるとは。)
戦場の光柱は、眠りについている時に最も美しく壮麗なものだ。
かつて公主だった方に「狂った鳥」という異名が付けられるのも当然だ。
しかもその「狂った鳥」になったのも、戦場での出来事が原因だ。
人々が「狂った鳥」と叫ぼうとするも、テクラの目を見た瞬間、その言葉を飲み込み、結局言葉を紡げなかった。
騎士団長は目の前の獣を見て、深くため息をつく。
(もし若い令嬢を救えなければ、本当に血の雨が降ることになるだろう。)
国王がその事実を知らないのだろうか?
噂によれば、彼女が公主の地位を武力で奪われたとされる話が、船上まで広まっていた。
「本当に・・・獣でも無事でいてくれて良かった。」
無意識のうちに、中立的な表情を保ちながらも、周囲の騎士たちが団長をどこか変わった人のように見つめていた。
(そうだ、知らないことが幸せなんだ。)
部下たちが本当に呆れた表情を浮かべているのを見て、彼自身もテクラを単純に崇拝する気持ちで感嘆することができれば良いのだがと考えていた。
そう思いながら視線を反らそうとした瞬間、彼は自分の目を疑った。
(テクラ様が笑っていらっしゃる・・・?)
それは間違いなかった。
本当に何か良いことでもあったのだろうか。
怒りが頂点に達したのか、それとも輝きを放つほどの微笑みで騎士たちの方に話しかけようとするまでに至るとは。
(ああ、大変なことだ。)
騎士団長は険しい表情を浮かべたまま、テクラに向けて静かに姿勢を正した。
「今からこの一帯の獣をすべて片付けるように。」
「え、はい?」
ああ、本当にものすごく怒っていたんですね!
やっと事態が収拾し始めた!
そんな騎士団長の心配とは裏腹に、テクラは本当に上機嫌で微笑んでいた。
「我々の愛らしい末娘をミハイルが救ったというじゃないか。さて、道を整える作業を始めよう。」
森の獣たちに命を下すかのように話すテクラ。
エンデブラン公爵家の騎士団長は、これまで見せたことのない穏やかな心を少し覗かせた。
森の入口に近づくにつれ、どうにも言葉を飲み込んでいた。
森の気配を感じ取れなかった。
(私が疲れすぎて気配を読み取れないの?)
そんなはずがない。
そう考えながら周囲に集中する。
(あれ?)
なぜここにいてはいけない人の気配を感じるのだろう?
温かくて親しみがあって、見たくてたまらなかったその気配。
(え、本当にお母さんじゃない?!)
突然、視界に飛び込んできた姿に驚きすぎて、目を大きく見開いた。
「え、お母さん・・・?」
幻覚を見ているのではないかと、呼びかけずにはいられなかった。
母が私の方に視線を向け、眩しい笑顔で腕を広げた。
「アナスタシャ、私の愛しい子!」
本当に母とエンデブラン公爵家の騎士団だった。
(でも・・・)
どうして武装しているの?
その物々しい装いは一体何・・・?
明らかに優雅で慈愛に満ちた母なのに。
背中に背負った武器はその大きさも形状も、恐ろしく鋭利だった。
母は私と会うなり、すぐに私の体のあちこちを確認した。
「アナスタシャ、大丈夫? ここは痛くない?」
「はい。大丈夫です。」
「本当に? でも、母さんはとても痛そうに見えるのよ。」
母は私の傷を確認し、悲しそうな目で私を見つめた。
その目に心が痛んだ。
こんな大きな騒ぎになろうとは思っていなかった。
責任者が悪いのに、私はただ巻き込まれただけなのに。
心の中でそんな風に言い訳をした。
「アナスタシャ、たくさん怖い思いをしたでしょう?」
もちろん、母は私を少しも責めなかった。
「はい。」
胸がチクリと痛む良心を無視して、私はわざと大きな声でふざけて言った。
「うちの末っ子は怖いもの知らずな声なんて出さない可愛い子なのに。」
すると、母の声がほとんど耳元でささやくように静かに響いた。
「お父さん、あなたが怖かったんじゃないかとすごく心配してたのよ。」
もともと涙もろい父だ。
絶対に泣かないと言っていたのに、約束を守るどころか走って飛んできて、どれだけ驚いたことだろうか。
私が言うと、母もその意見に賛成するかのように軽くうなずき、微笑みながらさらに一言付け加えた。
「だからお母さんは、お父さんを泣かせた人たちを全員叱ろうとしているのよ。」
本当に母と心が通じて、どれほど幸せだったか分かりません。
私もそう感じていたのです。
こんなにまで入念に飾り立てたやり方で待っているとは思いもしませんでした。