こんにちは、ピッコです。
「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

83話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 再び森へ③
魔物の森は相変わらず寂れたままだった。
到着した時は、恐ろしいほどの暗闇が森を覆っていたため、シメオンは森に直接入るのではなく、入り口近くに天幕を張った。
「ご覧ください、聖女様!私はまたしても野営の才能があるようです。非常に優れた資質を持っているので、伝統的に素早い速度で教皇の座まで上り詰めることができるでしょう!」
しかし、私にも生意気な神官時代があったではありませんか?その頃、今の老いた枢機卿たちに小言を言いながら――
私はもうシメオンの独白をBGM代わりに聞きながら、燃え盛る火の前へと進んだ。
4月になり、気温は暖かくなったものの、夜はまだ少し肌寒かった。
ちなみに、シメオンの野営の腕前は誇るに値するものだった。
持ってきた材料を大鍋の上に吊るした鍋で煮込み、シチューを作ってくれたのだが、疑うほどに美味しかった。
『ねえ、ここって何か怪しい薬でも入ってるんじゃないの?』
今回の旅では、ずっとチョコをそばに置いておくべきだと思った。
万が一に備えて。
「うわぁ! こいつ本当に嫌い! 魔王様! 魔王様だけが――!どうしてあんなに親しげにするんですか!魔王様の最側近の補佐はチョコなのに、きゃん!」
私の耳はじんじんと痛みそうだったが、とりあえずお腹を満たし、自分の天幕の中へと入った。
少し窮屈ではあったが、さすが聖騎士。
天幕の中の寝床もきちんと整えられていた。
-「チョコ。」
「はい、魔王様!」
-「教皇が眠ったら知らせてくれ。」
「わかりました! あのうるさくてのろまな大女は何の役にも立ちませんから、私だけ魔王様のお仕事について行かせようってことですね? きゃん!チョコ、頑張れます!」
「それなら、チョコが最高だな。」
私は軽く相槌を打ちながら、再びアプリケーションを確認した。
幸いなことに、特に問題なくぐっすり眠っているようだ。
私が探しに行くまで、どうか無事でいてくれ。
『解決できなければ、大変なことになるから。』
私はできるなら、この人生で終わりにしたいと思っていた。
・
・
・
「魔王様、魔王様。」
どれほど眠っていたのだろうか。
チョコが前足で私の腕を軽くトントンと叩く感触に、私は目を開けた。
「熊みたいなやつが眠っちゃいましたよ。」
その言葉を聞いて、対象の状態を確認しようと、無意識に手を伸ばしてスマートフォンを掴んだ瞬間、なんだか違和感を覚えた。
まるで二千年前のようだ。
起きた瞬間にまずスマホを探すなんて。
『あれ?』
赤い文字が浮かび上がる状態に、私はすぐさま瞬間移動の魔法を使った。
『私が抱きしめるまでは絶対に死んじゃダメ!』
それが亡者なのか魔物なのかは分からなかった。
そもそも何なのかも不明だ。
なぜ「魔物の森」で私に対する寂しさを感じているのか、まったく理解できないが!
「シイイイイイ!」
瞬間移動して目の前に現れた光景は、巨大なコウモリのような魔物だった。
そしてその向こうには――
「キーッ、キーッ! キイイイ!」
魔物より小さな体の何かが、必死に逃げ惑っていた。
目の前に虎の姿が見えた。
それは、先日、首元を撫でたあの虎だ。
「虎!」
助けるからね!
そう思い、私はすぐにポルポロン妖精の杖を取り出した。
その瞬間、魔物に追われて逃げ回っていた虎が、突然ピタッと動きを止めた。
そして――
「ガルルル…グルル…!」
虎は大きく咆哮した。
その吠え声は魔物に向けたものではなかった。
『いや、前にお前より強いって見せたはずなのに?』
二番目の「寂しさ」の対象である虎は、今まさに危機に陥っていた。
そして、その瞬間、私に「来るな」と言いたげな視線を向けた。
虎は警戒するように吠えた。
「本当に、バカだな!前回は私が強いと気づかずに飛び出して殴られたじゃないか!」
だから私は思い切って空中から跳び降り、魔物に向かって妖精の杖を振りかざした。
「虎よ、私があいつらにやられるわけにはいかないだろ!」
バシッ!ポロロ~ン!
眩い光とともに、荘厳な効果音が魔物の森全体に響き渡った。
前回は魔力を使えなかったが、今は違う。
早く終わらせるために、魔力と体力、持てるすべての力を妖精の杖に込めて、魔物の急所を叩きつけた。
バキッ!ポロ~ン!
虎の強烈な攻撃とともに、金色の光が杖を包み込んだ。
ドンッ!
そして、魔物は巨大な衝撃を受けて、その場に倒れ込んだ。
「なんてことない、私の虎やケロフィーに比べれば!」
そう言った瞬間、チョコが羽をばたつかせながら前足で拍手をした。
「キャッ!やっぱり魔王様です!この魔物は栄光に満ちているべきですよ!魔王様の手のひらを二度も受けたじゃないですか?!」
その言葉に私はクスッと笑い、虎と一緒にこのコウモリ魔物の正体を確認しようとスマートフォンを手に取った。
コウモリの魔物なら、気絶したときの状態がすぐに判別できるはずだ。
しかし、スマートフォンの画面をつけた瞬間――
「グルル!ギャルルル!」
虎が感激して鳴きながら飛びついてきた。
まだ幼い虎なので体は小さめだが、それでも私の体に比べるとずっと大きく、危うく押し倒されそうになった。
「ちょ、ちょっと!!恐れ多くも魔王様のお身体にそんなふうに飛びつくとは!!この、この無礼な猫め!!」
当然、チョコは怒って羽をバタつかせた。
「まあ、まあ。」
私は嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす虎の首を優しく撫でながら、もう片方の手でスマートフォンを確認した。
ああ、なんでだろう。お兄様に会ったときとは違って、胸がざわめいた。
だから私は、思わず腕を伸ばして虎の首をぎゅっと抱きしめた。
「いや、いや、どうして! きゃー! 魔王様!! チョコが見ている前で、ほかの動物をそんなに可愛がるなんて、ありえません! きゃー!」
チョコが切なそうな声をあげた。その声とともに――
「ニャオーン。」
か細い猫の鳴き声のような音が聞こえた。
目の前がふわりと明るくなった。
・
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・
「ああ……」
シアが戻ってきた途端、私は虎の記憶を思い返していることに気がついた。
見覚えのある街並みだった。
20回目の世界で、私が適当に住みついていた場所の近くだ。
「……時々餌をやっていた野良猫がいたっけ。」
私は直感的に、この光景が自分が死んだ後のものだと悟った。
そして、私が通っていた道の前には、今の虎のように赤みを帯びた夕焼け色の猫がいた。
「ニャオーン、ニャオーン。」
猫のくせに、やたらとついてくるなんて。
それに、何度か餌をあげたこともあった。
「確かに、最後に餌をあげたとき、これが最後だって言ったはずなのに。」
ただ通りすがりに何度か見かけた野良猫で、深く考えたことはなかった。
「どうして今になって……。」
情に厚い性格を捨てられずにいるのか、この猫は。
・
・
「魔王様から離れろ! 魔王様の高貴なお身体には、むやみにくっついてはいけない! きゃっ! さっさと離れろぉぉ!」
短い記憶の回想が終わると同時に、チョコのぶつぶつとした声が聞こえた。
「チョコ。」
「魔王さまぁぁぁ!」
「うん、後輩よ。」
「えっ?」
頭では、これではいけないと分かっていた。
それでも、寂しげに鳴いていたあの昔の猫の姿が脳裏に焼き付いて離れなかった。
魔物の森にはもう来ることはないだろうから、これ以上会うことは難しいかもしれないが。
「大切にしてやれ。」
1600年近くも待ち続けていた存在なのだから。
チョコは泣きそうになったが、私が静かに撫でてやり、そっと抱きしめると、すんなりと受け入れてくれた。
「やっぱり、私の犬はチェコだな。」
今回はからかいではなく、本心からの言葉をチョコに伝えた。
そして、前と同じように、虎の腹に身を預けたまま、静かに横たわった。








