こんにちは、ピッコです。
「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

94話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 第17皇子ラミエル⑤
「ち、違います!私たちは違います!」
「子どもの言葉だけを聞いてこうするのは、帝国との関係に悪影響を及ぼします!」
黙っていた騎士たちは、このままでは大事になると感じたのか、慌てて声を上げた。
そしてラミエルに視線を送って叫んだ。
「皇子様、ご存知でしょう!私たちをどれほど皇太子殿下が信頼してくださっているか。ええ?」
すると、ラミエルの瞳が揺れた。
なんだって?皇太子がラミエルを一番ひどくいじめた張本人だって?それ本当? 情報提供者、マジでありがとう?
「皇太子様!」
「このままでは私たちが誤解されたまま帝国に帰ることになってしまいます!」
「聖女様から、皇太子様の話をお聞きにはなりませんか!」
惜しむ声をあげるなら、きちんとしろ!
私があなたたちがラミエルを罵ったことを話したのに、謝罪のひとこともなくふてぶてしい。
皇宮の騎士たちは平静を失い、自分たちがラミエルより上の立場であるかのように振る舞った。
そして何よりも心を痛めたのは──
「ああ、アナスタシア様……」
ラミエルが彼らの行動に戸惑いながらも反応しようとしていた。
それが恐れなのか、それとも初めて受けた誰かの頼みだからか。
私を見つめる子どもの瞳の中には混乱が満ちていた。
『それでもすぐに従わないのは、ラミエルも少しはわかってきたってことかな。』
皇室の騎士たちが、私や私の家族、このパルス山の誰にも簡単に手を出せないということを。
私は再び子どもの手をぎゅっと握りながら言った。
「大丈夫、ラミエルがしたいようにしていいんだよ。そう言ったでしょ。」
招待状が届いた時に言った言葉を、私はもう一度彼に向かって言い直した。
「ラミエルは私の弟だから。」
私と手を握った子どもの手に再び力が入る。
まだおどおどしていて頼りない感じはあったが、こんなことが一度にすべて解決するわけがない。
少しずつ時間をかけて積み上げていくしかないのだ。
ラミエルはおずおずと口を開き、騎士たちに向かって言った。
「私は……しません。」
声は震えていたが、言葉はほとんどつかえることなく、しっかりと発された。
「陛下が私に……そうおっしゃったんです。うまくできなくても、責任を取るって。あなたたちも聞いたでしょ?」
「は、皇太子殿下。」
「陛下は私を……塔へ連れて行くたびに……だったのは、あなたたちだったから。」
握っていた手に、さらに力が入るのを感じた。
「アナスタシャ様は嘘をつかない!だから、君たちも責任を取りなよ。私はずっとそう教えられてきたから。」
声は大きくなかったが、子どもは全身で訴えていた。
自分の考えを、そして初めて持った主張を。
私が思っていた以上に、ラミエルはずっと前に成長していた。
私は静かに両親を見つめた。
この世で誰よりも信じられる二人を。
「儀礼的な挨拶は、すべて終わったようですね。」
そして私の視線に応えるように、父がゆっくりと口を開いた。
「これから我々と少し長い話をしなければならないと思うんだが、どうかな?」
父はまるで獲物を前にした猛獣のように鋭い目つきで彼らを見つめた。
子どもは最善を尽くした。
これからは大人の時間だ。
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当然のことだが、私は父が会議に入る前に「時間稼ぎ」について話した。
お二人も察していたとは思うが、証言があるかないかによって、彼らから引き出せるものが変わるのだから。
両親とパルサンの貴族たちは──国王は半ば強制的に側近として入り込んだ──今回の件を根こそぎ明らかにした。
『パルサンを見下していた代価ですよ。まあ、あの兄上がその座にいる唯一の効能じゃありませんけどね。』
実は、帝国は最初、騎士たちの独断行動として切り捨てようとしていた。
『そうなると思って証拠をいくつか準備して、両親がしっかりと使ってくれたのよ。』
おかげで、帝国は今回の件で国境地帯の兵力配置まで半分に減らすことができた。
もちろんいくつかの補償も徹底的に受け取って。
その過程でラミエルの処遇に関する話も出てきたが、これも公爵家が引き続き言葉を挟むことで決着した。
今回の件の失策で大きな叱責を受け、いくつかの権限を奪われた皇太子は、怒りの矛先を別の方向に向けようとしていた。
『減らすときはお前の思うままでも、返されるときはそうじゃないんだよな。』
ラミエルを連れてきた皇室の騎士たちもまた帝国に戻った後、全員職を失い、労役刑を受けた。
『命があるだけでも幸運ってもんだ。騎士のくせに。軍の機密がタ国の地で漏れて回るなんて。』
昼も夜も私が聞こえるかもしれないから注意すべきだ。
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おかげで公爵領に戻ったその日は、かなり肌寒くなっていた。
戻っても荷ほどきをして、血を洗い流して……するとヒラヒラと数枚の雪が海の端から鼻先まで舞い降りてきた。
「雪が降ってる!初雪だ!」
いつも通りの朝、公爵家で一番遅い朝食の支度を担当しているお姉さんが叫んで、家族たちの目が覚めた。
毎年見慣れているとはいえ、初雪はいつも心をときめかせるもので、私は姉、兄、ラミエルと一緒に雪景色を見に庭へ出た。
夜明けから降り続いた雪は、庭にもふんわり積もっていた。
姉はいつの間にか騎士たちと雪合戦を始めていて、ダミアン兄さんは雪の降る風景をスケッチしていた。
『本当にこの雰囲気が恋しかった。』
首都でも家族と一緒にいられたら楽しかっただろうけど、今のように穏やかで余裕のある時間は過ごせなかったに違いない。
「アナスタシャ、ラミエル。転ばないように気をつけて!」
私とラミエルは、兄の心配のこもった声に振り返った。
雪を踏みしめながら慎重に歩いた。
シャクシャクと鳴る音が歩くたびに響いて、なんだか気分がよかった。
ラミエルが口を開いたのはそのときだった。
「アナスタシャ様、あの、これ、あるじゃないですか。」
「うん?」
「実は、アナスタシャ様に会いに来たのが、私が初めて呼ばれたお屋敷だったんです。」
「……うん?」
皇太子が命じたわけじゃなかったの?
私が疑わしそうな顔をすると、ラミエルはむしろ慌てて目をパチクリさせた。
「最初は私じゃなくて、妹のうちの誰かが来るはずだったんです。」
ラミエルよりもっと幼いって、本当に赤ちゃんじゃない!
五歳でも幼いのに、四歳よりさらに下の赤ちゃんを他国に送ろうとしたなんて?
本当に無慈悲で恐ろしい国だね、帝国は。
「妹が心配で強情を張ってしまったんだけど、今は、ごめんなさい。」
「どうして?」
「……ここがとても好きだからです。妹が来てもアナスタシャ様には、きっと、懐くと思います。」
まあ、そうだろうね。赤ちゃんってただ可愛いもの。
しかも私より小さかったら言葉もちゃんと喋れないだろうし、すごく可愛いに違いない。
「それでも……それでも。」
「うん。」
「アナスタシャ様に会えて、本当に……本当にうれしいです。」
その瞬間、私は驚いてラミエルをじっと見つめた。
真っ白な雪が降る中で、パルサンに来てから二度目の季節が変わるまで、初めて子どもが笑顔を見せてくれたのだから。
5歳の年の瀬に、私はラミエルと良い友達になった。







