愛され末っ子は初めてで

愛され末っ子は初めてで【97話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【愛され末っ子は初めてで】まとめ こんにちは、ピッコです。 「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となっ...

 




 

97話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 魔塔主

「正式に紹介します、はあ〜。」

魔塔主はまったく正式とは言えない態度で口を開いた。

「私は塔主ピオニー・セイントフローリアです。あっ、そうだ。ピオニーという名前があまりにも弱々しく見えるから……ピオニと紹介しろって言われたけど。」

誰がプロデュースしたのかは分からないけど、君のアーティストとしてのご飯の器は全部ひっくり返ったね……。

「でもさ、ピオニって名前も悪くないんじゃない?私は気に入ったけど。」

私はまるでマネージャー役をした誰かに同情の念を送った。

「じゃあ、僕は自己紹介したから、君たち子どもたちも教えてくれる? 嫌なら言わなくてもいいけど。」

本当に危機感のかけらもない言葉で彼は話した。

ミハイルは話す気がないようだったし、私は特に話さない理由もなかったので言った。

「アナスタシア・エンデブランです。」

「おお、おおお?おっ!」

私の名前に塔主は意味もわからず声を上げ、私の顔にぐっと近づいてきた。

おかげで私の手をつかんでいたミハイルの警戒心が一気に高まった。

「エンデブラン公爵家の末娘お嬢様だったんですね。それなら私はもっと怪しい人じゃないですよ。」

そして、まぬけな笑みを浮かべながらこう言った。

「私はお父さんの友達です。」

それって誘拐犯たちがよく使うセリフじゃないの、君?

私の気持ちとは違い、彼はすっかり安心した表情だった。

「じゃあ、ロカトのところに連れて行ってって言えば——」

「よかったね、運がいい。ロカトもいい友達だけど、この子どもたちもいい友達だね。」

彼は一人で全てが解決したかのように大きく笑った。

「……また寝た、このおじさん。」

壁にもたれて再び眠りについた。

私の言葉にミハイル・レベンティスが呆れるようにため息をついた。

「本当に変な人だね。」

わあ、本当にすごい人だ。

ミハイル・レベンティスが止めるなんて!

魔塔主は本当に貴重な才能を持っていた。

塔主が眠っている間に、ミハイルは先に騎士を通じて公爵邸に連絡していた。

そのためか馬車から降りた時には、母が待っていた。

「アナスタシア、ミハイル。二人とも楽しく遊んできたの?」

「はい。」

「魔塔主は?」

母の問いに、ミハイルは少し緊張した顔で答えた。

「眠ってます。」

「そうなの?」

母はその言葉に一瞬口をつぐんで耳を傾けていたが、まもなく馬車のドアをコンコンと叩きながら落ち着いた声で呼びかけた。

「魔塔主?」

その瞬間。バン!と、それほど高くない馬車の天井に頭を激しくぶつける音が聞こえた。

『痛そう……。』

驚くほどあれほど落ち着いていたま当主は、母の声を聞くやいなや、すぐに整えた襟を手で払いながら馬車の外へと飛び出してきた。

「おお、お久しぶりです。司令官様。」

司令官様?

「今はもう司令官様じゃないでしょうけど、とにかく、まさか私たちの子どもたちがあなたを連れてくるとは思いませんでした。」

「さ、寒いと言ってたんです。連れてきてあげたんですよ。」

なんで急にそんなにぼんやり話すの?

あんなふうにも話せるんだっけ?

「どこで寝ていたとしても、魔塔主にはそうしないでってしっかり言ってたのを、私、確かに聞いた気がするんだけど。」

「誤解です、司令官様。」

母は特に何も言わなかったけれど、ピオニは少し気まずそうな顔で言った。

「まぁ、それならよかったです。ほんとに。」

「はい。」

「私の夫を怠け者にしないでくださいね、魔塔主。」

「ひぃっ、わかりました。肝に銘じます。司令官様。」

魔塔主はそう言うと、なんと敬礼までした。本当に何なんだ、この人?

「ははは、子どもたち。皆さんは友だちを大事にしないといけませんよ〜。」

母が応接室を空けるとすぐに、魔塔主は私とミハイルをつかまえて説教を始めた。

「ロカトはとても良い人なんだけど、司令官様はちょっと怖いんですよ〜。」

それでもやっぱり母とどんな関係なのか気になっていたが、魔塔主は秘密だと言いつつも、まるで隠し事がない人のように、ぽつぽつと過去の話を語り始めた。

父と母、そして魔塔主の三人は、十数年前の戦場で出会った仲だった。

当時、司令官は母で、ピオニはまだ若い魔法使いとして従軍していた。

当然ながら、母は戦場の光として勇敢に振る舞っていたが、それでも若き日のピオニには恐ろしく見えたようだった。

「司令官様はあの体力では逃げることすらできず、死ぬと言いながらも、戦闘がない日には練武場で木刀をものすごい速さで振らせたりしてましたよ。練武場の端にこうやって座ったまま、立ち上がって10セットずつやらせたりして……」

ピオニはそのことを思い出しただけで気まずいのか、縮こまるようにしてスクワットの姿勢をとって見せた。

やはり母の影響は絶大だったのだ。

「子どもたち、人生はゆったりのんびり生きるのが一番ですよ〜……」

その言葉には同意するよ。

でもお母さん、私にはそう生きてもいいって言ってくれてる気がするのは気のせい?

もちろん、部屋に閉じこもってばかりいたわけではないけど。

「大人のロカトが来て、私をこの怖い場所から連れ出してくれたらいいのに。」

ピオニがそう言った瞬間、ミハイルがうんざりした顔で言った。

「もうここがどこかわかったんだから、転移魔法を使えばいいんじゃない?」

その言葉にピオニはまばたきをした。

そして――ピオニが手をパンと叩きながら言った。

「そうだったのね、それは知らなかったわ。」

そしてまたミハイルに近づいて、冗談を言い始めた。

「賢い子どもの友だち、私の弟子にならない?私の代わりにめんどくさいことを考えてくれる人が必要なのよ。」

本当に最悪のスカウト提案だった。

ミハイルの顔がみるみる青ざめていった。

あいつがこんなに露骨に嫌な顔をするのは初めて見たかもしれない。

基本的にミハイルは男に興味がなかった。

だから気を惹こうとする人にもあまり反応がなかった。

「私と一緒にいるの、悪くないと思うんだけど?」

「はい、とにかく魔塔主なんですから。しかももったいないじゃないですか。」

「もったいない?何が?」

ミハイルは無表情で尋ねた。

「子どもが持っている才能のことですよ。」

やっぱり魔塔主だな。

あんなに信頼感ゼロの様子だけど、ピオニは実力がない者ではなかった。

身分証を見る前までは私も気づけないほど、微弱な魔力しか感じなかったのだから。

あのレベルで魔力を隠せるなら、本当に実力が高いということだ。

そんな人物が、ミハイルが持つ魔力の核を見抜けないのはむしろ不自然だ。

「私に魔法の才能があるって……?」

しかしミハイルはピオニの言葉に嬉しそうというよりむしろ困惑した表情を浮かべていた。

「そうだよ。後で私のポジションを引き継ぐこともできるかもよ。どう思う?」

ピオニは期待しているように目を輝かせながら尋ねた。

あの子に会ってから、こんなに目に力があるのを見るのは初めてだった。

しかも魔塔主の地位だなんて。

他の魔法使いたちには一言も言わずに、こんな風に勝手に話を進めていいのか?

私が別のことに気を取られている間に、ミハイルは体を傾け、近づいてくるピオニからそっと身を引いて、さらに表情を険しくした。

「必要ない。」

「え?本当に?子どもの友だちよ、もう一度考えてみて。私、あなたの良い支えになれると思うの。」

「はい。」

そう言いながら、ピオニは手を軽く振って、魔法で可愛らしく綺麗なものをぱっと生み出した。

『この子、本当に実力あるんだな。』

あんなに力まずに魔法を使えるところを見ても分かる。

でも、どんなに実力があっても、その座をほとんどの人が欲しがるとしても――

「そんな力なんて、僕はいらない。」

正しく評価してくれる人がいないなら、意味なんてない。

ミハイルは、ピオニが目の前に出した幻想魔法を手で払いのけて、応接室をさっと出ていった。

少年が出て行った応接室には、可愛らしい幻想たちとピオニと私だけが残された。

ピオニが平然とした性格だとしても、これはちょっと気分の悪いことだと私は思った。けれども。

「アハハ、フラれちゃったみたいだね。私、人気ないのかな?どう思う、子どもちゃん?」

どう思うって?

バカだけどかわいそうだとは思うよ。

そのとき、バタバタと控室に向かってくる足音が聞こえた。

「おお、おお。僕と一緒に仕事したくなったの?」

ピオニはその声がミハイルのものだと気づき、期待に満ちた目で輝いた。

しかし、近づいてきた少年の鋭い顔が見つめていたのはピオニではなく、私だった。

「ごめんね、坊や。君のこと、忘れてたよ。」

「ううん、ただそこにいてくれるだけで良かったのに……」

ミハイルは本当にその事実自体にショックを受けた顔をしていた。

そして私の手を取るわけでもなく、子どもの頃のように私をひょいと抱きかかえて応接室をタッタッと歩いていった。

後ろからピオニの外れたような声が聞こえた。

「わあ、子ども一人くらい残していくのはないでしょ……ひどいな。ロガトが来るまで一人でカードでもめくらなきゃいけないんですか〜……」

うーん、これは同情するべきかどうか。

私はミハイルの肩越しにピオニを見ながら悩んだ。

「ミハイル。」

「うん。」

「降ろしてくれなきゃ。」

「あっ。」

ミハイルに抱きかかえられて運ばれていた私は応接室を通り、いつものように2階の廊下まで来たところで言った。

「ごめん。つい抱きしめちゃって。」

「いいよ、ミハイルだし。」

小さい頃から何度も私の移動用カートに乗ったことがある彼。

ぞんざいに言った言葉だったけど、ミハイルのこわばった顔が少しずつ緩んだ。

『まだ夕食までには少し時間があるな。』

なぜか、この子の話を聞いてあげるべきな気がした。

いくら他人にぶっきらぼうでも、礼儀がない子ではないのに。

「お茶でも飲みますか?」

「私が淹れたお茶、美味しかった?」

ちょっと気を許していた気持ちが戻ってきた。

この子ったら、相手が正直に答えられなくなるようなことを平気で言う才能があるのよね。

「……他の人に淹れてもらってって言ってよ。もういい、ミハイルとは飲まない。」

ぶすっとした顔でそっぽを向くと、ミハイルは私の手をしっかり握って、歩くままについてきた。

ほんとに、今日は私におとなしく見えるように頑張ってくれているんだ。

一緒に部屋に入ると、侍女たちはまるで慣れているかのように私とミハイルのためにティーテーブルをセッティングした。

食事の時間にはまだ早かったので、軽いデザートを数品と、私とミハイルの好きなお茶を出してくれた。

私が侍女たちをちらっと見たら、皆察して少し離れた。

騎士たちもそうだった。

まあ、ミハイルが私に何かするような人でもないしね。

ミハイルはそれを見て、小さく笑って言った。

「ねえ、赤ちゃんが心配してくれたの?」

「ううん、モチロンだから。私だってミハイルをからかいたくて。いつもミハイルばっかり私をからかうじゃない。」

「からかうだなんて、私はいつも赤ちゃんに好かれたくて頑張ってるのに。」

本当にとんでもないことを言う。

私の周りで一番私を苛立たせるのはこの子なのに。

まあ……大体は好意からくる行動だって分かってるけど。

私がミハイルにだけ苛立つのも合ってる。

妙なことに、ミハイル・レベンティスには人を素直に受け入れさせない才能があったから。

「ちょっと怖くなっただけ。」

「怖い?ミハイルが?」

「僕だって12歳の子どもなのに、さっき赤ちゃんがそう言ってくれたんだよ。」

「子どもだからって怖がることなんてないじゃない。」

私の言葉に、ミハイルは片方の頬を膨らませながら視線を外し、こっそりと微笑んだ。

「ほんとに、赤ちゃんには何一つ隠せないね。」

全部見せてるじゃない。

ミハイル・レベンティスは他人の前ではいつも感情を無表情な顔の中に隠していたけど、私の前では分かってほしいのか、あえて見せようとしているのが伝わってきた。

「魔法が嫌い?」

私の問いに、ミハイルはぼんやりと私を見つめてから視線をそらしながら、静かに答えた。

「うん。」

「どうして?」

「僕があの人の弟子だった子だって、また人に言われたらどうしようって思って。」

ああ……その一言で、私はミハイルの気持ちを理解してしまった。

神殿は魔法使いを忌み嫌う傾向があった。

でも魔力そのものには善も悪もなかった。

ただの力にすぎない。

むしろ魔力や魔法使いを弾圧する神殿側が問題だった。

「……だから嫌なんだ。あんな変な人の弟子になるなんて、もっと嫌だ。」

あの時も何も言わずにいて、ここ数年はトラブルもなかったから大丈夫だと思ってたけど。

『そんなわけないよね。幼いころの傷は長く残るものだから。』

本当に忘れて過ごしていたのに、魔力があるって聞いて、もしかしたら自分も……と不安になったのかもしれない。

一度経験したことは二度と繰り返したくないのは当然だ。

大公家は誠実ではなかったが、今でも毎年多額の寄付をしているとも聞いた。

私は半ば衝動的に席を立ち、ミハイルのそばへと歩み寄った。

「赤ちゃん?」

怪訝そうにするミハイルの問いかけにも、私は答えずに彼の髪をぐしゃぐしゃと撫でた。

柔らかい髪が指の間に入り、抜けていくのを繰り返す。

私がかき乱すようにしても、ミハイルは好きにさせるかのようにだんだんと笑い出した。

きちんと整えられていた髪型を台無しにしてからようやく手を離すと、ミハイルが「それで、なに?」という目で私を見た。

「検査したの?」

「検査?」

「私は聖女だから。」

聖女らしい行動は魔物の森を浄化して以来、何もしていない開店休業状態ではあったけれど。

「それが?」

「ミハイルが普通の子どもだって、私が今証明したの。」

「ただ僕をからかっただけみたいだけど。」

「からかうって言ったでしょ。」

私の堂々とした言葉に、ミハイルがとうとう声を出して笑い出した。

少し照れて、誇らしげに。

私がいつも見てきたミハイルの笑顔だった。

 



 

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