こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

99話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 奇妙な夢⑥
「そんなに死に物狂いで逃げたんですよ。もしそこで捕まっていたら、きっとろくな結末にはならなかったでしょうから……」
「すぐに完全に暗くなって、本当に助かりました。」
その瞬間の記憶が蘇るように、夫婦は茫然としていた。
ベアティは相手の顔を見ながら、温かいココアをもう一杯、そっと注いだ。
『あれはもう何ヶ月も前のことだったな。』
夫婦と初めて出会った日のことを思い返しながら、目の前の二人を見つめた。
彼らは逃亡生活で疲弊しきっていたが、今ではすっかり落ち着き、顔色にも血の気が戻っていた。
「二人が話してくれたおかげで、大体の状況が掴めたよ。」
ベアティの言葉に、二人は驚いた表情を浮かべた。
「あ、いえ……私たちは……。」
「大した話じゃなかったんですが!」
「いやいや。君たちは調査すべき場所をはっきりと特定してくれたじゃない?」
確かな目撃者が得られたことで、捜査網を縮めることができる。
それが何よりの収穫だった。
『ストゥム領地の管理者か……。』
最近、アスラン式の招聘法によって『正式に』評価が上がっているという生きた証拠を思い浮かべながら、ベアティは微笑んだ。
「ともかく、今二人が見た光景はすぐに噂として広まるはず。だからこそ、下手に疑われないようにする効果もあるだろう。」
「あ……!ありがとうございます!」
「やはり、お嬢様は……!」
国王を直接言及するのが負担に感じたのか、その話には触れなかった夫婦は、ずっと抱えていた重荷がすっと下りたような表情を見せた。
「なんと、アスラン家のお嬢様!これほど理知的で、慈悲深く、正義感にあふれる方だったとは!」
感激でいっぱいの瞳で自分を見つめる夫婦の視線に、チクリと心が痛んだベアティは、そっと視線をそらした。
『まあ、正確に何を選び取ったのかはっきりしないから、完全に事実を偽ったわけじゃないしね……』
現在、首都に広まった噂には、さまざまなバージョンがあった。
それでも、最初に広まったときに埋め込まれた重要な部分は変わることなく拡散され続けていた。
どこで始まった話なのかも分からぬまま、通りから通りへと口伝えで広まっていく噂の内容は、概ねこのようなものだった。
「その話、聞いた? あの城のあの方のこと。」
「『今回の高貴なお方』?」
「そう! その方とは言いたくないが、あの方が新聖国の連中と裏取引していたんだって!」
王国と敵国。
大抵の人々はこの部分でカッとなり、驚きながらも周囲を気にして声を潜めて話していた。
「一体、どういうことだ? 新聖国の連中とだって?」
「聞いてみろよ。最近、王宮の事情が良くないって話、お前も知ってるだろ?」
「ああ……。あの戦争の時も、援軍を一兵たりとも送らなかった方だしな。」
「だからだよ!そんなにケチケチしていた財産が、一体どこに消えたのか。財政難に陥った王家が、我々の王国民の遺体をあの忌々しい神聖国の連中に売り飛ばしたって話なんだ!」
「何だって?我々の国の人々の!?」
このあたりまで来ると、単なる憶測の域を超えた刺激的な話として、周囲の人々も次第に関心を示し、耳を傾け始めた。
「そうだ!それも、あの飢饉で突然死んだストゥム領地の人々の遺体だとさ。まったく、どうしようもない連中だ……。」
「いや、その話は本当なのか?」
「本当さ! 昨日、食堂で飯を食っていたら、隣のテーブルでさ、ストーム領に住む叔父が送った使者だとか言ってるのを直接聞いたんだ!」
「はぁ……いや、それにしても、新聖国の連中はなぜ死体を買うんだ? 何に使うつもりだ?」
「そんなの分かるかよ。呪われた連中め、哀れな人々の死体を使って、錬金術でもしてるんじゃないか?」
過去の戦争で敗れた恨みを晴らし、王国の民の遺体を持ち去って愚弄するつもりなのだ。
いや、それだけではない。
彼らは、人の死体を使って薬を作り、その薬が万病に効く特効薬だと言って飲み込んでいるらしい。
まったく馬鹿げた話だ。
結局、あの連中は、自分たちの神に捧げる供物として、我々王国の民の遺体を使おうとしているに違いない。
死体の用途について、さまざまな憶測が飛び交っていたが、肝心な点だけは、決して揺るがなかった。
『王が敵国と手を組んだ。』
ベアティの黒い瞳がきらりと光った。
あの赤い光が何なのか、本当に霊魂なのか、あるいは何かの儀式の発現なのかはまだはっきりしない。
『まあ、どれが真実かを見極める必要はないさ。』
二人の噂話からも正体が特定できないその疑問に対し、ベアティの態度は簡潔だった。
『全部ばら撒けばいい!』
噂というものはそういうものだった。
どんな事実であれ、初めに狙っていた吸血鬼狩りの口実としてはぴったりだった。
長い間、首都でくすぶっていた怒りが、今回の噂によって爆発し、まるで燃え上がる炎のように敵対的な世論が王家へと向けられた。
『吸血鬼狩りの時間だ。』
吸血鬼が潜むとされる茂みがわずかに揺れた。
―そして今、ついに時が来た。
怒りに満ちた男が、まるで敵の頭を吹き飛ばさんばかりの勢いで拳を握りしめる。
しっかりと掴んで、決して逃さぬように。
「チッ」
ベアティの口元に浮かぶ笑みは、戦場の敵も味方も等しく震え上がらせる恐ろしい一族にそっくりだった。








