幼馴染が私を殺そうとしてきます【１０５話】ネタバレ

レリアは目をぱちぱちさせながら、もう何度もメッセージの内容を確認した。

ついに。ついに……！

感動のあまり心臓が激しく高鳴り始めた。

「レリア？」

目の前には心配そうにこちらを見つめる友人たちがいた。

レリアは彼らを見つめながら、ゆっくりと歩み寄った。

一歩を踏み出すたびに、こみ上げる感情が胸に迫った。

「何かあったの？」

ロミオが優しい声で尋ねた。

レリアは彼らの前に立ち、頭を下げた。

そして一人一人の顔を見つめた。

ロミオは眉間にしわを寄せたまま、レリアを見つめていた。

グリピスは無表情だった。

オスカーもまた、どこか虚ろな目でレリアを見つめていた。

最後にカーリクスは何か気に食わないようにプイッと首をそらした。

レリアは涙をたたえたまま、ゆっくりと口を開いた。

元々は別の目的で来たのだが、もうこれ以上ためらう理由はなかった。

何年も切実に待ち続けてきたこの瞬間なのだから。

「言わなければならないことがあるの。」

「………」

「本当は… 本当は、私がレオなの。」

事実を打ち明けながら、レリアは目をぎゅっと閉じた。

ついに口に出してしまったことで、不安が一気に押し寄せてきたのだ。

でも――

何千回も想像していたことは起こらなかった。

激しく血を吐くこともなく、首が締めつけられるような感覚もなかった。

死ななかった。

本当に「沈黙の魔法」が解けたのだ。

「……」

静かな部屋の中で、窓を打つ雨音だけが響いていた。

静寂に包まれた部屋の温度が、一瞬で冷え込んだかのようだった。

「……」

レリアはゆっくりと目を開け、何も言わない友人たちを見つめた。

ついに訪れた、10年ぶりの再会だった。

ロミオは、満足そうに微笑んだ。

目元は濡れていたが、グリピスもやはりすでに知っていたのか、温かいまなざしを送ってくれた。

オスカーは表情に変化はなかったが、レリアは彼が少し怒っているように感じた。なぜ？

「………」

そして最後にカーリクスは…。

カーリクスはまるでこの世で最もありえない話を聞いたかのような、茫然とした表情だった。

「久しぶりだね、レオ。」

その時、ロミオが腕を広げた。

本当に聞きたかったその一言に、レリアはすぐさまロミオに駆け寄り、その胸に飛び込んだ。

ロミオの首にしがみついた瞬間、こらえていた涙がポロポロとこぼれ落ちた。

「本当に…本当にあなたに会いたかった、ロミオ。」

「ぼくも。」

ロミオの腕から離れた後、レリアは隣にいたグリフィスとも熱い抱擁を交わした。

「グリフィス、会いたかった。」

「……まったくだよ。」

グリフィスがレリアの肩に顔をうずめて深く息を吸い込むのを見て、オスカーがはっと立ち上がった。

しかしオスカーがグリフィスに飛びつく前に、レリアが次にオスカーの腰をぎゅっと抱きしめた。

「また会えてうれしいよ、オスカー。」

「……」

オスカーは何か言いたいことは山ほどあったが、口が開かなかった。

レリアはオスカーの胸から離れて、カーリクスを見つめた。

「…信じられない。」

やっと口を開いたカーリクスの第一声がそれだった。

レリアは当惑した。

いったいどうして誰一人カーリクスには何も伝えなかったの？

「カーリクス。」

「………!!!」

カーリクスは表情をこわばらせたまま、レリアを見つめ、後ずさりした。

まるで幽霊の名前を呼んだかのように、おびえた目だった。

「まさか…本当に少しも疑わなかったの？」

レリアは思わず戸惑った。

しかし、何かをさらに説明する間もなかった。

カーリクスはすばやく体を翻すと、窓の外、雨風の中へと姿を消した。

「カーリクス！」

土砂降りの窓の外へ向かって彼の名を呼んだが、返ってくる答えはなかった。

カーリクスがまるで逃げるように窓の外へ出ていったあと、レリアは三人と一緒にソファに座って、これまでの出来事を語り合った。

彼らはいつからか察していたようだった。

こんな話をしている間も、レリアの心は落ち着かなかった。

カーリクスのせいだ。

「それでレリア、フェルセウス皇帝はまだあなたの正体を知らないの？」

グリピスの問いかけに、レリアはぼんやりしていた意識から抜け出した。

彼女が首をかしげると、ロミオの表情が一層険しくなった。

「そうなのか…。今はシュペリオンの人たちだけが知っているってこと？」

「うん…でも、そんなに経たないうちにフェルセウス皇帝も知ることになると思う。」

レリアは不安そうに指先をいじった。

幼い頃にレリアを育ててくれた乳母が、近いうちに姿を現すかもしれない。

永久に隠し通せる秘密ではなかった。

しかし、レリアは気にしないことにした。

どのみちレリアにとって、彼は父親ではなかったのだから。

「助けが必要なときは、いつでも言ってね。」

「ありがとう。でも……」

レリアは心配そうに言葉を続けた。

「みんな、故郷に帰らなくて本当に大丈夫なの？」

気づけば、仲間たちは自然と彼女の後をついて回っていた。

まるで小さな頃、影のようにくっついていたあの頃のように。

「俺なんて……」

ロミオが肩をすくめた。

皇位継承権を放棄した皇子は、自由に行動する以外に道はなかった。

グリピスは神聖力を使って本国に戻るのを避けるために、帰らないようにしているようで…。

「でも、神殿はどうしてあなたをそのまま放っておくの？」

レリアは眉間にしわを寄せて尋ねた。

「俺が神を信じてないからさ。むしろ大きな騒ぎになると思ってるんだろうね。」

「…あぁ。」

グリピスの返答に、レリアは首を縦に振った。

そう言って、隣に座っていたオスカーの方へ視線を向けた。

正直、4人の仲間の中で祖国に必ず戻らなければならない人物がいるとしたら、それはオスカーだった。

なぜなら、オスカーは皇位を継ぐべき皇太子だったから。

「オスカー、あなたは？」

「……」

何気なく尋ねたレリアだったが、すぐに後悔した。

オスカーの自分を見る目を見て、彼女は言われなくても答えがわかってしまった。

——絶対に一人では戻らないという目だ。

レリアはそっと彼の目を避けて視線を落とした。

そのときだった——

「ちょっと待って。」

ロミオが深刻な表情で言った。

レリアは緊張した面持ちで彼を見つめた。

「ペルセウス皇帝が皇太子だった時代、当時の皇太子妃の娘が君だったんだよね？」

「……そうよ。」

レリアが首を縦に振ると、ロミオがその肩を抱きながら続けた。

「君、ペルセウス皇帝が復位する前に先皇の脅迫で禁言魔法をかけられたって？」

「うん。」

「それで皇城を抜け出して、皇子の随行団に紛れて中立区域まで来たってこと？」

「そうだ。」

レリアは静かに視線を下げた。

まるで全てのパズルのピースが揃ったかのようなすっきりした表情をしていたが、一方でロミオの表情は曇っていた。

まだ他に問題があるのだろうか？

緊張しながらレリアがまばたきをすると、ロミオが口を開いた。

「ってことは……」

「……？」

「お前。最初、俺たちより年下だったよな？3歳くらい？」

「……!!!」

え……？

レリアは言葉に詰まってしまった。

ロミオの言葉は事実だ。

でも…レリアは前世の記憶を持っていた。

だから精神年齢でいえば、友人たちよりもずっと年上だった。

でも、その事実まで明かしたくはなかった。

ロミオは何か手がかりをつかんだように、からかうような表情で言った。

「うわ…3歳？3歳にもなってないくせに、初めて会ったその日に俺に“隊長”って言わせたんだろ？なあ？」

「…それは。」

「“隊長”って呼べって言っただろ、チビ。違うか？俺を脅したじゃん！」

「そ、それってどうして脅しなのよ？」

「どういうことだよ！一歳でもなく…三歳くらいで隊長ぶるなんて？このちびっ子が！」

ロミオは、まるでボタンもついていない服を着た幼い弟をからかうかのように、口元を引き締めた。

「………」

レリアは、思いがけず弱点を突かれたようで不機嫌そうに顔をしかめた。

グリフィスはこの状況が可笑しかったのか、顔を手で覆って笑っていた。

オスカーはあまりにも驚いたのか、目をぱちぱちさせながらレリアを見ていた。

「まさかオスカーまで同じことを思ってるの？」

オスカーまで「自分より年下のくせに隊長面か？」と思っていたら、なんだか裏切られたような気持ちになる。

オスカー、あなただけはそんなこと思っちゃダメだよ……。

ロミオはこの出来事を一生からかわれるような表情でレリアを見て笑った。

そうだ、ロミオなら本当に一生これでからかってくるかもしれない。

「わ、私が年齢をごまかしたくてごまかしたんじゃないんだから…。」

レリアが弁解するように言ったが、ロミオの表情は相変わらずいたずら心に満ちていた。

「でも君たちは…私にまた会った瞬間、殺そうとしたじゃない？」

ふと思いついたことを口にすると、ロミオの表情が一瞬でこわばった。

レリアはこれが嫌だった。

「私、あのときどれだけ怖かったか…。」

無表情な声で一人ひとりじっと見つめながら言うと、皆目をそらした。

グリフィスとロミオはそっと顔を背け、オスカーはただ目元を伏せた。

特にオスカーは、誰よりも積極的にレリアを殺そうとした人物だ。

「僕がその時どれだけ傷ついたか、わかってる？」

「………」

冗談で言ったつもりだったが、三人の表情は深刻だった。

レリアが気まずくなるほどに。

一方、窓から逃げるように外に出たカーリクスは、足元もおぼつかないまま光の中を歩き、最終的に裏門の回廊に入っていった。

冷たい雨に打たれれば正気を取り戻すのが普通だが、彼の頭はまだ混乱していた。

「じゃあ、誰が誰だって？いや、ちょっと…」

カーリクスは床にへたり込み、自分の頭を抱え込んだ。

こんなことがあるのか？そんなはずがあるか？

「じゃあ一緒に探しに行ったレオの墓は？」

ありえない。ウソをついているんじゃないか？

でも…ウソじゃない気もした……いや、それよりも！

あいつ、俺と結婚するって言ったくせに。

『じゃあ、俺が結婚しようとしてたのは、レオだったってことか?!』

混乱で頭の中が真っ白になった。

『ちょっと待てよ…そうだとしたら……』

レオ、子どものころから俺のことが好きだったのか？

記憶を辿ると、やたら自分にまとわりついていたレオの姿が思い出された。

秘密基地を作って一人の時間を楽しんでいたときも、どこで聞きつけたのか、いつもレオが現れた。

まるで一人にはさせないと言わんばかりに…いつもそうだった。

「うわ、あいつマジで…完全にやられたな……わあ……」

カーリクスは衝撃で口を閉じることもできず、呆然としていた。

幼い頃の記憶はすべて友情だと思っていたのに…自分だけが友情で、相手は愛だったなんて！

『だから再会したとき、あんな表情で僕を…！』

レリアがレオだったという事実だけが変わっただけで、他には何も変わっていなかった。

しかし、彼の世界は完全にひっくり返ったように混乱していた。

カーリクスは荒く息を吐いた。

彼の頭の中では、幼い頃、自分を救ってくれたレオとの思い出が1秒ごとに一つずつ蘇っていた。

レオは彼の人生で決して消せない大切な友人だった。

幼い頃、彼を救った英雄に他ならなかった。

そんなレオと結婚しろって？俺の英雄譚が？結婚を？

「はあ…くそ…ありえねえだろ？一体これは何の…」

いや、待てよ…。

『…できない…わけじゃないかも？』