こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

71話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 風の精③
翌朝。
レリアはかまどの中で「トゥントゥンボン」だけは確認して、しっかりとフタを閉じた。
そのとき、小さなメッセージウィンドウが目の前に浮かび上がった。
[おっと!(⊙ө⊙)!!! 目が腫れたように腫れたとき?膨らんだまぶたを落ち着かせる「トゥントゥンボンの秘薬」がおすすめですよ!( ͡° ͜ʖ ͡°)]
「………」
―これは今、感動してるってことなのか……
レリアは内心ぶつぶつ言いながらも、言われた通りインベントリから薬を取り出した。
なんだか「ヘルプモード」が常にサポートしてくれている感じがした。
『初心者ガイド』のようでもあり……
おかげでカーリクスを見過ごさずに済んだのだから、実際に役に立ったのは確かだった。
レリアは腫れた目をこすり、いくつかの薬を手にしてカーリクスの部屋へ向かった。
「………」
ドアを開けてくれたカーリクスは、無表情でレリアをぎょっと見つめた。
どこか非常に気まずそうな顔で。
「これ… 昨日、もしものためにカーリクス様に飲ませた薬なんですが。役に立つかと思って。」
「…どんな薬?」
「鎮痛剤と鎮静剤です。」
「…うん。」
その言葉でようやく正気を取り戻した。
レリアはなんだか気まずくて、何も言わずに部屋を出た。
『そういえばロミオはちゃんと戻ってきたんだな。』
そう思いながらロミオの寝床を見たその時だった。
コンコン。
誰かが苛立ったような足音を立てながら、遠くから近づいてくる音が聞こえた。
声のする方を振り返ると、眉間にしわを寄せた表情のルートがいた。
「ルート卿?」
ルートは荒れた犬のように近づいてくると、突然レリアの首筋をつかんだ。
目に血が滲んでいるのを見れば、怒りをこらえているようだった。
レリアとしては戸惑うばかりだった。
「ルート卿…!いったいどうして…なぜ…!」
そのときだった。
「ルート卿すぐにその手を離して!」
遠くから別の誰かがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
首元を押さえたまま咳き込んでいるのは、セドリックとデミアンだった。
『これは一体……。』
ルートは皇子たちが近づいてくると、どうしようもなく振り上げていた拳を下ろした。
それでも怒りが収まらないのか、レリアの顔に拳を当てるようなそぶりで、拳を動かしながらぶるぶると震えた。
何か不安を感じたレリアは、視界がだんだん曇っていくのを感じ始めた。
彼女は咳き込みながら二人の皇子を見つめた。
「な、何……。」
ゆっくりと近づいてきたセドリックとデミアンは、呆れた表情で彼女を見下ろした。
そして衝撃的な一言を放った。
「ユリアナは一体なぜこんな奴を婚約者候補に入れろと言ったんだ……。」
『な、なんですって?』
レリアはあまりに驚いて、言葉すら出なかった。
そして続いた言葉は、さらに彼女を混乱させた。
「ご一緒しましょう、レイモンド卿。陛下があなたにお会いしたいとおっしゃっています。」
「……っ!!」
レリアがまるで凍りついたかのように固まっていた、そのときだった。
「何だって?」
外で聞こえた騒ぎに気づいたのか、カーリクスがドアを開けて出てきた。
鋭く立ったままこちらを睨む彼の表情は、さっきまでの軽薄さが一切なく、引き締まっていた。
だが、それも一瞬だった。
カーリクスはすぐに、レリアを挟むように立つルートとセドリック、デミアンを警戒するように見回した。
それを見て、レリアは眉をひそめた。
そのとき、のっそりと近づいたルートが、セドリックとデミアンの肩を指先でトントンと叩いて押しのけた。
まるで邪魔だと言わんばかりに。
皇族に対してそんなに無礼で傲慢な態度を取るとは。
レリアは心の中で驚いていた。
しかし、それよりも少し前にセドリックが言った言葉のほうが、さらに混乱を招いた。
『誰が私に会いたいと言ったって?』
思ったより押し返されたのが気に障ったのか、デミアンは眉間にしわを寄せた。
「今のは何だ?まさか皇族に対して?」
「人ひとりを三人がかりで囲んでるから、皇族じゃなくてチンピラかと思ったんだが。」
カーリクスは冷たく言い放った。
そう言う彼自身が、まるでチンピラのような口調と表情だった。
「は。」
デミアンが呆れたようにため息をつくと、カーリクスはレリアの腕を掴み、自分の後ろに引き寄せた。
まるで守るような態度だった。
その姿を見て、セドリックとデミアンはさらに大きく「はっ!」と声を上げた。
「これは皇命だ。連れて行かれる前に、自ら来た方がいいぞ。」
デミアンの言葉に、レリアはぐっと唾を飲み込んだ。
ペルセウス皇帝と顔を合わせないよう、あれほど努力してきたのに。
実際、顔を合わせることなどほとんどないと思っていたのに。
いくら皇城に滞在している客人とはいえ、ロミオやカーリクスのように皇族でもなく、光竜討伐戦に参加した英雄でもなかった。
皇帝が通る道の近所の犬でもないし、一日中スケジュールで忙しいはずだ。
正直、会おうと努力しても顔を見ることすらできないのが現実だ。
なのに、なぜ――
『ユリアナは気が狂ったのか?』
いや、あんなに笑いかけて見つめておいて、婚約者候補だと?
下手をすると、女ってやつは甘く見られかねなかった。
レリアは心の中で、非常時に使おうと準備していた薬を思い出した。
そのとき、カーリクスが身を乗り出してレリアを見た。
レリアは不安になって、カーリクスの服の裾をつかんでいた。
「おい、お前何か罪でも犯したのか?」
カーリクスの問いに、レリアはコートの襟をぎゅっと握った。
「でも、なんでそんなに怯えてるんだよ。」
「そ…それが、その、でも皇帝陛下が呼んでるって言うから…大丈夫かなって…」
「……一緒に行こうか?」
カーリクスが少しだけ震えたような表情で聞いた。
レリアは「大丈夫」と答えようとしたが、思いとは裏腹にコートの裾をまるで狂ったように握っていた。
「待ってろ。」
カーリクスはセドリックとデミアンに何かを言ってから、レリアを部屋に押し込んだ。
そして彼自身も自分の部屋に入っていった。
幸いにも、「皇帝に拝謁するときはきちんと礼装をしなければならない」という常識程度はまだ残っていたようだ。
セドリックやデミアンにも服装に関する皇族への礼儀や、そういったことはすっかり忘れてしまったのかと思っていた。
レリアは震える手でクラバットを結んで外に出た。
インベントリに薬がきちんとあるか確認することも忘れずに。
緊張したまま外に出ると、最初に見えたのはカーリクスだった。
彼は意外にもクラバットを正しく結んでいた。
自ら姓を捨てたとはいえ、やはりカーリクスも皇族の血を引いていた。
だからか、身なりもしっかり整っていた。
彼はチンピラではなく、気品あふれる皇族のように見えた。
確かに背も高く体格もよいため、細身のセドリックやデミアンよりも威圧感があった。
そんな彼に問題があるとすれば……壁にもたれながら待っていたセドリックと、デミアンと口論していたことくらい?
そういえばセドリック、デミアン、ルート、カーリクス。
この4人はみな同じ所属らしい。かつて光龍特別隊に属していた人たちだ。
しかし、どうも仲はあまりよくないようだ。
「客として来てるなら、もう少し丁寧に接したらどう?」
「俺が罪人として来たって? どこがパワハラだよ。」
「………」
カーリクスの言葉に、セドリックは何も言えなかった。
その言葉は事実だったからだ。
実際、軍が出て行くというのを、王太子である我が国の首都に滞在させる代わりに、皇城で過ごすようにというのは皇室側からの要請だった。
いくら異国の皇族であり英雄といえど、アウラリア皇城に長期間滞在するのは良い印象を与えない。
特に、五つの帝国と神殿の間での綱引きが激しいこの時期には。
ともかく、レリアは彼らと一緒に小走りで本城に向かった。
まさかカーリクスが一緒に来てくれるとは思ってもいなかったが、なぜか心強く感じられた。
ルートは何も言わず、今にもレリアを殺しそうな勢いだった。
『昨日まではご恩に報いるつもりで接してたのに…一瞬で宿敵扱いとは。』
レリアはそんなルートの視線を見ないふりをして、カーリクスの背後に隠れた。
「おい、お前あいつに金でも借りたのか?なんでああなんだ、あいつ。」
そんなルートの態度を不審に思ったのか、カーリクスが小さな声でレリアに尋ねた。
「…ユリアナ皇女が私を婚約者候補にしたいって言ってるらしくて。」
「えっ?」
カーリクスは「クッ」と笑い声を漏らした。
ただし大声は出せず、大きな手で口を押さえていた。
目をぎゅっと閉じて笑っているところを見ると、笑い死にしそうな様子だった。
しかしカーリクスの笑いのせいか、ルートはさらに燃えるような目でレリアをにらみつけた。
『自分を笑ったと思っているのかもな。』
分からない……。
レリアは困惑したように目をぱちくりさせた。










