こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

103話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 罠④
『最初からこういう作戦だったのか。つまり、これはジスカール卿ではなく、私だったのね。私の性格を考えれば、救援軍の出発を自分の目で確かめるだろうと予想して仕組まれたことだわ。』
だが、それに気づいたのは遅すぎた。
ナディアは焦りながら唇を噛み、思案に沈んだ。
囚人を輸送する馬車には窓がなく、外の様子をうかがうことはできなかった。
馬車の揺れや外から聞こえる物音を頼りに、かすかに状況を察するしかなかった。
『私は、これからどうなるの……?』
ナディアは自分の手首をさすりながら思いにふけった。
手錠も縄もつけられていない、自由な手首だった。
いかに抵抗の意思がないとはいえ、拘束すらしないなんて。
これは普通の捕虜待遇ではない。
『公爵令嬢という身分のせい……? いや、父はもう私を信頼していないはず。』
むしろ反逆罪を適用して、より残酷に処刑してもおかしくなかった。
娘だからといって見逃すような人ではない。
そんな風に、彼女が不透明な未来を想像しながらため息をついていたその時——外で騒ぎが起きたかと思うと、突然ドアが開かれた。
ガチャッ。
「レディ・ナディア、到着しました。」
ドアを開けたのは無表情な様子の兵士だった。
ナディアは体を動かしつつ、警戒するように外を見回した。
「ここは……?」
「テニア城です。お降りください。」
彼女は戸惑いながらも、しぶしぶ馬車から降りなければならなかった。
しかし、外に出たあとも手足を拘束されたりするような強圧的な対応はなかった。
彼に従って建物の中へと入っていくと、黒い服を着た数人の女性がナディアのもとへと近づいてきた。
『何をしている人たち?』
女看護師?熟練の技術者?
ナディアは彼女たちの身元を推測しながら緊張していた。
「公爵令嬢、ここからは私たちがお世話いたします。長旅だったでしょうし、まずはお体をお清めになりませんか?」
「……」
どうやら黒い服の正体は侍女服だったようだ。
思いもしなかった申し出に、ナディアは一瞬言葉を失ってしまった。
すぐに気を取り直したナディアが答えた。
「簡単に……体を拭く水だけでも……」
「お疲れのようですね。それでは洗面用具とお湯だけお持ちします。こちらへどうぞ。」
「……?」
ナディアは考えた。
どう見てもこれは侯爵や公爵令嬢に対する態度だ。
『一体どういうつもりなの?』
自分はウィンターフェル城の誰かを訪ねてきたわけでもない。
彼女はただ、騎士団長ジスカーラを救うために向かう途中だったのだ。
誰が見てもウィンターフェル側に積極的に協力していたように見えた。
なのに、こんなにも厚遇するとは。
ついにその邸宅に到着したとき、彼女の頭の中はさらに混乱していた。
「こちらです。」
「……」
敵軍の捕虜を収容するにはあまりにも豪華な寝室だった。
推測するに、この城の中で最も良い部屋なのではないかと思われた。
さらには、彼女が来ることを前もって聞いていたのか、埃一つなく清掃された状態だった。
「ではごゆっくりお休みください。人を呼ぶときはベッドの横の呼び鈴を引いてください。あ、部屋着は棚の上に用意されているそうです。」
侍女たちはそう言い残して部屋を出て行った。
カチャッ。
背後から錠をかける音がした。
ドアノブを回してみたが、やはり開かなかった。
『鍵をかけたってことは、私が単なる帰ってきた侯爵令嬢ではないとわかっているということよね……。』
窓は開いていたが、ここは4階だ。
ここから飛び降りたら、自分の体は粉々になるだろう。
ナディアは力なくタオルで体を拭いた後、ベッドにもたれかかった。
『この毛布を縛って下に降りようか?いや。無事に降りたとしても、城門はどうやって通過するの? その後の移動はどうするの?』
あれこれ頭を巡らせてみたが、それらしい脱出方法はなかった。
無理に脱出を試みて捕まる日には、本当に牢屋に入れられるかもしれないことだった。
ナディアは膝を抱えて思案にふけった。
しかし、どれだけ考えてみても、まともな方法は浮かばなかった。
どれくらいの時間が経ったのだろうか?
緊張が少し気が緩むと、眠気が押し寄せてきた。
『グレンが心配する……まさか私を捕らえて……迷惑をかけるわけには……』
必死に眠気と戦ったが、少しずつまぶたが重くなるのは防げなかった。
テニア城に来るまでの間、ほんの一瞬も目を閉じていなかったのだ。
眠気が襲ってくるのは当然だった。
『寝ちゃ……だめ……』
必死の抵抗も空しく、再び目を開けたとき、ナディアが最初に気づいたのは朝日が差し込んでいる窓だった。
「………」
チュンチュンチュン。
朝になったことを知らせるかのように、窓の外では鳥たちがさえずっている。
ベッドから起き上がったナディアは、部屋の中をあちこち見回した。
もちろん武器になりそうなものはなかった。
窓の外の1階には衛兵たちが見張っており――
カチャリ。
「寝たのね。」
唯一の出口はしっかりと閉ざされていた。
ため息をついて、ナディアは再びベッドへと戻った。
コンコン。
「お嬢様、目が覚めましたか?」
「……!」
振り返った瞬間、部屋のドアが少し開いた。
その隙間から、昨日見た侍女と目が合った。
「まあ、目が覚めたんですね。ドアノブが動いていたようなので、もしかしてと思いましたが……。ご用があれば、紐を引いてくださるようにとお伝えしましたのに。」
「は、はは。」
召使いを呼ぶためではなく、脱出しようとしたのだ。
ナディアは苦笑しながら、内心を押し殺した。
「少々お待ちください。お食事を準備してまいります。」
「いえ、それには……」
「ご遠慮なさらずに。昨晩到着してからずっと何も召し上がっていないじゃないですか。すぐにお持ちします。」
そう言って、ナディアが何かを言う間もなくドアを閉めて立ち去った。
もちろん、その間も鍵を閉めるのは忘れなかった。
再び戻ってきた彼女は、大きなトレーを抱えていた。
朝食にしては器がいくつも並べられていて、どれだけの量を望んでいるのか見当もつかないほどだった。
彼女が食器の覆いを取り除くと、その下からはとても食欲をそそる料理が現れた。
とても豪華な料理で、捕虜や裏切り者が食べるには過分なものだった。
「………」
普通ではない状況には、必ず理由があるものだ。
震える目で朝食を見つめていたナディアが、ようやく口を開いた。
「ひとつ、聞いてみたいことがあります。」
「お尋ねください。」
「もしかしてこれ……最後の晩餐なのですか?」
「え?」
「処刑の前日とはいえ、処刑される人にも良い場所で休ませて、良い食事を与えるじゃないですか。まさか、そういう意味じゃないでしょうね?」
すると名前も知らないあの少女は、まるで面白い話でも聞いたかのようにくすくすと笑った。
「クフッ、いえ、申し訳ありません。でも、そんなご心配はなさらなくて大丈夫です。私が受けた命令は、公爵令嬢様を丁重におもてなしするように、というものでしたから。」
「誰が?どうしてそんな命令を?父も私の消息を知ってるの?まさか、あの方がここに……」
「申し訳ありません。それ以上のご質問にはお答えできかねますので……どうぞお食事を。冷めてしまいます。」
「………」
そう言う彼女の瞳には、揺らぎがなかった。
その瞳を見てナディアは、彼女からこの異変について何かを聞き出すのは不可能だと悟った。
『まずは……お腹を満たさないと。脱出には力が必要なんだから。』
半日以上何も食べていなかったので、胃が痛むほど空腹だった。
ナディアはため息とともにスプーンを手に取った。
しかし、食事を始めてからそれほど時間が経たないうちに、ムッとした。
「ん?」
彼女は何かがおかしいとすぐに気づいた。







