こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
70話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 感謝
首都パンドラガンの北門前。
ウィンターフェルへ向かう行列が整然と並んでいる中、澄み渡る声が響き渡っていた。
「夫人のおっしゃる通り、本当に待ち望んでいたかのような謝罪を受け入れてくれるとは! まさか外戚が私の前であんなに謙虚な態度を見せるなんて、本当に初めてのことだ。」
「そうですか、それは良かったですね。」
「冷えたリンゴを受け取るなんて、それも私がわざわざ迎えに来るのを待ち望んでいたみたいだ。ははは!」
その言葉を半分笑いながら聞き、ナディアは敬意を表しているかのように頭を下げた。
だが、彼女の口元には微妙な反応が現れていた。
「本当ですか?」
「これも全部あなたのおかげだよ。もし後ろ盾が助けてくれなかったら、今頃は嫁入り道具を抱えてどこかの辺境に追いやられていたかもしれない。おっと、外戚の話だけどね。彼にウィンターフェルの話をしたのに、なんて答えたかと言うと・・・」
ナディアの手をしっかり握りしめていた王子の手からは、力が抜けるほどだった。
彼があまりにも喜んでいる様子から、これまで話したことをもう一度話しているのかもしれない、と彼女は思った。
(これってすでに知っている話ですよね・・・)
ウィンターフェルに戻るべき王子を支援し、守護するという約束がオーデル家によって再び確認された。
この2つの家門の同盟は、いずれ北部と第3勢力が手を組む契機となるだろう。
オーデル伯爵家との縁をさらに強化したことも、今回の訪問の成果といえるが、それ以上に最も大きな成果は・・・。
(この人に意欲を植え付けたことだ。)
ナディアが長い長い説得を辛抱強く続けられた理由でもあった。
いつも無気力だったその人が、何かを持ち上げる姿を見ただけで、彼女は希望を感じたのだから。
言葉で無理に引っ張って行くことはできても、無理に水を飲ませることはできない。
どれだけ周りが説得しても、本人に意志がなければ、それは既に敗北した戦いに等しいものだった。
しばらく黙っていたフレイは、未練があるかのように目を細め、こう呟いた。
「それにしても本当に惜しいことだ。後継者が都にもっと長く留まれたら良かったのに。」
「まあ、それはただの願望に過ぎないですが・・・」
ナディアは言葉を濁した。
都に長く滞在することで、自分の裏切りを知った父親からの報復を恐れずにはいられない彼女の心中は複雑だった。
「もう王子様は一人ではありませんよ。」
「でも・・・」
「いつかまた会える日が来るでしょう。その時まで、王子様もここでやるべきことに全力を尽くしてください。」
「もちろんだ。」
力強く顎を引いて話を続けたフレイだた。
「私にこんな機会を与えてくれたことについて、あなたとウィンターフェルに本当に感謝しているの。だから、その意味で私の贈り物を受け取ってほしい。」
「贈り物?」
「そうだ。」
フレイアが軽く手を叩くと、従者の一人が小さなベルベットの箱を持ってやってきた。
箱の中には豪華なブレスレットが一つ入っていた。
一目見ただけで普通の物ではないことがわかる。
「母が残した遺品の一つだ。」
「恐れ多いです、遺品なんて。そんな貴重なものをいただくわけにはいきません。」
「ウィンターフェルと侯爵夫人に対する私の気持ちだと思って、どうか受け取ってほしい。」
そう言いながら、彼はナディアの手首にそのブレスレットをつけてくれた。
(皇子の誠意の表れ・・・受け取っておくべきだろうか?)
しかし、ブレスレットをいじりながらそれを眺めていた彼女の表情は、どこか探るようなものだった。
背後から何かがきしむような音が聞こえた。
その鋭い音に、彼女は思わず振り返らざるを得なかった。
それもそのはずで――
「グレン?さっきの音・・・あなた、大丈夫?」
まさに歯が割れるような音だったからだ。
振り返って見たグレンの表情はいつもと変わらず、特に暗いものではなかった。
しかし出発が遅れるたびに、どこか苛立っているように見える。
グレンは苦笑いを浮かべながら言った。
「急に歯の健康が気になり始めたよ。」
「いや、さっき歯が鳴るような音が聞こえたけど・・・」
「風の音だったんじゃないかな。」
そんなはずがない。
彼は、やや曖昧な表情でそう言いながらも、説得力には欠けていた。
(まったく、時間をずいぶん無駄にしてしまったな。)
自分がすべき任務を思い返せば、無駄にした時間を惜しむのは当然だ。
ナディアは会話を締めくくるため、改めて前を向いて視線を合わせた。
「贈り物はありがたく頂戴いたします。」
「本当に残念だ。もう少し時間があれば、さらに貴重な品を用意できたかもしれないのに・・・」
「小柄な王妃様の遺品とあれば、それだけでも十分すぎます。領地に戻った後も、このブレスレットを見るたびに殿下のご平安をお祈りします。そして、私が不在の間も、外務卿の言葉をよくお聞きください。」
「そうだな。その通りだ。」
フレイがそう言って再び優雅に顎を軽く動かした。
まるで巨大な黄金のリトリバーが、命令に従うような感覚だ。
(あれは完全な乱暴者だけど、言うことをよく聞く乱暴者だから、本当に助かる・・・)
ナディアはそんなことを思いながらも、表向きは礼儀正しく言葉を返した。
「次回またお会いしましょう。どうぞ平穏にお過ごしください。」
「気をつけて。」
こうして北部へ向かう行列が動き出した。
そうして数歩進んだところで、背後から王子の声がどこか控えめに響いた。
「西部近くに用事があれば、いつでも私を呼び出しても構わない!万事を整えてすぐに駆けつけるから!」
振り返ると、フレイが大きく腕を振りながら見送っている。
ナディアは笑顔で手を振り返しながら、心の中で静かに考えた。
(陪臣ではなく、ただの麻雀仲間でしょう・・・。そんなことを大声で言わないでください・・・)
彼の新しい後継者が誰になるかは分からないが、しばらくは苦労したくないものだ。
静かに息をついている彼女のそばにグレンがやってきた。
「随分と近づいてきたようだ。」
「第一王子様のことですか?」
「ああ。」
「私たちが支えるべき王位継承者なのに、彼がウィンターフェルを信頼すれば、それだけ信頼を深めることになるでしょう?」
「ウィンターフェルを信頼するというよりは、あなたを信頼しているように見えました。」
「それはそうでしょう。少なくともあの方が次の王になるまでは、私はウィンターフェルの人間ですから。」
「・・・」
そう、それが問題だ。
ナディアがこの家の主人の座に座ることが時が経つにつれて明らかになってきた。
もし二人の契約が終了した後に、フレイが彼女に王妃の座を提案したとしても・・・。
グレンの知るナディアは、まったく野心のない人物だった。
彼女はそういう人だった。
ただし、仕事に対する欲望だけは無尽蔵だった。
国をしっかりと管理できるようにしてくれるのなら、冷たく受け入れるだろう。
ナディアが国の仕事をきちんと処理している姿が、あまりにも容易に想像できた。
グレンは思わず唇を噛み締めて考える。
気分が良かったのか、彼女の手首に付けられたブレスレットがさらに輝きを増しているように見えた。
彼はそのブレスレットをじっと見つめながら考えを巡らせた。
「どうやら・・・何か対策が必要なようだ。」
その瞬間、彼の目にわずかな光がスッと過ぎ去った。