こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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80話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 狩猟大会④
似たような時期。
北部の領主たちが会合を開くという知らせを受け、バラジット公爵も久しぶりに領地に戻ることとなった。
領地に戻った彼は、すぐに領内の狩猟大会を名目として各地の領主たちを招待した。
北部の結束を強め、南部の領主たちと対等に渡り合うためである。
そしてついに今日、南部に拠点を持つ貴族たちの多くが一堂に会することになった。
「皆さんも噂を耳にしたでしょうが、北部の者たちの動きがただごとではないようです。」
「ええ、一箇所に集まって反乱でも企てているのではないかと心配です。」
「しかし、百年前まで北部は蛮族の土地だったのですよね? 約束を軽んじる彼らが、今さら別の心を抱いたとしても驚くには値しません。」
皆、それが以前から耳にしていた話だったかのように、特に驚いた様子もなかった。
まあ、自分たちに対抗する力があるはずもないと思い込んでいる彼らの傲慢さの表れだ。
そのとき、席についていた領主の一人が口を開いた。
「公爵様、1つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「言ってみなさい。」
「公爵様のご令嬢であるナディア様が北部領主たちの会合の場に頻繁に同席しているとのことですが、これは一体どういう事情でしょうか?」
「……」
その言葉に、公爵の表情がわずかに曇る。
しかし、質問を投げかけた者は動じることなく、さらに続けて口を開いた。
「公爵家からあちら側へ寝返ったという噂は真実なのでしょうか?」
「……」
言葉が簡単に口から出るわけではなかった。
「後見人」という名目でナディアの結婚を許可したのは、他でもないバラジット公爵本人だったのだ。
高い自尊心を持つ彼が、自らの過失を認めることは決して容易ではない。
彼にできる最大限のことは、あまり関与しない態度を取ることだけだった。
「ふん、あの子が一体何をしようとしているのか見当もつかない。しかし、一つだけ明らかなことがある。それは彼女が私の統治を抜け出したということだ。この反逆者め。」
無関心を装ってはいるものの、その言葉の意味が変わるわけではなかった。
肯定とも受け取れる返答に、場にいた人々が一斉にざわめいた。
「公爵令嬢がなぜ父親を裏切ると言うのですか?それが何の利益になると言うのです?」
「むしろ今のうちに本性を示してくれた方が助かります。後で嘘の情報で混乱させられるよりは。」
「私が知りたいのは、ウィンターフェルが公爵令嬢にどんな利益を示したからそちらに付いたのかということです。」
「その通りです。公爵令嬢が自らの判断で、北部の戦力が我々の予想を超える可能性があると考え、成功率が高いと判断してウィンターフェルを選んだのではないでしょうか?」
「もしそれが本当ならば、対策を講じるべきではありませんか?」
それに反対する意見も少なくなかった。
「ただ単に結婚しただけで、一緒の船に乗ったと考えたのかもしれないじゃないですか。」
理性的な理由を持ち出して正当化するよりも、敵の戦力がそれだけ強大だと認めたくない気持ちが大きかった。
「まさか、婚礼の際に言った言葉が公爵令嬢の本心だと主張するつもりですか?」
「そんな意味ではありません。当時は公爵の命令を受けて演じただけでしょう。しかし、婚礼を挙げた後に考えが変わった可能性もあるのではないですか?」
「いずれにせよ、後悔することになりますよ。公爵様にとって。」
「彼は血族に対しても非常に厳しい制裁を下す方です。」
ナディアの未熟さを軽蔑するような声に、貴族夫人は気まずそうな顔をした。
敵の戦力が味方の軍よりも優れていることを認めるよりも、未熟な者の誤った判断だと片付ける方が遥かに気が楽だったのだ。
長い間、既得権にあぐらをかき現実を直視しなかった彼らの限界でもある。
バラジット公爵もまた北部を甘く見てはいけないと考えつつも、それを止めることはしなかった。
ここでは、ナディアが未熟な判断をしたということで決着をつけるのが一番秩序を保てる方法だったのだ。
最高権力者が沈黙している以上、世論はより一方向に流れるしかない。
ただし、一部には不満げな表情を浮かべる者もいた。
若い貴族たち、例えばタクミのような者がそれに該当した。
「これは簡単に済む問題ではないように思います。」
「それでは、ここに集まった我々が北部の連中より劣っているということか?」
「敵を過小評価してしまえば、結局痛い目を見ることになります。慎重になるべきです。」
彼は険しい顔をして、無表情で見つめ返している家臣を無視した。
タクミはバラジット公爵に視線を向けた。
「公爵様に直接伺ってみてはいかがですか? 公爵令嬢が感情に振り回される未熟な人物なのか、それとも冷静に判断できる人物なのか。ご自身の娘であるだけに、誰よりもよくご存じなのではありませんか?」
「ふむ……」
公爵は答える代わりに、深い息をついた。
実際のところ、彼は娘のことをあまりよく知らなかったからである。
かつて彼女は、ただ静かで場の雰囲気を察するのが得意な子供だと思われていた。
彼女が自分の皿をうまく片付けるように、頭もよく回るのだと気づいたのは、改善式が行われた時のことだった。
しかし、娘がどんな人間であるのかを正確に定義するのは難しい。
悩みの末、彼は自分の育て方に欠陥があったことを認めざるを得なかった。
「それなりに上品に見せかけることには長けていると思っていたが、どうやら中身が伴っていなかったようだ。私が子育てを間違えたのかもしれないな。」
「その通りです。」
他人の意見に同意する返事に、タクミの表情が一瞬厳しく引き締まった。
しかし、それ以上の反論はできなかった。
線を越えたという主君の怒りを買うことは避けられないだろう。
「公爵の寵愛を信じて傲慢に振る舞うなんて。」
「だから本質を知らない者たちだ。」
結局、彼は小さな囁きのような周囲の視線を無視して席に座るしかなかった。
「公爵様!」
はっきりとした声が響き渡ったのはその時だった。
「誰だ?」
突然の声に傲慢な貴族たちは驚いて振り返った。
しかし、威勢よく響いた声がかき消えると、彼の腕に結ばれた赤い徽章を見た瞬間、誰も言葉を続けることができなかった。
赤い徽章。
それは急報を伝える命令を示す物だった。
しかも、徽章の端には王室の紋章が刻まれていた。
それはつまり、王室からの緊急な伝達を意味している。
本能的に危機を感じ取ったバラジット公爵がその場で立ち上がった。
「都で何か異変が起きたのか?」
「国王陛下が急ぎ帰還命令を出されました。ただちに都へ戻らねばなりません。ですが、都ではなく、タンタル城で異変が起きたようです。」
「タンタル城だと……?」
東方の国境付近に位置する城であった。
バラジット公爵の勢力圏も、北部の手が届かない外れの地の一つ。
「王国の最東端にある城ではないのか?」
「タンタル城の領主が助けを求める書簡を送り、その後連絡が途絶えた模様です。城が陥落した可能性があります。」
「何だと!?」
国境付近にある城が占領されるなど、前代未聞の事態であった。
動揺を隠せない貴族たちが、一言ずつ不安の声を上げ始めた。
「北部の者たちの仕業でしょうか?」
「奴らめ、集まって何かを企んでいると思ったら、我々を攻撃するために兵を動かしたのかもしれません。」
「とはいえ、何かおかしくないですか? あの場所は要所でもないのに、どうしてわざわざ兵力を動かす必要があるのでしょう……。」
残された答えは二つしかなかった。
一つ目は、民衆の反乱が勃発したこと。
そして二つ目は……。
「それなら、悪魔族の軍勢が現れたということですか?」
「……」
すると、司令官の表情が冷たく引き締まった。
時に、無言の表現が答えを代弁することもある。
バラジット公爵は短い溜息とともに一言だけ口にした。
「どうやら、お前の言うことが正しいようだな。」
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