こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
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10話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 犬と主人③
ラント・アグリチェは女性を娶る際、多くの条件を考慮していた。
つまり、心が動くほど美しい女性を単に迎え入れるだけではなかった。
実際、母たちは共通点をほとんど見出せないほどの女性たちだ。
美貌においても、私の母のように目を見張るほどの美しさを持つ女性から、比較的平凡な容姿の女性までさまざまだった。
性格もまた、多様性に富んでいた。
堂々として華やかな女性から、家庭的で慎ましい女性まで、多種多様な特徴を持つ女性たちがいた。
これまではただ単に「この人は、嗜好で一度惹かれたとしても長続きしないだろう」と思っていたが、それが真実ではないことがわかった。
結局、私はラント・アグリチェがあらゆる方面から遺伝子を取り入れるように、彼の選ぶ女性たちを「妻」として迎え入れているという結論に至った。
まるで実験をするかのような行為だった。
ただし、その中で私の母が彼の目に留まった理由は、単純に「美貌」によるものだと私は考えていた。
このようなことを言うのは自分勝手だが、それ以外の理由を見つけるのは難しかった。
あなたの長所はまさにそれだけで、他には何もない。
もちろん、私は彼女の穏やかな性格と優しい心が好きでした。
しかし、この家ではそれが長所とはなり得ない。
おそらく、ラント・アグリチェもその点を魅力的だとは感じなかったのではないか、とジェレミーの髪をかき分けながら考えた。
けれども、8歳のとき、ラント・アグリチェの前で私を生かしたのは、結局、彼女に似たこの目を引く容姿だった。
どのような意味であれ、私は母のおかげで命を繋げたと言えるでしょう。
そんな私が母をこのように避けることは、一見明確な不孝であるかもしれない。
もちろんその事実を改めて思い知らされたとしても、今すぐに彼女が待っている部屋に戻る気にはならなかった。
カチリ。
私はジェレミーを部屋に連れて行った後、カシスがいる場所へ向かった。
他の時なら、ジェレミーをもう少し甘やかして付き合うこともあったでしょうが、今日はそうはしませんでした。
直に母の元へ向かわず、彼を選んだ。
これだけでも今回は十分だった。
私は彼との一定の距離を保つ必要があった。
「本当に最低限の治療だけだね。」
私はカシスの状態を観察しながらつぶやいた。
カシスは先ほど見た通り、拘束具と猿ぐつわを身につけていた。
それでも大きな傷は治療が進んでいたのが幸いだったが、小さな擦り傷はまだそのままだ。
私は近づいて、カシスの手首と足首を調べた。
拘束具に押しつけられた皮膚がひどくすり減り、見るだけで眉をひそめるような状態だった。
彼の手首をそっと持ち上げると、金属とつながった不快なきしみ音が聞こえた。
同じようなことが足首にも起こっていた。
部屋の中の光景はかなり侘しいものだった。
だからだろうか、その冷たい空間の中で体を横たえているカシスが、さらに哀れに見えた。
しかし、地下牢のように腕が壁に固定されているわけではなく、あの頃よりは多少ましには見えたが、それだけだった。
私はとりあえずカシスの口に噛まれていた猿ぐつわを外してやった。
拘束具まで外してあげることはできなかったためだ。
持ってきた薬を手首と足首に塗り、包帯を巻くだけで満足することにした。
体の他の傷も念入りに調べて、治療が必要な部分は自分で手当てをした。
分かってはいたが、この家の冗談のような処置は本当に酷すぎる。
いや、冗談だけでは済まされない。
こんなアグリチェで何も起こらずにいること自体が奇跡といえるだろう。
治療を終えた後、私はそっとカシスのそばを離れず、目の前の顔をじっと見つめた。
意識を失っているカシスは、相変わらず穏やかで柔らかい表情を浮かべていた。
こんなに優しく、清らかな印象を持つ少年をこんな目に合わせたアグリチェが、ぞっとするような存在に思えた。
いや、もちろんアグリチェは消え去るべきだ。
この無情な世界における明確な悪であることは間違いない。
私は深く息をついた後、壁に寄りかかり体を預けた。
最近、以前よりも頭を使うことが多くなり、それで疲れていたのかもしれない。
もしかすると、知らず知らずのうちにカシスの件で気を張り続けていたせいで、遅れて疲労が押し寄せてきたのかもしれなかった。
私はそばに横たわるカシスを見つめた。
うつ伏せになって裸の床に横たわる彼の姿が、今日はいつもより一層痛ましく見えた。
私はしばらくその姿を見つめた後、カシスに少し近づく。
そして彼の頭を自分の膝の上に置いた。
薄い布越しに重さがじんわりと伝わってきた。
それでも、床にそのまま横たわるよりは、私の膝に頭を預ける方が少しは快適だろう。
これがどうしようもないことだと分かっていても、先ほどラント・アグリチェに殴られるカシスを傍観していたことが、なんだか申し訳なく思えてしまう。
…いや、実際その通りだ。
攻撃されるカシスを見守る間、アグリチェで暮らしていたせいで一時的に麻痺していた私の良心が、じわじわと痛み出していた。
また、こんなふうにカシスが傷ついているのを見ると、少しだけ柔らかい気持ちになる。
ペデリアンでは、彼はみんなに愛され、尊敬される誇らしい青年貴族だったはずだ。
誰もが、彼には明るい未来が広がっていると信じて疑わなかっただろう。
今このまま廊下に戻れば、長い人生で死ぬ運命にある人をもう一人目撃することになるだろう。
「死にたくないんだけど……」
それなら、まずカシスを助けなければならない。
ただし、彼をアグリチェから脱出させるのに失敗してしまった場合は……。
うん、その時はジェレミーを説得するしかないな。
後でシルビアを拉致しないように。
いや、最初からジェレミーとシルビアが出会わない方が良い可能性もあった。
もちろん、これは後に物事がうまくいかない時に新しい計画を立てればいい問題だが。
・
・
・
再びこんなことを考えながら、私は無意識に手を動かしていた。
いつの間にか、カシスの頭をジェレミーにするみたいに軽く撫でていた。
これをしていると、妙に落ち着いた気分になっている自分に気づく。
とりあえずカシスを自分の空間に入れたら、気持ちが少し楽になった。
これでカシスが本当に自分の手の中に収まったように感じた。
兄弟同士でいたずらを共有することもあったが、所有欲が強いサルロやジェレミーのような場合には、そんな趣味は持ち合わせていなかった。
だから私も適当にその方法で境界線を引けばいいだろう。
そうすれば、地下牢にいるときよりもずっと安全にカシスをそばに置くことができる。
もちろん、ラント・アグリチェはカシスが私のそばで平穏に過ごすことを望んではいないだろうから、ひとまず一緒にいる姿をどう見せるかは少し注意を払う必要があった。
そう考えながら、私はふと奇妙な感覚を抱き視線を下げた。
私の手を受けているカシスは、まだ目を閉じたままだ。
私が触れたせいか、乱れた髪が彼の額を覆っているのが見えた。
「でもおかしいな。」
私も知らず小声でつぶやいた。
手のひらから感じられる触感に、ふと疑念が湧いたからだ。
「誰かが洗ってくれたにしても、この髪がどうしてこんなに柔らかいんだ?」
私の手に触れているカシスの髪は、ジェレミーに負けないくらい非常に柔らかかった。
むしろ、さらに滑らかで驚くほどだ。
まるで人のように滑らかな感触がして、驚きさえ覚えた。
しかし、カシスはアグリチェで自由に気ままな生活を送るジェレミーとは違い、地下牢で数日間も苛酷な環境に閉じ込められていた人物だ。
その厳しい環境では、清潔さを保つことも難しく、まともに食事も睡眠もできないまま、ただ虐待に耐え続けるしかなかったことは、私もよく分かっている。
その証拠に、カシスの体は今も血にまみれたままだった。
私が触れている髪にも赤い血痕が残っている。
そう考えると、誰かが彼を洗ったはずもない……。
さっき私がカシスに引き込まれるような親近感を抱いた理由も、それと似た感覚だったのだろう。
「匂いもしない。」
そう考えると、これは単に今だけの話ではなく、地下牢で彼と出会った当初からそうだった気がする。
そんな独り言を呟いた瞬間、私の手の下でカシスの顧客がわずかに動いたような気配を感じた。
それは非常に小さな動きだ。
もし彼と自分の体が密接していない状況であれば、気づけなかっただろう。
その瞬間、不意に通り過ぎた考えに、自分も思わず目を凝らした。
……まさか、この人、今目を覚ましているのか?
普通、意識を失ったふりをしている人は、どんなに努力しても、その気配を完全に消し去ることは難しい。
特に、こんなに体を密着させるほど近くにいる場合はなおさらだ。
意識がある人とない人は、呼吸のリズムからして違う。
しかし、カシスはそのような怪しい部分が一切なく、当然、本当に気を失っていると思っていたのだが。
それでも、彼は相変わらず微動だにせず、穏やかな呼吸音を立てながら、目を閉じて静かに横たわっている。
しばらくカシスを観察してみたが、時間が過ぎても変わらないようだった。
だから私は戸惑った。
もしカシスが意識を取り戻しているのだとしたら、ここまで動揺を見せないことができるだろうか。
実際、彼が本当に深く眠っている最中でなければ、動くこともあり得るのだ。
それでは、単に私の勘違いだったのだろうか?
それでも私は完全に疑念を捨てきれず、カシスの顔をじっと見下ろした。
ふむ。
それでも、念のために万が一の可能性を考えて、水をかける作業でも始めた方がいいのだろうか。
「……意識のない人にこんな話をするなんて、少し馬鹿げているけど。」
私は再び口を開き、独り言のように低い声で話しかけた。
「さっき助けられなくてごめん。」
もしカシスが本当に危険な状況にあるのだとしたら、それでも構わないし、ただ危険なふりをしているだけなのだとしたら、それもそれでいい。
「でも、その場を離れることはできなかった。」
もちろん、今、私が言っていることが彼にとってどれほどくだらないことかは理解している。
「でも、これからはそんなことはないよ。今やあなたは私のものになったのだから、他の誰にも触れさせない。」
この屋敷で名前というのは考え以上に重要だった。
しかし、今からはラント・アグリチェであろうと、私の大切な所有物となったカシスを好き勝手にはさせられなかった。
私は再びカシスの頭を優しく撫でた。
「私が必ずここから連れ出してあげる。」
それはカシスに言った言葉というより、自分自身への決意に近いものだ。
果たして私はこの人を無事にアグリチェから逃がすことができるのだろうか?
カシスに出会ってから何度も繰り返し自問してきたその問いが、再び頭の中に浮かんだ。
もちろん、その答えを知る者は誰もいなかった。
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