こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
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11話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 犬と主人④
一方、ロクサナが疑ったように、その時カシスは意識を完全には失っていなかった。
もっと正確に言うと、最初から気絶のような状態ではなかった。
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「靴が汚れたな。」
カシスの所属をロクサナの言葉を信じて認めた後、ラント・アグリチェは近くにいた部下を呼んだ。
「拭け。」
「はい、ご主人様。」
すぐに駆け寄った男が無言でひざまずき、血まみれのラント・アグリチェの靴を布で拭いた。
その姿は、まるで卑屈ではなく、よく訓練された奴隷のようだった。
床に倒れているカシスは、不快感を抱きながらその様子を見ていた。
だが、ラント・アグリチェが部屋を出た後、苦痛に耐えかねて意識を失ったふりを続けた。
「ロクサナお嬢様、おもちゃの処理はどうなさいますか?」
「私の所有物の空き部屋に連れて行け。」
聞き慣れた声が耳元で響くやいなや、すぐに二人の男がカシスの両腕を掴んで引きずり始めた。
カシスは体から力を抜き、気を失ったかのように装った。
「今回のおもちゃは一体何者だ?ご主人様が自ら手を下して、こんなに酷く叩きのめしたのか?」
最初にいた場所から少し離れたところで、カシスの左側にいた男が興味津々といった様子で声を潜めて尋ねた。
その言葉からすると、ラント・アグリチェが今回のように自ら狩りをしに出てきたことは非常に珍しい出来事のようだった。
右側の男が肩をすくめながら答えた。
「気にするな。俺たちみたいな人間は深く関わらない方がいい。どうせアグリチェに捕まった時点で、ここから生きて出られるやつなんていないんだから。」
そう言うと、先ほど話しかけた男は気まずそうに沈黙した。
カシスが気絶していると鉄壁のように信じているのか、二人は彼にそれ以上注意を払うことはなかった。
カシスはそのまま意識を失ったふりをしながら、これまでの場所と現在に至るまでの位置を把握した。
これから彼が移動する場所がどこなのか、そしてこの屋敷の構造がどうなっているのかを事前に知る必要があった。
もし今チャンスがあるならば、多少の危険を冒してでも脱出を試みるつもりだ。
しかし、カシスは葛藤せざるを得なかった。
負傷している状況でも、今そばにいる男たち程度を倒すのは難しいことではない。
しかし、その後、適切な出口を見つけて逃げられるかどうかは確信が持てなかった。
さらに、視力がまだ完全には回復していない状態であるため、確実性に欠けていた。
いっそ酒ではなく毒であれば、この回復はもっと早かったかもしれない。
もし今この状況で行動を起こした場合、屋敷を出る前に百回中百回捕まることになるのは目に見えていた。
カシスは計画の無謀さを悟ったが、このような機会を無駄にするのは悔しい気持ちでもあった。
二度と同じ機会があるとは限らないため、簡単に行動を起こす決心はできなかった。
「そういえば、ロクサナお嬢様が所有物としておもちゃを手に入れるのは今回が初めてだろう?」
「たぶん、歴代のおもちゃの中で最も幸運な奴だろうな。他の者なら、お嬢様の所有物として扱われたら、数日以内に解体されて犬の餌にされていただろうに。」
そんな会話が耳に入る中で、カシスはふと聞き覚えのある名前に気づいた。
ロクサナ・アグリチェ。
地下牢にいた少女の正体がラント・アグリチェの娘だと知ったとき、カシスは少し驚いたことを思い出した。
しかし、それを知った後は、それまでの疑問がある程度解消された。
裏切られたという感覚もなかった。
それどころか、納得がいくと思える部分もある。
それは、信頼を共有していた関係だからこそ可能だったことであり、むしろ霧が晴れるように視界が開けた気がした。
そう、彼に近づいてくる者の正体を知ることができず、終わりのない疑念を抱かなければならなかった以前よりも、はるかに気が楽になった。
もちろん、その後も別の疑念が湧くことはあったが。
少女は純粋な好意だと言ったが、カシスはそれをそのまま信じるほど単純でも、無邪気でもなかった。
「失望されないように、私がしっかり教育します。」
「あなたがここから無事に抜け出すまで、私が守ってあげます。」
そのどちらが本当の意図なのかは、ロクサナだけが知っていることだった。
その時、前方から他の人の気配が感じられた。
カシスは再び目を閉じ、静かに意識を集中させた。
「あっ、こんにちは、マダム。」
カシスの腕を掴んでいた使用人たちは、急に身を正して緊張した様子で挨拶をした。
マダムだと?
予想外の人物の登場に、カシスはわずかに眉をひそめた。
そして、アグリチェが非常に多くの家族を抱えていると聞いたことを思い出した。
フェデリアン家の夫人が一人だけであるのに対し、ラント・アグリチェが妻として迎え入れた女性は十人以上にもなるという話を耳にした記憶がある。
今、カシスの目の前に現れたのは、その中の一人であるようだった。
「その子は……まさか死んでしまったの?」
そう言ったのは、アグリチェの一員であるとは信じ難いほど弱々しい印象を漂わせる声だった。
カシスの耳を刺激するその声が微妙に震えていたため、なおさらそう感じたのかもしれない。
彼女は意識を失ったふりをしているカシスを見て、死体と誤解したようだった。
しかし、今のカシスは死体のように見えるどころか、極度に疲れ果てた状態であった。
少し前にラント・アグリチェに会った影響もあったが、血まみれの状態はその全てを物語っていた。
「いいえ。ただ気を失っているだけです。ところで、本来ならばご滞在中のはずのマダムが、どうしてこちらにいらっしゃったのですか?ロクサナお嬢様をお探しに?」
使用人たちはカシスの状態を詳しく説明することなく話を濁した。
目の前の女性にカシスの姿を見せることをためらっているようにも見えた。
さっき女性が見せた反応や使用人たちの態度から推測すると、彼女は血を見ることに慣れていない人物であるようだ。
だが、それよりも今「ロクサナ」と言ったのではないか?
カシスは使用人の口から漏れたその名前を思い返した。
ということは、この女性はロクサナの母親なのだろうか?
「使用人が『おもちゃ』を手に入れたと聞きましたが、私にも見せてもらえますか?」
「こちらがまさに、ロクサナお嬢様のおもちゃでございます。」
「この子が?」
おもちゃだなんて――その言葉を改めて聞くと、やはり不愉快な響きだった。
女性は少し驚いたように声を上げた。
まさか目の前にいる彼がロクサナのおもちゃになったとは。
「では、まさかこの子をこんな状態にしたのがロクサナお嬢様なのですか?」
彼女は信じられないというように問い返した。
「いいえ。これはロクサナお嬢様ではなく、ご主人様が……。」
その返答に、女性は短く息をのんだ。
先ほどまで感じられた微妙な緊張感がゆっくりと霧散し、やがて軽い足音がカシスの方へ近づいてきた。
「マダム!」
カシスを掴んでいた使用人たちは驚いて女性を呼び止めた。
彼女が突然カシスに手を伸ばしたからだ。
カシスも顔に触れた柔らかな手の感触に驚いて、反射的に体をびくっと動かしてしまった。
女性は倒れていたカシスの首を慎重に支え、そっと持ち上げた。
しかし、直後に彼女は突然その動きを止めた。
「まさか……。」
独り言のような小さなつぶやきが空気中に漂った。
当然、カシスには彼女の言葉の意味がわからなかった。
状況から感じられるぎこちない視線に、カシスはこれまでとは少し異なる意味で、この状況に不快感を覚えた。
「マダム、お手が汚れてしまいます。」
そばにいた使用人たちは、カシスよりもさらに不安げな様子で女性を説得した。
女性はその声に応じて、ようやく正気を取り戻したようだった。
「あ……そうね、少し妙な声がしたように感じたの。」
ようやく、カシスの顔に触れていた彼女の手が離れた。
「治療は?まさかこのまま放置するつもりではないでしょうね?」
「ロクサナお嬢様が医師を呼ぶよう、別途命じておられます。」
「それなら、早く中に連れて行って休ませた方がいいわね。」
その後、女性は再びカシスを慎重に見下ろしてからその場を去った。
ロクサナのおもちゃとなった彼を残して。
・
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・
その後、使用人たちがカシスを連れて行ったのは、彼らが立っていた場所のすぐ隣の部屋だった。
まさか目的地がすぐ隣だとは思わなかったため、カシスは表情を変えることなく、そっと目を細めて観察するしかなかった。
どうやら女性はカシスに会うために、ロクサナのおもちゃを置く予定の部屋の近くで待っていたようだ。
結局、カシスは脱出のチャンスを次の機会に持ち越すことにした。
その代わりに、彼はほんの少しだけ目を開け、周囲をそっと観察した。
それでも彼の視力はまだぼやけていた。
しかし、部屋の位置やドアの施錠具などを確認するには十分だった。
「うわ、これは重いな。」
使用人たちはカシスを床にぞんざいに投げ捨てた。
「なんだよこれ、完全に死体じゃないか?」
「息はしているから、早く治療してもらえ。」
その後、本当に医師がやってきた。医師はカシスの状態を診察した。
治療中、カシスを運んできた使用人たちは少し前に起きた出来事について話し始めた。
「4番目のマダムのことだよ。さっき『アシル様』の名前が出たの、聞いたか?」
「ああ、私も聞いたよ。」
「この子がアシル様に似てるか?全然似てないように思えるけど。」
「そうだよな。ロクサナお嬢様もそうだし、マダムもなぜこんなことに興味を持たれたのか分からないけど、二人には似てるように見えたのか?」
彼らの会話を聞いて、カシスも北都で起きたことを思い出した。
ロクサナの母親だと思われる女性が彼の顔を見て、誰かを思い出したようだ。
その後、独り言で呟いた「アシル」がその人の名前だったのか。
「アシル様だと?アシルという人が、さっき会った女性の息子だったということか。」
「こうして見ると、少し色が薄いところが似ている気もするけど、それ以外はよく分からない。」
「アシル様が亡くなられたとき、この子と同じくらいの年齢だったんだってさ。」
「そうじゃないか?もしかすると、この子がこんな役割を果たしているのは、アシル様を思い出させたからかもしれない。」
「まあ、そういうこともあり得るね。」
とはいえ、そのアシルという人はすでに亡くなっていると言われている。
二人の使用人は気まずい表情を残しながら話を終えた。
治療が一通り終わると、彼らはカシスを監禁するための枷を装着させた。
その後、足音が徐々に遠ざかり、ついには完全に聞こえなくなった。
「……。」
完全に一人になったとき、カシスは静かに目を開けた。
外から聞こえていた足音が完全に消えたことを確認した。
カシスは床に横たわったまま周囲を観察する。
以前まで彼がいた地下牢とは比べ物にならないほど清潔で広々とした空間だった。
しかし、目立つ家具といえば、壁際に置かれた一つのベッドだけで、部屋には窓もなかった。
外の光がわずかに差し込むだけで、景色は陰鬱で荒涼としていたが、それを除けば、ここは普通の部屋のように見える。
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