ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜【１２８話】ネタバレ

「それはダメです」

当然、ダンテは顔をこわばらせて強く反論した。

「まだ何の証拠もないことではないですか。ベルティウムがそのような一方的な要求に従う理由はありません」

「すでに君の首長の口を通じて証言されたのに否定するのか？」

「それは・・・、うちの首長が記憶を混同されたものです」

言い訳だと分かっていて吐いた言葉だが、他に言うことがなかったのだ。

「記憶の混同か。ベルティウムの首長にそんな病気があったとはね」

カシスの顔に冷笑と嘲笑が半々と混じった微笑が浮かぶ。

ノエルは再び状況を把握できずにカッとなるが、ダンテが彼を阻止した。

ドーン！

まさにその瞬間だった。

これまでの騒音とはっきり区分される爆発音がベルティウム全体を覆う。

地面を揺るがすほどの巨大な轟音。

本館建物の裏手から、窪んだ土埃が起きた。

「急に何だ！」

「一体何が！？」

ノエルとダンテは酷く動揺する。

最初は制圧された離れの人たちが再び暴動を起こし、ベルティウムを壊そうとしていると考えた。

しかし、稲妻のような悟りがダンテの脳裏を掠める。

鋭い目つきがカシスの顔に飛んだ。

「もしかして同行したお連れ様がいらっしゃいますか？」

その質問にカシスが淡々と反問する。

「一人いるが、どうしてかな？」

「僭越ながら、今彼はどこにいらっしゃるのですか？」

「ここにいますが？」

しかし、ダンテが話を終えるや否や待っていたかのように大きな声が耳元に響いた。

「状況を見ると、長く滞在する雰囲気ではないようなので、帰る準備をしていました」

イシドールの言葉にカシスが頷く。

それを聞いてダンテは顔をしかめた。

またもや雷のような音が空気を引き裂きながら響いた。

爆発は同時多発的だ。

ロクサナの考えだと、これはグリセルダの作品のようだ。

その間に、足を運んだカシスが血を流しているニックスを持ち上げる。

ノエルとダンテが止める隙もなかった。

「私たちは帰ろう」

ニックスを肩に担いだカシスが、ロクサナの方を振り返って言った。

「ちょっと待て！誰が勝手にルナとニックスを連れて行っていいと言っている！？」

ノエルの瞳に真っ青な眼光が立ち込める。

彼の後ろに待機していた戦闘人形が攻撃態勢を整え始めた。

「あっちだ！」

その時、懸念していたことが起きてしまう。

先ほどの爆発で隙ができたのか、拘束していた後園の人たちが防衛線を突破したのだ。

「ノエル！タダじゃすまないぞ！」

「私たちをこのように扱うなんて！」

「ニックスもいるぞ！」

ダンテは気が狂いそうな気分になる。

ノエルも深刻さを感じたのか、顔を真っ青にしていた。

ノエルは、まるで狂った雄牛の群れのように走ってくる人々、カシスの肩に背負われたニックスを揺れる目で交互に眺めた。

「状況が状況だから見送りは難しそうだね。ユグドラシルで会うことにしよう」

カシスはそう言って振り返る。

これ以上ここにいる理由も、それだけの時間的余裕もなかった。

「お待ちください！」

ダンテは急いで彼を止めようとする。

ロクサナもこれ以上ベルティウムに用事がなかったので躊躇なく背を向けた。

ノエルは歯を食いしばって戦闘人形たちに攻撃を命令する。

「彼らを止めろ！」

しかし、人形たちが遮ったのは、いつの間にか目の前まで接近していた後園の人々の方だ。

「ノエル様！彼らを本当にこのまま行かせるのですか！？」

ダンテも攻撃する人々を阻み、隣にいるノエルに向かって信じられないように叫んだ。

「じゃあ、どうしろって言うんだ！？こんな状況ではニックスまで保護できない！しかも今城壁まで崩れているじゃないか！ベルティウムを訪れた他の家門の来賓まで死んだり怪我をしたら、その責任はどうするつもりだ！」

「ですが！」

ダンテは久しぶりに常識的な判断を下したノエルに驚いた。

しかし、それはそれ、これはこれだ。

このままニックスをベルティウムの外に出すのは・・・。

バーン！

しかし、すぐにこのように時間を無駄にする余裕さえ失ってしまう。

城壁に続き、建物が壊れる音と人々の叫び声が鼓膜を裂くように鋭く押し寄せてきたのだ。

結局、ダンテもこれ以上他のことを気にする余裕がなくなってしまった。

ベルティウムを訪れた客が城門を超えるまで爆発は続く。

楽園のように美しかったベルティウムが見る影もない。

何とか暴徒たちを押さえつけたが、彼らの怒りはすでに手の施しようもなく深まった状態だ。

慌ただしい状況でも人形を送って爆発が起きた場所を捜索させたが、すでにそこには人の影一つ見つけることができなかった。

ただ背後が分からない微かな呪術の痕跡を発見しただけ。

もちろん、それがペデリアンの仕業だという証拠は見つからなかったため、ダンテは静かに怒りを沈めるしかなかった。