こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
今回は2話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
2話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- カシス・ペデリアン
「鍵を貸してくれる?」
現在に戻り、私は地下牢にいた。
階段を下りて鉄門の前に立つと、中から漏れる湿った湿気と冷気が感じられる。
「だめです。誰も中に入れないでくださいとご主人様が・・・」
「誰も?本当に?」
私の問いに歩哨に立っていた手下がぎくりとした。
私はよく考えて答えろというように、首を斜めに傾けながら、獄中生活をじっと見つめる。
私は初めて大晩餐会に招待されてから16歳の誕生日が過ぎた今までずっとそのレギュラーメンバー。
言い換えれば、アグリチェの新星であり有望株だ、ということだ。
いや、もちろん全然誇らしくはないけど。
私は悪党の有望株でもないのに、どうしてこうなったのかと聞かれたら、生き残るためにこれまですごく努力したと答える。
「ですが・・・」
玉の番人がためらった。
もう少しで越えてくることみたいだけど。
じゃあ、脅迫するか、懐柔するか?
私はしばらく悩みながら彼をじっと見つめた。
すると、徐々に門番の顔が赤く燃え始める。
いや、ちょっと待って。
私はまだ色仕掛けをしてもいないのに、もうこんなことでどうするの?
この人って、鉄の塊となる芽が濃厚な人だね?
もちろん、まだ下の中の下だからか、年齢が10代後半くらいでかなり若く見えるんですけど。
どうやら、これまで私が地下監獄側に来ることがなくて、私に全く免疫がなかったようだった。
まあ、私はよかった。
門番が慌てている間に彼の手から鍵を取り出す。
「ちょっと顔だけ見てくるね。そしたらばれないからお父様にわざわざ報告する必要もないじゃん」
わざと優しくなだめるような口調でささやきながら一度笑ってやると、状況は終了した。
門番は「何も言わないから、旱く入ってください」と言って、あわててドアまで開けてくれた。
ふーん。見たところこの人もこの家で長く働くのはまだ旱いね。
私は冷淡に地下牢に入る。
完全に中に入ると、さっきよりはっきりとした冷気が肌に染み込んだ。
さらに、地下牢では不気味な悪臭まで放っている。
もっとも、ここは代々拉致監禁や拷問を行った場所だったのだから、それも当然のこと。
私は顔を引き締めてもう少し中に入った。
しばらくして鉄格子の中に閉じ込められた人の姿が覗野に入ってきた。
先程、門番から奪い取った鍵で門を開け、その中に入る。
キィッ。
さびた鉄の扉が甲高い音を立てて開いた。
さっき拉致されてきた少年は、依然として四肢が縛られたまま壁に寄りかかっていた。
峠が斜め下に落ちていて、青みがかった紳秘的な銀髪が一番先に目につく。
さっきうちの家族を睨んだ殺気立った金の瞳は今閉じていた。
ああしているのを見ると意識を失ったようだが。
私は戸口に立ち、静かに彼を呼んだ。
「すみません」
ほら、ヒロインのお兄さん、目を開けてください。
「カシス・ぺデリアン」
しかし、私が名前を呼んでも少年はびくともしなかった。
私は静かに彼を見下ろし、ドアのところで止まっていた足を動かす。
間近で見た少年は思ったよりひどい格好をしていた。
拘束口に擦れて深く開いた手首と足首もそうで、初めて彼を見た時にはなかった傷まで体に新しくできているのが目についた。
従順になるまで閉じ込めておけと言っていたのに、その間に新しい鞭打ちまでされたんだな。
それでも傷を見ると、ガラスが剌さったものではなく、一般の鞭を使ったようだが、それは幸いだった。
まだ手足が丈夫なのを見ると、この少年の処遇を今すぐ決めるつもりはないようだ。
今までラント・アグリチェが連れてきた人たちは、このように状態が万全ではなかったからだ。
もちろん今、この少年の姿を見て「万全だ」と評するのは荒唐無稽なことかも知らなかった。
しかし、アグリチェの基準によると、これは非常に良好な状態。
それなら、私もひとまず安心したと言える。
この少年がこのまま死んでしまえば、この家の一員である私も後で無事でいることはできないだろうから。
私は胸に隠しておいた薬を取り出した。
そして、斜めに傾いている少年の頭をつかんで持ち上げた。
う一ん、やっばりハンサムだね。
まさに貴公子のように見える外見。
綺麗な顔に傷の跡があるので、かなり被虐に見えたりもした。
なんだかいじめてあげたい印象というか。
さっき目を大きく開けて睨んだ時は勢いがすごかったのにね。
このように静かに目を閉じているの見ると、気が抜けるほど綺麗でおとなしいようだ。
年は私より少し上のようだった。
私の情報によるなら現在17歳だろう。
「困ったな」
もし他の所で見たら少年の外貌に純粋に感動しただろうが、今の私は多少深刻だった。
これはかなりシャーロット好みなんだけど。
シャーロットはさっき、この少年を見て、「一緒に遊びたい」とつぶやいた2人の弟妹のうちの1人。
私より3歳年下の妹だが、早くも見込みのない立派な悪党の有望株だった。
まだ幼いくせにサディスティックな性格を持っていて、父親が連れてきたおもちゃと遊ぶのが趣味でもある。
私は眉間を縮めたまま少年の顔をちらりと見て、すぐあごをつかんで口を開いた。
うん、まずは薬から飲ませよう。
そうするうちに血がにじんでいる唇に触れたのか、少年がぎくりと顔をしかめた。
ひょっとしたら目が覚めるかと思ってしばらく行動を止める。
しかし、少年は静かなまま。
そうだね、これくらいはまあ。
私たちも月例評価の度につけっぱなしの傷なんだけど。
私は少し無感覚に思って彼の口の中に錠剤を入れた。
むしろ、こうやって気絶したのが良かった気もするし。
もし目が覚めていたら、私が与える薬をおとなしく受け取っていたはずがないから。
「うん」
ちょうどその時、小さなうめき声が少年から漏れた。
あっ、まさかさっきは釣りだったかな。
今回は本当に目が覚めそうだけど?
私の考えが正しかった。
少年のまぷたが細かく震えた直後、金色の瞳が姿を現す。
焦点のない目が、ばちばち、ゆっくりと閉じたり開いたりした。
やれやれ,ひどい目にあう。
それでももう少し気絶していると思ったのに。
次の瞬間、少年と目が合った。
「あ、こんにちは」
思わず挨拶した。
当然のことながら、今は「のんびりとさよなら」を言っている場合ではない。
私の前にいる少年はまだ状況把握ができていないようだった。
しかし、すぐに焦点がぽやけていた彼の目にキラリと光が入ってきた。
彼は自分の目の前に立ってる私の存在にようやく気づいた様子だった。
それに口の中に薬があるという事実も知ったようだ。
「ム、スン・・・、ウプ!」
ゆっくり休んで荒れた声が強制的に切れた。
私が手で少年の口を喜いだからだ。
ほとんど反射的な行動。
その瞬間、少年の目から火花が散った。
彼は私を引き離そうと必死にもがき始める。
ガタンガタン!
おい、まだかなり元気だね。
まさかここまで元気が残っているとは思ってもいなかったので、少し驚いた。
それでも拘束口に連結された鎖が壁にしっかりと固定されていて、少年の動きが私にあまり大きな影響を及ぽさなかった。
「ゥウウウ!」
「吐き出さないで。これ解毒剤だから」
「ぅぅっ!」
「私が今あなたを殺そうとするのなら、あえて毒をどうして使うのよ」
しかし、ずっと狂ったようにもがいているのを見ると、どうも私の言うことを聞くような状態ではないようだった。
もっとも、当然か。
敵の巣窟に強制的に拉致されて入ってきたうえに、気絶している間に薬まで飲ませようとするが、おとなしくしているのがもっとおかしいことではあった。
それでも私の立場では、こいつがこのようにずっともがいているから邪魔するのが事実だった。
薬が全部溶けるまで待てばいいのに、これはちょっと面倒だね。
「ごめん。ずっとじたばたしているから、私もしょうがない」
私は少年の口をふさぎ、そのまま腕を押し、彼の首を後ろに振った。
「うっ、カッ!」
不意の奇襲には仕方がなかったのか、少年が私のあげた薬を無理やり飲み込んだ。
う一ん、しかし、このまま手を離せば、こいつが薬を吐き出す可能性が非常に大きい。
じやあ、仕方ないね。
気絶しなさい。
「ゲホッ!ウッ、これはどういうこと・・・」
「お兄さん、もう一度ごめんなさい」
バァッ!
「<ぅ!」
私は事前に謝罪した後、拳で彼のみぞおちを殴った。
急所を攻撃されると、少年は断末魔の声を上げた後、意識を失って再びぐったりする。
さっき気絶していたことより一層力がなさそうな姿だ。
あれ、少し強く打ったのか。
私は少しきまり悪そうな気持ちで彼から手を引く。
アグリチェの子供たちはみんな基本的な体術を身につけるので、私と同年代の少年を一人ぐらい制圧するのは私にとってあまり難しいことではなかった。
まして、このように相手の手足が縛られている状況ではなおさら。
その上、彼は毒を盛られた状態。
それでも、あまりにもきびきびしているので、この程度はしなければならないと思ったが、そうではなかったのか。
まあ、どうせもうやらかしたことだから仕方がないことではある。
私は冷や汗を流しながら気絶した少年を残して地下監獄を抜け出した。
翌日、再び地下監獄を訪れた。
もともと何でも最初が一番難しく、2番目からはもっと簡単なものだ。
ところが、私は最初からこの監獄に出入りするのが簡単だったので、2番目は見ることもなかった。
番人を困らせる必要もなく、彼は私の顔を見るやいなやドアを開けてくれた。
私はその中に足を踏み入れる直前に、彼に向かって尋ねる。
「昨日、私が行った後、私以外の人がこの中に入ってきたことある?ジェレミーとか、それともシャーロットとか。あるいは他の人でも」
「いいえ、ご主人様から、誰も中に入れないようにとのことでしたので」
「でも、私は入ったじゃん」
すれ違うように詠んだ私の言葉に彼はびくっとした。
私はこっそりと彼の顔を見て、いつ彼を観察したのかというように目尻を折って、にやりと笑う。
「私だけ特別に入れてくれたんだね」
私以外の人がこの中に入らなかったという話は事実のようだった。
「お名前は?」
「え?」
「あなた。名前は何?」
ずっと年下の私が堂々とタメロを使っているのに、彼は少しの違和感や不快感も感じない人のようにぽんやりと顔を赤らめた。
「ヨ、ヨアンです」
「うん、ありがとう、ヨアン。もし私のせいで困ったことが起きないように今日もちょっと顔だけ見てくるよ」
「どういたしまして!」
たかが名前を一度呼んであげて、ちょっと笑ってあげただけなのに、彼は酒に酔った人のように耳たぶまで赤くしてしどろもどろだった。
「私こそ噂で聞いていたロクサナさんをこのように直接お会いできて光栄ですし、またこのように小さな助けになることができて嬉しい・・・」
私は彼の話を聞き流した後、刑務所に入る。
う一ん、相変わらず気分が悪いところだ。
空気も不快だし。
なるべく来たくないんだけど。
でも、カシス・ぺデリアンがここにいるから仕方ないね。
キィッ。
今日も鉄門では耳にたこができる音がした。
少なくとも100年は油を塗っていないような恐ろしい音。
監獄はみんなこうなのか?
昔から小説や映画、あるいはドラマなどで見ると、必ずこういう場所ではドアから鳥肌が立つような音がする。
空気が湿っているからかな。
そんな考えをして中に入って行く途中、ふと監獄の中にいた少年と目が合った。
燃える太陽のような強烈な金色の瞳が一寸の誤差もなく私を見つめている。
「ああ、今日は起きていたね」
昨日の気絶した姿が脳裏に残っていたせいだろうか?
まさか、もうこんなに目を開けているとは思えず、一瞬戸惑った。
彼は息を殺したまま静かに私を注視し、私の声を聞いてぎくりと眉をひそめた。
「お前・・・」
まもなく彼は私をにらみつけて口を開いた。
昨日、彼を訪ねてきた人が私だという事実に今になって気づいた様子だった。
昨日は夢うつつで私の顔をまともに見られなかったのかな?
私が鉄格子の中に入ると、彼は警戒しながら尋ねた。
「昨日私に何を食べさせた」
依然として、声が大きくかすれていた。
その一方で、彼はすぐにでも私を切り倒すような冷ややかな目つきをしている。
手足も依然として縛られているくせに勇敢というべきか。
気になるから答えてあげようか?
「解毒剤。麻痺毒にやられてきたじゃないか」
私は淡々とした口調で話を続ける。
「それをそのままにしておけば、少なくとも5日間は続く。その時になると筋肉痛がすごいのよ」
昨日以降、これ以上当たったところはないようだった。
大まかに確認はしたが、他の傷がこれ以上増えてはいないようだったから。
鞭打たれた傷を治療してくれるのはあまりにも目立つことなので、そこまでするつもりは私もない
「今その言葉を信じろというのか?」
「昨日より体が大分楽になったんじゃないの?こんなに元気な精紳で私と会話もしているじゃない」
私の言葉に彼は固く口をつぐんだ。
当然、私をすぐに信じているような気がしなかった。
私にもっと聞きたいことがあるようだったが、彼はかなり慎重な性格なのか、簡単に口を開かない。
「それが解毒剤だったら、何を企んで私に薬をくれた?」
「別に理由はないわ」
彼の目に一瞬混乱がよぎった。
もちろんそれは刹那の瞬間であっただけで、すぐに彼はまた冷淡な顔で私を見て唇を甘やかした。
「お前・・・、一体誰なんだ?」
低い声が床をよじ登ってくる。
しかし、他人の正体を知りたければ、自己紹介からするのが人情の常ではないか?
「カシス・ペデリアン」
続いて、私の口から流れた名前に少年がぎくりとした。
「あなたの名前で合ってる?」
それでも、この時まではほんの少しでも期待していた。
ひょっとしてこの少年が私の予想とは違う人物ではないかと。
しかし、すぐに鼓膜に食い込んだ殺気のこもった声に、私は未練を捨てざるを得なかった。
「今さらどういう言い逃れだ?私が誰なのか分かっていながら、卑劣な手を使ってここまで引っ張ってきておいて」
あ、ちぇっ。やっばりそうだね。
それでも、万が一に賭けてみたかったのに。
「もう君の正体を明らかにしろ。あなたも汚いアグリチェなのか?」
やばい、ここがアグリチェなのも知ってるんだね。
確かに、私の父が別に密かに正体を隠して犯罪を犯す性格ではないよね。
むしろ目の前で堂々と相手を卑劣にあざ笑うだろう。
私はその場に立ち、少し落ち着かない目で目の前の少年を見て、低いため息をついた。
「あの、ところで私ずっと気になっていたことがあるんだけど。
「お前の正体は何かと聞いた。返事が先だ」
私はカシス・ぺデリアンの言葉を無視して、昨日からずっと気になっていたことを尋ねた。
「あなた、今目が見えないでしょう?」
その直後、地下牢の中に沈黙が漂った。
カシス・ぺデリアンは私の言葉に動揺を示さなかった。
しかし、静かに私を見つめる彼の目を見て、私は答えを見つける。
「そうなんだ、見えないの」
今私が歩いている間にも、彼は正直に私の顔を見ていた。
さっきの鉄格子のドアを開けてここに足を踏み入れたばかりの頃から、カシスはとても自然に覗線で私を追いかけた。
だから、私もずっと曖昧だと確信できなかったのだ。
「これはいくつに見える?」
「片付けろ」
私はカシスの前に着くと、目の前に手を上げてぶんぶん振った。
もちろん彼は私に調子を合わせてくれなかった。
しかし、私はすでに彼の態度から確信していた。
なんだか私を見てもあまりにも無反応だったから。
そう、目がちゃんと見えていたら、私をこんな目の前に見ても瞳孔の揺れ一つないはずがなかった。
少なくとも目が合った最初の瞬間くらいは動揺を見せるのが正しかった。
今まで私の顔を見て少しも驚かなかった人は一人もいなかったから。
もちろん私は彼が敵地で見るようになった人だったので警戒して嫌がるのが当然だろうが、それはこれとは別のことだった。
もちろん、誰かが聞いたら末期だと思うこともできた。
しかし、これは非常に妥当な結論だ。
やはりカシスは私の話がとんな意味なのか気づいてない様子。
そう、目が見えなければそういうこともある。
その上、少し前に彼が私に「あなたもアグリチェの手下か」と尋ねたことが決定的だった。
彼を拉致するときは麻痺の毒だけではなく、視力を奪う手段まで使ったと思う。
今、カシスが手足につけているのも、ただの魔物ではなく、大魔物用の拘束具だ。
大魔物用拘束具は一般拘束具に魔物の筋まで加工して入れたもので、その強度がはるかに優れている。
そのようなことを見れば、この少年を虜にすることがかなり難しかったようだ。
昨日、私と私の家族を眠みつけるような目つきに驚くほどだったが、その時もただ気配で位置を把握しただけだったのか。
私は彼の体を少し上下に見回す。
特に不穏な目的があるからではなく、彼の目に関連した兆候を探すため。
とうとう私の目にある痕跡が映った。
私は躊躇うことなく手を伸ばして破れたシャツの隙間を開けた。
私の手が触れた瞬閻、カシスが眉間を狭めてびくっとする。
「これは毒ではなく呪術ね。一時的な効果だから長くは続かない」
刻まれた小さな渦巻き模様を見ると、今カシスは事実上失明した状態であることが明らかだった。
それなのにこんなに堂々と振る舞うなんて・・・。
私は眉間をひそめて、目の前の彼の顔を上げる。
今回も彼は正確に私の目に合った。
近くで見たカシスは、昨日感じたよりもはっきりとな存在感を示していた。
気絶していた当時はとてもおとなしい印象だと思ったが、このように目を開けて私を見下ろしていると、彼から流れる圧迫感が相当だった。
17歳の少年らしくない大人らしい雰囲気を漂わせているからか、こんな状況でもこんなに落ち着いた態度を見せてね。
「とりあえず、目は放っておくわ」
今も恐怖や不安感を表すどころか、目つきがとても冷たく鍛えられていて、背筋に寒気が感じられるほどだった。
「どうせ2日ほどしたら少しずつ視力が戻り始めるだろうし、解呪法がややこしい呪術なので、今触れるのは非効率だから」
カシスは私の言葉の意味を理解しようとするかのようにしばらく黙っていた。
前にある自分の気配を読もうとしているのが感じられた。
「それと、どうせこんなことを言っても信じないだろうけど」
私は彼に向かって静かにつぶやいた。
「私はあなたが死ぬことを望まない」
「え・・・?」
私の話が意外だったのか彼の表情が変わる。
「じゃあ、また来るわ」
「ちょっと待て・・・!」
カシスが私を引き止めるが、私は躊躇う事なく牢屋から抜け出した。