ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜【２２５話】ネタバレ

ロクサナは顔をもたげたカシスの肩と首筋の上に浅い息づかいを吐く。

しばらくして、彼女から小さな囁きが続いた。

「カシス。私は時々、あなたがこうするたびに私の底まで全部見せてもいいような気がするわ」

その後、付け加える言葉にカシスの唇が再び開く。

「でも逆に、なんとかあなただけに隠したくて逃げたい気持ちになったりする」

「ロクサナ・・・」

「今日は何も言わないで」

ロクサナはカシスを抱きしめた腕にもう少し力を入れ、彼にもっと深く顔をもたれかかった。

「少しだけ・・・。少しだけ、このままでいて」

触れ合う体に染み込む温もりが今日に限って微かに感じられた。

カシスの腕にそっと力が入る。

結局、彼は心の中の衝動を押し戻した。

そしてロクサナが望む通りにしばらく何も言わず体温を分ける。

しばらくして余韻を残して消えたほのかな香りの中でようやく振り返った時、そこに既にロクサナはいなかった。

翌日午前、各家の首長とその家督たちが大会議場に集まった。

彼らは顔を合わせ、まもなく行われる聴聞会についてざわめき散らす。

「昨日、あの人形を見ましたか？」

「いいえ、聞いてみたら大騒ぎだったそうですが」

「私も聞いたことがあるだけで、ベルティウムの人形を直接みたのは初めてなので不思議です」

その時、アグリチェの人々が会議場のドアを開けて中に入ってきた。

先頭に立っているのは、首長のジェレミーと彼の姉ロクサナだ。

ジェレミーは姉の手を取り、彼女を丁寧にエスコートした。

彼らは今日も黒い服を着ている。

親睦会の間、家門の象徴色が入った衣装や装飾を身につけるのは普遍的なことだった。

それでジェレミーとロクサナを含め、アグリチェの人々が黒い服を着た姿も既に数えきれないほど見てきた後。

「あちらを見てください」

しかし、昨日聞いた話のせいか、今日は普段とは少し違う感想だった。

「今まで一度もそんな風に考えたことがなかったのですが・・・。なんとなく、喪服のような感じですね」

「なるほど。あんなにみんなで群れをなしているのは初めて見たからでしょうか」

「みんな笑顔のない表情をしているので、余計にそう見える気もします」

静かに後ろの席に座る他の家族とは違って、ロクサナは首長のジェレミーのすぐそばに座る。

今日の聴聞会で主要参考人として供述する予定だからだ。

昨日のことを覚えている皆がロクサナの顔に視線を集中した。

見るだけでも心臓が痺れるほど哀れな色を帯びていた顔には、もはや昨日のような感情は込められていない。

今日の彼女は大会議場のドアを開けて入ってきた時から、ずっと落ち着いた雰囲気を漂わせていた。

隣でジェレミーが彼女に囁くと、ロクサナが視線を少し下げた。

優雅な曲線を描く長いまつ毛が羽ばたくように動くと、その下にある赤い瞳にすぐ陰影がつく。

続いてロクサナの唇の先がそっと持ち上がり、ジェレミーに向かって微かに笑って見せた。

水深のある美しい顔は、それ自体で波及力が大きい。

昨日の庭でもそうだったが、彼女にあんな朧げな表情をさせた人は、それが誰でも厳罰に処せなければならないようだった。

しばらくして、まだ大会議場に到着していない家門の人々と首長たちも一人ずつ姿を現し始める。

カシス・ペデリアンは、ほぼ最後に中に入ってきた。

他のペデリアンの人々がすでに到着して定着していたことに比べれば遅い方だ。

ロクサナの席はドアから正面に見える位置だったため、すぐに彼と視線が合う。

ジェレミーと一緒に座った直後、私は会議場の中を一度見回した。

ドアを開けて室内に入るやいなや厳重な雰囲気が感じられる。

大会議場は普段解放されていない場所なので、この中に入るのは私も初めてだった。

私たちが中に入るやいなや、あらかじめ到着していた人々がヒソヒソ話を止めて視線を送ってくる。

黒い服を着たアグリチェの人々はこのように一度に集まれば、視覚的な効果は小さくないだろう。

しかもジェレミーが教育をしっかりとさせたのか、異母兄弟たちも表情管理をよくしている。

その時、大会議場のドアを開けて入ってきた時から誰よりも真剣な表情をしていたジェレミーが、こっそりと頭を傾けて私に耳打ちしてきた。

「姉ちゃん。このお菓子って今食べてもいいの？」

彼が目で指差したのは、席ごとに置かれた一口大のビスケットと飲み物。

聴聞会の間、お腹が空いたら食べるように使用人が準備しておいたものだった。

「お腹空いたの？」

「遅く起きて朝食を食べられなかったんだ」

あらまあ、気持ちとしては私の分まで食べるように渡したかったけど・・・。

私はジェレミーと真剣な会話をしているふりをして彼の話を聞き、かすかに微笑んで口を開いた。

「今は我慢して」

私の断固たる答えに、ジェレミーの眉が垂れ下がる。

けれど、彼も今はお菓子を食べている時点ではないと思ったのか、すぐ未練が残った目を上げて再び表情に重みをかけ始めた。