こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は281話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
281話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 目覚め②
「レン!」
こみ上げる感情に勝てなかったエレナがレンに飛びかかった。
この瞬間が夢ではないかと疑ってレンを逃さないように、エレナはぎゅっと抱きしめる。
「なんで今起きるの!人の心配をすべて溶かしておいて。私が・・・、私がどれだけあなたが目覚めるのを待ったのか分かる!?」
エレナの目は潤んできた。
レンを見ることができ、声を間くことができるという事実に胸がいっぱいだった。
「私に会いたかったの?」
くだらない冗談、にやにやするあの笑顔が、どうしてこんなに懐かしかったのか。
今からでもまた会える機会を与えてくれたガイア女神に感謝した。
抱擁を解いたエレナは目尻を盗んで打ち返す。
「誰が言ったんですか?」
「君の顔に書いてある」
「変なこと言わないで。私のせいでこうなったから心配になったんじゃないですか」
レンはくすくす笑った。
意識を取り戻したばかりなのか、微笑に元気がなさそうだ。
「これがなぜあなたのせいなのか?私が守ってあげたいからそうしたんだけど」
「そうだね、どうして守るんですか。あのままにしておけばよかったのに」
「それはだめだよ。同じ状況でも、私がケガした方がいいよ」
にやりと笑うレンを見るエレナの心臓がドーンと落ちる。
死んで生き返ったテーマに同じ状況が来れば、またエレナのために体を投げるという。
一つの飾り気も混ざっていない真心がエレナの胸に波紋を起こした。
こうだからだ。
前世であんなに憎んだのに、これ以上憎めない理由が。
シアンもそうだったけど、レンも過去に閉じ込めておくのにとてもありがたい人だから。
「やめてください。そうして本当に死んだらどうするつもりですか」
「それなりにいい結末じゃないか?」
「本当に何をそんな風に言うんですか。結構です。変なこと言わないで、もう休んでください」
ちょっと話を交わしたにもかかわらず、力が足りないのかレンの呼吸が不安定で荒くなった。
これまで意識がなかった間、栄養分の補充が不十分だっただけに、体力が著しく落ちたためだ。
「寝たくないんだけど、すごく眠い」
「寝てください。そうすれば早く治ります」
エレナが乱れた布団を引っ張ってきて、再び覆ってあげる時だった。
レンはそっと目を閉じたが、静かに彼女を呼んだ。
「エレナ」
「喋らないで、寝てください」
「ごめん」
突然の謝罪にエレナはじっとレンを見つめた。
主語が抜けただけに、何を謝るのかよく分からないからだ。
「何が悪いのですか?」
「あなたを、いじめたこと」
「・・・」
対話はこれ以上続かなかった。
レンの唇はこれ以上開かずに眠っているように、すやすやとした息の音だけが微弱に聞こえた。
エレナは枕元に座り、複雑な目でレンを見下ろす。
過去の人生の記憶を持つレンが存在するわけでもないが、その延長線に住んでいるエレナにとって、今の謝罪は大きな意味として感じられた。
屑のように残っている良くない記憶の残滓を消し、シアンと同じように今世で見て経験した姿だけで完全にレンを見させてくれた。
「ありがとう。ところでですね、レン」
エレナが手を伸ばして額の下に降りてきたレンの前髪を渡した。
その手がいつにも増して優しかった。
「私はすでにあなたを許していますよ」
メルは馬を納品する馬上に偽装する。
すでに十数年間利用している身分で、誰の疑いも受けずに潜入することができた。
マジェスティの一員になって以来、メルはいつもこのような煩わしさを甘受してきた。
スペンサー子爵に会う時も多様な身分で偽装したり、野心的な時刻に密かに接触して報告した。
陰で活動する情報組織員の宿命だ。
「あの話聞いた?子爵様が、ちょっとおかしくなったんだって」
「聞いたことはあるけと、本当なの?」
「さっきリンに付き添ってびっくりしたって。魂が抜けたみたいらしい」
「どうしよう。子爵様が戻ってきて、もうよかったと思ったんですけど。どこか具合が悪いのならどうしよう?」
馬の熊手をとかして、侍女たちの会話を盗み聞きするメルの表情が暗くなった。
スペンサー子爵を目撃した人たちの間で変な話が交わされた。
魂が抜けたとか、オウムのように同じ言葉だけを繰り返すとか。
スペンサー子爵に関する悪い話がメルをいらだたせ、焦らせた。
(早く、子爵様にお会いしないと)
心は先走ったが、スペンサー子爵に会うことは容易ではなかった。
なぜかスペンサー子爵の寝室と執務室の前を騎士団員たちが交代で守っているのだ。
問題は、彼らが大公家に取り込まれた副騎士団長に従う騎士だという点。
言い換えれば、邸宅内部を掌握した大公家がスペンサー子爵を監視すると見るのが正しかった。
メルはなんと3日間邸宅に滞在し、チャンスをねらった。
騎士団員の動線と交代時間を把握し、最適の潜入計画を立てて。
4日目、彼はスペンサー子爵の寝室に完璧に潜入することに成功した。
「主君、メルです」
スペンサー子爵は窓の外を見ながら執務室の椅子に座っていた。
時間が遅れた分だけ眠っていると思ったが、予想外だった。
「もっと早くお伺いするべきだったのですが、遅くなり申し訳ありません」
メルは彼に背を向けてひざまずいて、頭を床にぶつける。
スペンサー子爵が家門に帰ってきて数日も経ったのに、今になって訪ねてきた無能さを謝罪したのだ。
「それでも喜ばれるようなニュースを持ってきました。レン公子が生きています」
メルは声に力を入れて、興奮した口調で報告した。
レンが生きていることでバスタージュ家を飲み込もうとする大公家の計画は水を渡ったも同然だったからだ。
「レン・・・、レン、レン・・・」
当然喜ぶだろうという予想とは異なり、スペンサー子爵はレンの名前を繰り返しつぶやいた。
「レンは死んだ。レンはこの世にいない」
「主君?」
メルの目は激しく揺れた。
スペンサー子爵の行動で何か間違ったことを直感したのだ。
立ち上がったメルがゆっくりとスペンサー子爵に近づき、椅子を回す。
椅子に人形のように座っているスペンサー子爵を見たメルが、とても驚いた。
焦点が消えた瞳孔、魂の抜けた顔は生きているが生きているとは見られない格好だった。
「レンは死んだ。レンは死んだよ・・・」
スペンサー子爵はうっとりした顔でオウムのように同じ言葉だけをつぶやいた。
メルは無礼を甘受して彼を揺さぶり、気を引き締めさせたが、力不足だった。
「レンは死んだ。跡継ぎがいない。フランチェ大公が家門を導いてくれるように。バスタージュ家を捧げる」
「主君・・・」
メルは唇をかみしめて目をぎゅっと閉じる。
大公家に洗脳されて壊れた自分の主人の姿を見ること自体が彼に苦痛であり、不忠だったので目頭が熱くなった。
スペンサー子爵の体調は最悪だった。
体はやせ細っていて、赤く充血した目は数日間眠れず、覚醒状態であることを推察させた。
この状態なら、いつ息が切れてもおかしくない。
「私が不足して主君をこのようにさせました。この罪は復讐が終わった後、主君を訪ねて甘んじて受けます。その時までだけ生きていることを許してください」
メルは罪悪感で頭を地面にぶつける。
彼の目には熱い涙があふれた。
新興貴族の首長として帝国の歴史に一線を画す力量を持つ方を、一瞬にしてこのような格好にさせた自分の無能力さが嘆かわしい。
「フランチェ大公にバスタージュ家を・・・」
メルは歯を食いしばって振り向いた。
気持ちとしては、今すぐスペンサー子爵を連れて行って治療を受けさせたい。
しかし、そうすることはできない立場だった。
人の気配が消えた寝室に魂のないスペンサー子爵の声が空しく響き渡った。
彼の生命と魂を蝕んで夜が明けるまで。
ずっと。
レンは無事でしたが、スペンサー子爵は廃人も同然の姿に・・・。
バスタージュ家を大公家に譲ることは、もう確定事項なのでしょうか?
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