こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は310話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
310話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 師の最後
「リアブリック」
格子越しに死体のように垂れ下がっていた女性の頭がゆっくりと上がる。
以前の知的で端正な姿は見られないほど、醜悪な姿だった。
「ここに閉じ込められているのを知っていたら、もっと早く来ればよかったです」
「私をあざ笑うために来たようだね?」
リアブリックの声が大きくひび割れた。
以前の自信は見られない、ただ絶望と惨愴たる気持ちに浸っていた。
「はい、そうするために来ました」
「幼稚だね。ええ、思う存分笑って。唾でも吐いたら?そうしたくて来たんじゃないの?」
「壊れましたね」
胸をえぐったが、否定できないエレナの指摘にリアブリックが冷笑を爆発させる。
「うん、壊れたよ。ところで私だけ壊れたの?それも違うじゃん。大公家も滅びた」
自嘲的な言葉を吐き出していたリアブリックが疲れたように息を切らす。
風通しの悪い地下牢の濁った空気が彼女の肺を蝕んでいた。
「あの時、君を連れてきたらいけなかった。いや、あなたと両親を巻き込んだとき、疑わなければならなかった。せめてその時にでも」
「・・・」
リアブリックは、代役を立てるために策を講じた過去を後悔した。
防ぐ機会は多かった。
あの時のエレナは自分に服従せざるを得ない立場だったから。
「大公家を没落させたのは私だ。私だって」
彼女は今、最も恥ずべきことと哀れなことの後悔をしていた。
後悔に染まった絶望にもがいていたリアブリックが突然体を起こし、鉄格子を握り締める。
すると、大声を出して揺さぶった。
「何してるの?私はここにいるじゃん。頬でも叩いたら?そうしてこそ気が済むんじゃない?」
「・・・」
「なんでそんな風に見るんだ!ほら、私は抵抗もできない、いじめたいんじゃないの?解いて。全部解いてって!」
加虐を強要するリアブリックをエレナは何も言わずに見つめた。
エレナのその目つきは、彼女を侮辱するよりも惨めなものにする。
「いいえ、そうしたくないですね」
「え?」
「帰りましょう、卿」
エレナは冷たく背を向けた。
今のリアブリックは壊れている。
嘲笑う価値もないほど。
これだけ壊れた彼女を見ただけでも十分だった。
「相手にする価値もない」
二度と会うことはないだろう。
優越感を感じ、復讐の喜びまで満喫できるほどの価値がリアブリックに残っていないからだ。
「待って!そこに立って!」
リアブリックは格子をつかんで大声で叫んだ。
彼女を支える一本のプライドが踏みにじられた。
エレナがやられた分、自分を虐待し、苦しめてほしかった。
そういう感情が残ったということ自体がエレナが自分を認めているという意味だったからだ。
しかしエレナはそうしなかった。
リアブリックはその瞬間を耐え切れなかった。
「パンッ!」という鈍い音にエレナの頭が反射的に戻る。
「・・・」
壁に頭蓋骨が潰れるほど強く打ち込んだリアブリックの体がぐったりした。
瞳孔がぼやけて額が陥没している。
リアブリックは奇妙な笑みを浮かべた。
「今になって君が私を見る・・・」
リアブリックは最後まで言葉を続けることができなかった。
しかし、死の前でも消えない眼光はこう言っていた、死ぬその瞬間まで私を忘れるなって。
壁をつかんでいたリアブリックが倒れ、息を引き取る。
血まみれの髪と違って、彼女の目と口は不気味に笑っていた。
「あなたらしい退場ですね」
エレナは息を引き取ったリアブリックを無味乾燥な目で見下ろす。
死ぬその瞬間までエレナに敵として認められることを望んだ。
自分だけがエレナに対抗できる唯一の知者であり、模写という自負心があった。
「一時でも、あなたを尊敬していました」
リアブリックのオ気あふれる陰謀を見て舌を巻いた。
彼女のように無邪気で頭のいい女性になりたかった。
自分を不幸の沼に陥れた元凶であり、粉々にしてしまいたいほど憎悪した女性だったが、今のエレナを作った女性でもあった。
「さようなら、リヴ」
エレナは死んだ後も最高の別れを告げた。
勘違いなのだろうか。
まるでエレナの褒め言葉に反応するかのように、リアブリックの体が細く震える。
もう冷たい遺体になってしまったのに・・・。
「卿、帰りましょう」
リアブリックの遺体から視線を集めたエレナが背を向けた。
これ以上ここに留まる理由がなかった。
「支度は?」
「全部終わりました、すぐ出発してもいいと’思います」
メイの返事に鏡の前に立って身なりを確認していたエレナがうなずく。
派手ではないが、スタイルのラインを生かした外出用ドレスを着たエレナは、今日、北部地域に発つ予定だ。
目的地は帝国北部に位置する3国連合のうち、ダイアン王国。
彼女の両親であるフレデリック男爵とチェサナが滞在しているという場所だった。
「エミリオさんは?」
「さっきから馬車を点検していると聞いています」
今回の日程にエミリオも同行する。
エミリオは三国連合の一つであるベルカン王国を訪問する予定だ。
これまでエレナの復讐を助け、サロンの全般的な業務を担当していた彼も、この機会を借りてこれまで疎かにしてきた商団を点検し、娘のルシアにも会ってみるつもりだ。
「勤勉ですね。私だけ遅れたんですね」
メイと一緒に寝室を出るエレナの歩き方は軽快だった。
1ヵ月近くかかる遠い旅に出なければならなかったが、両親に会えるという期待に浮かれていた。
しばらくの間、慣れ親しんだサロンを離れることになるだろうが、それほど心配はしなかった。
(サロンは、カリフがうまく管理するだろう)
最近、恋愛のためにずるずるしているのが見えたが、公私を区分できないほどお粗末な男ではないから。
「行くなら行くと言ってよ。また勝手に消えようとして」
廊下の角を曲がって下の階に降りようとしたが、聞き慣れた声がエレナの足をつかんだ。
「レン」
視線を向けると、反対側の通路の壁に斜めに寄りかかって腕を組んでいたレンが手を上げた。
「久しぶりですね?その間、大したこともないし。もう皇居にも立ち寄れないほど忙しいんですか?」
「そうだね」
レンがポケットに手を差し込んでは笑みを浮かべながらエレナに近づき、突然顔を押し付けた。
「何でそんなに安否が多いの?」
「お会いできて嬉しいです」
「・・・」
これまで、シアンとは公の場でしばしば出くわす。
あまりにも工事が多忙で気楽に対話を交わすことはできなかったが、目の挨拶は交わす余力ができた。
しかし、レンはそうではなかった。
決戦の日以来、彼は家門に閉じこもって出てこなかった。
家門内の掌握と後片付けをするという名分だったが、やりすぎだと思うほどだ。
「歓迎してくれて嬉しいよ」
レンはにやりと笑う。
彼女は知っているだろうか。
レンがこんな純粋な笑いを誘う人がエレナだけだということを。
「急にどうしたんですか?何かあったんじゃないですよね?」
「急に来たらもっと嬉しいじゃないか。今も喜んでいるところだし」
エレナはレンの冗談にくすくす笑う。
「結構です。私は今日出発します。しばらく、サロンを空けますので」
「大体話を聞いたよ。北部地域に行くって?」
「ええ、両親がそこにいるんですよ」
エレナの満面に笑みが広がった。
今まで一度も見たことのない安らかな笑みに、レンも一緒に心が緩んだ。
「私もついて行こうか?」
「え?」
「私、すごく暇なんだけど」
「本当ですか?」
エレナがじっと見つめると、レンがにっこり笑って肩をすくめた。
「いいや、冗談」
「何なのですか」
「やることもないし、気が狂うほど暇ではあるが、私がついていくわけではない。感動的なめぐりあいを邪魔する悪党は遠慮する」
レンは残念だが、同行を諦めた。
他のことほとではなく、両親に会いに行くのだ。
大公家の手に引かれるように生き別れをしながら経験した懐かしさを知っているので、一人で行くように配慮した。
「誰かが見たら許可をもらって行くと思うでしょうね?」
「許可をもらわないと。あなた学術院の時も転籍あるじゃん」
「学術院の時ですか?」
過去の話にエレナは失笑する。
過ぎてみれば思い出という言葉がこんなものなのか。
当時までは監視の目を避けてルシアを振る舞ったりもした。
「会えなかったらどうしようと思っていたのに、顔を見れて安心した。行ってらっしゃい」
「かなり長い日程だと思います」
「もっといいね。次に見る時、感動が2倍になるじゃないか」
エレナはまたニヤリと笑った。
真相のようだった彼の話し方が今では愉快に感じられる。
「とにかく、性格が本当におかしい。私は、行きます。レンもお元気で」
「行って」
レンはあごで階段の下を指差した。
エレナは軽くおじぎをして階段を降りる。
その後ろ姿が消えると廊下の端の窓枠に腰かけて下を見下ろした。
やがて、裏門から出てきたエレナが待機していた馬車に乗る姿が見えた。
メイとエミリオ、ヒュレルバードもいたが、レンの覗野はエレナにだけ留まっている。
「まあ、これも悪くないね」
エレナを乗せた四輪馬車が大きな車輪の音を立てて出発した。
レンは今まで作った敵のいない穏やかな笑みで遠ざかる馬車を目で追う。
そして、遠くの点よりもっと小さい大きさの馬車が城門を離れるのを見てから席を離れた。
リアブリックの最後は悲しい終わり方でしたね。
今のエレナを作ったのは彼女ですから、最大のライバルが消えました。
残るはベロニカのみですが、まずは家族との再会。
両親がエレナを見たときの反応が気になります。