こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は313話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
313話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 皇后との会話
「玉璽です」
「・・・」
ちょっとやそっとでは驚かないエレナの目が大きく覚めた。
玉璽って。
皇帝の権威を象徴する全知全能の物だ。
帝国の皇帝だけが持てる玉璽は消えたという。
ところが、それをフィレンツェ皇后が保管しているとは夢にも思わなかった。
玉璽が入った箱を見下ろすフィレンツェ皇后の視線に、彼女らしくない苦々しさが染み込んだ。
「陛下は本当に残酷な方だ。あのように逝ったのに、シアンと血一滴も混じっていない私にこの玉璽を預けるなんて」
「そんなことが」
「皇太子さまにお持ちください。もうすぐ戴冠式なので、この玉璽が必要です」
エレナは頭を上げてフィレンツェ皇后を見つめる。
なぜこれをエレナを通してくれるのか、まったく理解できなかった。
「これをどうして直接与えずに私にくださるんですか?」
「ふざけたくないから」
フィレンツェ皇后は満面の笑みを浮かべる。
「陛下を愛してもいなかったし、私を見つめるシアンを一度も抱いてくれたことのない私が母親の役割をするのはみっともないじゃないですか」
「皇后殿下・・・」
エレナは言葉を濁した。
フィレンツェ皇后は覗線を落としたまま、凄然とした目つきをした。
エレナが一度も見たことのない姿だ。
「陛下がブローチをくれたそうですね?」
「はい?はい。もらったんですが・・・」
「その意味を知らないわけではないだろうし、この品物は資格のあるLが返すのが正しいようですね」
エレナはブローチと関連した顛末をフローレンス皇后が知っていることに驚き、ブローチを与えた意味と資格を論じたことにもう一度驚いた。
「申し訳ありませんが、そのお願いはお受けできません」
エレナは玉璽をフィレンツェ皇后の方へ押し出す。
明らかな拒絶だ。
「L」
フィレンツェ皇后はそっと目をつり上げ、低く名前を呼んだ。
「陛下がお預けになったものですから、皇后殿下にお返しするのが正しいと思います」
「本当に私が惨めになるのを見たいのですか?」
フィレンツェ皇后の声に冷気が流れる。
過去、暇さえあれば皇妃であるエレナを呼び、涙を流すほど怒ったあの姿だった。
一時、あの目つきに縮こまったが、現在のエレナは過去の残滓から抜け出して久しい。
「許可していただければ、私が一言申し上げてもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
慎重にフィレンツェ皇后の許可を求めたエレナが、皇室の礼儀に従って視線を彼女のあごに置いては言った。
「親の縁とは、自分の腹の具合が悪くて産んだからといって、繋がるものではないと思います」
「今、私に教えてるんですか?」
フィレンツェ皇后の顔が赤く燃え上がった。
許可はしたものの、このような傲慢な言葉を口にするとは予想していなかったからだ。
「心から生んだ子も子です」
「これ以上は聞いてあげられませんね。出て行ってください」
侮辱されたと感じたのか、フィレンツェ皇后が席を蹴って立ち上がる。
しかしエレナは屈せずに話し続けた。
一時期、彼女も母親だったから。
「皇太子殿下もそぶりは見せないが、寂しいでしょう。陛下がお亡くなりになり、世に一人残されたという感じを受けたのでしょうから」
冷たい風を起こしながら、す一っと背を向けていたフィレンツェ皇后が、その場で立ち止まる。
逃げようとした彼女にとって、シアンの心は考慮の対象ではなかった。
そのためエレナの言葉が動揺を呼び起こした。
「皇太子殿下の後を守ってください。今までそうだったように。皇后殿下は大人じゃないですか。誰が何と言っても皇太子殿下のお母さんじゃないですか」
「あなた・・・」
エレナは礼儀正しく頭を下げる。
自分の気持ちが少しでも彼女に伝わるように。
それだけが彼女の真心を伝えることができる唯一の方法だったから。
そんな切実な真心が届いたのだろうか。
氷のように冷たいばかりだったフィレンツェ皇后の表情から冷淡さが消えた。
「本当に変な人ですね。敢えてここまでする必要がないのに」
「・・・」
「なぜ陛下がブローチをくれたのか、少しは分かりますね」
フィレンツェ皇后は首を上げる。
彼女は窓の外を見て懐かしさに浸った。
死んだリチャード皇帝を思うのか、傷つけた幼い頃のシアンを思い出すのか分からなかったが、確かに何かを後悔していた。
「玉璽は私が渡します」
「皇太子殿下は喜ぶでしょう」
エレナはやっと安心したのか、淡い笑みを浮かべながら顔を上げる。
皇帝の座は孤独だ。
血が混じっていなくても、愛を与えなかったにもかかわらず、皇室の大人として強固に席を守り、後ろを支えるだけでも皇后の存在がシアンに大きな力になってくれると信じた。
対話を終えたエレナが礼を尽くして退こうとすると、依然として窓の外を見ていたフローレンス皇后が突然話を切り出す。
「あなたなら喜んでもらえるかもしれませんね」
「え?」
エレナの反問に返ってくる返事はなかった。
それ以上聞くのも曖昧だったので、エレナはフィレンツェ皇后の後ろ姿を見ながら挨拶を残して皇后宮を出ていく。
両親を探すため接見室に向かう途中、エレナは廊下で行列を見つけた。
だんだん距離を縮めて近づいてくる行列の一番前に立つ嬉しい顔に向かって挨拶をする。
「皇太子殿下にお目にかかります」
「急に処理しなければならない事案があって、あなたを疎かにした。すまない」
「謝罪なんて。会えなかったらどうしようと思ったのに、このようにお顔を拝見しただけでも幸いです」
エレナはいつもより礼儀正しくした。
ここは皇居の中だ。
彼女の些細なミスも大きく語られ、傷になるものだった。
エレナはシアンに誰かになりたくなかった。
「皇后殿下に会いに行ったと聞いたが・・・」
シアンが妙に語尾を濁した。
フィレンツェ皇后の性格をよく知っているので、もしかしたら彼女がエレナに害を与えたのではないかと心配している様子だ。
「皇后さまがお茶をご馳走してくださりました」
「お茶を?」
「はい、徳談もしてくださって、胸に刻み込んで出てくるところです」
エレナは玉璽について何も言わなかった。
フィレンツェ皇后が自ら玉璽を返してくれることを信じて待とうと決めたのだ。
「そうなんだ」
シアンもこれ以上細かいことは聞かなかった。
いつものようにエレナの言葉を信頼し、隠すことがあっても知ろうとしなかった。
言わなかったらそれだけの理由があるだろうから。
「あなたのご両親は東宮にいらっしゃるそうだね。一緒に行くようにしよう」
「殿下、その前にお願いが一つございます」
「言ってみて」
許可にもかかわらず、エレナが簡単に口を開かずにためらうと、シアンが顔色を伺いながら周りを離す。
その時やっとエレナは唇を離した。
「ベロニカに会いたいです」
フィレンツェ皇后とシアンの仲も改善されるといいですね。
いよいよベロニカとの再会。
彼女は今どんな状況なのでしょうか?