こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
327話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 慌ただしいスケジュール②
「お姉さん。」
部屋を出るやいなや、柔らかな声にエレナは足を止める。
ショートカットであどけなさが残るルシアがそこに立っていた。
「こんにちは、ルシア。」
エレナは親しげに彼女の名前を呼びながら挨拶を交わした。
エレナの助けで病気を克服したルシアは、学園に復学していた。
エレナより一歳年下の彼女は、休学中に寄宿舎ではなくサロンで過ごしている。
「もう外出されるんですか?」
「ええ。」
「昨日も遅くまで働いていましたよね。お疲れではないですか?」
「私が好きでしている仕事だから。大変でも楽しいわ。」
微笑むエレナを見つめるルシアの目は、輝いていた。
それは憧れの光だ。
「それで、どうしてここに来たの?」
「それは・・・その・・・お姉さんが忙しくなければ、一緒に話したいことがあって。でも大丈夫です。邪魔したらいけませんから!」
「どうしようかな?今すぐ出かけなきゃいけないんだけど・・・あ、いっそのこと一緒に行く?」
「一緒に、ですか?」
ルシアが目を大きく見開いてエレナを見つめた。
エレナは柔らかく微笑みながら言った。
「ええ、疲れたらサロンに戻ってもいいし、無理しないでね。でもちょうど午後に学園で講義があるから。」
「私、一緒に行きます!絶対連れて行ってください。」
「じゃあ、一緒に行こう。」
エレナは朗らかに笑いながらルシアと同行することにした。
特別難しいことではないし、学園に復学したルシアの名前と背景を借りたその思い出のためにも、この程度手間をかけることは全然苦にならない。
サロンを出て馬車に乗り込んだルシアは、何かに感動したようで、終始落ち着かずきょろきょろしていた。
彼女のそんな生き生きとした様子は、エレナにもポジティブなエネルギーを与えてくれた。
「お姉さん!あれ、何をしているんだと思いますか?」
ルシアが外を指さして興奮気味に声を上げた。
その方向を見つめるエレナの視線には、馬車の外に反転する雲の下で何かが広がっている光景が映っていた。
遠くに建設現場が見える。
大規模な建物ではなかったが、敷地はかなり広かった。
「もう工事が始まって4ヶ月近く経つのに、まだこんな状態なのね。」
「普通の建物じゃない気がするんだけど。」
「何か特別なことでもあるの?」
「いや、別に。ただそんな気がするだけです。」
「気?それ、何なの?」
エレナはクスッと笑った。
年齢的には少しの差だったが、ルシアは自由奔放で明るい少女のようだった。
生き生きとしていて暖かみがあり、その年齢ならではの感受性で世界を見ていた。
『私とは全然違うな。』
だからなのかもしれないが、エレナはそんなルシアが好きだった。
ベロニカの影響で時間を無駄に過ごしたように感じていた日々を、彼女を通して取り戻した気がしたのだ。
『それにしても、あれは一体何の建物なんだろう?エミリオさんによると、あまり知られていない資産家の持ち物らしいけど・・・。』
サロンの土地柄も相まって、エレナは建設中の建物に対する興味が湧いてきた。
近くで土地が売りに出されることはめったにないということもあり、なおさら気になっていた。
見ていると、その建築は一般的な建物とは違い、進行速度が遅く、厳格な非公開で進められていた。
ルシアとたわいのない話をしながら、目的地である首都南部の学校に到着する。
開校式を前にした校舎の近くには、入学を控えた生徒とその保護者たちが集まっていた。
「お待ちしておりました、Lさん。」
校長と教師たちは、ジャカリンの代理で開校式を担当するエレナに向けて、丁寧に挨拶した。
校長という肩書きはジャカリンに付与されているが、この学校を設立し運営しているのはエレナであり、彼女に気に入られるために教師たちは積極的に対応していた。
「遅れていませんか?」
「そんなことはありません。時間通りにお越しいただきました。席を用意しておりますので、こちらへどうぞ。」
校長に案内されるエレナの後ろを、ルシアがそっとついていく。
目を輝かせながら周囲を見回すルシアは、この学校の規模と環境に感心している様子だった。
それはまるで学術機関を思わせるほど立派だった。
エレナに対する尊敬の念も増していく。
首都だけで十数校の学校を建て、無償教育を実施していること自体が簡単なことではない。
そのすべてをLは陰ながら支えていた。
エレナが学校を見て回った後、運動場には生徒たちが集まっていた。
保護者を含め、その数は数百人にのぼる。
開校式をきちんと進行していた校長は、エレナに祝辞をお願いした。
エレナが壇上に立つと拍手と歓声が沸き上がった。
「わあ、庶民が貴族をこんなに歓迎するのを見るのは初めてだわ。」
輝かしい帝国民を目にして、ルシアは目を丸くする。
身分制度が明確であるため、庶民は貴族を敬遠し、貴族は庶民を取るに足らない存在とみなしていた。
そのような偏見を取り払ったエレナは、まるで神聖な存在のように敬われていたのだ。
「ご列席の皆様、はじめまして。私はLです。本日は総長のジャカリン様に代わり、開校式の挨拶をさせていただくことになりました。このように帝国の未来を担う子どもたちを見られることに、とても胸が躍り、安心いたします。」
エレナは率直で堂々とした態度で開校の挨拶を続けた。
学校を訪れた多くの人々が、庶民と同じくらい学問の重要性を理解していることを感じた。
彼らは華麗な贅沢さよりも教育の必要性を訴えている。
「私のお話はここまでとさせていただきます。ぜひ立派な大人に成長されることを願いながら、これで挨拶を終えます。」
エレナは優雅に微笑みながら挨拶を締めくくった。
帝国の人々は何を言えばいいのか戸惑いながらも、次第に拍手を送った。
貴族が庶民に対して敬意を持つという話は聞いたことがなく、目にしたこともなかったため、驚きを隠せなかったのだ。
壇上を降りたエレナの視界に、馴染みのある姿がちらりと映った。
その姿は、数えきれないほどの群衆の中でもひときわ目立った。
エレナは瞬時にそれが誰かを理解した。
「レン?」
エレナと目が合ったレンは、気まずそうに笑みを浮かべると、すぐさま人々の間に紛れ込んで姿を消してしまった。
「お疲れ様でした、L!」
「いや、私が何か特別なことをしたわけでもないですよ。式を進めただけです。準備をしてくださった皆さん、本当にお疲れ様でした。」
エレナは校長や教師たちと一人ひとり挨拶を交わしながら式を締めくくった。
次の機会に食事を共にする約束を交わしたエレナは、ルシアと一緒に馬車に乗り込んだ。
当然のようにヒュレルバードが馬車の後衛を務め、学校を後にした。
馬車から少し離れた学校を見つめながら、エレナは独り言を漏らした。
「また現れたのか。来たことを匂わせているつもりなのか。」
「誰のことですか?」
「そういう人がいるのよ。話を聞かない頑固者が。」
そうだったのか?
以前、ガイア教団の主礼儀式に出席したエレナは、その場でレンと出会った。
彼が気まずそうに挨拶をしようとしていたところを見たエレナだったが、レンは群衆に紛れてすぐに姿を消してしまった。
エレナは何も言えなかった。怒るわけでもないが、毎回こんな風に逃げられるとは。
ルシアは深く考え込んだ末に、エレナへ答えを出した。
「その方が誰なのか分かりませんが、恥ずかしくてそうしているのではないでしょうか?」
「・・・恥ずかしい?」
「はい、Lの前に立つのが恥ずかしいんですよ!」
「あの人が?」
エレナは思わず吹き出してしまった。
レンが恥ずかしさを感じている姿を想像してみると、そのあまりの奇妙さに笑いが漏れたのだ。
二人は気軽なおしゃべりを続けながら、馬車は次の目的地であるレストランに到着する。